ジャック×親指姫   作:サイエンティスト

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 ちょっと重めのお話は今回で最後……のはず。理屈と感情のお話。
 ちなみに一章は四話で終わる予定です。二章以降は四話で終わるか微妙なところですが。
 自己犠牲という言葉で、ぼっち飯で有名な俳優がエクソシストとして出てくる映画の最後の方のシーン、地獄の王に中指を立てつつ天国へ旅立とうとするシーンを思い浮かべてしまう私はおかしいんでしょうか……。

 




自己犠牲

 

(ぅ……?)

 

 自らの身体を包みこむ温もりを感じてジャックは目を覚ました。しかし目蓋を開けようとしてもなかなか開けることができない。何故か全身を凄まじい虚脱感に襲われていて、目蓋を開ける力もほとんど無いのだ。

 それでも苦心して何とか目蓋を開けると、最初に目に飛び込んできたのは肌色だった。

 たぶん人の肌なのだろう。とてもきめ細かで抜けるような白い肌色なところを見るに、もしかすると女の子の肌なのかもしれない。何故かそれがジャックの顔を包むように広がっていて、温もりで包み込んでいる。

 

「……あったかい、な……」

 

 思考力もだいぶぼんやりしているため状況が理解できなかったが、自分の冷えた身体を包み込む温もりがとても心地良いものだということだけは理解できた。だからこそ口をついてそんな感想を零したのだ。

 その瞬間――

 

「――ジャック!? 良かった! あんた目が覚めたのね!」

「え……?」

 

 自らを包み込んでいた温もりが遠ざかり、驚くべきものが目に飛び込んできた。

 それは何故かジャックに馬乗りになった親指姫の姿。しかも何があったのか瞳に涙を浮かべながら、ジャックが目を覚ましたことに対して喜びの笑みを浮かべている。親指姫がジャックにまたがりそんな表情を浮かべているということも驚きだが、一番気になるのはその服装だ。

 

「もう二度と目を覚まさないんじゃないかって思ってたのよ? 心配させるんじゃないわよ、全く……」

「え……あ……お、親指、姫……!?」

 

 心底安堵したように一息つく親指姫。

 その服装は衣服どころか下着一枚身に着けておらず、完璧に裸だ。リボンで髪型をツインテールにしているところ以外は、文字通り生まれたままの姿をジャックの瞳に晒していた。白い肌も柔らかそうな部位も、上から下まで全部だ。

 

(ど、どうして裸なのさ、親指姫!?)

「あ、血色もちょっと良くなってきたみたいじゃない。顔が少し、赤く……なって、きて……る……」

 

 表情を見て血色がどうの言っていた親指姫が、唐突に言葉を途切れさせて固まった。そうして状況が理解できないどころか混乱して何が何やら分からないジャックの上で、かなり緩慢な動作で自らの身体を見下ろす。

 当然ながらそこには親指姫自身の身体があるばかりだ。ただし、布きれ一枚身に着けていない生まれたままの姿の。

 

「う……あ……あああああぁぁぁ! みっ、みみみ、見るんじゃないわよ! 今すぐ目を閉じないと目玉抉り出すわよ!?」

 

 次の瞬間、一瞬で顔を真っ赤に染め上げた親指姫が身体の要所を隠しつつ飛び退った。

 

「ご、ごめんっ! 何だか良く分からないけどごめ――っ、う……!」

 

 同様に飛び退って後ろを向き全力で目を閉じようとしたジャックだが、身体を起そうとした瞬間目の前が眩んでしまう。

 

「っ! ああ、もうっ!」

「ちょ、お、親指姫!? 一体何してるの!? ていうか本当にどうして裸なのさ!?」

 

 そんなジャックの様子を目にして一瞬不安気に眉を寄せた親指姫が、またも身体に覆い被さってくる。表情はかなりやけっぱちだったが。

 

「あんたの身体が死体みたいに白いし冷たいから暖めてやってんのよ! 勘違いしないでよね! あんたが死んだら困るから仕方なくやってるだけなんだから!」

(あ……そっか。確か僕は……)

 

 恥と怒りを全面に押し出した親指姫の言葉に、ジャックはやっと気を失う直前の出来事を思い出した。

 メルヒェンから逃れるためにメアリガンの最大量に近い血液を二度も放ち、壊れてしまったメアリガンに代わり親指姫のブラッドスケルター化を解除するために自ら身体を切り裂かれ返り血を浴びせたのだ。

 しかもそれらは全てごくごく短時間の出来事だ。そんなことをすればジャックとは種族が違うくらいに筋肉ムキムキの大男でも間違いなく貧血で倒れる。そこにいくとジャックが死なずに済んだのは親指姫による処置とこの対応によるところが大きいに違いない。

 

「あ、ありがとう……で、でも、僕はもう大丈夫だからそんなことしなくても……!」

「そんな青白い顔して何言ってんのよあんたは! 今にも死にそうな癖して強がってんじゃないわよ!」

「へ、平気だよ! ほら、ちゃんと身体だって動かせ――あっ……」

 

 腕をついて身体を起こそうとするものの、あっというまに力が抜けて途端に崩れ落ちてしまう。これでは強がっていると言われても仕方ない。

 

「良いから大人しく暖まってなさい! でも絶対私の身体見るんじゃないわよ!」

「う、うん……分かった……」

 

 どうせこんな状態では親指姫を押しのけて身体を起こすことなどできるはずもない。

 厳しく命じられたことも相まって、ここは大人しく従うしかなかった。

 

「それで……身体は、どう……?」

「え? あ、うん……その、すごく綺麗だったよ……」

「って私の身体をどう思ったかじゃないわよ! あんたの身体の調子がどうかって聞いてんのよ、この変態!」

「ご、ごめん間違えた! その、体調はあんまり良いとは、言えないかな……あんまり、身体の感覚が無いから……」

 

 酷く失礼な勘違いをした上にセクハラ極まりない答えを返してしまい、慌てて謝罪し嘘偽り無く体調を申告するジャック。とりあえず頭に血が行っていないせいで思考能力に異常をきたしているということにしておいた。

 

(でも、本当に綺麗だったな……)

 

 しかし本当に親指姫の身体を綺麗と思ったのは確かだ。小柄で細めでも部位的に丸みを帯びていたり、くびれがあったりでちゃんと女の子の身体をしていたのだから。たぶん感想をここまで口にしていたら幾ら死に体だろうと一発くらいは殴られたに違いない。

 

「そう……な、なら、私の背中に手を回してもっと暖まりなさい。触るのは背中だけよ!? それ以外触ったらぶっとばすから!」

「う、うん、分かった……」

「ひゃぁ!? つ、冷た……!」

 

 強張っている腕を何とか動かし背中に触れると、身体の上で親指姫が変な声を上げて縮こまる。そんな反応をするとは今のジャックの身体は一体どれほど冷え切っているのか。

 

「ど、どう? 暖かい?」

「う、うん……手足の方もちょっとだけ温もりを感じるし、身体の方は暖かくなってきてるよ……」

「そ、そう……なら、もう少しこのままでいれば大丈夫そうね……」

 

 本当に心の底から心配していたらしい。心底安心したような微笑みを浮かべると、親指姫はジャックの胸に顔を埋めつつ大きく息を吐いていた。

 裸の女の子に抱きつかれて胸に顔を埋められるとは、普段なら心臓が飛び出そうなほどドキドキしたに違いない。まぁ今回は血が足りないせいかそこまでは行かず、血液の循環を程良く高めてくれている程度であった。

 

「……ところで聞いても良いかな、親指姫? 僕の身体を暖める必要があるのは分かるんだけどさ、どうしてこんな方法をとってるの……?」

「ほ、本当は火をおこして暖を取ろうと思ってたんだけど、さすがに私も限界だったから仕方なくこんな方法を取ってんのよ。何か凄く寒い所で暖を取る時は……裸で抱き合って暖めあうのが効果的って、聞いたことがあるし……」

「へぇ、そうなんだ……物知りだね、親指姫」

 

 火も灯せないとはさすがにブラッドスケルター化を経て親指姫も体調が悪いのだろう。こんな暖め方をしているのは他に手段がなかったからに違いない。

 しかしだからといって裸でジャックに抱きつくというのは親指姫にとって相当な勇気のいる行為だった筈だ。

 何せ裸で抱き合うということは親指姫だけではなくジャックも裸――

 

「――って、え!? もしかして僕も裸なの!?」

「……あんた、本当に感覚ないのね。実はもう死んでたりするんじゃない?」

「ま、まだ生きてるよ! って、うわっ、本当だ!」

 

 呆れなのか心配なのか判断のつかない声音で言葉を零す親指姫。その細い指先が自分たちの傍を指していたので視線をやると、何とそこには脱ぎ散らかされた二人分の衣服の山と、そこから零れたと思しき壊れたメアリガンを収めたホルスターが。

 結構細かい所に気がつく親指姫にしては衣服を畳まないどころか一緒くたにしている時点で、本当に一刻も早くジャックの身体を暖めようとしていた事実が窺える。

 しかし少しくらい時間をかけても良いのでできれば山の景観には気を使ってもらいたいところだった。

 

(な、何かあの山、色々変なものが見えるよ……!?)

 

 よりにもよって頂上がジャックのパンツな上に、二合目と五合目あたりからピンク色の謎の布切れがはみ出している。あまり見ているとその詳細を観察してしまいそうなのですぐに視線をそらしたが、やはり気になるのは男の性というものだ。

 

「……ごめん。さっき私、あんたのこと……」

「あ、き、気にしないでよ。さっきのは僕が罵られても仕方ないこと言っちゃったせいだから……」

「そのことじゃないっての、この変態! ていうかもうそれ忘れなさい! 私が言ってんのは、その……あんたに、大怪我させたことよ……」

 

 再び勘違いして蒸し返したためにまたしても罵られるジャック。今度こそ殴られるかと思いきやまたしても拳は飛んでこなかった。

 代わりに親指姫は罪の意識を感じさせる切ない表情を浮かべてうつむいていた。たぶん大怪我させた、というのは返り血を浴びせてブラッドスケルター化を解除するために故意にもらった怪我のことだろう。

 

「親指姫は何も悪くないよ。だって僕は自分から親指姫に攻撃されに行ったんだから」

「はぁっ!? ちょ、あんた何でそんな馬鹿な真似してんのよ!? 死にたいの!?」

「僕だってできれば死にたくはないよ。でもメアリガンが壊れてたから、親指姫をブラッドスケルター化から戻すにはそれしか方法が無かったんだ」

 

 親指姫がジャックの身体を暖める方法がこれしか思いつかなかったように、ジャックもあの方法しか親指姫を救う方法が思いつかなかった。だからこそ迷わず実行したのだ。

 

「だ、だからってそんな……! あれだけ血を使って更にそんなことするなんて……本当に死んでたかもしれないのよ!?」

「僕もさすがに危ないことは分かってたよ。でも親指姫を戻すことが優先で――」

「優先なわけないでしょこの馬鹿! 私が助かってもあんたが死んだら意味ないでしょうが! それとも何よ!? 私が助かればあんた自分は死んでも良いってこと!?」

「っ……」

 

 さっき裸を見てしまった時とも、勘違いから変なことを言ってしまった時とも違う怒り方。

 恥らいなど微塵も無い、純粋な怒りからの本物の叱責。

 それだけで親指姫がどれだけジャックのことを心配し、大切に思ってくれているかは十分に理解できた。

 

「……良い、とは言わないよ。でも、他に救う方法が無くて、僕が死んで親指姫が助かるっていうなら、本望だよ」

 

 しかしだからこそ本音を告げた。といっても、誰だろうと少なからずジャックと同じ思いのはずだ。

 目の前で今まさに人が、それも大切な人が死んでしまいそうなら、間違いなく百人中百人が自分の命を賭けてでも助ける。命を賭けるのではなく自分が死ぬのが条件だったとしても、絶対に半数以上は助けるほうを選ぶ。親指姫だって大切な妹たちを守るためなら間違いなくやるだろう。

 結果的には死ななかったとはいえ実際にやってしまったジャックが全面的に許されるわけではないが、同じように守りたい大切な人たちがいる親指姫なら少しは気持ちを理解してくれるはず。

 そう思っていたのだが――パァン!

 

「っ……親指、姫……?」

 

 裸を見ても失礼な言葉を投げかけても殴らなかった親指姫が、平手で頬を強く打ってきた。恥じらいや照れなどではなく、怒りに顔を真っ赤に染めて。

 

「そんな方法で助かって私が感謝するとでも思ってんの!? 馬鹿も休み休み言いなさいこの馬鹿!」

「ば、馬鹿って……でも、他に方法が無かったらそうするしか……」

「だからそれを馬鹿だって言ってんのよ、この大馬鹿! 私が助かってもあんたが死んだら皆悲しむでしょうが!? アリスも、赤姉も、白雪たちも……そんなことも分からないわけ!?」

「……僕だってそれは分かってるよ。それに死んでしまったら皆が悲しむのは親指姫も一緒だってこともね」

 

 正直自分が間違ったことを言っている自覚はあった。

 親指姫が言う通り、誰かを犠牲に自分の命が助かったとしても喜ぶ人間は少ない。ジャックだって自分を助けるために誰かが犠牲になってしまったら素直に喜ぶことなどできない。

 だがそれは助けられる側の感情。助ける側としては自分の命を捧げることになろうとも、大切な人には生きていて欲しい。だからこそジャックは自分が間違っていると知っていても、命を賭して親指姫を助けることを選んだのだ。

 

「だけど僕は目の前で大切な人が危ない目にあっているのに指を咥えて見てるなんてできないよ。君だってもし白雪姫や眠り姫が危ない目にあっていたら、僕と同じ事をするよね?」

「それは……っ! ええ、そうよ! たぶんやるわよ! けどあんたがやるのは絶対許さない! 私は良いけど、あんたは誰のためでも絶対やっちゃ駄目なのよ!」

「ど、どうして僕だけ駄目なのさ! 君の言い方だと僕が命を賭けて君を助けるのは駄目なのに、その逆は良いみたいに聞こえるよ!?」

 

 あの時自分を見捨てるべきだったとでも言うような発言を無視できず、自然とこちらも語気が荒くなってしまう。

 それに言っていることがあまりにも自分勝手で無茶苦茶だ。百歩譲って親指姫を助けることは駄目だとしても、それで他の誰かを助けることさえ禁止されるいわれはどこにも無い。あるとすれば唯一血式少女たちの穢れを浄化できるジャックの血が問題なのだろう。

 だからジャックはそこを指摘されると思っていた。指摘されれば、それは血に価値があるだけで命の価値に変わりは無いと伝える気だった。

 

「そんなの私があんたに絶対死んで欲しくないからに決まってるでしょうが!」

「え……」

 

 だが返って来たのは予想とは全く異なる、身勝手で自己中心的な答えであった。それでいてジャックと同じであり、大多数の人間にとっても同じ理由。ジャックも親指姫に死んで欲しくないと思っていたから、自分の命を賭けてまで助けたのだから。

 予想外だったのは、親指姫の表情。ジャックを叱責する厳しさが浮かんでいるのは先ほどまでと何ら変わりないが、瞳に大きな変化が起きていた。

 その深い緑の瞳が悲しみに揺れ、涙を溢れさせていた。

 

「親指、姫……?」

「……さっき気付いたけど、あんたメルヒェンに襲われた時メアリガンで何発か撃って抵抗してたのよね。でも私には、あんたが食い殺されたみたいに見えたのよ……メルヒェンに首を、食い千切られて……」

 

 その頬を伝わって流れ落ちていく涙に目を奪われ言葉を失ったジャックは、刺々しさが急速に引いていく親指姫の声にただ耳を傾ける。

 確かにメルヒェンの背中しか見えなかったであろう親指姫には、距離の問題も相まって細かい様子は見えなかっただろう。のしかかっているメルヒェンの口元あたりから突然大量の血飛沫が弾ければ、食い殺されたと考えても仕方ない。

 

「……本当に、怖かったのよ。もう二度とこの馬鹿の声も聞けなくなって、もう二度と馬鹿面の笑顔も見られなくなるんだって……私のせいで、ジャックが死んだんだって……それを考えたらどうしようもなく怖くなって、胸が張り裂けそうなくらい悲しくなって……」

(それで、ブラッドスケルター化したんだ……)

 

 その恐怖と絶望、自責の念が穢れとなり、親指姫はブラッドスケルター化してしまったのだろう。数秒後にジャックがメルヒェンを跳ね除け無事に立ち上がる様を目にする暇も無く。

 その証拠に今涙を流す親指姫の瞳の奥には、浄化したばかりだというのに微かなピンク色の光が灯っていた。

 

「あんたが死んだら、私またそんな思いをしなきゃなんないのよ……? もう嫌よ、あんな思いするのは……あんな苦しみ抱えて生きるのは……もう、あんな怖い思いさせないでよ、ジャック……あんたが死んだら、私……私……!」

 

 涙の雫が親指姫の頬から幾つも零れ落ち、ジャックの頬を濡らしていく。今や先ほどまでの厳しさは見る影もなく、ただ悲しみと恐怖に怯える少女がそこにいた。

 

(あの親指姫がこんなに怖がって、子供みたいに泣くなんて……)

 

 見た目はほとんど子供としか思えないし、どことなく気が強くてそれなりに口が悪い。だがジャックよりよっぽど頼りになるしっかり者で、細かい所にも気配りができる面倒見の良い三姉妹のお姉さん。

 そんな親指姫がジャックの腕の中でこんなにも怯えて震え、今にも子供のように大声で泣き喚いてしまいそうなほどに顔を悲しみに染めている。こんな今にも壊れてしまいそうなほど弱々しく儚い親指姫の姿は見たことがなかった。そして、見ていたくなかった。

 

「泣かないで、親指姫……」

 

 その背中に回していた手を頬へと持って行き涙を拭うも、一向に涙は引きはしない。

 一体どうすれば親指姫を泣き止ませることができるのだろうか。どうしたら泣き止んでくれるのだろうか。

 悩み考えた末に、ジャックは一つの方法に辿りついた。

 親指姫が怯えているのはジャックを失うこと。

 ならばジャックが今ここにいるということを、生きているということを深く伝えてあげよう。

 

「っ――」

 

 そしてジャックは親指姫の頬に手を添えると、静かに唇を重ねた。

 未だ身体が死に体のため唇の感触ははっきりとは分からなかったが、腕の中で親指姫の身体が強張ったことははっきりと感じた。

 

「じゃ、ジャック……?」

 

 ほんの数秒程度の口付けを終え親指姫の瞳を覗きこむと、すでに涙は止まっていた。

 代わりに戸惑いと恥じらいに埋め尽くされていて、つい先ほどまで感じていたであろう恐怖や悲しみは微塵も存在していなかった。

 だがそれはそれとして、これだけはちゃんと伝えておかなければならない。

 

「……ごめんね、親指姫。君がそう思ってくれてるのと同じで、僕も君に死んで欲しくないんだ。だからもしまた今回と同じような状況になったら、やっぱり僕は君を助けるよ。ううん、君だけじゃない。例えそれがアリスや白雪姫たちでも同じだよ。大切な人を救えるのにそれをしないで死なせてしまったら、きっと一生後悔するから……」

 

 大切な人に死んで欲しくないのは皆同じ。

 何を言われようと、また涙を流されようとも、大切な人を守りたいという気持ちは曲げられない。

 だからもう自分の命を賭けないなどという約束だけは、絶対にできない。

 ジャックはそれをできる限り優しく、微笑みを浮かべて口にした。

 

「っ……! このっ……馬鹿……!」

 

 みるみる内に怒りに染まっていく頬と、鋭く細められていく泣きはらした瞳。

 もう一度叩かれることくらいは覚悟していたものの、親指姫はたった一言だけ罵倒を零すともう顔も見たくないとでも言うようにそっぽを向いてしまった。

 それでもジャックの身体を抱いたまま暖めてくれているのは、本当に心の底から死んで欲しくないと思っているからだろう。

 

「……ごめんね、親指姫」

 

 ジャックはもう一度だけ謝罪を口にしたが、そこからはもう親指姫は口を利いてくれなかった。

 

 

 

 





 何やら仲たがいしちゃった感じの二人。エッチなことが始まるとか期待していた心の汚れている人たちはいませんよね? ちなみに最近はR18の話ばかり書いていたせいかどの程度まで書いて良いのか分かりませんでした。まぁもともとそこまで詳しく描写できているわけでもないですし、別に気をつけなくても良かった気がします。
 こんな話を書いておいて何ですが、私がゲームをプレイしている時は先頭メンバーがアリス&赤姉だけの時のジャックは立派な盾でした。雑魚戦での被ダメを一回カットできるのは回復手段やアイテムに乏しい状況ではとてもありがたかったです。もちろん2に集録されているリメイク版でも容赦なく盾にする予定。

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