ジャック×親指姫   作:サイエンティスト

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 後編。たぶん私が書いた中でも一番危ない話だと思われます。これならR18の方がまだ健全かもしれない……。
 ところで自分の身を削って少女たちをサポートしていると聞くとすごく頑張っているように思えるのに、自分の体液を女の子にかけていると聞くとすごく卑猥な感じがしますよね。不思議……。







浄化と魂血(後編)

 

 

 きっとアレは探索時にイチャイチャしたい気持ちを抑えていた反動。だからその分の気持ちも満たしてあげればきっと親指姫はいつも通りに戻るはず。当初ジャックはそんな風に考えていた。

 しかし残念ながらその後も変化は元に戻らなかった。今では二人きりの時に交わすキスの半分以上があの卑猥なものになってしまっている。それというのも親指姫がやたらに求めてきたり無理やりしてきたりするから。一応流されないように心を強く持とうと努力はするが、魅力的な上に愛する少女からの特別深いキスの嵐だ。そしてジャックは年頃の男。結果がどうなど言うまでもない。

 

「兄様、それでお話とは何でしょうか?」

「えっと……やっぱり僕たちだけだとその呼び方なんだね……」

「ん……当然……!」

 

 このままでは色々な意味でマズイと考えたジャックは義妹二人、もとい白雪姫と眠り姫へ相談にきていた。親指姫のことを一番良く知っているのは妹であるこの二人だからだ。二人なら親指姫の行動の理由に心当たりがあるかもしれないし、無くても話をすることで何か糸口が見えてくるかもしれないと考えてのことだ。

 まあこんな回りくどいことをせず直接本人に尋ねた方が早いのだが、それは何度か試みて失敗している。聞き出そうとすると猛烈かつ熱烈なキスで誤魔化されてしまうので、本人にもう一度話をするのはできれば答えを掴んでからにしたい。

 

「実は話っていうのは親指姫のことなんだ。親指姫、最近何だかちょっと様子がおかしくて……」

「様子がおかしい? どんな風にですか?」

「それは……えっと……」

「んー……?」

 

 答えに詰まってしまうジャックを首を傾げて見つめてくる義妹二人。

 当然といえば当然の疑問だ。しかし話す内容はどちらかと言えば性的な話題に片脚を突っ込んでいる上、その対象は他ならぬ二人のお姉さん。相談にきておきながら直前で話すべきか迷ってしまうのも仕方ないことのはず。

 

「その……二人きりだと、何だか凄くキスしたがるんだ。ただのキスじゃなくて、とってもディープなキスを……」

 

 とはいえ話さないと始まらないので、恥ずかしい話題だが結局は諦めて口にした。

 こんな話で二人が親指姫に幻滅したりするわけがないし、何よりディープキスされまくる日々が続くのは正直困る。すでに堪えきれず時間帯も忘れて欲望に身を任せてしまった経験が何度もあるのだ。今の所は平穏無事に済んでいるがこれからも無事とは限らない。なるべく早く問題を解決しなければきっと何か一波乱起きてしまう。

 

「でぃ、ディープなキス……!」

「親指姉様……積極的……!」

 

 姉の行いに対する衝撃に驚きを露にする妹二人。しかし真っ赤な顔の白雪姫はともかく、眠り姫の方は恥じらいよりも感銘や尊敬からくる驚きを見せている。白雪姫に比べればこういった話題は意外と平気な方らしい。

 

「親指姫、最近突然そんな風になっちゃったんだ。理由を聞いても誤魔化されるっていうか、はぐらかされちゃって結局聞けないし……二人は何か知らないかな? 親指姫がこんな風になった理由」

「そ、そうですね……最近というのは具体的にはいつ頃か分かりますか?」

「うん。十日くらい前の探索の後だよ。その前はいつも通りだったから、たぶん探索中に何かあったと思うんだ」

 

 まだちょっと顔が赤いものの、白雪姫はしっかり相談に乗ってくれるようなので迷い無く答える。

 変化が過剰で分かりやすかったので時期はまず間違いない。問題は原因だがそちらは皆目見当がつかなかった。少なくともジャックが思いだせる限りでは何の問題もない探索だったからだ。

 

「イチャイチャするの、我慢してたから……?」

「僕も最初はそう思ったんだけど、もう十日も続いてるからたぶん違うと思う。親指姫、探索の無い日もそんな感じだし……」

 

 喋り方がゆっくりな眠り姫にしては珍しく即答するが、その考えは残念ながら間違いだ。探索の無い日どころか今ではおはようやおやすみのキスという特別なものまで侵食されつつある。

 まあそれが嫌かどうかと聞かれれば嫌ではないのだが、やはり起き抜けに大いに劣情を煽るキスをされるのは非常に困ってしまう。

 

「そ、そうなんですか……うーん、白雪も特に思い当たりません。思いつくのは兄様と姉様がいつものようにイチャイチャしなかったことくらいでしょうか?」

「そっか……眠り姫――ね、ネムは他に何か思い当たることはある?」

 

 先ほどとは異なる答えを期待してもう一度眠り姫に尋ねる。

 わざわざ愛称に言い直したのはそうしないと反応してくれないから。三姉妹とジャックのみの時はしっかり愛称で呼んで妹扱いしないと大いに拗ねてしまうのだ。

 

「んー……そういえば、親指姉様……何だか、辛そうな顔してた……」

「辛そうな、顔……?」

 

 ちょっと説明が足りない答え。

 一瞬何のことか分からなかったジャックだが一つだけ思い当たることがあった。十日前の探索の最中、確かに親指姫はそんな表情をしていたのだ。

 

「ん……ボクのこと、見ながら……」

「えっ、眠り姫を見ながら?」

 

 ただしジャックの思い当たる限りではじゃれあうハーメルンとラプンツェルの姿を見て、だ。少なくともそんな表情で眠り姫を見ていた記憶は見当たらない。

 なので本当かどうか再度聞き返したのだが――

 

「………………」

「……ね、ネムを見ながら?」

「ん……ん……!」

 

 言い直すと嬉しそうに微笑み頷く眠り姫。やはり何が何でも愛称で呼んで欲しいらしい。

 

「あ! そういえば白雪も見ました! 十日前じゃなくてこの前の探索ですけど、ネムちゃんが言うような顔で親指姉様が白雪を見てましたよ!」

「え、白雪ひ――白雪も?」

「はい、間違いありません!」

 

 眠り姫の言葉に自らも思い当たることがあったらしい。白雪姫も確信を持った表情で断言してきた。

 

「僕も見たことあるけどそれってどういう時に見たの? もしかして誰かと仲良く触れ合ってた時?」

「んーん……兄様に血を、浴びせてもらった時……」

「あ! 白雪の時も同じです!」

「僕に血を……そういえば、僕が見た時のも良く考えるとハーメルンに血を浴びせた後だったっけ……」

 

 てっきり仲良くじゃれあうハーメルンとラプンツェルの姿に自分たちを重ねているのではないかと思っていたのだが、白雪姫たちの話を総合するとどうにも違う気がする。親指姫は触れ合いよりもむしろジャックの血を浴びたハーメルンの方を見ていたのではないだろうか。確かにそう考えると白雪姫たちの状況と同じになる。

 

「でもそれでどうして辛そうな顔なんてするんだろう。別に自分も穢れが溜まってるってわけでもなかったはずだし……」

 

 同じにはなるが、分からなくなる。イチャイチャしたいの必死に堪えているから、という理由が無くなると他にはさっぱり思い浮かばなかった。

 自分も穢れが溜まっているから同じく浄化して欲しい。でもジャックに負担をかけたくないから黙っている。そういう線も無くはないがいくら親指姫でもブラッドスケルター化の危険を犯してまで堪えたりはしないはず。何よりよく鈍いとか言われるジャックでも血式少女の穢れの蓄積には敏感なつもりだ。自分の唯一と言って良い、それも自分にしかできないことなのだから手を抜いたりはしていない。

 

「もしかして……ヤキモチ……?」

「ヤキ、モチ?」

「兄様の身体は、姉様のものだから……兄様の血も、本当は姉様のもの……」

「な、なるほど……!」

 

 頭を悩ませているとぽつりと呟いたのは眠り姫。視線を向けると僅かながらその頬は朱色に染まっていた。そして隣の白雪姫は真っ赤に染まっていたものの、至って真剣な表情で頷いていた。

 

「あ、あはは、幾らなんでもそんなわけな――」

 

 だいぶ血生臭いヤキモチに思わず苦笑してしまうが、否定の言葉は唐突に出てこなくなった。何故ならそう考えると色々な辻褄が合い、得心がいくから。親指姫の行動の理由や、その真意まで。

 

(……もしかして、そういうことなのかな?)

 

 辿りついた答えにジャックが抱いたのは複雑な気持ち。嬉しいような申し訳ないような、そして恥ずかしいような。とにかく複雑な気持ちだ。

 確かに親指姫はヤキモチを焼いているのだろうが、恐らくこれを本人から聞き出すことはできなかったに違いない。例え全力の誤魔化しを掻い潜っても内容が内容なので絶対に。何故ならジャックの予想が正しければ自分たちにとってはともかく、一般的に考えれば非常に危ない感じの血みどろの話になるから。

 

「ん……兄様……?」

 

 言葉を切ったまま考え込んでいたせいか、眠り姫がジャックの様子に首を捻る。

 どうやら案外鋭い眠り姫でもジャックのように自然と結論は出てこなかったらしい。まあ二人にはディープなキスとしか伝えていないのでいまいち答えに繋がりにくいのだろう。鍵となるのはキスそのものではなく、二人に話していない唾液を奪う行為である。

 

「あ、何でもないよ。それより二人とも、相談に乗ってくれてありがとう。何となくだけど親指姫の真意は掴めたよ」

「本当ですか? 兄様のお役に立てたなら幸いです!」

 

 お礼を言うと白雪姫は本当に嬉しそうに笑ってくれた。

 その可愛らしい笑顔に癒される反面、思い浮かんだ答えを教えて欲しいと言われたらどうしようかと気が気でなかった。ジャックにとってはそうでもないのだが、一般的に考えると性的な話題よりも話しにくいことだから。

 

「じゃあ……ご褒美……」

「えっ、ご褒美?」

「ん……ん……」

 

 姉と義兄の間の若干性的な話なせいか詮索はされなかったものの、代わりに予想外の即物的なお願いが飛んでくる。

 眠り姫は驚きに目を丸くするジャックのすぐ近くまで歩み寄ってくると、目の前で僅かに身をかがめた。

 

(……っ!)

 

 必然的にその豊かな胸の谷間を上から覗き込む形になって二重の意味でドキリとしてしまう。一つ目はいわずもがな、二つ目は軽い罪悪感から。仮でも義理でも兄と認められた以上、妹に対してその手のことを考えてしまうのはいけないことだ。

 

(……あ、そっか。眠り姫にとって僕はお兄さんなんだ)

 

 そこまで考えて眠り姫が望んでいることがやっと分かった。

 ジャックは兄で眠り姫は妹。そして妹が何かとっても良いことをしたなら兄はご褒美に何をしてあげるべきか。答えはたった一つだ。

 

「……うん。ありがとう、ネム」

「えへへ……どういたしまして……」

 

 望みどおり、ご褒美に頭を撫でてあげた。よく親指姫にするのと同じくらい優しく、愛情を込めて。

 ただ単に頭を撫でられることが嬉しいのか、それとも兄に初めて撫でてもらったのが嬉しいのか、眠り姫は幸せそうに笑いながら手の平に頭を擦り付けてくる。さしずめもっと撫でてとねだるように。

 身体的というか部位的というかの話で親指姫には似ていない眠り姫も、この辺りの反応は実にそっくりだ。そしてそっくりと言えばもう一人――

 

「うぅ……」

 

 立ち尽くしてこちらを見つめるもう一人の妹。その表情はちょうどついさっきまで話題にしていたのと全く同じ。

 さすがに今回は状況があまりにも分かりやすく、この時ばかりはジャックにも胸の内が容易に想像がついた。

 

「……白雪もおいで?」

「あっ、は、はい!」

 

 なので苦笑しつつ白雪姫を手招きする。

 理由は簡単。白雪姫は眠り姫だけ頭を撫でられていることにヤキモチを焼いて、自分にもして欲しいと思っているはずだから。しかしそれを自分で言い出せなかったであろうから。

 

「ふふっ、何だかとっても気持ち良いです……」

 

 そしてその予想は間違いではなかった。自ら帽子を取る白雪姫の頭を優しく撫でてあげると、やはり眠り姫に負けないほど幸せそうな笑顔が広がっていく。

 

(うーん、結局どうすれば良いんだろ……)

 

 白雪姫の場合は同じく頭を撫でてあげることで問題は解決したが、さすがに親指姫の場合はそう簡単にはいかない。何せ問題になっているのは親指姫以外の子にまでジャックが血を浴びせていることだ。おまけにそれは必要だからやっていることであり、なおかつジャックにしかできないこと。なので他の子にはもう血を浴びせない、などという選択肢はそもそも存在しない。

 

(となると、やっぱりそれしかないか……)

 

 まあ解決方法、というか妥協案は一応浮かんでいた。とはいえそれを親指姫が受け入れてくれるかどうかが未知数なのと、話が信じられないくらい血生臭くなることが果てしなく不安だった。

 しかし話さなければ解決はしないし、何より日に何度も理性が危うくなる日々が続くだけだ。日々の平穏のためにも、そして胸の内でやり場の無い苦しみを抱えている親指姫のためにも、ここは臆さず攻めなければ。

 義妹二人の笑顔から勇気を貰いつつ、ジャックはついに覚悟を決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、じゃ、ジャック! 見ないと思ったら今までどこ行ってたのよ、あんた?」

 

 義妹二人への相談を終え自室へに戻ると、そこでは親指姫がベッドに座って真っ赤な顔をしていた。

 ただしそれは部屋に入って数瞬の後に見えた光景。実際に一番最初に見えたのはベッドの上でジャックの枕を抱きしめて顔を埋めつつゴロゴロしていた姿である。どうやら一人きりなのを良いことにちょっと弾けていたらしい。あるいはその行動も最近の変化に起因するものなのかもしれない。

 

「ごめん、ちょっと用事があって外に出てたんだ。もしかして寂しい思いをさせちゃったかな?」

「ふ、ふん。別に寂しくなんてなかったわよ? ま、まあ、早く戻ってこないかなってくらいは思ってたけど……」

 

 先ほどの光景に微笑みを抱いたまま尋ねると、親指姫は視線を彷徨わせつつ答える。その頬が朱色に染まっている様子と、先ほどの光景から考えれば寂しがっていたのはまず間違いない。

 そもそも最近ジャックはディープなキスに始まり最後まで流されてしまわないように、極力部屋の中で二人きりになることを避けている。無論不自然に避けていると思われない程度だが、やはり部屋で二人きりで過ごす時間が減ったのは確か。寂しさを感じるのは当然だし、ジャックだってちょっと寂しい。

 

「そっか。今日はもうずっと一緒にいられるから大丈夫だよ、親指姫?」

 

 しかしそんな寂しい日々と理性が危ない日々は今日でおしまいだ。

 まあジャックの考えが間違っていたらまだまだ続くのだろうが、もうその時はその時である。あくまでも凄く困るだけで別に嫌ではないのだから。

 

「だったら馬鹿みたいにそんなとこ突っ立ってんじゃないわよ。ほら、早くこっちきなさい」

「うん。それじゃあ――」

 

 自らの隣へとジャックを招く親指姫。

 ここ十日間の出来事、そして今のどこかそわそわした様子。促されるまま座れば何が起こるかはそこから容易に察しがつくものの、ジャックはあえて素直に腰を下ろした。

 

「っ……ん……ふ……ぁ……」

 

 途端に予想通り膝の上へと身を乗り出し、情熱的に口付けてくる。

 その口付けはやはりとことんディープ。しかしお互いに舌を交えるのではなく、向こうが一方的にそれをしている。おまけにどちらかと言えば唇や舌よりも唾液を奪われている感覚だ。どれだけしても満たされないかのごとく、貪り喰らうように。

 

(……やっぱり、そういうことなんだ)

「……っ、ジャック?」

 

 改めてこの口付けを体験して確信を得たジャックは、両手で親指姫の肩を押して少々強引に距離を空けた。

 拒絶と取られたのか眼前の深緑の瞳が不安気に揺れ、胸が罪悪感にずきりと痛む。しかしこうでもしなければ無理やりキスされ誤魔化されてしまうのだから仕方ない。

 

「……親指姫、君がしたがってるのは本当にキスなの?」

「あ、当たり前じゃない。他に何があるってのよ?」

 

 罪悪感による胸の痛みを堪えつつ、鼻先が触れ合うほどの距離で見つめあいながら言葉を紡ぐ。必死に隠そうとしているが距離のおかげで動揺しているのは手に取るように分かる。故にジャックは決定的な言葉を投げかけた。

 

「そうだね、例えば僕の……唾液が、欲しいんじゃないかな? 僕の、血の代わりに……」

「――っ!!」

 

 言葉はなかったが反応はこれ以上ないほど分かりやすかった。

 激しい口付けで若干上気していた頬が瞬時に真っ赤に染まり、丸い瞳は大きく見開かれる。そして反射的に否定することができていないどころか、真実を突かれた衝撃からか絶句して言葉が出ないらしい。たぶん自分を取り戻したら否定にかかるだろうがもう手遅れである。

 

「やっぱりそうだったんだ。最近君の様子がおかしいから何かあるんじゃないかって思ってたよ」

「そ、そそそ、そんなわけないでしょ! 血が欲しいとか吸血鬼かっての! いくら私が血式少女でも人の生き血を啜る趣味なんてあるわけないじゃない!」

 

 予想通り必死に否定する親指姫。取り繕う笑顔はとても可愛いのだが顔は真っ赤なまま。誰がどう見ても嘘なのは明らかだ。

 

「変なこと言ってないでキスするわよ、キス! あ、せっかくだから猫耳と首輪つけてやろうじゃない! あんたもその方が嬉しいでしょ!?」

「間違ってたらごめんね。君はもしかして……ヤキモチ焼いてたんじゃないかな? 僕が君以外の女の子に自分の血を浴びせるから……」

「なっ……!」

 

 未だ誤魔化そうと健気に頑張っているので、申し訳ないものの追撃を浴びせていく。

 ジャックの予想が間違っていれば親指姫ならきっと怒り出すところだ。しかし反応はまたしても絶句。つまり間違っていないということ。故にジャックは最後まで続けた。

 

「でもそれは必要なことだって君も理解してるから止めさせることは出来ない。だからせめて誰よりも僕の血を浴びたり舐めたりしたいけど、そんなことをさせたら僕の体調が心配になるからキスで……唾液で我慢してる、ってことじゃないのかな?」

 

 これがジャックの頭の中に浮かんだだいぶ血みどろな答え。

 大体は眠り姫が言っていた通り。ジャックの身体は親指姫のものだから、ジャックの血も本来は親指姫のもの。なのにジャックはそれを他の女の子にまで浴びせているからヤキモチを焼かれてしまったのだ。

 とはいえ血式少女にとって穢れを浄化するジャックの血液は必要不可欠。親指姫もそれは分かっているから止めさせるなどという選択肢はなかったはずだ。そのため止めさせるのではなく、自分には他の子よりいっぱい血を使ってもらえば良いと考えたに違いない。

 ただそれはそれでジャックの身体が心配になるため、代わりのもので我慢してくれていたというわけである。要するに血液ではなく、唾液で。

 

「えっと……間違ってる?」

 

 だいぶ危ない方向に突き抜けた予想なので間違っていれば平手の一発くらいは飛んできてもおかしくない。

 しかし幸運なことに何も飛んでこなかった。代わりに親指姫は一つ深い溜息を零し、膝の上から身を引いて隣に座り直した。

 

「……あんた、何でこんな変なことばっかり無駄に鋭いわけ?」

「ご、ごめん……」

 

 そして何故か呆れを孕んだ瞳で睨まれ怒られたので謝っておく。隠していた心情を暴かれたせいかちょっとご機嫌斜めなようだ。

 

「あー、そうよ! 全部あんたの言ってた通り! 私はヤキモチ焼いてたし、あんたの血を欲しがってたわ! 穢れとかは全然関係なくね!」

「やっぱりそうだったんだ。でもどうして黙ってたの? 変に誤魔化さないで言ってくれれば良かったのに……」

「い、言えるわけないでしょうが! あんな血生臭いヤキモチ焼く女だなんてあんたに知られたら死にたくなるわよ!」

「ああ、心配してたのはそっちなんだ」

 

 知られたせいで自棄になったのか素直に本音を暴露していく親指姫。

 どうやらジャックの身体が心配だからというより、血みどろなヤキモチを焼いていることをジャックに知られて幻滅されたくなかったらしい。別にジャックは幻滅なんてしていないし、不謹慎だがヤキモチを焼いてくれたことはむしろ嬉しいと思っている。

 

「心配しなくて良いよ、親指姫。僕は幻滅なんてしてないし、君が結構ヤキモチ焼きなのは最初から知ってるからね」

「嘘ぉっ!? マジで!?」

 

 安心させるためににっこり笑いかけたものの、返ってきたのは酷い衝撃を受けた顔。先ほど心情を暴かれた時よりも衝撃は大きそうだ。まさかヤキモチ焼きなのを隠せているとでも思っていたのだろうか。

 

「本当だよ。でもどうして君が突然そこにヤキモチを焼いたのかは分からないんだ。今まではそんな様子全然なかったのに」

「それは……」

 

 ただ一つどうしても分からない疑問を投げかけると、言い淀んで視線を逸らす親指姫。

 しかし色々な事実を知られたせいでもう完璧に自棄になったに違いない。再びこちらに向けられた視線は睨むように鋭く、面差しは恥じらいと怒りに揺れていた。

 

「全部あんたが悪いのよ! あんたが物陰でこそこそラプンツェルに直接血をあげてたせい! 隠れて思わせぶりなこと言ったりしてたから私……う、浮気か何かと勘違いしちゃったのよ! そのせいでラプンツェルに血をあげてるとこ見てたら何かおかしな気分になって、いつまで経ってもそれが晴れなくて……おまけにあんたが他の子に血を浴びせてるとこまで……!」

(あ……ああ、アレのせいだったんだ……)

 

 ついに答えを得たジャックは心の中で強く頷き、そして自らの過ちを悔いた。

 親指姫がまくし立てているのは恐らく十日前の出来事。あの日ジャックはラプンツェルに穢れが溜まっているのに気付き、血をあげた。メアリガンはちょうどメンテナンスで手元に無かったので、やむなく手の平に傷をつけて直に。

 眠り姫が言っていた通り、ジャックの身体は親指姫のもの。それなのに他の女の子がジャックの肌をペロペロ舐めていたら良い気はしないはずだ。たとえそれが必要に迫られたことでも、浮気やその他の不埒な意思がどちらにも無くとも。むしろそのせいで抱いた気持ちのやり場が無く、結果として親指姫はあのような行為に走るしかなかったに違いない。全ての発端のヤキモチはそれだったのだ。

 仕方ないとはいえ自傷は怒られそうなので隠れてやったのだが、どうやらそれも裏目に出てしまったらしい。恐らく親指姫はジャックが何も知らないラプンツェルに物陰で不埒な行為を強要しているように思えたのだろう。

 

(冷静に考えてみると、確かに凄く思わせぶりなこと言ってた気がするなぁ、僕……)

 

 信用されていないような気がして複雑だが、怪しく物陰でこそこそしていたのだから勘違いされても文句は言えない。下手に隠れてこそこそしたからこんな血みどろなヤキモチを焼かせる結果になってしまったのだ。今回のことは完全にこちらの落ち度である。

 

「……ごめん、親指姫。僕のせいで……」

「ふ、ふん! 悪いと思ってるならもう紛らわしいことすんじゃないわよ! 分かった!?」

「うん、肝に銘じておくよ。それと……君を苦しませた責任も取らないとね」

 

 謝罪だけでは足りないし、何より原因を暴いただけで問題の解決はしていない。そもそも他の血式少女に血を使うのを止めることができない以上解決はしない問題だ。だからこれは妥協案。

 その案を行動に移すため、ジャックは立ち上がると部屋の机へと歩み寄った。そしてカッターナイフを手に取り、ベッドに腰を降ろしたままの親指姫の前へ戻ると――

 

「ジャック? ちょっと、あんた何するつもり――っ!?」

 

 ――刃で自ら手の平を裂いた。

 よりにもよって目の前での突然の自傷行為。これにはついさっきまで真っ赤だった親指姫も顔を青くして一瞬言葉を失っていた。

 

「い、いたた……ちょっと切りすぎたかな?」

「ちょっ、な、何やってんのよあんたは!? 気でも狂ったわけ!?」

「僕は正気だよ、だってこうしないとできないことだからね。ほら、親指姫」

 

 うろたえる親指姫を優しく笑いかけて宥め、ジャックは赤い血がじわじわと溢れてくる手を差し出した。ちょうどラプンツェルに血をあげていた時と同じように。

 

「僕の血、好きなだけ舐めて良いよ?」

「……は?」

 

 そう伝えるものの、意図を理解していないのか呆けた顔をされてしまう。

 確かにだいぶ猟奇的なことを言っているがこれこそがジャックの考えた責任の取り方であり、妥協案だ。

 

「確かに僕の血は皆に必要だから、例え君に止めろって言われたって使うのは止めないよ。でもこの血も含めて僕は君のものなのも事実だ。だから……これからは君の好きな時に、好きなだけ僕の血をあげるよ。それで君が僕にとって特別な存在だってこと、分かってもらえないかな……?」

「ジャック……」

 

 しっかり理解してくれたらしく頬を染めていく親指姫。

 先ほど本人の口から聞かせてもらった通り、血みどろなヤキモチである事実への恥じらいと、それを話してジャックに幻滅されるという不安から言い出せなかっただけで、本当は誰よりもジャックの血を舐めたり浴びたりしたいと思っていたのだ。それならジャックとしては血を捧げることに異存はなかった。むしろ遠慮せずに早く言って欲しかったと思うほどだ。

 

「あ、あんた、もの凄くヤバイこと言ってるって自覚ある……?」

「そういう君もだいぶ危ない方向のヤキモチ焼いてるじゃないか。というかメルヒェンの血を浴びると性格変わるような子にだけは言われたくないよ……」

「わ、悪かったわね! どうせ私は血生臭いヤキモチ焼く血式少女よ!」

 

 反論できなかったのか赤い顔で開き直られる。

 血が欲しいのだ血をあげるだの、一般的に考えれば確かに正気を疑う内容のやり取り。しかし血式少女と血式少年のカップルならこんなコミュニケーションもありだろう。それに形はどうあれ求められるのは嬉しいし、ヤキモチを焼かれるのもまた嬉しいのだから。

 

「ジャック……迷惑、してない? 私、あんたにこんなことさせる面倒な女だし……」

「迷惑なんてしてないよ。立場が逆なら僕だって同じ気持ちを感じただろうし、それに……感じたことが無いわけでもないしね。同じ女の子同士でも、君が他の子を舐めたり舐められたりしてるところを見てると、僕もちょっと……」

「あ……」

 

 ずっと秘めていた気持ちを口にすると、不安げだった親指姫の頬にまたも恥じらいが射していく。

 今は努めて気にしないようにしているものの、肌についたメルヒェンの血を血式少女たちが舐め合う姿を見て何も感じないわけではない。もちろん親指姫が舐めたり舐められたりする姿を見て嫉妬に似た感情を抱いたこともある。ただ皆女の子同士なのでジャックも何とか折り合いをつけられただけだ。

 これがもし異性が混じっていたならジャックだって親指姫と同等かそれ以上のヤキモチを抱いたに違いない。自分と愛し合っている少女が別の男に肌を舐められれば平気でいられる方がどうかしている。

 

「だから迷惑とか気にしなくて良いんだよ。それに、君が面倒なのは今に始まったことじゃないしね?」

 

 迷惑などとありえないし、親指姫は最初から面倒な子だった。そしてジャックはそんな面倒な子が愛しくて堪らないのだから、別にこの程度のことは何とも思わない。むしろ血を捧げることで親指姫の心を満たしてあげられるなら願ったり叶ったりだ。

 

「わ、悪かったわね! 素直じゃなくて!」

 

 素直でなかったことを遠回しに指摘されたと分かったらしく、今度は恥じらいではなく怒りに顔が真っ赤に染まっていく。

 やはり親指姫はこんな風に顔を赤くして照れ隠しに怒ったりする方が似合っている。感情を全て胸の中に溜め込んで辛そうな顔をされるより、こっちの方がよっぽど親指姫らしい。

 

「そこまで言うなら遠慮なんてしないわよ! あんたの血を一滴残らず飲み干してやるんだから!」

「さ、さすがにそれはちょっと困るなぁ。お手柔らかにね、親指姫?」

「ふん! 知ったこっちゃないわよ、そんなの!」

 

 機嫌悪そうに言い放ち、ベッドに腰かけたまま血が流れるジャックの手を取る親指姫。しかしその頬は唾液で我慢する必要が無くなったからか若干緩んでいた。

 ジャックとしても理性が弾けることがなくなるので嬉しい限りだが、もうあんな風に大胆で積極的にキスをしてくることはないと考えるとほんの少しだけ寂しい気持ちもあった。基本的に親指姫は甘えたりイチャイチャするだけで、自分から性的な行為はほとんどしないのだから。

 

「……ずっとヤキモチ焼かせててごめんね。大好きだよ、親指姫」

「私の方こそ、こんなことさせてごめん。大好きよ、ジャック……」

 

 謝罪と共に想いを伝えると、親指姫も同じように返してくれた。まだ血は舐めていないというのに満たされたような幸福に緩んだ表情で。

 そして緩んだ口元はジャックの指へと近づき、流れる赤い血を小さな舌で少しずつ舐め取っていった。その血が尊いものであるかの如く、ゆっくりと時間をかけて丹念に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック、あんたそんなにメアリガン使って大丈夫なの?」

 

 後日のダンジョン探索中。

 血を使いすぎではないかと心配になった親指姫はジャックへ歩み寄り声をかけた。今回ジャックはもう五回もメアリガンを用いて自らの血を消費している。いくらケダモノなところがあるとはいえ、どちらかといえば線が細い方だしそろそろ貧血を疑いたくなってしまう。

 

「うん、まだ大丈夫だよ。そういう君こそ……大丈夫?」

「わ、私は別に平気よ! ただ、その……帰ったら……」

 

 至って平気な笑顔で返すとむしろ逆にこちらを気遣ってくるジャック。穢れのことを言っているのではないのは微妙に朱色に染まった頬で何となく分かったので、内容を濁しつつ答えておいた。探索を終えて帰ったらメアリガンを使わず直接血を舐めさせて欲しい、と。普通に考えるとだいぶ頭がおかしいお願いだ。

 

「……うん、良いよ。僕は親指姫のものだからね」

 

 にも関わらず、ジャックはにっこり笑って頷いてくれた。

 ジャックが献身的に血を捧げてくれるおかげで、親指姫も血生臭い嫉妬には何とか折り合いが付けられるようになっていた。少なくともメアリガンを用いて他の血式少女に血を浴びせること程度なら問題なく許容できる。

 ただ浴びせられたジャックの血を舐めたりする奴がたまにいるので、その様子を目にしてしまうとさすがに心中穏やかにはなれなかった。それを頻繁に行う奴が自分に良く似た体型、もとい外見をしているので余計に。

 

「ありがと、ジャック……でも、無理すんじゃないわよ? 体調悪くなりそうなら止めときなさい」

「そうだね。さすがに探索終わってすぐはキツイかもしれないし、君が我慢できるならもう少し後にして欲しいんだけど……良いかな?」

「仕方ないわね。だったらまずは休んで私のために体力戻しときなさい」

 

 控えめに尋ねてくるジャックへとあえて仕方無さそうに頷く。

 親指姫は吸血鬼ではないので意識を失うくらい大量の血を求めたりはしないが、探索で予め血を消費した後なら起こりえないことではない。何よりジャックはその手のことに関してはギリギリまでやせ我慢する傾向にあるため、親指姫としてもしっかり休んだ後の方が安心して血を舐めさせてもらうことができる。

 

「うん、そうするよ。僕が気にしないで良いって言ったからだけど親指姫は本当に遠慮ないからね。一回なんかちょっと意識が危なくなったくらいだよ」

「あんたそれ失神しかけてるじゃない! そういうことは早く言いなさいよ!」

「あはは。ごめん、君がとっても幸せそうにしてたから言い出せなくて……」

 

 そして予想通りやせ我慢していた事実が明らかとなり、その原因も明らかとなる。

 親指姫に限らず、血式少女にとってジャックの血液は穢れを浄化してくれるもの。分かりやすい例えならストレスを消し去ってくれるものだ。なのでそれを舐めさせてもらっていると憑き物が落ちたように気持ちがすっきりする。

 更にはジャックが親指姫のために血を捧げてくれている事実も相まり、ちょっとした夢心地になってしまうのだ。夢中になって至福の表情で血を舐めている親指姫の邪魔をしたくないから貧血気味になっても黙っていたのだろう。

 

(こ、今後はもうちょっと自重した方が良さそうね……)

 

 多少の戦慄を覚えながら親指姫はそれを決心した。万一血を舐めさせて貰っている時にジャックが倒れたら救護室に運ばねばならないのだ。倒れた理由の説明など誰が相手でもごめん被る。一般的に考えれば良くも悪くも普通でない触れ合いなのだから。

 

「倒れそうになるまで私が幸せそうにしてるの見てるとか、あんた私のことどんだけ好きなのよ、全く……」

「そうだね。少なくとも君が僕を想う気持ちよりは上だよ」

「あっ、また言ったわねこいつ! ジャックの癖に生意気よ!」

「いたっ! あははっ、止めてよ親指姫!」

 

 またしても自分の愛のほうが大きいという生意気なことをぬかすので、腰の辺りを拳で軽く何度もどつく。止めてと言いながらもジャックは明らかに楽しそうに笑っていた。

 

「――あっ」

「ん? いきなりどうしたのよ、ジャック?」

 

 しかし唐突にその笑顔が消え、僅かに頬が染まっていく。さしずめ何か失敗を犯してしまい、ばつの悪さに耐えられなくなったかのように。

 

(……あ)

 

 その表情を目にして親指姫も気がついた。ジャックは本当に失敗を犯したから罰が悪そうにしているのだ。その失敗とは――

 

「いつものジャックさんと親指姉様が戻ってきました! やっぱり二人はとっても仲良しです!」

「……ん……ラブラブ……!」

「あははは! らぶらぶー!」

 

 今は探索中だということを、この場に皆がいるということを、そしてこの状況でイチャイチャしたら罰ゲームが待ち受けているのを忘れたこと。

 ダンジョンの探索は少し前までは胸に抱えたヤキモチを刺激する場でしかなかった。そのおかげかそこではジャックとの会話は微妙にぎこちなくなりセーフの範囲に留まっていたが、今は胸の中に渦巻いていたやり場の無い気持ちはほとんど無いに等しい。そのせいでいつも通りのラブラブ加減を発揮してしまったというわけだ。

 何たる不覚。何故か嬉しそうにはしゃぐ妹二人とラプンツェルの姿を一睨みし、親指姫は微かな希望を胸に抱いて判定者に目を向けた。

 

「赤姉、今のセーフよね!」

「残念、アウトだよ! というわけであんた達には後で罰ゲームだ!」

「ふふっ、あれ一度きりで終わってしまったのでとても残念でしたよ~? 今度こそわらわ達を楽しませてくれることを願っています~」

「別にあんたたちを楽しませるのが目的じゃないっつーの、グータラ姫!」

 

 だが微かな希望は速攻で打ち砕かれた上、絶望として新たに襲い来る。

 というか赤ずきんもかぐや姫も妙に活き活きとした笑顔を浮かべていた。再び罰ゲームで自分たちが楽しめるからなのは考えるまでも無いことだが、同時に今まで不足していた刺激をやっと得られたからに違いない。ここ最近の探索では胸の内に渦巻く感情のせいでジャックとイチャイチャできなかったため、中毒気味の二人は刺激に飢えていたのだろう。

 

「ふむ、それにしてもさっきの意味深な会話は何だったのだ? 体力が必要だと言っていたにゃ……な!」

「そ、それは、お二人は深く愛し合う恋人同士ですし……えーと、その……ふ、二人での運動ではありませんこと?」

「二人で運動……ああ、もしかして隠語の一種かしら。なるほど確かに運動ね。主に用いるのは腰――」

「ストップ、グレーテル! 違うけどそれ以上言わないで!」

 

 頭を悩ませるハーメルンに対し、濁して答えたシンデレラの言葉をわざわざ補足するグレーテル。そしてそれを頑張って寸での所で止めるジャック。間違っているとはいえ今この場で言わせて良いことでもないのでその判断は正しい。

 

「あら、違うの? じゃああなた達は一体何の話をしていたのかしら」

「え、っと……それは……」

「ち、違わないわよ! あんたの考えてる通りの話よ!」

「ちょっ!? 親指姫ぇ!?」

 

 しかし血生臭い真実を話すことに比べればそちらに思わせておいた方がマシだった。元々親指姫とジャックがそういうことをしているのは周知の事実だ。故に今更口にしたところで痛くも痒くもない。とはいえ顔はちょっと熱かったし、驚愕しているジャックの顔も真っ赤だったが。

 

「……赤ずきんさん、今回の親指姫への罰ゲーム、私にも考えさせてもらえないかしら」

「おっ、やる気だねアリス。良いよ、あんたなら楽しめること考えてくれそうだ」

「うげっ……!」

 

 ただしこの誤魔化しはとんでもない悪手になった。何故なら親指姫の宣言を聞いたアリスが妙に冷たい声でそんな提案をしていたから。

 どうやら今度の罰ゲームは前ほど甘く幸せなものにはならないらしい。

 せっかくヤキモチが拭い去られて晴れやかだった胸の中は、代わりにもの凄い不安で満たされていくのだった。その不安の源が別の女のヤキモチだという事実は、正に皮肉としかし言いようがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 血、血、血、血が欲しい。
 ヤキモチ焼きの渇きを癒すために。
 ヤキモチ焼きに注ごう飲み物を。
 欲しいのは血、血、血、血が欲しい。

 右腕にギロチンを形成したくなる血生臭いパロディはともかく、後編終了。何だってこんなに血みどろの話になってしまったのか。でも自分の男が他の女に体液(血液)ぶっかけていれば何も思わない方がむしろおかしい。
 次はR18の話になる予定です。内容はエロイ人なら察せるはず……。
 



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