あ、晶彦さん、誤字報告ありがとうございます。
ホウキとの剣道練習を続けて一週間。気がついたら決闘の日になってた。
「いいか、三日月。こうして一週間訓練を続けてきたが……何故!木刀を叩きつける癖が治らんのだ!」
「だって、こっちの方が強いじゃん」
「んんっ……まあ、思わず言ってしまったが、なんというか、お前の戦闘スタイルは、既に定まっている様に感じた。だからこそ、太刀を使った戦い方よりも、間合いの測り方や見切りの技術を重視した」
「そうだな。今まで考えたこと無かったから、勉強になったよ」
「しかし、本当に良かったのか?ISの知識や操縦方法とかは教えなくて。授業にもついていけてるとは言えんだろう?」
「うん、大丈夫。始まったら、バルバトスが教えてくれるから」
初めてバルバトスを起動したときもそうだった。背中がかっと熱くなって、バルバトスの名前や動かし方が阿頼耶識を通じて直接流れ込んできたから、あの戦いでみんなを守れた。
「そうは言ってもだな……お前、ISを起動するのはこれが二度目なんだろう!?」
「そうだけど……問題ある?」
CGSの動力源として使われていたバルバトスは、起動した時点でダメージレベル換算でオーバーFとかいう、危ない状態だった。その後タバネが調整してくれたとはいえ完全回復には至らず、今日まで絶対安静、何があっても動かすなと言われてた。
……実は、入試のときに使っちゃったんだけど、まあ大丈夫でしょ。
「束は、今日まで動かすなと言ったのだろう?ならば、もう機体に問題はないはずだ。癪だがISに関して奴の右に出るものはいないからな」
「しかし、織斑先生……」
「まあ、動かせばわかるでしょ。来い、バルバトス」
起動するイメージを確かにするためにISの名前を呼び、待機形態の右手首に巻かれたブレスレットに触れる。どっちも授業でやった内容だけど、実際試してみると思ったよりしっくりくるな。
「……ぐっ!?」
「どうした三日月!?鼻血が……」
「落ちつけ、篠ノ之。「こういうこと」があるかもしれないとは事前に聞いていたが。意識はあるか、オーガス」
「問題ないよ。ちょっと、いろいろ入ってきてびっくりしただけ」
初めてのときはそれどころじゃなかったし、痛みとか感じる余裕が無かったけど、この色んな情報が流れてくるような感覚は、少しきついな。まあ、そのうち慣れるでしょ。
「それより、バルバトスをつけてるときのオレって、こうなってたんだ」
更衣室にあるより大きな鏡に映ったバルバトスの姿をじっくり見るのは、初めてだ。頭の周りに違和感があると思ったら、王冠の様な形の白い兜がついてるし、胸の周りには白と青の分厚い装甲がついてて、鎧みたいだ。動きを邪魔しないように腰の周りには装甲がなくて、膝から下にも分厚い装甲。足は人間と同じように平たくて、攻撃用のツメが二本飛び出てる。腕は左右非対称で、左腕にはあのときMWの装甲から作ったガントレットが残ってた。防御するときはこっちで受けた方がよさそうだ。
「うむ……三日月の戦い方を聞いて想像していたのとは違う機体だな。もっと無骨な形状だと思っていたぞ」
「別に、普通でしょ」
「しかし、その腰回りだけを解放した準全身装甲のデザイン、どこかで見たような?」
「くくっ、おしゃべりもいいがな篠ノ之、オーガス。そろそろ時間ではないか?」
「そうだね。バルバトスも調子いいみたいだし、行ってくるよ」
あのときよりも、動かしたいように動いてくれる気がする。タバネって、実はすごかったんだな。
手足の調子を確かめながらアリーナの中に出ると、敵はすでに空中にいた。
「あら、逃げずに来ましたのね」
「だって、逃げる必要ないし」
オレもバルバトスを空中に浮かせて、セシリアと向かい合う。
「まあ、強がりもそのくらいになさったら?最後のチャンスをあげますわ。今ここで、謝って、許しを請うのであれば、まあ受け入れてあげなくもなくってよ」
敵が攻撃準備に入ったって、バルバトスが言ってる。言われなくてもわかってるよ。この感じ、何週間か前までは毎日のように味わってたんだからさ。
「なあ、オレからも一ついいかな」
「あら、なんでしょう」
「オレが勝った場合はどうなんの?あんたそれ言ってなかっただろ。気に食わなかったんだ」
武装の中からメイスを選択。授業ではわからなかった方法が、こいつと繋がってる今ならわかる。コンマ以下の秒数で具現化した、バルバトスよりも長いメイスを両手で握り、いつものように大きく振りかぶる。
――次は、どうすればいい?
決まってる。立ち塞がるやつは、全員敵だ。
スラスターを全力で吹かして、ライフルを手に棒立ちしてるISに躍りかかる。不意を打てたみたいで、ライフルの発射が少し遅れたみたいだけど、まあ関係無いか。銃口が見えてれば避けられる。やっぱ、ISってすごいな。
「この距離なら……」
「そうはいきませんわ!」
間合いに入ったと思ったら、敵の腰の周りに浮かんでたユニットからミサイルが二発、発射された。セシリアの顔には会心の笑み。どうも最初からこの流れを計算してたみたいだ。
でも、まあ。
「見えてるよ」
むき出しだった腰と左肩を狙った射撃を、身体を捻って回避する。ISのモーションサポートやハイパーセンサーがあれば、攻撃の前兆を見てすぐに動けば間にあうみたいだ。
それだけじゃ終わらない。避けたときの動きを利用して、無防備なセシリアの腹めがけてメイスを振り切る。攻撃直後の油断を狙われたセシリアと、元々攻めるつもりで飛び込んだオレじゃ、勢いが違う。だから、先手は貰ったと思ったんだけど。
「きゃっ!ライフルが」
「ふうん、これを防ぐんだ」
今の攻撃、セシリアに見えてるようには感じなかったんだけどな。ISのオートガードってやつかな。本体への直撃は回避したけど、メイスを受け止めるみたいに持ち上げてたライフルはいただいたよ。
「なんて反応速度……それに、あの気持ちの悪い動き!どうやら、ただの田舎の猿ではないようですわね」
「くっちゃべってる余裕があんの?武器はもう壊れたし、あんたこそ降伏したら?」
「……御冗談を!『ブルー・ティアーズ』の真の力は、こんなものではなくってよ!」
セシリアが手をかざすと、背中に浮いていた四枚の羽根のようなユニットが本体から分離して、こっちに飛んできた。
――エネルギー反応。分離ユニットは砲台と推測。数、4基。
「へえ、面白い武器持ってるね」
「そう言っていられるのも今の内ですわよ。お行きなさい、〈ブルー・ティアーズ〉!」
セシリアの動きに合わせて、四基の砲台が自由自在に空を舞う。重力やその他外力の影響を遮断するPICのお陰で、ISはこういう動きができるらしい。まあ、今のバルバトスにこういう非固定浮遊の装備はないから、オレには関係ないんだけど。
「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で!」
「おっと」
敵が4体に増えたと思えばいいや、と考えてたけどそれは地上の、MW同士の戦いでの話。空中では頭上に足下と、普段は気にしないところから攻撃が飛んでくるから厄介だ。大体、今まで経験したIS戦はどっちも一撃で終わったし、オレも言うほど戦い慣れてないんだよね。
「曲芸みたいに……先程の回避といい、本当に猿のようですわね!」
「そいつは、どうも!」
回避ついでに、待機状態にして隠してた滑空砲を具現化。トリガーが実体化した瞬間に引き金を引くと……ダメだ、脚部に命中。装甲が無い所を狙ったんだけどな。やっぱり、まだ慣れないや。
「射撃武器も持っていましたの!?」
「こういうのは隠してた方がいいって、ホウキが。でも駄目だね、オレはやっぱりこっちじゃないと」
滑空砲を収納し、またメイスを取り出す。ちょこまかと動く砲台は面倒だし、一基一基ぷちぷち潰すにも時間がかかる。なら、砲台の操作中、動きが鈍くなる本体を叩くのが手っ取り早いよね。
確かに、連携して動く砲台は脅威だ。でも、バルバトスと繋がった今のオレは周りが全部見えてるし、発射前のエネルギーの高まりもわかる。阿頼耶識を通じて感じたそれらの感覚に従って身体を動かせば、
あとはセシリアの逃げ足と、オレの速さの勝負だ。
「かかりましたわねっ!」
……あれ、被弾した。背中にダメージ?バックパックのスラスターがやられた?
ああ、そうか。確かに阿頼耶識を使えば、まるで自分の身体みたいにバルバトスを動かせる。でも、自分の身体にない部分はどうしても意識してないから、紙一重で避けたつもりでも当たっちゃうんだ。失敗したな……。
ISの恩恵を受けてるのは、相手も同じ。スラスターをやられて、足を止めた機体をみすみす逃がすほどセシリアは甘くないはずだ。なんといっても、代表候補生なんだし。
着弾。シールドエネルギー減少。バリアー貫通により実体ダメージ:小。
でも大丈夫。オレも、バルバトスもまだ動く。このままじゃ、終わらない。
「そうだろ、バルバトス」
キュイーン、とどこからか音が聞こえたのと同時に、バルバトスが粒子の光に包まれた。
さっきの爆発とは違う、あったかい光。そして網膜投影された視界の上には、さっきまでは無かった文字列が浮かんでいた。
――フォーマットとフィッティングが終了しました。
そっか、これがお前の本当の姿なんだな。
「装甲が、増えた……まさか一次移行!?あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!?それにその姿、データベースで見たことがありますわ」
セシリアのやつ、そんなにうろたえてどうしたんだ?まさか、形が変わっただけで驚いてるわけじゃないだろうし、何かあったのかな。
◆
「千冬さん、あの機体ってまさか!?」
「織斑先生だ、馬鹿者。そうだ、オーガスの専用機は、『ガンダムフレーム』だ」
「『ガンダムフレーム』……。姉さんが一番最初に開発した、72機の特別な第一世代機。あの『白騎士』も含めてほとんどは破壊されたか、解体されて行方不明になったと言われていたけど、まさか現存していたなんて」
「どうも、ある国が運用中に重大なダメージを負ったようでな。コアの状態で輸送中に行方不明となっていたそうだ。それから6年。まったく、よく隠し通したものだ」
◆
「その機体……『ガンダムバルバトス』ですわね。失われたガンダムフレームの一機にして、かの『白騎士』と同等の力を持つと言われる、伝説のIS」
「そうなの?バルバトスって、凄かったんだな」
「……まあ、あなたの無知は今に始まったものではありませんが、納得しましたわ。あなたの強さは、そのガンダムがあってこそ。それに――」
隙あり。
「ちょっと!?まだ話の途中ですわよ!」
ああ見えて付き合いのいい昭弘ならともかく、そんな理屈はオレには通じないよ。敵との戦いなんだから、いつでも撃っていいのは当たり前じゃん。
「ガンダムとはいえ10年前の機体!旧式の機体では第三世代機であるこの『ブルー・ティアーズ』に勝てないということを、身を持って証明させてあげますわ」
「いいよ、そういうの」
また砲台を飛ばしてきたけど、その動きは単調そのもので――いや、違うな。頭の中がすーっとして、さっきまでよりよく見える。それに手や足、バルバトス自体が、オレが動きたい方に動いてくれてる。なんか、今になってやっと、オレとコイツが一つになったみたいな感じだ。
あの砲台はさっきから、オレの反応が遅い場所に必ず1基飛んできて、威力高めのビームを撃ってきてる。さっきまでは目で追えなくて逃げられてたけど、今のオレ達なら、逃がさない。
「〈ブルー・ティアーズ〉の軌道を読まれましたの!?」
「何度も見せられてれば、そりゃわかるよ」
制御が乱れた。太刀を具現化して空中に投げると、そこに飛び込んできた一基が串刺しになって、爆発。ハイパーセンサーがホウキの叫び声を拾った。これは、帰ったらお説教かな。長いんだよね、ホウキの話。
「これで、道ができた」
「も、戻りなさい〈ブルー・ティアーズ〉!」
「だから見えてるって」
宙返りすると、バックパックを掠めるようにビームが飛んできた。消えそうな光の軌跡をなぞるように飛んできた砲台に、滑空砲を発射。今度はちゃんと当たった。
「これで……」
「速……」
一瞬だけスラスターに過剰なエネルギーを送り込んで、爆発的に加速。右手にメイスを構えて、オレの動きに目が追いついてないセシリアに向けて、最速の突きを打ち込んだ。
斬るより突きのほうが速い。訓練が役に立ったよ。
「でも!」
セシリアはまだ抵抗した。腰に残してたミサイル砲台を、自分の近くで爆破。当然そんなことをしたら自分もダメージを負うはずだけど、MWと違って、ISはこのくらいじゃ行動不能にはならない。
爆風でオレを押し戻そうとしたのか。とっさにこんなことができるなんて、自分でエリートって言うだけあるな。確かに、突進の勢いは落ちたし、軸もずれた。だからセシリアは苦しそうだけど、エネルギーが残ってるからまだ倒し切れてない。
まあ。
「逃がさないよ」
セシリアの腹に触れたメイスの先端から、先のとがった鉄塊が飛び出す。バルバトスのメイスはただ殴るだけの武器じゃなくて、中に杭が仕込まれてるんだ。だから突きとは相性がいい。あとでホウキにお礼を言っておこう。……ん、なんで頭を抱えてんの?
「試合終了。勝者――三日月・オーガス」
セシリアは壁にぶつかった後、アリーナの地面に落ちて動かなくなった。まあ、ISには絶対防御とか操縦者保護とか色々あるし、たぶん無事でしょ。
新コーナー・伝わる人にしか伝わらない台本ネタ
「あ、ユーゴーだ」
「これは私の獲物です」
「シュヴァルベグレイズだ」
「珍しい機体を……」
「レギンレイズだ」
「イオク様邪魔です!」
「ユーゴーだ」
「それはもう見ました!」
「ガンダムヴィダールだ」
「綺麗……」
「ガンダムアスタロトだ」
「シラナイ」
「レギンレイズだ」
「それはもう見ました!」
「ガンダムバルバトスだ」
「それはもう見ました!」
「ざんねーん。ガンダムバルバトスはまだ見てませーん」
「いっけねー」
(ウソ)ひとこと次回予告
「なぜなら!おれの機体はあの伝説の“ガンダム”!ガンダムの1機なのだからなあ…」