星王が異世界から来るそうですよ?【修正中】 作:きのこの山親衛隊
キリトの口調をどうするかがとても悩みました。とりあえず、彼の精神性はFateの英雄王のそれを想像しながら書いています。
キリトのキャラが少し違和感を感じるかもしれませんが、もうちょっとこれでお付き合いください。
光による一瞬の視界喪失。次にキリトが感じたのは、地面が存在しないことによる浮遊感。そして、全身を殴りつけるかのように吹き荒れる激しい風。
彼が出現したのは上空四千メートル。
遠くを見ると目に入るのは巨大な天蓋に覆われている大都市。
世界の果てを思い出させる断崖絶壁から流れ出す大滝。
彼方へと続いて行く広大な陸地。
澄み渡るような蒼い空。
生い茂る緑色の森。
それらは彼が知るどこの場所にも当てはまらない。まごうことなき異世界であった。
「ヤハハハハハハハハハハハハハッ!!」
「なっ、何よこれ!?」
「────ッ!」
隣を見ると耳にヘッドフォンをつけ、学ランを着た少年が人生で最高の瞬間と言わんばかりに大笑いしている。
他にも、育ちの良さを感じさせるお嬢様。大人しそうな印象を与える腕に三毛猫を抱いた少女が落下していた。
彼女らには驚愕の表情を浮かべており、この状況では少年だけが一人楽しんでいた。
地に足がついていない以上、当然のごとく重力に足が引っ張られ落下する。だんだんと加速するその勢いにキリトは露骨にため息をつき、現状を確かめようと空中で体勢を整えた。
息を飲む。現実だろうとうかがわせる
あまりの驚愕に対応が少し遅れてしまう。ひとまず冷静になろうと思考を加速させる。
────ひとまず、今すべきことは
彼らを助けることだろう。
そう決めた瞬間、キリトの身体は動き始めていた。空中でどこからともなく青色の剣を取り出すと、右肩に添えて矢のように引き絞る。
その刹那、銀色の剣が、瑠璃色の閃光を迸らせた。それは深く、冷たい、氷の蒼。
「ヤハハハッ!なんかすげーっ!」
「えっ、なによそれ!」
「わぁ、…………ッ!」
剣の輝きはますます増して行く。剣から永久氷の記憶が呼び覚まされて行く。キンッ、キンッと硬質な音が辺りに響き渡る。
知る人が見れば、それは《ヴォーパール・ストライク》の構えに見えるだろう。だが、異なる点はその光が瑠璃色の輝きを放っていることだ。
ぐんぐんと目の前に水面が近づいて来る。
もしかしたら助かるかもしれないが、そんな可能性に命を任せるわけにはいかない。
ここを打破する方法はただ一つ。この剣の記憶を呼び覚ますこと。呼び寄せるは永久氷の記憶。すべきことは物体の運動の減速。
「永遠の君に願う。この無上の幸福を味わい尽くそう」
キリトから放たれる瑠璃色の輝きが最高潮へと達する。
『
剣から放たれた記憶の断片が目の前の空間の組成を変えて行く。
それは、減速空間とでも言えるような空間。
四人と一匹はその空間に包まれ、そのまま水中へと飛び込んだ────。
◆
落ちた湖の水深は幸いそれほど深くはなく、また落ちて来るまでの幾重にも張り巡らされた水の膜や、キリトの展開した減速空間によって4人は溺れることはなかった。
キリトはずぶ濡れになった髪を掻いて水を振り払う。幸い水に濡れても大丈夫なのばかり持っていたので特に障害はないみたいだ。
立ち上がって、湖から出て来るついでに視界の端で溺れていた三毛猫を救出する。
「あっ、三毛猫っ!」
慌ててこちらに駆け寄ってきたスリーブレスのジャケットにショートパンツを着た女の子に三毛猫を渡した。
「ありがと」
「ああ、気にするな」
女の子からのお礼に涼風のような軽快な口調でそう返す。
「信じられないわ! 問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
少し離れた場所で、ブラウスを握って水を絞っているお嬢様風の少女がそう悪態をつく。
キリトは少し離れた場所にある岩の上に腰を下ろして、その光景を見守ることにする。
「右に同じだ、クソッタレ。場合によっちゃその場ですぐゲームオーバーだぜ。石の中にでも呼び出された方がまだマシだ」
そう応じるのは学ランを着てヘッドフォンを頭につけた金髪の少年。
「えっ……、石の中でも十分に危ないでしょう?」
「俺は問題ない」
「…………あらそうなの、身勝手ね」
二人はそう言って互いにフンッと鼻を鳴らした。
「ここ…………どこだろう?」
同じく岩に腰を下ろすことに成功した猫を抱えた女の子が呟く。
「さあな。どこかの大亀の背中じゃねえか?」
冗談交じりの口調で少年がそう返す。どうやら彼もこの世界のことは知らないらしい。
「……で、誰だお前ら?」
「それはこっちのセリフよ、目つきの悪い学生くん」
そう言って少し喧嘩腰にそうお嬢様風の少女が返事をする。
そのプライドの高さがうかがわれるその言葉に少年は肩をすくめる仕草をする。
「一応確認しておくが、お前らにも変な手紙が?」
「そうだけど、まずその“お前”って呼び方を訂正して。………私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?」
そう言って違う岩に腰掛けていた女の子の方を向いてそう尋ねる。
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。それで、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
ケラケラと笑いながらそう返事をする逆廻さん。そんな彼を野蛮な人を見る目で見ている久藤さん。俄然として無関心そうな春日部さん。
その傍でキリトは怪訝な表情で眺めていた。
◆
──うわぁ、あの三人は問題児のようですねぇ……
湖に落ちてきた四人を隠れてずっと見ていた少女はそう一人ため息をつく。
彼女の名前は黒ウサギ。扇情的なミニスカート、ガーターソックスを見にまとったウサミミを頭から生やした少女である。
──しかし、黒ウサギが呼んだのは三人だけのはず。あの黒衣をまとったお方は一体……?
黒ウサギはそうやって不思議そうに首をかしげる。だが、主催者の話では、三人とも人類最高峰のギフト所有者だと説明されたのだ。いきなりの状況で慌てないその精神性は及第点だと言える。
逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀。彼ら三人は主催者の触れ込み通り、強力なギフト保持者としての風格を漂わせていた。
だが、最後の黒衣の少年からはその三者とは違う雰囲気をまとっている気がする。
四人の荒々しい"霊格"とはまた違った、もっと貫禄のある雰囲気を纏っているような。
それは喜ぶべきことだ。黒ウサギのコミュニティの再興へと繋がるのだから。
そのはずなのに────。
──どうしてでしょうか、あの方は十分に警戒しないと
そんな気がするのです
◆
「……それからそこに座っているあんたは?」
少し考え事をしていると逆廻がこちらに話を振ってきた。
いつのまにか三人の視線は俺の方へと向いている。
「ああ、俺の名前はキリト。よろしくな」
「キリト…………?どこかで聞いたような気が…………」
聞き覚えのある単語だったのだろうか春日部が不思議そうにしている。
それを見た逆廻が好奇の目を向けた。
「なあ、キリト。日本って国を知っているか?」
「
「へぇ、そうか」
そう言った逆廻の顔には灼けつくような好奇心の色が現れている。
俺は疑問符が乱舞している頭の中を振り払うため気持ちを入れ替えた。
「で、呼び出されたはいいけど何で誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」
俺の自己紹介後、逆廻はその好奇心の色を隠してイラついたように呟く。その言葉に他のメンバーが賛同して一斉に口を開いていく。
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「…………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「いや、春日部や久遠も十分すぎるほど落ち着いてると思うんだが」
二人の声色からはこの世界に来たことへの不満の色が感じられない。冷静かつこの状況を楽しんでいるかのように見える。
そこで、先ほどの逆廻の言葉に違和感を抱く。
「待ってくれ。招待状ってなんのことだ?」
「あら、キリトくんはあの手紙を受け取っていないの?
ならどうしてここにいるのかしら?」
「それは…………、────ッ!」
唐突な頭痛を覚えて頭を抱える。
それは意識に薄い膜が張っているかのように、頭と眼の奥に鋭い痛みを感じる。
「キリト、大丈夫?」
様子がおかしくなったことにより、不安そうに春日部さんが顔を覗いてくる。
大丈夫だと手を振って彼女の好意に感謝する。
「ふぅん。とりあえずそこにいるやつにでも話を聞くか?」
突然の逆廻の発言に誰も驚くことなく、茂みの方へと視線を向ける。
その視線の先ではビクッとウサ耳が茂みから覗いていた。
「なんだ、貴方も気付いていたの?」
「当然。これでもかくれんぼは負けなしだぜ?」
「……風上に立たれたら嫌でも分かる」
「まあ、あんなに簡単だったらな」
三者三様に隠れていた人物に気づいていたようだ。
そんな彼らの目線に耐えられなかったのか、茂みがガサガサと動いてウサギの耳が現れる。
「や、やだなあ御三人様。そんなに睨まれたら黒ウサギは怖くて死んじゃいますよ?
ええ、ウサギは古来よりストレスに弱い生き物なのです。
そんな脆弱な黒ウサギに免じて、ここは一つ穏便に御話を」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「あっは、取りつくシマもございませんね♪」
バンザーイと言わんばかりにお手上げするウサ耳少女。だが、その目は冷静に四人の反応を観察していた。
黒ウサギは道化を演じながら彼らにどう接するのかを冷徹に思考していた。そして気づかれないように四人を流し見する。
「うん…………?」
「────あっ!」
うっかりと黒衣の少年────キリトと視線が交差してしまう。
引き起こされる沈黙。
黒ウサギは反応に困って曖昧な笑みを浮かべると、キリトは全ての疑問が氷解したかのような表情を浮かべた。
その反応が意外だったので無意識に後ずさってしまう。
だから気がつかなかったのであろう。
耀が不思議なものを見ているように黒ウサギの隣に立ち────
「ええと……。フギャ!?」
────そのウサ耳を力一杯引っ張った!
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる技」
「自由にも程があります!」
「へえ? このウサ耳って本物なのか?」
今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。
「………じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待――!」
今度は飛鳥が左から。
黒ウサギはキリトの方にすがるような眼差しを向ける。
そんな四人の姿をキリトは冷酷で値踏みするような眼差しで見つめていた。
其は冷酷なる者。偉大なる虚実の王なりや。
彼の者、大志を抱き、ただ幻想の守護者たることを望む。
其が有する記憶は彼の者が治める世界のみ。その矛盾に気がつくことはなく。
さあ、英雄の凱旋だ。
願おう、この
記憶解放術は原作からして多分こんなことをできるかと。立体交差平行世界論と余剰世界論って両立するのか?
評価してくださったhisashi様。
ありがとうございます!!