星王が異世界から来るそうですよ?【修正中】 作:きのこの山親衛隊
「ああ、この際はっきりとさせてもらおう。おまえ……なにを考えていやがる?」
そういって逆廻が俺の方へと訪ねてくる。その顔には今まで隠してあった好奇心と疑念の色がありありと浮かんでいた。
あたりには水が降ってきて空には虹をかけている。
流石にあからさまだったかと自嘲する。
ああ、こうなったのはつい最近のことだ。それは────
◆
黒ウサギがコミュニティに案内してもらえるということで、逆廻たち四人は彼女についていくことにした。
巨大な天幕に覆われた都市を目指しながら、一人だけ少し下がった位置で何かを思案している少年がいる。キリトだ。
──懸念事項は今のところ二つ。黒ウサギが何か嘘を言っていること。そして、この自分の状況だ。
黒ウサギの方は何か裏があることは箱庭に来たときから懸念していた。
だから、そちらは今考えるべきでないのかもしれない。
それよりも今重要なのは、自分の状況だ。なぜこの身体で現実世界らしきところに現界しているのか、なぜ自分にだけ手紙が届いていないのか。
後者は知らないうちに届いていたという線も考えられないことはない。
それよりも────
「なぁ、世界の果てを見に行かないか?」
考えごとを一時中断して逆廻の提案に乗る。
「ああ、いいぜ」
込み入った話もあるそうだしな。
「おっと、話が早い。あ、止めてくれるなよ」
逆廻は楽しそうにそういうと人知を超越した速さで駆け抜けていった。
「あっ、じゃあ黒ウサギには内密にしておいてくれ」
そう言って風素を生成すると逆廻の方へと飛び立った。
◆
「おい、キリト」
「なんだ、逆廻」
「十六夜で構わないぜ。それよりもその速さはなんなんだ?」
「ああ、これか。今更隠しても意味がないよな。これは素因を生成しているだけだよ」
「素因……?」
「この話はまた後にして。もうついたぜ」
森を駆け抜けるとそこに広がっていたのは想像を絶する光景だった。
「────おぉ……!」
それは隣の十六夜が感嘆の声を上げるほど。
それは"トリトニスの大河"の美しさによるものだ。
「さて、世界の果てはどんなもんなんだろうな……ん?」
『こんなところに人間とは珍しい。人間、我の試練を受けよ』
荘厳なる声が辺りを震わせた。
◆
それは彼らが"トリトニスの大河"につくほんの数十分前のこと。
箱庭二一〇五三八〇外門。ペリベッド通り・噴水広場前。
黒ウサギに連れてこられたのは、幾つものドーム群が収まった場所の外壁門である。
その外壁と内側を繋ぐ門の階段に、ダボダボのローブに身を包んだ十歳くらいの緑髪の少年がひとり座り込んでいるのが見える。
しかしその年齢に似合わない深刻そうな表情をしている。
「ジン坊っちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」
とあるウサ耳少女────黒ウサギが声をかけると、少年はハッと驚き、こちらをみて、笑みを浮かべて迎える。
「お帰り、黒ウサギ。そちらのお嬢様が?」
「はいな、こちらの御三方様が……」
振り向いた瞬間、黒ウサギは硬直した。
「……え、あれ? もう一人いませんでしたっけ? ヘッドフォンを首からかけて、黒い学生服で、ちょっと目付きが悪くて、かなり口が悪くて、全身からもう『オレ問題児っ!』というオーラを放っている殿方と、全身黒ずくめの服装をした寡黙などこからともなく威厳のある雰囲気を醸し出している殿方が!」
「ああ、十六夜くんとキリトくんのこと?彼らなら「世界の果てまで行ってくるぜ!」とか言ってあっちの方へ行ったわよ?」
そう言って遠くはるか向こう側を指差す。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「止めてくれるな、って言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「黒ウサギにはいうなよって言われたから」
「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
ガクリ、と前のめりに倒れる。はじめはキリトは問題児じゃないと思っていたのでそのショックは計り知れないだろう。
「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」
そう言って小さな少年が話す。
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には、強力なギフトを持ったものが数多く生息しています。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー? ……斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
烈火のごとく黒ウサギが怒る。
ゆらり、そのような音が聞こえて来そうな黒ウサギが立ち上がったかと思うと──
「ジン坊っちゃん。申し訳ありませんがら御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「う、うん。わかった」
「ふふッ……捕まえたついでに、“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります!」
──艶のある髪を淡い緋色に変えたかと思うと弾丸のように飛び去った。
「あら……箱庭のウサギは随分速く跳べるのね」
そんな場違いな感想があたりに虚しく広がった。
◆
それは必然的な出来事だったのか。
敷かれたレールの上を走る英雄。
彼の人生は常に栄光で満ち溢れていた。
苦難や試練もあったという人もいるかもしれない。
それはそうだろう。全てのことが上手くいく人は神と呼ばれるものだけだ。
それは、企業の目をかいくぐって世間に広まったナーヴギア。
それは、システムに干渉のすることのできた茅場の助けによる解決。
それは、たまたま知り合った政府の役人の依頼による調査依頼。
それは、AIが誕生するきっかけとなったプロジェクト・アリシゼーション。
それらが、全てとある目的に沿ってなされたものであったなら?
それらがとある人物の描いたシナリオ通りのことだったら?
それらは人類の新しい形を見出す壮大な実験であったなら?
さあ、最後の英雄譚を
元々は平凡だった少年よ。
望まれるべくして
これからは
狂い哭け、おまえの末路は英雄だ。
ちょっと後で書き直すかもしれません。
タグにシリアスを追加しました。シリアスってこのジャンルだとやっぱり場違いなのかな?
矛盾などがあれば教えてもらえると助かります。