ジャック×親指姫   作:サイエンティスト

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 ツンデレによる復讐劇。いいからさっさと素直になっちゃえよ、と思っていはいけません。
 ここまで来ると自分でも疑問に思ってしまうんですけど、果たしてこのシリーズの主役はジャックなのか親指姫なのか。
 片方だけの内面とかを書いたりするよりは両方を書いた方が楽しいし面白くなりそうなのでこんな感じになっているんですけど、読んでいる方にはどっちが主役に映っているんでしょうかね……。





復讐の時

 ジャックを辱めてやるために親指姫は白雪姫だけでなく、赤ずきんたちにも協力を頼んだ。いつも恥ずかしげも無く好き好き言うジャックが辱められる姿を自分と同じく見てみたいようで、一部の少女たちを除いて皆快く了解してくれた。ジャックには残念だろうが性別の関係で血式少女たちはほぼ全員親指姫の味方である。

 

「みんな僕に話があるって言ってたけど何の話かな? まあ、大体予想はつくんだけどね……」

 

 食堂に呼び出され仲間たちを前にしたジャックは、主に赤ずきんの笑顔を見て苦い顔をしていた。そんな顔をするのも当然だ。これから皆にジャックを辱めさせて親指姫と同じ気持ちを味わわせてやるのだから。

 

「えぇっと、その……ジャックさんは、親指姉様のどんなところが好きですか?」

「え? ど、どうしてそんなこと聞くの?」

 

 先陣を切ったのは白雪姫だった。頬を赤くして、というか妙に瞳を輝かせながらそんな質問を投げかける。

 尋ねられたジャックも同様に頬を赤くしてちょっと戸惑い気味だ。まさか面と向かってそんなことを聞かれるとは夢にも思っていなかったに違いない。

 

「あ、あの、その……き、気になったからです! 皆さんも気になりませんか?」

「ま、まあ、気にならないといえば嘘になりますわね……」

「そうだね。せっかく親指がいないんだから話してみなよ、ジャック?」

 

 そして話すことを皆が強要し、ジャックの恥じらいを掻き立てる。

 今のジャックは自分の恋人に惚れた理由やら何やらを洗いざらい吐けと言われている状況だ。それも話す相手はいつも顔を合わせるたくさんの女の子。

 

(どうよ、ジャック! いくらあんたでも私の好きなところを皆の前で口にしていくのには抵抗あるでしょ!)

 

 そんな状況を親指姫は息を殺してじっくりと観察していた。食堂の片隅に置かれた資材の傍で、以前まではジャックに追われた場合の緊急避難用に用いていた木箱を被って。

 何やらジャックは親指姫が透明になったり自分を小さくしたりできるのではないかと疑っていたようだが、もちろん違うしできるわけもない。からくりは極めて単純。小さくして携帯していた底の抜けた木箱を大きくして被る。これだけだ。

 元々居住スペースに限らず木材や木箱などを含む資材が至る所に置かれているので、廊下のど真ん中とかでない限りは完璧に溶け込める。この避難方法をかなり早い段階で閃かなかったなら、きっと親指姫は二日も経たずにジャックに掴まっていたことだろう。

 

「え、えぇっ……好きなところって、急に言われても……」

「それならジャックは親指姫が好意を伝えてくれないことをどう思っているの? まだ一度も普段の親指姫の口からは好きだとは言われていないのよね?」

(う……)

 

 あまり協力的ではなかったアリスがさり気なくこちらに視線を向けてジャックに尋ねる。これはジャックを辱める質問というよりも親指姫を責める質問に違いない。そして本当は気にしていることである故に苦い思いをしてしまう。

 

「う、うん……本当は言って欲しいけど、恥ずかしくて言えないなら今はそれで構わないよ。言ってくれなくても親指姫が僕のこと好きだってことはちゃんと分かってるから」

(良いこと言うじゃない、ジャック! やっぱり言わなくたって良い……のよね……?)

 

 本当は言って欲しいなら素直に言ってやるべきかもしれない。しかし恥ずかしくて言えないならそれで構わないとジャック自身が言っているのだ。少なくとも今のところは現状維持で文句は無いのだろう。安心した親指姫はほっと胸を撫でおろした。

 

「では親指姫が時々暴力を振るってくることに対してはどう思っているのかしら。書物には乱暴な女性は男性にはあまり好まれないとあるのだけれど」

「いえ、性別に関係なく乱暴な方は好まれないと思うのですけれど……」

(ま、まあ、普通そうよね。私だってもしジャックに乱暴されたりしたら……されたりしたら……あ、あれ……?)

 

 グレーテルの質問とシンデレラの指摘に多少落ち込みつつ、自分の立場に置き換えて考えてみる親指姫。

 しかしジャックがそんな乱暴をしてくるところが上手く想像できないせいか、不思議とそんなに嫌な気はしなかった。やはり上手く想像できないせいに違いない。

 

「……そういうのが、好きな人もいる……ジャックも、そう……?」

「ぼ、僕は別にそういう趣味は無いよ! でも親指姫は照れ隠しでついやっちゃうだけだって分かってるからそんなに嫌じゃないかな。むしろそんな風に照れる親指姫が可愛くて参っちゃうよ」

(な、何で自然にそんなこと言えんのよ、あんたは! もうちょっと恥ずかしがれっての!)

 

 ごく自然ににこやかな笑顔で親指姫が可愛いと口にするジャック。やはり全くと言って良いほど恥ずかしがっていない。むしろ隠れて聞いているこっちが恥ずかしくなってきてしまった。

 作戦ではさすがに皆の前ならジャックももっと恥ずかしがって、そこを赤ずきんたちに更に攻め込んでもらうはずだったというのに。

 

「うわぁ……本当にジャックは親指に夢中だなぁ……」

「では、ジャック。そなたは親指姫のためなら何でもできますか? わらわの僕になれと命じられれば、大人しく従うのですか~?」

(言うわけないっつーの! あんた下僕とか奴隷にジャックが欲しいだけでしょ!?)

 

 相変わらず何でも言うことを聞く奴隷を欲しがっているらしいかぐや姫。もちろん誰にも渡す気はないが、仮に誰かにジャックを渡すとすれば間違いなくコイツにはやらない。かぐや姫に渡すくらいなら待遇がそこまで悪くなさそうなグレーテルの方がまだマシだ。

 

「さすがに親指姫がそんなこと言うわけないと思うけど……でも、何でもはちょっと言いすぎかな? 僕にできることなら、何でもするよ」

(いや、変わんないでしょ。ていうかあんた、何でもって言っても絶対言うこときかないのが一つあるわよね?)

 

 ジャックの発言に思わず眉を寄せてしまう。自分にできることなら何でもすると言っても、自分の命を賭けたりするな、という命令は絶対に聞いてくれないだろう。それを聞いてくれるなら親指姫も苦労はしない。

 

「ん……さすがは、ジャック……!」

「と、ところでジャックさん。ジャックさんは、その……私たちの前で言えますか? 親指姉様のことが好きだって……」

「え? うん。僕は親指姫のこと好きだよ」

(いや、もっと躊躇ったりしなさいよ!? 何で当然みたいな顔で言えんの?)

 

 予め尋ねるよう伝えておいた質問を白雪姫が口にするものの、ジャックは何ら気にした様子も無く答える。皆が目の前にいるというのに何の躊躇いも恥じらいも見えない。親指姫の作戦ではもっとこう、照れて恥ずかしがる情けないジャックが見られるはずだったのだが。

 

「ど、どれくらい好きですか!?」

「ど、どれくらいって言われても難しいな……ずっと一緒にいたいくらい、かな? 僕にできるかは分からないけど、ずっと傍で支えていきたいんだ」

「どんなところが可愛いって思いますか!?」

「えっ、そうだね……やっぱり照れたり恥ずかしがってる時の表情が可愛いよ。本当は笑ってる方が好きなんだけど、最近の親指姫は僕の前だといっつも顔を赤くしてるからあんまり笑顔が見られないんだよね……」

(だから何であんたはそんな恥ずかしげも無く言えんの!? 聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるじゃない!)

 

 白雪姫が畳み掛けていくものの、やはり何ら堪えていなかった。もう聞いているこっちが恥ずかしくなってこの場から逃げ出したくなるような言葉をぽんぽん口にしている。

 しかし木箱を被っているせいで逃げるに逃げられないのがもどかしい。さすがに今は風景に溶け込んでるとはいえ、突然木箱に脚が生えて走り去っていったら怪しさ爆発で気付かない方がおかしい。

 

(あー、もう! こんなはずじゃなかったのに……!)

 

 辱めるのが目的だったはずなのに逆に辱められている。完璧とまではいかないまでもなかなかの作戦だったはずだというのに。

 どうやらジャックの無神経ぶりを見くびっていたようだ。冷静に考えると親指姫の前だろうと好き好き連呼できる心の持ち主では、仲間たちの前程度で恥ずかしがるわけもない。

こうなったらもうこちらもダメージを受ける覚悟でもっと直接的な手段を用いるのが賢明かもしれない。

 

「あー、何かここまで清々しいとからかう気にもなれないよ。親指にこの半分でも素直さがあればジャックも苦労しないだろうなぁ……」

(何で皆納得してんの!? 私そんなに面倒くさいわけ!?)

 

 最早この場でからかうのは無理と判断したのだろうか。赤ずきんが諦めたように口にした言葉に、この場のほぼ全員が頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、作戦その一は見事に失敗した。

 失敗したどころかあの後はいかに親指姫が素直ではないかという糾弾染みた話さえ始まった。ちなみに首謀者は黒髪ショートの少女。一番糾弾する権利があるはずの恋人がむしろこちらの味方をしてくれたことが嬉しいような悲しいような複雑な気分だった。

 

「前回は失敗したけど今回は作戦ばっちりよ! これなら絶対ジャックを辱めてやることができるわ!」

 

 翌日、かなり朝早く。

 まだまだジャックも寝ている時間に親指姫は作戦その二を実行段階に移そうとしていた。協力者は赤ずきんとグレーテルだ。さすがに二人とも若干眠そうにしているし親指姫自身も眠いが、作戦を実行するにはなるべく朝早い方が理想的なのだ。

 

「じゃ、頼んだわよ二人とも!」

「オッケー。あたしたちはしばらくしたらジャックの部屋に行って、面白おかしく騒げば良いんだね!」

 

 一番ノリノリで協力的な赤ずきんが笑いながら頷いてくれる。さすがにあれだけジャックが恥知らずでは親指姫と同じで何としてでも辱めたいらしい。

 

「そう! もうパーっと頼むわよ! 皆起きてくるくらい大声で!」

「一つ質問があるのだけれど、ジャックを辱めるために親指姫自身も辱められることには気付いているのかしら?」

「そんなもん分かってるっての! でも私ばっかり辱められて不公平でしょうが! 死なばもろともでジャックも同じ目に合わせてやんのよ!」

 

 グレーテルの指摘することは最初から織り込み済み。あのジャックを辱めるためには犠牲も必要だと悟ったのだ。どうせ親指姫は散々ジャックに辱められたのだからそれが一回増える程度大したダメージにはならない。

 

「あんたはそこまでしないとジャックに仕返しもできないんだね……やっぱりジャックが主導権をがっちり握ってるんだなぁ」

「……つまりこれは恋人間の主導権争いなのね。親指姫が勝利しなければこれからはずっとジャック優位の関係が続いていくのかしら」

「そんなことさせないわ! 絶対私が取り返してやるから見てなさい!」

 

 ジャックに主導権を握られたままでは正直先行きも不安だ。もしもジャックが親指姫の想いを利用することを覚えたなら、捨てられたくないならこれをしろあれをしろと鬼畜な命令をされてしまうかもしれない。

 ジャックに限ってそんなことはないと思いたいがあれも一応男だし、今までの自分の発言や行動を考えるとそんなことを命じられても仕方ないくらい生意気で天邪鬼であった。故に辱めるだけではなく、ここで主導権を取り返すことも理想だ。

 

「さあ行くわよ! 覚悟してなさい、ジャック!」

 

 気合を入れつつジャックの部屋へと駆ける親指姫。しかし部屋の前では足音も呼吸も気配も殺し、万が一にも気が付かれて目を覚まさないように注意する。この作戦ではジャックには眠ったままでいてもらわなければならないのだ。

 

(……ジャックはまだ寝てるわね。作戦通りだわ)

 

 音を立てずに扉を開けて室内へと侵入。室内の暗さとベッドの膨らみからジャックはまだ寝ていると判断。ベッドの傍まで近づいて見てみると、横向きで熟睡しているジャックの穏やかな寝顔が確認できた。

 

(気持ち良さそうに寝てるわね。全く、こんな無防備な寝顔して……)

 

 これから親指姫による恐ろしい復讐劇が始まるとも知らず、心底気持ち良さそうな寝顔で夢に浸っているジャック。涎を垂らしたりしているわけではないが全く何と言う馬鹿面だ。しかしその馬鹿面を眺めていると不思議と心が暖かくなってきてしまう親指姫だった。

 

(――って、寝顔眺めてる場合じゃないっての!? しっかりしなさい、私!)

 

 何故か微笑みながら眺めてしまった自分に頬を叩いて活を入れ、気持ちを新たにする。寝顔を眺めにきたのではなく骨を断たせて肉を切る思いで復讐を行うために来たのだ。自分の方がダメージがでかい分、気持ちを強く持たねば実行できるわけがない。

 その復讐を実行するため、親指姫はジャックがまだ寝ていることをしっかり確認してから――服を脱ぎ始めた。 

 

「ふっふっふ……幾らあんたでも目が覚めた時に隣に私がいればびっくりするでしょ? しかも下着姿ならなおさら、ね……」

 

 そう、これが作戦その二だ。

 いくら恥知らずのジャックでも朝目覚めた時に隣に女の子がいればこれ以上ないほど狼狽するに違いない。ましてやその女の子が恋人とはいえ下着姿ならなおさらのこと。おまけに少し待てば赤ずきんたちが部屋を訪ねてくるのだから、そこで親指姫がすすり泣く真似でもすれば最早ジャックは完璧にノックアウトだ。これでやっと普段の屈辱の仕返しが叶う。

 本当は下着姿ではなく裸が一番効果的なのだがさすがにそれは無理だった。妥協と覚悟を決めて下着姿がギリギリのラインである。

 

(さ、さてと、じゃあベッドに……)

 

 完璧に下着姿となったところで、何度か深呼吸して羞恥心を必死に抑え込む。何だか夜這いをかけようとしているようで酷く恥ずかしい気分だ。しかしこれはあくまでも復讐のための行為で不埒な気持ちは一切無い。

 決意を固めた親指姫はジャックのベッドに入るために緊張に震える手でシーツを捲くった。

 

「――って何よこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 ――その瞬間、羞恥心も作戦も忘れて叫びを上げてしまった。

 理由は単純。ジャックの隣に先客がいたからだ。

 

「うー……じゃっくー……」

 

 あろうことかジャックの身体にぎゅっと抱きつく、一糸纏わぬ姿のラプンツェルが。

 

「な、な、な……何やってんのよあんたはぁぁぁぁぁぁ!? 私という者がありながら子供に手を出すとかどういう了見よぉぉぉぉぉぉ!!」

「わぁっ!? な、何!? どうしたの!?」

「うー……なんか、うるさい……」

 

 勢いに任せてジャックの首根っこを引っ掴み全力で揺さぶる。途端に目が覚めたようだが何が起こったのか全然理解できていないようだ。同時にラプンツェルも眠そうにしながら目を覚ますものの、しがみついたまま離れない。

 

「お、親指姫!? 何で僕の部屋にいるの!? ていうかどうして下着姿なの!?」

「それはこっちの台詞だっつーの! 何であんたは裸でラプンツェルと抱き合ってんのよ!?」

「えっ、何のこと……って、うわぁ!? ラプンツェル、また僕のベッドに勝手に!」

「あー、じゃっく! おはよー!」

 

 ジャックが目を覚ましたせいか元気良く返事をするラプンツェル。ただしその姿は長く綺麗な金髪で覆われているところ以外は素っ裸だ。ジャックの目の毒以外の何物でもない。

 

「うん、おはよう……じゃなくて! とりあえず服着てラプンツェル!」

「本当にラプンツェルが勝手に潜り込んできたわけ!? あんたがお菓子で釣って連れ込んだとかじゃないでしょうね!?」

「ご、誤解だよ! ラプンツェルは時々僕のベッドに潜り込んでくるんだ! 自分で連れ込んだりとかしてないよ!」

「おかし!? おかしだーいすき! おかしたべたーい!」

「あんたは黙って服着てなさい!」

 

 瞳を期待に輝かせて迫ってくるラプンツェルはこの際無視。こんなことになるとはあまりにも予想外の展開だった。

 

「おはよー、ジャック! 気持ちの良い朝が来たよー! 今朝は特別にあたしがモーニングコールを――」

「あ……」

 

 そして今度は予定内の展開が続く。ただし本来見せるはずだったのはジャックの隣で下着姿ですすり泣く親指姫、という事案が発生したような光景。

 だが今この場に広がっているのは素っ裸のラプンツェルを隣にジャックを糾弾する下着姿の親指姫という、別の事案が発生したような光景。一体何故こんなことになったのか。

 

「あー……修羅場、だったかな……?」

「さしずめ愛人と迎えた朝に本妻が乱入してきた、という感じかしら。とても珍しい場面に出くわすことができて嬉しいわ」

 

 面白おかしく騒いでジャックを責めてもらう筈だったが、さすがに笑えないのか赤ずきんも戸惑っている。ただしグレーテルのほうはメガネの奥で不気味に瞳を細めて笑っていた。

 

「……ま、親指一筋のジャックがラプに手を出すわけないか。こっちおいで、ラプ。ここにいると夫婦喧嘩に巻き込まれるよ。夫婦喧嘩は食べてもおいしくないし、あんたでもお腹壊しちゃうよ?」

「ええー? おいしくないならいらない……」

「だ、誰が夫婦だってのよ! ていうか赤姉たちちょっとどっか行ってて!」

 

 もう何が何だか自分でも分からないがまずはジャックを問い詰めるのが先決だ。あれだけ恋人である親指姫に好き好き言っておきながら他の女の子に手を出したとしたのなら、たっぷり罰を与えて性根を叩き直してやる必要がある。

 

「はいはい。ほら、行くよ二人とも」

「おなかすいたー。あさごはんたべたーい!」

「私はできればこの後どう展開するのかが気になるのだけれど……仕方ないわね」

 

 親指姫の指示に赤ずきんたちがあっさり部屋から出て行く。どうやら赤ずきんは親指姫に猛烈に熱を上げているジャックがラプンツェルに手を出すわけがないと信じているようだ。

 しかしそれは自分が無関係だから簡単に信じられること。張本人である親指姫はそんな簡単に信じることはできなかった。

 

「で!? あんた本当にお菓子で釣って連れ込んだとかじゃないわよね!? ラプンツェルが寝てる間にいかがわしいこととかしたんじゃないでしょうね!?」

「だ、だから誤解だよ! 大体ラプンツェルはまだ子供だし間違ってもそんなことしないよ!」

「……あんた、それって私を子供だって遠回しに馬鹿にしてんの? もしそうならぶっ殺すわよ?」

 

 ラプンツェルに対し子供だから手を出さない、というのは体型の良く似た親指姫を遠回しに侮辱しているとしか思えなかった。仮にも恋人である親指姫にそんな侮辱をするとは浮気だけでは飽きたらず喧嘩まで売っているのだろうか。

 

「ち、違うよ! 僕は親指姫のこと子供だなんて思ってないよ! だ、だって、あの時見た親指姫の裸は、その……綺麗、だったし……」

「い、いきなり何言ってんのよこの変態! ぶっ殺すわよ!?」

 

 今度は親指姫の裸に対して変態的な感想を口にするジャック。女の子に対してそんなことを言うとはやはり喧嘩を売っているに違いない。

 

「どっちにしろぶっ殺されるの!? ていうか親指姫っ、服! とりあえず服を着て!」

「は……? って、うわあぁぁ!? それ先に言いなさいよこの変態!」

「どっちにしろぶっ殺されるしどっちにしろ変態なの!? やっぱり理不尽だよ親指姫! そもそもどうして親指姫が下着姿で僕の部屋にいるのさ!?」

 

 残念ながら状況がさっぱり飲み込めていないジャックと怒り心頭の親指姫ではまともな会話ができず、事態が落ち着くまでにはかなりの時間を要してしまった。

 一応浮気とかではなかったことを知って安堵した親指姫だが、結局ジャックを辱めるための捨て身の作戦も見事に失敗だ。というか無駄に自分が辱められて散々踊らされただけで終わった。まさかジャックがこれほどまでに手強いとは。

 

(でも絶対諦めないわよ! 何としてでもジャックに目に物見せてやるんだから!)

 

 今後の関係を良好なものにするためにも負けてはいられない。決意を新たに親指姫は新たな作戦を考えるのだった。

 とはいえ本当はこんな努力をするよりも、白雪姫の言う通りジャックに好意を伝える努力をするべきだと分かっていた。恥ずかしくて言えないだけで、本当は自分でもジャックに好意を伝えてやりたい。互いへの好意を言葉でも行動でもたっぷり伝え合える関係になりたいというのが、羞恥心を抜きした理想なのだから。

 しかしそれができないからこそ努力の方向が復讐へ向いてしまっているのだ。一体どうすれば素直になることができるのか。復讐に燃えながらも悲嘆にくれてしまう、複雑な乙女心を持つ親指姫であった。

 

 




 
 甘々なイチャラブも好きですがプチ修羅場もそれはそれで好きです。ヤキモチとか所有欲全開になる展開が堪らない。
 とりあえず素っ裸の幼女が隣にいたら私なら襲いますが、ラプンツェルは微妙な所。可愛いけどまだ心も幼いしギリギリ守備範囲外ってところです。あ、身体が幼いのは余裕で守備範囲内です。
 次回は激動(かもしれない)の展開。多少展開が駆け足なのは冗長にならないためと、早くイチャラブさせたいがためだったり……。

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