隻眼の猛将、恋姫無双の世界へ   作:恭也

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またお待たせしてしまいました。

今回は虎の次女と2番手軍師がちょこっと出ます、そして例の賊少女とのふれあいもちょこっとあります。

楽しんで貰えたら幸いです。


第二十三話 虎の次女登場、建業到着

俺が少女を担いで森から出ると雛里が今にも泣きそうな顔でこっちを見てくる。それと恐らく建業の軍であろう兵が俺の周囲を囲む様に展開している。確かに向こうから見れば少女を担いでる俺の方が賊に見られても仕方無いだろうが…。

それを制している二人の女の片方…髪の色や肌の色から間違いなく孫堅の娘であろう女に俺は声をかけた。

 

「お前、この軍の指揮する将で間違いないか?」

「!?…何故私が指揮官だと思うのだ?」

「何、お前の事は聞かされていたからな…孫仲謀」

「なっ!?何故私の知っているの!?」

「言っただろう、聞かされていると…ほらよ、お前への預かり物だ。」

 

俺は蓮虎から手形を貰う際に預けられた竹管を投げて渡す。孫権は戸惑いながらそれを取ると竹管を広げて見ている。すると孫権の表情が戸惑いから驚きに変わっていくのがはっきりと分かり俺は心の中で苦笑した。

 

(どうやら孫権は感情を押さえる事が得意では無い様だな、蓮虎や雪蓮は感情を露にさせる事が多いが押さえる事は出来ていた、それに知らない相手に名を言われて動揺を隠さなかった、まだまだ未熟…発展途上と言った所か)

 

そんな事を考えていたらいつの間にか立ち直った孫権が兵に俺の包囲を解く様に指示を出し始めた。隣にいる補佐であろう女はよく分かっていない様子だが、孫権から竹管を渡され眼を通すと理解したのだろう、兵をまとめ始めた。成る程、優秀な様だ。

 

「申し訳ない、危うく客人に無礼を働く所だったわ」

「気にするな、子供を担いでいたら疑われるのは仕方無いからな」

「そう言って貰えてありがたいわ、このような場所で長話もあれだわ、町まで同伴して貰えるかしら?」

「構わん、俺たちの目的地も建業だからな、それに…この子供はかなり弱っている、医者に見せなければならないしな」

 

俺が担いでる少女を示しながら言うと補佐の女が訪ねてきた。

 

「そういえば森に現れる賊と対峙したんですよねぇ?討ち取ったんですかぁ?」

「…いや、しばらく打ち合って浅い一撃が入ったら逃げ出してな、少し追った所でこの子供を見つけたから追うのを止めた」

「そうなんですかぁ、でもその子が背負ってるのは剣ですよねぇ?それに子供に襲われたって証言があるんですけどぉ?」

「少なくとも俺たちを襲ったのは子供じゃなかった、仮にこの子供も共犯だったとしても置いていかれたって事は見捨てられたんだろう、そんな子供を俺は見捨てられないな」

 

俺と補佐の女が討論を始めて雛里は戸惑っていたが、孫権がため息をつきながら仲裁に入った。

 

「やめなさい穏、貴方も、今ここで話さなくてもいいでしょう、その子供も心配だわ、早く建業に戻るわよ」

 

そう言われて俺たちは討論をやめて建業へ向けて歩き始めた。流石に少女を担いだまま馬には乗れなかったので雛里と少女を馬に乗せて俺は走った。孫権達は俺に合わせてくれたからそれほど苦ではなかったがな。

 

 

 

建業へは一刻半程で到着した。

俺たちは城へ案内されて客間を一つ与えられた。建業にいる間は好きにしていて構わないと言われ、流石にそこまでされる義理は無いと断ったんだが、どうやら蓮虎の竹管に俺たちを厚遇しろと書かれていた様だ。更には雪蓮からも似たような内容の竹管が届いていたらしい。抜け目が無いな…あの親子はそこまで俺を繋ぎ止めようとしてるのか。まあありがたく使わせて貰おうか、繋がれるつもりは無いがな。

 

連れてきた少女は床に寝かせてある。医者によればやはり栄養失調気味の様だ。当然だろうがな。

背丈は雛里よりちょっと高いが痩せすぎなのだ。それにボロボロの衣服に薄汚れた肌、あんな森で賊として生活してたらこうなるのは当然だからな。

どうして少女が森で暮らしてたのかは話してみなければ分からないが…ろくな理由じゃ無いだろう。目が覚めたら色々聞かなければならないな。

 

しばらく部屋で雛里と話をしていると少女がもぞもぞと動いた気配を感じたので雛里に町で食い物を買ってくる様に頼んで部屋から出す。そして少女におもむろに話しかけた。

 

「…起きているんだろう?ここには俺しかいない、それに気配でわかるぞ」

 

すると少女がガバッと立ち上がり俺と距離をとってこちらを睨んでくる。明らかに警戒している少女に予め用意していた果物を投げて渡してやる。

少女は驚きながらそれを取ると果物と俺を交互に見てくる。おそらく食い物を与えられる事に慣れていないのだろう、俺は頷いて食べる様に促すと少女は果物にかぶりついた。

 

余程腹が減っていたのだろう、少女はあっという間に果物を食べきった。俺がもう1つ果物を投げて渡すと今度は俺を見る事無く果物にかぶりついた。

2つ目の果物もあっという間に食べてしまい、少女はもっと欲しいと言わんばかりの眼で俺を見てくる。まるで犬や猫に餌付けしている様な感覚で俺も面白くなってきて、果物を取ると投げて渡す振りだけして投げなかった。

すると少女は明らかに落ち込んでから俺に近づいて来て俺の側に来ると期待を込めた眼で俺を見上げてきた。俺はその眼を見て思わずたじろいで果物を手から落とした。少女はそれを取ると嬉しそうにかぶりついた。

俺はそんな少女を見ながらさっきの少女の眼を思い出した。あの眼は俺達が陳留に来たばかりの頃の荒れた地域に居た子供達と同じだ。親兄弟を失い誰も信じられず回りを敵視していた子供達と同じ眼。

だが今ではその子供達も俺達や警備兵を信じてくれて子供本来の明るさを取り戻してくれた、この少女にそれが出来ない筈がない。

 

 

今は少女に満足するまで食わせてやろう、俺は自分でも似つかわしくない笑みを浮かべているのを自覚しながら少女に次の果物を差し出した。




いかがだったでしょうか?

最後がらしくないかなとは思いますが、たまにはいいかなと。
この少女がどう冬椿と関わっていくのかお楽しみに、まあ皆さんは誰だかは分かってると思います。

次話は出来れば今年中に出せたらいいなと思ってます、気長にお待ちいただきたいです、ではまた。

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