星王が異世界から来るそうですよ?【修正中】   作:きのこの山親衛隊

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矛盾点やおかしいところが多発する気がします。
気兼ねなくお知らせください。




承2・貴方の目に写っているのは『現実』ですか?

 

 

 

 

 

 

 少年の話をしよう。

 

 

 願われるべくして主人公(えいゆう)になったどこにでもいる高校生の物語を。

 

 その少年は孤独だった。

 それが事故によるものによる周囲との隔絶した認識差に恐れを抱いたからであろうか。

 

 その少年の願いは初々しかった。

 誰かに寄り添ってほしい、この孤独を癒してほしい、と、そう願っていた。

 だが、現実から逃げていた(引きこもっていた)彼にはその機会はあたえられず、皆の希望を背負った(英雄になった)彼にはやはりその機会は与えられなかった。

 

 唯一無二の存在であるユージオ()は今はもうなく、助けられた人(仲間たち)からは羨望の心はあれども、対等な立場には(つい)ぞなれなかった。

 

 英雄にはなれなかった。

 

 

 彼の少年期は流星のようであった。

 流星のように唐突に現れ、誰かの願い事をその身に受け、どこかへと燃え尽きていく。無邪気な子供が流れ星にお願いごとをするように、彼も誰何(すいか)の願いを託されていた。

 

 英雄とはいつの時代、どこの物語でも幻想(ユメ)(つむ)ぐ。

 

 

──凛然なる騎士王がいた。

 

 

──傲岸不遜な正体不明(コードアンノウン)がいた。

 

 

──心根熱い偽善使い(フォックスワード)がいた。

 

 

──七万の相手に立ち向かった神の左手(ガンダールブ)がいた。

 

 

 

 誰もが何かを背負い、何かを胸に抱きながらその時代、その世界を席巻してきた。

 

 誰もが役割(ロール)を受け、あるいは打破するためにその生を賭してきた。

 

 

 

 では、キリトはどうだったのだろうか。

 

 

 

 これから先を語るには、SAO事件をもう一度振り返らないといけない。その謎を解き明かしていかないといけない。

 そもそもあの事件ははじめから全てがおかしかった。

 

 

 なぜ開発段階からそのゲームの異常性に気がつかなかった?

 

 ゲームとは一人で作り上げるものではない。会社によって、様々な人の手に触れひとつの製品が出来上がっていくのだ。

 天才である茅場晶彦でもその摂理には逆らえない。

 

 

 なぜナーヴギアの危険性を誰も指摘できなかった?

 

 一歩間違えれば人を殺しかねないその機材──いや、兵器とでも言えるもの。その危険性を指摘できる専門家は果たしてあの世界にはいなかったのだろうか。

 

 

 なぜSAO事件後も全ての重大な事件がキリトの周りで起こる?

 

 それは、菊岡がキリトに依頼したからだ。しかし、冷静になって考えてみてほしい。ほかの大人たちを差し置いてキリトに依頼するメリットはなんだろうか。

 また、アリシゼーション計画にも関わることになった原因は()()()()警察の目から逃れれたSAO時代の因縁の相手の一人によるとある殺人未遂事件である。

 

 

 もし、仮にキリトがいなければこの世界はどうなっていた?

 

 アスナは洗脳され、ALOでのとある科学者の成果はアメリカに渡るであろう。アリシゼーション計画ではフラクトライトの一部、あるいはその全てがUSAに渡り、軍事産業のさらなる進行がもたらされたであろう。

 一歩間違えれば世界第三次大戦が起こりかねないかもしれない。

 

 

 

 では、これらの出来事を少し別の視点から眺めてみよう。

 

 即ち──これらが全て予定調和であったということだ。

 

 

 キリトの周りで事件が起こったのはそれが英雄キリトの誕生に不可欠だったから。

 キリトがβテストに当選し、SAO事件が起こり、キリトが数々の受難を跳ね除け栄光を手にしたのはそれらが全て設定された事実だったから。

 キリトがいるのがこの世界での必要な条件だから。

 

 

 賢しいものだと鼻で笑うだろう。

 

 愚かなものでも正気を疑うだろう。

 

 天才はその真意を吟味するだろう。

 

 

 だが、結論はひとつだろう。

 その結論は"ありえない"の一言だ。

 

 もし私たちの未来が現時点で決まっていたら?もしこの世界が大きなうねりのようなもので流れていくのなら?

 そんなことを考えたことのある人は一人か二人ではないだろう。

 

 茅場晶彦は、果たしてその天才の中に分類される人物の一人であった。その知恵は神の如き領域(意思の実体化)を完成させるほどに。

 彼は異世界に憧れた。

 ゆえに、それらを完成させ一つの壮大な英雄譚(ソードアート・オンライン)というものを生み出した。

 

 科学者とは未知を解するものだ。

 

 茅場晶彦は幼少期から理解していた。この世界はまるで歯車のように廻っていると。

 人生とは結局のところ壮大なロールプレイングゲームだ。誰かが何かの役割(ロール)を背負わされ、その役割(ロール)を淡々とこなしていく。

 そのに意思などという無駄なものは含まれず、無感情にただ日にちだけが過ぎていく。

 

 しかし、茅場晶彦は幼少期から科学者として、一人の天才として片鱗を見せ始めていたのだ。

 そして、あるとき一つのことに思い至った。それすなわち──ある一つのことに収束していっているのではないかと。

 

 世界とは観測することで存在を確定させる。仮に誰かがその()()()()()させてしまった場合、その収束点に向かって未来は過ぎていくことになる。その収束点を誰かが観測しているのではないかと考察したわけだ。

 所詮、幼子が考えた妄想、あるいは狂言。しかし、彼はこのことに興味を抱いてしまった。それは、異世界を見つけるという方向(ベクトル)を確定させてしまった一つの原因であった。

 

 人は、観測されているかされていないかで行動に変化を及ぼす場合がある。

 それは、電子を見る際に光子がそれと相互作用するために電子の軌道が変化するように。極論でいうと、ストーカーがいるのかわかっているのとそうでないとで行動に差異が出るのと同じである。

 

 ()くしてSAO事件は起こり、キリトは英雄への階段を登った。それは、キリトが観測さえされなければどこかにいる桐ヶ谷和人(一般人)として生きていけたことも意味する。

 英雄になりたいわけでもなりたかったわけでもなく、ならされただけだと言うのが正確だろうか。

 

 誰も知らないことだが、彼の並行世界は箱庭と()()()()()()()()世界だ。それはもはや異世界といっても過言ではなく、平行立体交差世界論によって世界である。

 

 彼、またその世界の未来は安定していない。物語(原作)に多数の矛盾点が付きまとう。観測するタイミングによって物語に差異が出るのは当然であろう。

 また、観測者が一人だと観測しているわけではない。したがって、こうして思考している私を"あなた"が見ているかもしれない。

 

 とても俗な例えを出すと、とあるジャンルのゲームがあったとしよう。ジャンルがジャンルなだけに名称は伏せるとするが、様々なヒロインを攻略するゲームだ。

 プレイヤーはそれぞれの好みや狙いに合ったヒロインを攻略していく。そのそれぞれに観測者がつくことになる。また、誰かがそのSSでも書いて投稿すれば、その世界も観測者がつくであろう。

 

 そうして、茅場晶彦に共犯者がいる、キリトがSAO開発に貢献する、キリトに唯一無二の男友達が現実世界にいるような並行世界もできるわけである。

 並行世界によっては、キリトが女性であったりする。

 

 だが、その全ては"SAO事件"という結果へと収束していく。

 例えそこに物語の外の人物が関わったとしても変わらない。世界は精密に、残酷なほど無情にできている。

 

 

 

 

 

 

『ここまで語ったら十六夜くん。君ならわかるだろう?』

 

「ああ、嫌という程わかったぜ。要するに今のあいつは"重ね合わせ"の状態なんだな」

 

 苦々しげに、苦しそうにそう口にする。その顔には理解したが納得はできないという感情がありありと察することができる。

 

「ちょっと十六夜くん、自分だけで納得しないで私たちにもわかるように話してくれないかしら」

 

「そ、そうですよ!十六夜さん」

 

「……うん、解説求む」

 

「チッ、茅場とやら。解説するのが面倒だから俺に押し付けやがったな」

 

 電子の海、虚構の最中。

 そんな中でもこの中に動じるような優等生な精神性を持ったものは誰もいなかった。この問題児たちを見て白夜叉も呆れざるを得ない。黒ウサギだけは唯一この突然起こった現象や茅場の語った内容にあまり理解を示せず、おろおろとしているのが唯一の癒しかもしれない。

 それにしてもおかしいと白夜叉は思考する。弱体化していてもこんな下層でこのように問答無用に白夜叉たちを連れてこれるなんてありえない。

 それは、店の中にまで誰にも気付かれずに侵入したということになる。千の眼(サウザンドアイズ)の名を持つコミュニティとしてそれは()()()()()

 可能性があるとすればそれは──

 

「その前におんしよ。少し聞きたいことがある。

 ──どうやってサウザンドアイズに入った?」

 

 目を細め、静かに、だが苛烈な闘気を出しながら厳かに問う。

 その愛嬌たる容姿でありながら、威風堂々たる居住まいは微塵も揺るがない。真っ直ぐに見つめるその睥睨は王者の風格。その様はまるでお伽話(fairy tale)で語られる魔王のようである。

 

『ああ、簡単なことだ。"私"を幾人ばかりか消費したのだよ。その特性上、あまり多用はしたくはなかったのだがね』

 

 だが、その質問には存外あっさりと答えられた。こうもすぐに答えられるとは思ってもよらず誰もが言葉に詰まってしまう。

 

「そのやろうが言っていることがヒントさ。まあ、要約するとしたらまあこんなところか」

 

 シュレディンガーの猫という思考実験をご存知だろうか。放射性原子が自然崩壊すると毒ガスが発生し、中にいる猫が死ぬという仕組みの装置を考えるとする。原子の崩壊は量子力学的プロセスのため一定でなく、猫がいつ死ぬのかも一定でない。

 この状態において、猫の状態に関してはあくまで"確率"でしか表記できないことになる。また、これらは人が猫を観測するまで生きている猫と死んでいる猫のいわゆる"重ね合わせ"の状態が起こると考えられる。

 

 また、ここにエヴェレットの多世界解釈に基づくと猫が生きている世界と死んでいる世界が()()()()()()と考えられるわけだ。これによって、観測することで片方の可能性(せかい)が消滅することも明らかであろう。

 

『私の、いや()()()は絢爛たる魂の持ち主だった』

 

 ゆえに、その体に様々な可能性を内包していた。だが、世界は同じ世界に二人の人物がいるという矛盾を許さない。それらはそれぞれ世界の分岐という形でお互いに干渉し合わないはずだった。

 

 だが、ここは"箱庭"。

 

 彼らのいた世界ではない。

 したがって彼の体、および精神には幾分かの異常が付いていた。

 

『答え合わせはまた次の時にでもさせてもらおう。

 ところで、君たちには今から()()()()をしてもらいたい。なに、彼女が間に合うために少し()()させるだけさ。無理やり連れてきてなんだが、君たちはゲームを望むか、ここで降りるか。決めてもらおう』

 

「なら私は遠慮しておくかの」

 

 そうやってきっぱりと答える白夜叉。

 黒ウサギは若干驚いているものの、問題児三人組はその回答を予想していたのか毅然とした態度を保っている。

 

「これは黒ウサギたちのコミュニティの問題じゃ。ならば私がこれ以上干渉することはあまり好ましくだろう」

 

『ならば、ほかのものたちはどうする?』

 

 問われるまでもなく、三人の、いや四人の答えは決まっていた。

 

 首肯を確認すると、茅場はまた虹色の煌めきを体から発すると彼から暴力的なほどのエネルギーが発生する。

 

『さあ、ならば私の世界に招待しよう。様式美としてこう締めくくらせていただこうか。

  

これは、ゲームであっても遊びではない

 

 健闘を祈る。プレイヤーの諸君』

 




エヴェレットの多世界解釈とコペンハーゲン解釈のごっちゃ混ぜにした理論の使用。これは批判不可避。
けど少しだけ言い訳をさせてください。これって、究極観測者の存在を考慮すると案外うまいこといく気がするんです。行きますかね?なんかいいとこどりすぎてやっぱり批判不可避っぽい?というか今回の話で運命論もなんかちゃっかり入っちゃってますね。
問題児に理論を五つくらい投げ入れている時点で今さら感。


そろそろ終盤なんだが、ヒントってか答えも全て提示しちゃったので何も言えねぇ!こういう時に煽るのが普通なんだろうけど。強いて言うなら絢爛たる魂とかほぼ答えだったり。
ちなみにゲーム内容を考え直した末、一部変更としたので前話のプレイヤーとゲーム名が変更となっています。
ほぼ内容と結果はお分かりでしょうが、考察をしてくれるなら作者冥利に尽きます。

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