ジャック×親指姫   作:サイエンティスト

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 『禁止令』と来て『ペナルティ』。そして1話のまえがきで書いた『最初の1、2話を前置きというか準備というべきか』という言葉。賢い人ならこの時点で余章の話の流れが何となく見えてきているのではないでしょうか。
 




ペナルティ

 元繁華街エリアでの今回の探索は無事に終了した。元々ちょっとした依頼をこなす為の探索だったのでさほど時間はかからない見通しだったのだ。

 ただ無事に終了はしたものの、その最中にジャックと親指姫は事あるごとに赤ずきんから注意を受けてしまった。ジャックたちの認識では決してイチャついているわけではないものの、やはりこちらの感覚が麻痺しているのだろう。赤ずきんだけでなくほとんど全員からイチャついていると断定された。

 これが赤ずきんだけならからかい目的と取れなくも無いが、アリスやシンデレラにまで頷かれては納得せざるを得ない。そして本格的なお叱りを受けるのもまた仕方ない。

 

「それで……話ってやっぱり、今日のことだよね?」

「それ以外に何があんのさ。とりあえずそこに座りなよ、二人とも」

 

 探索から帰還してしばし休息を取った後、ジャックと親指姫はお叱りのために食堂へ呼び出されてしまった。

 食堂で待ち構えていたのは呼び出した主の赤ずきんに加えてシンデレラとアリス、そしてグレーテル。この四人がいるのは別におかしくはないものの、かぐや姫の姿もあるのがジャックとしてはちょっと意外だ。

 

(かぐや姫、何かニヤニヤ笑ってる……)

 

 そして何故かさも愉快そうに笑っているのがまた意外というか、どことなく不安だった。その笑顔がジャックと親指姫の関係がぎくしゃくしていた頃に頻繁に見られた、からかいの笑みと同じなので余計に。

 

「それで何なのよ、赤姉? 言っとくけど私たち用事があったんだからね?」

「あんた全然反省してないね、親指……いや、あんたたちに悪気はないのは分かってるんだけどさ……」

 

 席についた親指姫の第一声に赤ずきんが深い溜息をつく。

 この場で更に休息中に何をやっていたかを口にしてしまうとさすがに怒られそうだ。

 

(ついさっきまでイチャイチャしてました、なんてこの場で言えないよね……)

 

 なのでその事実はそっと胸の奥に秘めておく。

 帰還してからのしばしの休息では懲りずに部屋の中でイチャイチャしていたのだ。もちろんそれは赤ずきんたちにとってではなく、ジャックたち自身がイチャイチャしていると認めるレベルの触れ合い。確かに反省していないと言われても仕方ないかもしれない。

 

「私だって反省してるし止めようと努力だってしてたわよ? でもこの大馬鹿が笑いかけてくると自然に……」

「あははっ。大馬鹿は酷いよ、親指姫」

「ジャック、あんたもか……」

 

 親指姫に親指で示されるおかしさ、そして休息時の出来事につい笑ってしまう。

 大馬鹿と罵りつつもその大馬鹿に猫撫で声を出しつつたっぷり甘えてきたのだから笑うなと言う方が無理だ。なので親指姫と同じく反省の色が見られないと思われたのか、またしても赤ずきんは溜息をついていた。

 

「……まあ、あたしたちもだいぶ人数が多くなってきたし、探索の時はあんたたちを中央にでも据えればぶっちゃけほとんど問題ないよ。だけど万が一のことを考えると周りが見えてないのは問題だし、何より全体の士気にも関わることだからさすがに見過ごせないね」

「ええ、確かに赤ずきんさんの言う通りですわ。お二人の関係に口出しするつもりはありませんけれど、さすがに時と場所を選んだ方がよろしくてよ?」

「もちろん私たちがあなたを守るけれど、やっぱりジャック自身も周囲にある程度は気を配れる状態であるべきよ。親指姫と触れ合うことはいつでもできるでしょう?」

「う、うん。僕もそう思って努力したんだけどね……」

 

 至極真っ当な理由のせいかシンデレラやアリスも真顔で頷く。

 一応ジャックも気をつけてはいたのだが結果としては無意味だった。まるで息をするように自分でも意識せず親指姫と触れ合い、皆の認識でのイチャイチャをしてしまったのだから。

 

「だけど白雪姫と眠り姫はむしろ士気が上がっているわね。親指姫たちが心置きなく触れ合えるようにしなければと俄然やる気を出していたわ」

「ですが赤ずきんやわらわのようにやる気が削がれるのが大半です。なのでこれは真に忌々しき事態です~」

「あんたはいっつもやる気ないでしょうが!? 私たちのせいにすんじゃないわよ!」

(代弁ありがとう、親指姫。僕もちょっとそう思ったよ)

 

 指摘しにくかったジャックに代わり、しっかりそこにツッコミを入れてくれる親指姫。まるで気持ちが通じ合っているかのように思えてまたしてもジャックは幸せに笑ってしまった。

 

「あー、本当にダメだこいつら……」

 

 そんなジャックたちに溜息をつき、額を押さえて呻く赤ずきん。まるでもう手の施しようがないと嘆いている姿。

 だがジャックはそこで確かに見た。赤ずきんの口元に面白おかしそうな笑みが浮かんだのを。

 

「よし、じゃあこうしよう。今度探索中にイチャイチャしたらあんたたちには罰ゲームを受けてもらおうか。とびっきり恥ずかしい感じの罰ゲームをね!」

「ええっ!? 罰ゲームって何!?」

 

 そして今度は包み隠さず笑顔で紡がれた謎の提案。これには隣の親指姫も目を剥いて驚いていた。

 

「じょ、冗談でしょ!? 何で罰ゲームなんか受けなきゃんなんないのよ!?」

「だってそうでもしなきゃあんたたち絶対イチャつくのやめられないだろ? 皆はどう思う?」

「私は反対だわ。ジャックは控えようと懸命に努力しているのに罰を与えるなんて……」

「けれど考えとしては妥当なものだと思いますわ。ジャックさんたちはもう自分ではどうしようもないほど重傷な恋の病にかかっているようですし……」

「やはり恋は人を狂わせるのですね~。ツンデレの親指姫がデレデレになってしまうとは今でも信じられません」

「ふふっ、そうね。以前の親指姫の様子や言動を思い出すと現実かどうか疑うのも無理は無いほどの豹変振りだものね」

 

 赤ずきんに意見を求められた少女たちが思い思いの言葉を口にする。

 残念ながら明確に反対してくれているのはアリスのみ。シンデレラは至極まともな理由で賛成派のようだ。グレーテルはどっちなのか分からないが、かぐや姫が賛成派なのは考えるまでもなかった。

 

「ば、馬鹿にすんじゃないわよ! 私とジャックのはもう恋なんてちゃちなもんじゃないんだから!」

「あははっ、突っ込むところはそこなんだ。親指姫がこんなことを言ってくれるなんて、本当に夢みたいだなぁ……」

 

 明らかにニヤニヤ笑っている赤ずきんとかぐや姫が目の前にいるのに、親指姫が真剣な顔で指摘したのはそこだった。嬉しくて嬉しくてまたしてもジャックは笑ってしまう。

 

「あんたはまたそういうこと言ってるし。そんなに信じられないってんなら前までの私に戻ってやっても良いわよ?」

「う、うーん……そりゃあ前までの親指姫も嫌いじゃないけど、やっぱり今のままの親指姫でいて欲しいな。せっかく素直に二人で何でもできるようになったんだしね?」

「だったら夢見たいとか言ってないで素直に喜びなさいよ。私は、あんたの喜ぶ顔が見たいんだから……」

「親指姫……」

 

 僅かに頬を染めながらも、しっかりジャックと目を合わせて自分の本音を口にしてくれる親指姫。喜ぶ顔が見たいのはもちろんジャックも同じだ。やはりお互い気持ちは通じ合っている。なのでもうお約束のようにジャックは笑い、それを目にした親指姫もまた笑っていた。

 

「……一つ確認しておきたいのだけれど、必ずしもジャックに罰を与えるわけではないのよね?」

「まあね。どっちに罰を与えるかとか、内容とかは皆で相談して決めるってのが良いんじゃないかな?」

「……そうね。ジャックたちの身の安全に関わることだもの。心を鬼にするくらいが丁度良いかもしれないわ」

(あれ!? アリスまで賛成派に回っちゃった!?)

 

 笑いあうジャックたちの姿が余程気に入らなかったのだろうか。手の平を返すようにアリスまで罰ゲームに賛同していた。何故か親指姫をじっと睨みつけて。

 

「ああ、そう。あんたならそう言うと思ってたわよ、アリス……!」

(親指姫もアリスも顔怖いよ……何かこの二人仲悪くなった気がするなぁ……)

 

 親指姫は憎々しい睨みを返し、空中に火花を散らす光景を幻視させる。

 やはり皆の前でも遠慮なく触れ合うようになったどころか、むしろ積極的に触れ合い見せ付けるようになったことが原因なのだろう。素直になってからというもの、何故かこの二人は微妙に仲が悪くなっていた。もっと正確に言うなら皆に多大な迷惑をかけたあの朝の辺りから。

 

「よし、これで満場一致で罰ゲーム決定だ! というわけで親指には早速今日の分の罰ゲームを受けてもらうよ!」

「な、何でいきなり私なのよ!? そういうのは普通男のジャックに受けさせるべきでしょ!?」

 

 高らかに宣言する赤ずきんに対してこちらを指差しながら反論する親指姫。しかし突っ込むべきところは罰ゲームの対象ではなく、この場に全員いるわけではないのに満場一致にされていることではないだろうか。

 

「今までのことを考えると親指姫に罰を与えた方が面白くなりそうですからね~。親指姫のためなら下僕にも奴隷にもなるジャックに罰を与えてもつまらないです~」

「つまらないか面白いかが判断基準なんだね。本当に僕たちへの罰なの……?」

「そんなのやってみないと分かんないじゃない! ほらジャック、私の代わりに罰ゲーム受けなさい! 恋人命令よ!」

「まぁ!? あっさり恋人を身代わりにしましたわ!?」

「ふふっ。辱めに対してはジャックよりも自分の身が優先なのね。他に自分の身を優先する事柄は一体幾つあるのかしら」

 

 背中を押され生贄としてともされるジャックの姿を目にしてシンデレラが目を丸くする。まあさっきまでラブラブな雰囲気を醸し出していたのに突然自分の保身に走れば驚くのも無理は無い。しかも恋人を生贄にするのならなおさらのこと。

 まあグレーテルはさして驚いた様子もなく薄い笑みを浮かべていたのだが。

 

「ええっ……ま、まあ、君のためなら……」

 

 ちょっと納得行かないが親指姫が辱められるなら自分が辱められた方がマシだ。なので一応自分が代わりに受ける気で頷いたものの、アリスが首を横に振ってそれを押し留めてきた。

 

「いいえ、ジャックが罰ゲームを受ける必要は無いわ。受けるべきなのは恋人を身代わりにしようとする捻じ曲がった性根を持つ親指姫の方だもの」

「へー……捻じ曲がったなんて随分なこと言ってくれるじゃない、アリス?」

(やっぱり仲悪いなぁ、何とか仲直りさせてあげられないかな……)

 

 またしても睨みあう二人に自然とそんな想いを抱く。

 原因として考えられるのはやはり目の前でイチャイチャされることくらいか。それが気に障るからだとすればもうちょっと控えれば仲直りしてくれるかもしれない。ということはやはりこの罰ゲームを受けるしかないというわけだ。

 

「まあ今のやり取りで皆も親指に罰ゲームを受けさせるのは賛成だよね。そういうわけだからジャック、あんたにはしばらく席を外してもらうよ」

「えっ、どうして?」

「良いからしばらくどっか行ってな。理由は後で説明してあげるよ」

「う、うん……それじゃあ親指姫、僕ちょっと販売所にでも行ってくるよ」

 

 理由は分からないがジャックがここにいると都合が悪いらしい。親指姫のことが酷く心配なものの、残念ながら逆らって良い立場ではない。なのでジャックは仕方なく席を立った。それと同時、隣の親指姫が恨めしい視線で見上げてくる。

 

「恋人を見捨てていくなんて最低な奴ね。覚えてなさい、ジャック……」

「身代わりにしようとしたあなたが言う台詞ではないわ。恥を知りなさい」

「……えっと、あんまり親指姫に酷いことしないでね?」

「心配いらないよ、ジャック。きっとあんたもお気に召すような罰ゲームになるからさ!」

 

 堪らなく不安で心配だができることは何も無い。無力なジャックは後ろ髪引かれる思いを抱えながら食堂を後にした。

 せめて親指姫が罰ゲームを終えたなら、いっぱい甘えさせて心を癒してあげようと心に決めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じょ……冗談、よね? まさか、本当に私にそんなことさせる気……?」

 

 ジャックが去った後、罰ゲームの内容を聞かされた親指姫は予想を上回る惨さに冷や汗をかいていた。いくら罰ゲームだろうと何だろうとものには限度というものがある。そして内容は明らかにその限度を超えていた。

 

「ジャックに調教されて素直になったあんたを辱めるにはこれくらいはやらないといけないからね。じゃなきゃ罰ゲームになんないよ」

「だから私は調教なんてされてないってのに……って、そんなことはどうでも良いのよ! こんな罰ゲーム絶対やんないわよ!」

「可愛らしくて良いではありませんの。ジャックさんもきっと可愛いと褒めてくれますわよ?」

「…………そ、それでもやんないわよ! だってこんなの馬鹿みたいじゃない! どういうプレイなのよ、これ!?」

 

 ジャックが褒めてくれるというシンデレラの言葉に数秒ほど迷ったものの、やはりできるわけがない。なので親指姫は手渡されたモノを赤ずきんへとつき返した。

 

「まあ、どうしてもできないっていうならそれでも良いよ。その代わり……次から探索に行く時はあんたはお留守番だ」

 

 するとそれを受け取りつつ、そんな意味ありげな言葉をかけてきた。以前までは良く見かけた、さも愉快そうなニヤニヤ笑いで。

 

「はあっ? お、お留守番って……ジャックはどうなんのよ?」

「もちろん私たちと一緒に来てもらうことになるわ。ジャックの力は必要不可欠だもの」

「つまりジャックは恋人を置いて他の女子と旅に出る、ということですね~。もしかすると、親指姫がいないのを良いことにジャックは浮気をするかもしれませんよ~?」

 

 同様にニヤニヤ笑いながら口にするのはかぐや姫。

 きっとジャックが浮気をするかもしれないという不安に狼狽する親指姫の姿が見たくて堪らないのだろう。最近は自分たちが素直にイチャイチャラブラブしているため心底つまらなさそうにしていたのだから。

 しかし残念ながら期待に応えてやることはできなかった。それも当然。不安など感じていないから。

 

「……はん。残念だったわね、グータラ姫? ジャックは私一筋だから他の女に手を出したりはしないのよ。動揺すると思ったなら大間違いだっての」

「そ、そんな……!」

 

 故に親指姫は鼻で笑い飛ばし、逆に動揺するかぐや姫の姿を見下す。

 ジャックがどれだけ親指姫のことを愛しているかは心でも身体でも深く理解している。どれだけ一途なのかは言わずもがなだ。更には手を出しても構わないと伝えたのに裏の裏まで親指姫の気持ちを考え、自分の欲望を抑え込み手を出してこなかった呆れ返るほどの優しさと誠実さ。そんなジャックが親指姫が傷つくと分かっていながら浮気などするだろうか。もちろん答えは否だ。

 

(それにあいつ、やっぱロリコンみたいだし……)

 

 本人は否定していたものの、大人な触れ合いの時のことを考えるとまず間違いない。故に少なくともこの場にジャック好みの女の子はいない。それに親指姫とジャックの関係は極めて良好だし、求めるものは互いに余すことなく捧げ合っている。お互いに毎日幸せいっぱいで充実しているのだから浮気など考えるわけもない。

 

「ふふっ。ジャックさんのこと信頼していますのね? 素敵な関係ですわ……」

「ま、私たちは超ラブラブのカップルだしね。そこらの半端なカップルとは桁が違うわけよ。ねえ、アリス? あいつは周りが見えなくなるくらい私に夢中でしょ?」

「……そうね。確かにジャックはあなたに夢中だわ」

 

 羨望を滲ませた溜息をつくシンデレラの言葉を受け、最近妙にキツイ態度を取るアリス目掛けて容赦なく惚気る。

 そんな態度を取られる理由は何となく分かるのでどうにも恨めしい気持ちを抱けないが、だからといって控える気も遠慮する気も無かった。少なくともアリスに対しては正面から受けてたつのが礼儀というものだろう。なのでいっそ殺意すら感じそうなアリスの視線を堂々と仁王立ちで受けた。

 

「ふぅん、親指姫はジャックが自分以外の異性に手を出すことは無いと考えているのね。だから浮気については何の不安も恐れも無い、ということ。それなら逆の場合はどうなのかしら?」

「……逆?」

 

 そこで不意にグレーテルの指摘が入る。ちょっと意味が分からなかったので首を傾げると、更に補足が入っていく。

 

「ジャックが異性に手を出すのではなく、異性がジャックに手を出す場合。その可能性があるとした場合はどうなのかしら?」

「そ、そんなことあるわけ……あるわけ……」

 

 先ほどと同じく鼻で笑い飛ばそうとするものの、自然と言葉が途切れていく。

 残念ながらジャックに手を出す可能性のある女の子が思い浮かんだからだ。具体的にはすぐ近くにいる黒髪ショートの少女とか。あとは恐らくジャックの好みど真ん中であろう長く綺麗な金髪を持つ幼女とか。

 前者は得体の知れない恐怖があるというか、何をやらかしてもおかしくない気がしてならない。そして後者は無邪気かつ悪気無くジャックへ迫り、好みど真ん中であるが故にさしものジャックでも間違いを起す可能性が無くも無い。

 

「あ、あはははっ! ふ、不安なんてあるわけ、な、ないじゃない! そんなことする奴なんてい、いな、いないわよ!」

「ど、どう見ても動揺していますわね。ジャックさんへの信頼はどこへ行ってしまいましたの……?」

 

 必死に平静を装うもあっさり見破られてしまう。

 誠実で優しいジャックもやはり男でケダモノだと言うことは親指姫が一番良く分かっている。強烈な色仕掛けでもされて無理やり迫られれば本人の意思に関わらず堕ちてしまう可能性はゼロではない。せっかく何の不安も無かったというのに、今この場で不安の種として親指姫の中に根付いてしまった。

 

「それじゃあもう一回聞くよ、親指。ちゃんと罰ゲームを受ける? それとも、ジャックが誰かの毒牙にかけられるかもしれないのに一人でお留守番かな?」

「……何故皆で私を見るのかしら」

「い、いえ、別に……」

 

 皆の視線が自分に集中したせいかアリスが微かな怒りを漂わせる。咄嗟に視線を逸らしたのはシンデレラだけだった。

 親指姫への罰ゲームは発案者である赤ずきんの正気を疑うような内容だ。はっきり言ってこれは罰ではなく面白がってふざけているとしか思えない。だが探索中にイチャイチャしてしまう自分を戒めるにはこれ以上無く効果的なのも事実。痛くも痒くもない罰を受けたって何の意味も無い。

 それに親指姫だってできれば探索中は控えたい。万が一のことが起きて取り返しがつかなくなるのは絶対に嫌だ。ジャックにはこれからも変わらず、一生自分に添い遂げてもらうのだから。

 

「さあ、どうする親指?」

「……上等じゃない! やってやるわよ! 大人の女の覚悟ってもんを見せてやるんだから!」

 

 そしてもちろん他の女には渡さない。例えどんな辱めを受けることになろうとも。

 覚悟を決めた親指姫は再び手渡されたそれを自ら身に着け、自分を奮い立たせる一声を上げた。とても甲高い、まるで鳴き声のような一声を。

 

 

 





 何か妙に仲悪い二人がいますが気にしない方向で。
 果たして親指姫に課せられた罰ゲームとは。とりあえず次回は予想外に長くなったので二分割になりそうです。
 というかやっぱり私の書いたイチャラブ小説の中でも一番イチャついている気がする……気のせいかな……?

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