転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「ってわけでして。どーにも鬼が人を使役して島を工事している感じなんですが、そこには大事そうなものも戦力もいないですが、まあ人助けをしていてはキリがない。
で、その後に上に向かってみたら三つの関所があって、そこから何やら濃い魔力の気配を感じました。この箱庭のような島を作るため、魔術王の用意した場所を抜け出す何かになるかも。ですね」
「なるほどなあ。こっちも似たようなものだ。今労働させられている人らにはソーリーだが、ここが魔術王の世界の場所ってんならおそらくあの鬼も人もまがい物や呪いみてえなもの。それでも人を救う。そしてミス・シルバーを救うにも上を目指すのが吉ってか。
抜け道らしいものもない、一本道で分かりやすいが同時に関所を抜けるために強行突破になるぜ。いいか?」
とりあえず互いに散策後に合流。金時様と一緒に互いの得た情報をもとに話し合いをしていると結局は上を目指そうということになりそうになっていますねえ。
まあ、龍脈もつかみづらいのはもともとの島の地形の上に土を持っていたり、術者が一気に行けないように一部とぎれとぎれになっているからもし頂上を目指すのなら金時様の言うように強行突破になるしかない。
ここの雑兵の鬼とはいえ数も多いし消耗もする。その上でさらに何が来るかわからないと来た。二人で協力して消費は抑えつつ行くほうがいい。一本道で裏道もないのなら突破してしまえば後は狭い道で一気に相手せずに済みますし。
「問題ありません。とりあえずあの女武者さん? のおかげか鬼も少ないですしサクッと行ってしまいましょう。さっき始末した鬼たちを探しに来る仲間がいるかもですし」
「オーケー。それじゃ、ベアー号に乗りな。とっとと行くぞ!」
「ふふふ。かっ飛ばしてくださいね!」
「それで、使い魔が増えてから職務の方も効率が良くなってガンガン国を回していたらまあ、使い魔たちからのクレームが飛んで来るようになったんだ。
『人間は不完全だ!』とか
『この世界は悲しみに満ちている!』とか。だっけかな。
ソロモン王の薄い心よりも、彼らはしっかりとした心があった。その違いのせいだろうね。気の利いたことはまるで言えなかったんだ。何を聞いてもそれで? そんなのがどうしたのって感じで。
で、とうとう魔神たちも怒ったんだね。『貴方は何も感じないのですか!!』『この悲劇を! 人間の不完全さをどうにかしたいと思わないのですか!!』って。
でもね。ソロモン王はこう返したんだ。いや、まあ。別に何も? って」
「「「「・・・・うっわぁ・・・」」」」
「いや、うん。わかっていたよ! わかっていたけどやっぱりそう言われると辛いなあ!」
「そりゃあ、当時の魔神たちもそんな反応とリアクションに近しいのでは? 自業自得です。ドクター」
マシュの返しがぐさりと刺さり、そして銀嶺隊のほぼ全員と僕も同じ反応にロマニ、もといソロモンもうなだれる始末。ロマニの独白から始まるソロモン王の過去は、納得がいくのと同時に、知恵を、人を知ろうとして半分アンジャッシュなノリで貰った魔神たちに結局人らしい反応や知ることもできない。
ある意味ではソロモン王の知りたかった知恵と感情を持つ使い魔たちから何も学ばずに進んでしまっていたことにドン引きになってしまう。しょうがない。とはいえここまで人らしい情緒がないままになるというのにある意味恐怖さえも覚えてしまう。
「で、でまあ・・・人なんてはじめからそんなものだし、それをどうこうするのは神様から言われていないし気にせず職務、責務を果たせと言い聞かせてさ。
『責務、責務・・・責務・・・!!』
怒ったんだろう、呆れたんだろう。哀しんだんだろう。
だけど、そんなのをソロモンは気に解さなかった。それだけならまだいいさ。ソロモン王は千里眼を持っていた。未来を見通す目を。そのせいで人間の総てをずっと、延々見続けないといけなかった。あらゆる人の醜さを、苦しさを見ないといけなかった。目をそらすことも逃げることもできないまま。
それで助けてくれと主に頼めばこのままだ。
結局ソロモン王は人を神の言うとおりに整理して、導いて国を豊かにしてそのまま眠りについた。精々自分でしたことは指輪を返しただけ。ソロモンという人でなしの話はここで終わり」
ソロモン王の苦悩も、魔神たちの憤りもよくわかる。あまりに無関心、無感情。しかも自分たちがやるべき責務に関して関わるものに。だ。ただ、同時にソロモン王もそういう教育がされなかったのだろう。合ったとしても神々への神託への知識や技術くらい。
どっちもやるべきことをしていた。ただ、相互理解が足りなかった。
「なんというか・・・国の責務に携わる、関わる人間らをめんどくさい宿題程度にしか捉えていなかったんですね・・・それを考えるほどの自由意思も、思考も及ばなかったと」
「・・・国王は国家第一の僕とはいうけど、ロマン。いえ・・・ソロモン王。貴方は文字通りそうだったのね。ただ、同時にあまりに僕過ぎて、それが逆にこうなったと・・・はぁ・・・」
「うん。それで、ソロモン王という上司は死んで、抱けど魔神たちは死ななかった。だから、その後に考えていたんだろう。『どうにかしよう』って。で、その際にちょうど相性は良く、力もある肉体があるからそれに魔神たちが利用する側としてあの遺体を。ね。
ほんっとうに皆の言うとおりに使い魔とのコミュニケーション不足のせいだ。今更ながらあの時に僕に自由意思がもう少しあったら・・・なあ・・・」
その結果があの魔神柱の誕生。人理焼却というとんでもない大惨事になる。本当にとんでもないことだ。結局はソロモン王という存在が無くてもその使い魔だけでここまでの事が出来てしまい、あまつさえ人類悪の一角ともなってしまう。
冠位をいただく存在。人類史でも偉大な王様とたたえるだけの存在、実力となれるわけだ。
「ふぅ・・・とりあえず、当時の大ポカのやらかしはまさしくその場でぶっ殺されても問題ない。拷問にかけてもいいくらいでしょうね」
ロマニの話を聞いてアルトリアさんがスパッと斬り捨ててしまう。
「じゃのお。仮にも為政者となっている。それは国の責務のみならず臣民の心も考えないといけないもの。そこまで注意を行かずともある程度すんだ時代とはいえ、そうでない輩もいるじゃろう。なのにまあ子供のような言い訳こねたってなあ。それもドクターの落ち度。じゃろ。わしの方でもしっかりと困りごとがあればじっくり相談事はしましょうねって織田家の決め事にあるぞ?」
ただまあ、それも領主、国持ちの英霊である信長にも情けないと斬り捨てられる。当時の状況がどうであれ、それは国王である者の落ち度。神様の存在は認めるとしてもそれだけ王の存在と責務は重いということか。
「まあ、なあ・・・叔母上に先生も、母上も父上も皆後続たちに、のちの国を作る人たちに、民たちに余計な置き土産を置かないようにしていたからなあ・・・心が薄いと言っても、どうしたって王はそういうものだ。お前が魔神に言っていた責務を果たせていない結果だわ」
「うぐぅ! うん・・・本当に、本当にその通りだよ・・・・・・そのせいでこんなことに・・・そして、その場で僕を殺してもいいのは確かだ」
「ええ。ですが同情の余地もあるのは確か。魔神側のやらかしも悪いですしね。そして、気になることが新たにできました。そんな人でなしのソロモン王が今の優しいドクターロマニとなるには何があったのですか?
このことを知っていながらその問題の最前線に苦悩しながら突っ走ることを選んだ。今の心を得た理由は何ですか?」
アルトリアさんの疑問と質問は、皆が考えていたことなのだろう。確かにと無言の反応が返ってくる。
「確かに・・・今のさぼり大好きドルオタドクターになるには不思議な気もします。教えてください。ドクター。カルデアの仲間として、戦友としてこれからも進むために、全部教えてください」
「うん。出来れば全部教えてほしいですロマニ」
「そうね。話なさい。ロマン。所長としても貴方をこの騒動の後にもいろいろと信頼し、助けるためにも。ね」
「皆・・・うん。そうだね。僕が何でこうなったか。いや、こうして成長できたのか。それはこのカルデアに来る前のある聖杯戦争がきっかけなんだ。その時、マスターと、華奈に出会ったんだ・・・」
「ふっ! おわっ、ちょ!」
「ヒュウ! 何て速度だ! こいつはまるで空を飛んでいるような、地面に足をつけているのか疑問になるぜ!」
やってきました第一の門。そこにいる緑色の、この星じゃなくてナメック星にいる方が似合いそうな鬼さんとの戦闘になったんですが、見た目とは540°真逆な俊敏な動きに私も金時様も翻弄されたりまだ慣れていない状況です。
なにせまあ、目の前にいたと思えば即座に後ろや側面から攻撃をしてくるんですが、その巨体が急に消えるほどの速度、そしてその巨体から来る攻撃は即ち攻撃範囲にも直結する。
「グォオオッ!!」
「凱鳥!」
「おらぁっ!!」
鳥のような範囲を広げた飛ぶ斬撃と金時様の電撃を拳で飛ばす弾丸もよけてしまってとまあー素早いのなんの。
「んーむ・・・力は強い。とはいえ規格外ではないので私も問題ないですが、いかんせん素早く傷を与えられない・・・・ふむ? 金時様。ちょっと試してみたいことがあります。これをこうしましてね?」
「ほうほう・・・なーるほど。そいつはグッドだぜ! じゃあ、頼んだぜミス・シルバー!」
「ええ。はぁあっ!」
軽い打ち合わせをしてこの鬼をしばきまわすためのプランを実行。私が真っ向から鬼に立ち向かい、その速度に合わせつつ、秋水と桜花の太刀二振りでわざと派手な飛ぶ斬撃を飛ばしたり、振り下ろしを連続。
ただ、それも鬼の軽い身のこなしでよけられてしまい、それを追いかけては斬撃を飛ばすということの繰り返し。ただ、斬撃を飛ばしたりする際には逃げ道を塞いで誘導したり、それでも逃げられてもいいようにと立ち回っていく。
「くっ、ふ! この中でも返しをしてきますか。うーん・・・相当手練れといえますが・・・慣れてきましたね」
そうこうしていくうちに速さに目が慣れていき、鬼の攻撃、カウンターにも刀を使っての対応もいらずに身体を逸らす程度で済んでしまう。
「でも、うぉう! ここまで接近戦は冷や汗です! 焦げ臭い!」
それでもやっぱり刃や拳、鬼の攻撃を体でよける分髪の毛の先が鬼の攻撃をかすめてしまい焦げ付くにおいを出していく程には早く、なんやかんやとスリルある戦い。
「ヘイヘイへイ! 鬼さんよお! そんなにミス・シルバーだけに意識を向けちゃっていいのか―? このゴールデンベアー号と俺っちがふっ飛ばしてやる。フルスロットルならお前なんざ遅すぎる!」
その中で戦いの範囲からよけつつぐるっと加速していた金時様が加速の距離を手にして最高速度になっての加速。
鬼さんも逃げようとしますが、もう遅い。
「フゴッ!? グガァッ!!」
「あまりに逃げ切るのに気にしすぎで足元おろそかになりましたね? ふふふ・・・道の整理もばっちりですよ。さ、金時様」
私がやみくもに速度勝負を挑んでいたわけではなく、範囲攻撃で倒そうとしていたわけでもない。斬撃や鬼を早く動かしてしまい、早く動く分踏み込む力も相まって周りの地面はボロボロ。踏み砕かれ、斬撃で亀裂を入れられた周りはもはや不安定で踏み込まないと大鬼の巨体では足を取られるぬかるみ。
おまけに魔へ特段ダメージを与えられる陽炎を足に突き刺しておいたのでさらにご自慢の速度ももう活かせない。一方で金時様の走る道は深山の効果で新たにきれいな地面を用意しておいたのであっちは減速もないままの大爆走。
「そぉら。海の果てまで飛んでいきなぁ!!」
こうして金時様のひき逃げアタックが決まって緑の大鬼は吹っ飛んでいく。と同時に腰から落ちていく鍵を走ってゲット。
「おー飛んでる飛んでる」
「あの高さと距離、速度。あ、海にぶつかる際に身体が砕けましたね」
最後は大鬼が海面にたたきつけられて死亡するのを確認して、鍵で扉を開けて次の場所へ。ふぅー私一人だともう少し面倒だったでしょうね。
今回は用心棒はいません。魔術王の用意した場所ですしね。金時は頼光の縁にひかれて偶然来れただけです。