転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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 ロマニの独白は今回でおしまい。そして華奈の方もサクッと行きます。脳筋特化鬼は真面目に華奈にとってカモ過ぎるし金時も力自慢相手とは散々逸話でぶつかっていますし。熊とか鬼とか


ママ友会

 「ふぅー・・・魔力を水に変えられるアイテムを思い出してよかった・・・喉が渇いてしょうがなかったですし」

 

 

 「いやー便利だなあその宝石箱。妖精からの贈り物だっけ?」

 

 

 「ええ。知り合いや友達になった妖精や人でない存在。そう言う子たちからもらったもので便利なもの。戦闘に使えるものを集めたものですね。種類も数もありますが、あくまでも補助程度。過信はしすぎないことです」

 

 

 力自慢という赤鬼相手も、逆にテンプレ過ぎて私も金時様も対処法は慣れている。癖のある大鬼たちを相手にしていた、サイズ感もつかんできたのでカウンター戦法&陽炎での目くらまし。金時様のひき逃げアタックからのライダーキック。

 

 

 これを繰り返して暴れまわればあっという間に対処を終え。いよいよ頂上へ。となる前に水を飲んで一息。魔力の消費も少なく済んで体に活と癒しをくれるので安いもの。

 

 

 果たしてこの先にあるのは罠か、最後の刺客か。あるいは完全に何もない。私を閉じ込めるためだけの場所か。一応濃い魔力の気配と何かは感じるので空ぶりはないはずなんですけど。

 

 

 「着きました・・・が・・・・何もない広場?」

 

 

 ようやくこの鬼ヶ島の頂上に到着。しかし、そこには驚くほどにスッキリとした広場。まさかの空振りか? と思っていましたが広場の奥に見える悪趣味というか、禍々しい杯。

 

 

 「おそらく、あれが聖杯。か、それに準ずるほどの魔力をため込んでいるもの。ですね。恐らくここを抜け出すためのカギにも・・・」

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 あれを触れればいいのか。願えばいいのか。一応対魔力強化の指輪をつけてから近づくと目の前に現れる人影。

 

 

 「あ、武者さん。早い再開ですねえ。貴女もこちらに?」

 

 

 「あらあら、騎士さんも。それに、金時。よく来ましたね」

 

 

 「やっぱり大将・・・・いや、下がりな。ミス・シルバー。あれは俺っちの大将の頼光さんであってそうじゃねえ。あれは違う。頼光様だが、あれは在り方がねじ曲がっている」

 

 

 黒髪の美女さん。もとい、頼光さん。ただ、そのまま歩こうとしていた私を金時様は肩をつかんで引き寄せ、前に出る。

 

 

 「違う。とは? しかし、あの方が頼光様ですか」

 

 

 「ふふふ・・・同じことですよ」

 

 

 「いいや違うね。そうだろう? 天魔の総大将、鈴ヶ森の丑御前サンよォ」

 

 

 その瞬間頼光様から急に一気に膨れ上がる魔と神性の気配と圧。先ほどまでこれを隠していたとは思えないほどの怖気が背中を駆け抜け、冷や汗が少し出てしまう。ここまでの圧はちょっとヴォーティガーン様を思い出すほどだ。

 

 

 「ふむ・・・・頼光様だけど頼光様ではなく、丑御前・・・二重人格。あるいは神性、魔を持つ者ゆえの側面。ですかね? 神様と荒魂の側面といいましょうか・・・」

 

 

 「まあ大体そんなところだ。で、だ・・・・なんでアンタこんなところにいるんだよ」

 

 

 「ええ。この鬼ヶ島を作ったのは、おそらくあの聖杯。魔術王が用意したであろう物。それを興味持たないのは、不思議ですよ?」

 

 

 まさしくあの優しい笑顔と同時に内包する狂気の側面といいましょうか。確か半神の類に近しい存在だったと覚えていますがそれゆえか。兎にも角にも、金時様が大将。様付けするほどに付き従い、敬意を払う京の守護神と、目の前の悪鬼羅刹も首を垂れるような気配を放つ丑御前は似ているようで違う同一人物であり別人と。

 

 

 うーんややこしい。頓智を聞いている気分です。一休さん呼びたい。

 

 

 で、同時まあ分かり切っている答えではある。天魔の総大将がこの鬼ヶ島にいる。あの杯に何の感慨もいだかない時点でそうだろうと考えているが一応は、確認も込めて聞いてみる。

 

 

 「では、お二人の質問に同時に答えましょう。母がここにいる理由は簡単。ここにいるのが答えであり、聖杯に興味を持たないのはそれは私のものだから」

 

 

 「・・・・ぁー・・・やっぱり。一応聞きますが、その聖杯はどこで手に入れました?」

 

 

 「魔術王と名乗るものから。好きに使っていいが、時が来ればカルデアなる場所からやってくる輩を排除するための場所としての場を用意しておけという約束の下でこの鬼ヶ島を作りました。

 

 

 完全なる鬼たちの王国を作るために」

 

 

 もう自分の正体を隠す気がないようで、丑御前の覇気は周りの天候とも鳴動するように周囲の雲が荒れまわり、雷光を轟かせ、雷が海に落ちては轟音がなる。

 

 

 「おぉん・・・そうですよねえ・・・・国産み、島産みレベルの権能なんて牛頭天王の化身としての力に卓越した武力を持つ貴女様なら、資材をどうにかできる。用意できる聖杯があればそりゃあ島の一つ二つ用意して、しかもそこを好き放題に造るための人手と鬼も用意出来ましょう・・・」

 

 

 「あらあら。やはり聡い方ですね。魔の匂い、術式や神々の匂いや気配を多く感じるも、御身自身はどこまでも人。されどその武芸は実戦で磨かれつくしたもの。私と同じ匂いを感じましたが、その通りです」

 

 

 「ちょいと待ちな。鬼の国だと? アンタ、鬼は虫だのなんだのとだいっっ嫌いじゃねえか。頼光四天王の頂点。源氏棟梁として多くの鬼を切ってきた。そのアンタが今更鬼の国。そんなバッドでデンジャラスな国を作るだと? その理由は何だよ」

 

 

 何でか知らないけど私もロックオンされていた様子。もしかして道中で私も金時様と一緒に観察されて、丑御前流の勧誘とそのための実力試験されていましたか私?

 

 

 で、同時にそりゃあ丑御前、天魔の総大将とはいえ同時に頼光様でもあるので金時様も眉間にしわを寄せて質問をぶつける。いくら今は丑御前が出ているとはいえ、もとより魔を切り、闇を払い人々を守護し、酒呑童子をも征伐したほどの武者が何だって今更鬼のための、その血筋と化身の側面を考えれば納得だが、なんで今それをするんだと。投げかける。

 

 

 それに丑御前は頬に指をあててはて。と小首をかしげた。

 

 

 「・・・はて、理由。ですか。それは・・・えっと・・・ああ、そうですね。私たちまつろわぬ者共の復権。というのはどうでしょう? この土地に古くから住まうものであるというのに、鬼だから、妖だからと異形であるだけで退治される。それは無体だと、頼光はなんとなく思っていました。

 

 

 ですので、今回はそれを理由にこの鬼ヶ島。魔のための国を作った・・・・・というのは、筋が通っているのではないでしょうか? 華奈さん。貴女も分かるでしょう? 恐らく常日頃から魔と触れ合い。しかして魔とともに人の共生をしなければそこまでべったりとこびりつかないほどの狼や魔の匂い。戦友が異形だからと迫害される。退治されるというのは無体なはず」

 

 

 その理由に、私も半分は納得は出来る。ブリテンでも人に被害を出す、あるいは必要以上に暴れすぎるからと先住民であるはずの魔獣や害獣を退治したりはしたものの、宗教の関係で土着の考えや奉られて信仰されていた存在を追い出されるのを忍びないと。

 

 

 仲良くできるものは銀嶺隊に入れたりこっそりかくまい、あるいは早めに星の内海やアヴァロンに送ったりと傷つけないように穏便に対処をした。隠れ住むことなく堂々と過ごせる場所は魔や妖、異形にもあってしかるべき。そこは分かる。ただ、その上で同時にその意見だと納得いかない部分が出てきてしまう。

 

 

 「それなら、なぜ私と出会った時に鬼たちを容赦なく斬り捨てたのですか? 貴女にとって鬼ヶ島を作るべき労力であり、住人であり、天魔の総大将である貴女には部下です。

 

 

 鬼の、魔のための国を作ろうとして置きながら人への害をなす鬼を嫌い斬り捨て、同じく私も鬼を切りながらも怒ることはなくその武芸を褒めた。変ですよ」

 

 

 「ああ、それはほら。私も頼光も鬼とか嫌いですから」

 

 

 「・・・・・・・・・ほへ?」

 

 

 「魔国を作るための労働力ですが、目につけば処分します。人間は食べ物なので保存する価値はありますが・・・ああ、華奈さん。貴女は例外です。鬼は、ほら。醜いだけで何の価値もないでしょう?」

 

 

 「っ・・・・・」

 

 

 絶句。それ以外の言葉が思いつかなかった。鬼のための国、魔のための国を作ると言いながらその鬼を嫌いと言い捨て、醜いと罵り、一方で魔獣や精霊とも共生したり仲良くしていたとはいえ人間の私は特例と言ってしまう。滅茶苦茶だ。精霊やオーガと触れ合ったことは何度もあるがここまでねじ曲がっているのはそうそう出会わなかった。

 

 

 「いや、しかし・・・部下でしょう?」

 

 

 「ええ。でも無価値ですよ。だってこの島の鬼たちも全部私が作ったもの。たまたまうまく描けた。強くできそうなものには大鬼として役職と力を与えましたがそれ以外は汚らわしい落書きばかり。自らの至らなさを見るのは辛いもの。この島の工事が終わればまとめて処分する気です」

 

 

 「うわぁちゃ・・・要は使い魔だったと。しかもその使い魔は自分が嫌いな鬼で用意しましたって・・・鬼ヶ島ですからそりゃあ鬼がやるのはあっていますけど・・・」

 

 

 「忘れていたぜ・・・あの鬼ども、どっか見覚えがあったがあれか・・・ガキの頃、頼光様に描いてもらった鬼の絵か・・・」

 

 

 なんというかもう。凄いですねえとしか言えない。何がすごいって、多少は鬼とかそういう人ならざる者の機微とか少しは分かるんですがここまで一切の曇りもなく心からこれが最善と考えているのがありありとわかるということ。

 

 

 これくらい頭のネジとんだ上で倫理観と思考が変じゃないと天魔の総大将にはなれないんですかね。

 

 

 

 「どうです二人とも。この島は中々のものでしょう? 私たちは人と神の気まぐれでその人生を振り回されてきました。人界では生きづらく、たとえ人を守り、貢献したとしても生まれやそばにいるものでつまはじきに合い、陰で眉を顰められる。

 

 

 でもこの島なら人目を気にする必要もありません。ここまで面倒なことは本当はしたくなかったのですが、下手に日ノ本でこれをしようものなら、金時に怒られ、華奈さんの組織が怒るでしょう? 子供の遊び場は大事に、カルデアに目をつけられぬようにするにはこれが最適でした」

 

 

 「あー・・・・・・よくわかりました。同時に、先に謝っておきましょう。金時様。貴方にも」

 

 

 「謝ることはねえぜ。ミス・シルバー。今回の件は俺の責任だ」

 

 

 子供の遊び場と自分が過ごすために魔神王から聖杯をもらい、人をどこかから調達し絵から鬼を作りその鬼を無下にする。どこまでも我欲でここまでのことをしでかしてしまう。それもすべて善意からしているというもの。

 

 

 こんな存在は申し訳ないけども善意と言えども、厚意と言えども受け取れない。秋水と陽炎を抜き、戦闘態勢に入る。

 

 

 「・・・なぜ母に敵意を向けるのですか二人とも? ここはあなた達のために造った島だと言ったでしょう? 本当は天守閣が出来てから自慢したかったのだけど、秘密にするのはここまでです。さあ、来なさい我が頼光四天王。私が認めし剣豪。安心して私のもとに来るのです」

 

 

 「そいつは待った。丑御前さんよ。アンタが本質的には頼光様と同じだってコトぁよく知っている。源頼光の功績はアンタの功績であり、丑御前の悪行は頼光様の罰だってな。・・・・・・アンタにはとても返せねえ大きな借りがある。恩人で、尊敬だってしてらぁ。

 

 

 だがよ。それでも言わせてもらうぜ。テメェ。やっぱ要らねえわ」

 

 

 「何・・・ですって・・・?」

 

 

 

 思いっきり丑御前を理解した上での完全拒絶。流石にこれには今まで余裕を持っていた丑御前の顔が歪む。うん。私も同じことをギャラハッドやマシュに言われたら泣くかもしれないですね。

 

 

 

 「テメェなんざ怖くねえって話だよ。頼光様の説教の方が何倍も怖え。それになーにが俺たちのための島だよ。行き場のない自分のための。魔術王に、カルデアにビビって用意しただけの場所じゃねえか。

 

 

 俺の知る頼光サマならよぉ。たとえ角が生えようが牛神になろうが天魔になろうがこんなことはしねえ! 魔術王に喧嘩を売って、ミス・シルバーと一緒にカルデアで戦いに参じることを望む!! 自分のことで苦しんでも、泣いていじけて駄々こねた後にドーンと京を守るために、人を守るために構えるのが源頼光だ!! テメェなんざ鬼落ちした挙句に格上に喧嘩売る気概もなくなった敗北者だ。さっさとその聖杯を寄越して頼光サンに戻りな。こんなとこで足止め喰っている場合じゃねえんだよ!!」

 

 

 うーん痺れる。そしてかっこいい。これは快男児。皆が憧れる武士の坂田金時です。

 

 

 「まあ、そういうことです。私達のためにとは言いますが、それならその聖杯と、頼光様を呼んで一緒にカルデアで魔術王をしばきまわすために来てください。それがだめなら・・・げんこつの一つでも落として、無理やりにでも帰らせてもらいましょう」

 

 

 「・・・・・・そうですか。同じまつろわぬものとともにあるものとしてわかってくれると思っていましたが、あくまでも人の側につくと。正直、見逃してもいいですがそうもいかないのでしょう? 人の世を守るのなら人以外の頂点を認めないということ。まったく。どちらが鬼なのですかね? 皆殺しにするという結論において私たちは同じなのにね?」

 

 

 「なーに言っているんですか。私はそういう人の世になりつつある世界からまつろわぬものたちを、妖精を、星の内海に、アヴァロンに避難させたりすること。異界へ逃すことで対処をしていました。決して皆殺しは一度もしていません。むしろ人間の軍隊を皆殺しにしている方です。

 

 

 この日ノ本だって異界に行くための道も避難場所も、星の内海に行く場所はあったはず。それを選ぼうと、探そうとせずに島にこもり勝手に皆殺ししかないと考えてしまった貴女の浅慮が招いたことですよ。だからここで教えましょう。島に引きこもらずに、人と魔が共に支え合った軍の長として道を示しましょう」

 

 

 「いいか、丑御前。今から俺はアンタをぶっ飛ばす。ただ、それは決して俺が源四天王の一人金太郎だからでも、ミス・シルバーの、カルデアのためでもねえ。息子として母親の馬鹿騒ぎを止めるってだけだ。そこんとこ間違えんな」

 

 

 私と金時様はそろって啖呵を切る。貴女の善意はもう結構だ。今ここではっ倒して、カルデアに戻るためにも、丑御前が、あるいは頼光が考えもしなかった軍隊の、あの頃のブリテンの在り方を伝えるために。そして、身内の暴走を止める一人の息子として。刃と拳を丑御前に向ける。

 

 

 「・・・・・・!! あ、ああ・・・・やだ、ダメ、いけません、母親なのに、ああ、身体の奥が熱い! 熱い!! 嬉しい嬉しい、嬉しいです金時、華奈さん!! それは・・・愛ですね!

 

 

 それなら私も本気になれるというもの! ここであなた達の思いを全て受け止めて・・・貴方たちを()してあげることが出来るのだから!!」

 

 

 あちらもこの啖呵に火がついたようで互いに戦闘態勢に。なんか変な気もしますが、そこはまあ、シンプルに自分に真っ向から思いをぶつけてくれるというのと、天魔ゆえの価値観でしょうか。

 

 

 「ふぅ・・・まあ、とりあえず色々濃かったですが、ここを切り抜けて聖杯を手にすればここを脱出できる。というのは合っていそう。金時様。頑張りましょう」

 

 

 「ああ、身内の馬鹿騒ぎのせいで巻き込んですまねえが、手加減してどうにかできる相手ではない。黒焦げにならないようにいくぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「その人類の終焉を観たかった、知りたかった。どうしてそうなるのか、なんで、なんで・・・

 

 

 ひたすらにそう思った。自由になった。だけど、それとほぼ同時にこれを見たせいで見過ごすことは出来なかった。直感で僕が原因だと思ったから。だから・・・一からやり直した。そしてそこには彼女もいた。

 

 

 『じゃあ、私も働く場所が欲しかったので一緒にいますよ』

 

 

 何もかもを学び直した。あらゆる役立つことを学んだ。何かに備え続けた。そして、そのそばには常に華奈も一緒にいて、一緒に前に進み、わけのわからないけど破滅の未来に備えた」

 

 

 そうつぶやくロマニの顔は、苦しそうに思えた。けど、違った。

 

 

 

 「とことんやること山積みで、人になったというのに損だってつぶやくこともある。だけど、それがとことん『楽しかった』自分で自分の生き方を選べる。そしてそれをそばで支えて、時には叱ってくれて、褒めてくれて、ぼく個人を見てくれる姉のような存在が常にいた。楽しいし嬉しい。苦しいけどそれが常にあった。

 

 

 自分で何かを成し遂げる。『ロマン』に溢れる人生。それの理解者がいた。何が原因かわからないけど、破滅に備えて頑張る日々を過ごすものでも。でも、でもね・・・楽しかったんだ」

 

 

 その笑顔はすごく晴れやかで、作り笑いやごまかすようなものではない。文字通り本気でその人生を苦しみつつも経験できたことを本当の宝物として、最高だと断言する。

 

 

 僕らはそれが苦しいだけに思えるはずなんだけど、自分で動いて、お姉さんみたいな人がいて、とことん自分で自分の人生を動かすことはきっと生前にはありえなかったのだろう。

 

 

 「そうして過ごすうちに、藤丸君。君が来てくれたんだ。これが、君たちに黙っていて危険な目に合わせた男の話さ・・・・・」

 

 

 ロマニの話が終わり、静寂が少しの間場を包む。それを破ったのはダ・ヴィンチちゃんの拍手だった。

 

 

 「おめでとう。ロマン! ようやく君の涙を流しながら駆け抜ける自由が終わったんだ。今までよく頑張ったね!!」

 

 

 その言葉は、まさしく総意だったと思う。

 

 

 「これだけのことを、お母さん、ドクター、ダ・ヴィンチちゃんの三人だけで話さずにいたんですか・・・?」

 

 

 「本当なら三人だけで誰にも話さずにいたつもりさ。僕は最後に僕の持つ切札で魔神たちに引導を渡すつもりだったよ。だけどね・・・もう限界だったんだ。

 

 

 だってさ、みんなみんな素敵で、困難に立ち向かっていく姿に。なにくそとこの異常事態に立ち向かう強さに、優しさに嘘をつきたくない、騙したくない、後ろめたいことをしたくないって思ったんだ。それに・・・・

 

 

 『貴方は必ず私が未来を見せて自由をこれからも続けてもらいます。ロマンという名前を名乗るのなら、その名に恥じぬ人生を。ソロモン王の時代よりうーんと長生きさせちゃいますよ!!』そう言ってどこまでも突っ走り続ける華奈に。常に明るく馬鹿をしたり愉快に支え続けた僕のお姉さんに、恥じない生き方をしたいんだ・・・!!」

 

 

 そういって滂沱の涙を流しながら笑うロマニ。自分が原因だって、二度目の人生もつぶれそうなのに、それを支え続けて、ずっとずっと。この人理焼却を支え続けた聖杯戦争からの、十年以上も陰に日向にと支えた華奈さん。

 

 

 あの人のように素直に、何の陰りも隠しもしない人生を歩みたいんだって。ソロモン王。いや、ロマニが選んだことなんだ。その覚悟の重さ。一体どれほどのものか。

 

 

 「そっか・・・それなら、俺もこれからドクターを支えたいな。マスターの考えに、ドクターの考え。俺は感動した!!」

 

 

 「ああ、確かに過去に原因はある。だが、それに立ち向かう勇気があるというのなら、支えてやる。自分のケツを自分で拭こうって頑張る青年を支えないのは男が廃る」

 

 

 ロマニの肩を叩き、支えると言って笑顔を見せるのはストーム1、大尉。

 

 

 「おうよ! どれだけ謝ったって腹の足しにも特異点攻略の支えにもなりゃしねえ。だったら。これからも助けるから俺たちも助けてくれよ先生!」

 

 

 「そうそう。それに、僕はカルデアのドクターはあなたしかいないと思いますよ」

 

 

 「ドクター働き者でさぼり魔なのが面白いけどなるほど全力でどっちも味わっていたんだねえ」

 

 

 そういってストーム2の皆が笑顔でロマニの背中をさする。

 

 

 「私からもお願いしたい。確かにこの人理焼却はソロモン王の魔神たちが起こした騒ぎだ。だけど、ソロモン。いや、ロマニもそれを悔いて、自らを犠牲に動いて解決するつもりだった。だけど華奈はそれをどうにかするために動いて、戦っているんだ。

 

 

 私と、華奈の願いをかなえる意味でもどうかロマニをこれからもこのカルデアにおいてほしい」

 

 

 「ちょっ。ダ・ヴィンチちゃん!? 土下座なんて」

 

 

 「日本ではこれが最上位の謝罪とお願い何だろう。どうか頼む。私にとっても大事な友人の命のためであり、願いなんだ。この通り・・・・!」

 

 

 「頭を上げて体を起こしなさいダ・ヴィンチ。そして、ソロモン王。いえ、ロマニ。貴方の事情は理解しました。そして、その上でカルデア所長として言い渡します。

 

 

 現在の医療チームの責任者でありカルデアの技術や知識、経験を持つ人材はあなたしかいないです。何より、貴方が華奈といてくれたからこそ私は今を生きてカルデアはここまで来れました。これらと相殺して、さらには必ず目を覚ます華奈のケアと治療に全力を尽くすこと。いいですね」

 

 

 腕を組んでロマニの目を見つめてまっすぐに処罰を下すオルガマリー所長。その裁定に皆がわっと沸き立つ。

 

 

 「所長! にくい裁きをしますね!」

 

 

 「ふん。どこかの変人騎士のせいでしょうね。それに人材という意味でも、大事にするべき人でもありますよドクターロマンは」

 

 

 そういいつつも少し頬を赤くしているし目を潤ませているオルガマリー所長。自分もなまじ追い詰められた日々を走っていた分。感じ入るものもあったんだろうなあ・・・英霊の皆も打ち解けていき、笑顔をみせるなか。

 

 

 「ありがとう・・・ほんとうに・・・ありがとう・・・! 華奈は、ちゃんと戻ってくる。だから、ちゃんと待って、すぐに最高のケアをするよ・・・・!!」

 

 

 子供のようにわんわん泣きながらも気合を新たにするロマニ。ロマニの方の問題はどうにかなった。ただ、問題はまだ解決していない。

 

 

 ベッドの上でピクリとも動かない華奈さん。魔術王によって魂を飛ばされた先でその魂が死んだら意味がない。これからは華奈さんがいつ戻ってくるか。その間は身体を衰弱させないように栄養の点滴をつけて置き、見守るほかなかった。

 

 

 特異点解決のレポートを出しつつ、対策会議を先にしつつ、祝勝会は華奈さんが帰ってきてからということに。早く帰ってきてくださいね華奈さん。もうロマニさんは一歩前に進んで皆に受け入れられて、皆で待っていますから。




 まあ、丑御前ならこれくらいはしそうよねって。コラボイベでのあのぶっ飛び具合。そりゃあ金時が自分の育ての親、母親代わりである存在の側面を要らねえと言わしめますわ。


 ということで母親経験ありの華奈と頼光、息子の金時も参加してクライマックス。壮大な親子喧嘩ですなあ。
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