転生愉悦部の徒然日記 作:零課
華奈「んー・・・明日はラーマ様とシータ様は一日お休みにしましょうか」
ラーマ「まて、華奈殿よ。流石に恩を返せないのは余も心苦しい。本調子に戻ったから是非・・」
華奈「明日は私達だけでどうにかなるので予備戦力としてうちの領地で休みつつ二人でデートでもしてきてください。はい。ロット様からのご祝儀のお金とうちの領地のデートスポットのマップですのでお役立てくださいな」
シータ「あ、あの・・・本当にいいのですか? 遊覧飛行といい、ここまで至れり尽くせりで」
華奈「いいんですよ。これはレジスタンスの主要メンバーの総意です。それに、英気を養いいずれ大仕事してもらうので。あ、うちの領地だと私の館が一番いいとは思うので客間でおくつろぎを」
「さて・・・今日で練兵の成果を見せる日ですね・・・」
「んー・・・沖田さんにはあんまりわかりませんが、銀嶺隊にレジスタンス兵を付いていかせていいんですか? しかも守備に英霊を使ってまで多くの兵士を」
「いやーようやく派手に暴れられるか。わざわざいい装備をサンキューな」
ラーマ様たちを無事に領地に届けて翌日の三日目。モードレッド様から先日の様子を聞いて問題なさそうなので私も戻っての今日も押しかけてくるケルト兵たちを蹴散らしつつ、仕込みの成果を見る大事な日。
クー・フーリン様にも認識阻害の魔術を纏った外套をメディア様とフラム様、私達の部隊で作製してつけてもらったのでとりあえず史実のようにゲッシュでハメ殺されるのはない。と思いたいですね・・・
「沖田様。大丈夫ですよ。私を信じてください。ストーム。配置は?」
「問題なし。俺も今回は白兵戦用の最速フェンサーだ」
「よし。クー・フーリン様。コ―ウェン将軍たちの方は」
「今出たそうだな。映像記録の道具もバッチし」
すべて準備は問題ない。ならばあとは目の前に群がり包囲しようと広く広がる初日の数倍のケルト軍を蹴散らすのみ。
「兵士たちに告げる! ただひたすらに突撃し、あの馬鹿どもを殺し尽くせ。それだけです!」
私が声をあげて拳をあげればそれで銀嶺隊もレジスタンスも声を張り上げ銃、剣、槍、それぞれの武器を掲げる。この気合の量。士気の高さ。攻めに転じるといううえでこれは・・・いける。
「全軍、突撃!」
号令をかけて銀嶺隊が錐型の陣で突撃して足の都合でレジスタンスたちが後方で方陣を組んで突撃。
「アンナ様。防御結界」
「了解。アンナ隊。守備結界最大展開。上だけでいいわ」
降りかかる弓矢はレジスタンスを守る分だけ魔術結界をアンナ様の方で用意して守ってもらい、いざ激突。
「うぉおお! 今までの分のお返しだ! 撃て! 撃てぇ!!」
「リロードの間のカバーを忘れるな! ショットガン、かんしゃく玉、を合間に入れて押し返す、息を入れるのが大事だと大尉殿の忘れを徹底だ!」
「弾丸の量、つまりは攻撃の手数は俺たちが何倍も上なんだ! ケルト兵よりも殺せるぞ!!」
私たちの方は問題なくするすると殺せる中、レジスタンスの方も防御陣地を抜けての攻めにも果敢に動き、伍を組んでしっかりとケルト兵たちを圧倒。文字通りの圧勝劇を続けている。
「ははっははははは!! おいおい! マジかよ。ケルト兵を圧倒しているぜ! この士気・・・いいねえ・・・戦場はこうでなくちゃぁな! 俺も行くぜ! 手柄をこいつらとストームにとられる前になあ!」
「あ、ズルいですよクーさん! 沖田さんも行きます!」
この勢いを見てそれに乗っかる形で前に出て敵兵を切り殺し、突き殺すクー・フーリン様と沖田様。これについていく形でレジスタンスも銀嶺隊のいない、敵兵の中に自ら突っ込んでいく。よしよし。これは順調。
「よーちょいとあっちと遊ぶ前に俺と遊んでもらうぞ野蛮人ども!」
私たちの部隊を挟撃の形にしようと動くケルト軍には最速装備ゆえにぎゅんぎゅん動き回るストームがフォースアックスG3、電刃刀・八閃とデクスター自動散弾銃ZGXXでぶつかって対応。何がひどいって私たちでもほっておくとどこに移動しているか分からないほどの速度で刀と斧を振るって衝撃波と斬撃でぶっ飛ばし、ワイバーンや弓矢に関しての対空支援もできちゃう。
更にはあの速度かつ、EDFの最新式戦車以上のパワーで動き回るのでケルト兵たちはそれにぶつかるだけで見事肉塊に早変わり。一人軍団と言えるほどの大立ち回りに全軍も士気がさらに上がってケルト兵を恐れずに突っ込んでいく。
さぁ・・・反撃の時間です!
『な、なんだこれは・・・いくら装備がそろったとはいえ、今まで攻めること、防御陣地から出ることは嫌がっていたレジスタンス兵なのか? 三日前とはまるで別人だ』
「え、ええ・・・本当に・・・まるでレジスタンスも銀嶺隊になったかのような攻撃力と勇敢さ・・・」
「当然ですよ。しっかりと練兵をしたんですから」
戦場を観戦しに来ていたオルガマリーとモニター越しにカルデアでもこの暴れっぷりに驚いているロマニ。私の方は今回はお休みという子でしたが、一応防御のために近くにいましたが驚くのも無理はないです。
「え、でも特に領地内で練兵以外にどうやってあそこまで士気を・・・」
「うーん。そうですね。まずは手順を追って話しましょう。まずレジスタンス兵士たちは基本今の生活を守ることに関しては士気は高いですが攻めかかることは嫌がり、アメリカの奪還はエジソンらに丸投げ。これではいざ前に出るという時に、今後一つの軍として戦えないです。温度差がありますから。
だからまず初日は銀嶺隊の強さを見せてこんな頼もしい戦士が来たんだと見せるためにわざと銀嶺隊と英霊たちだけでケルト軍とぶつかりました」
「それは見ていたわ。銀嶺隊だけで数万の敵軍を蹴散らしていたもの」
英霊という存在と、銀嶺隊。ただでさえ私が王様していた時も円卓の騎士の部隊三つ用意しないと止めきれないほどの攻めをできる軍に更に戦力マシマシ。ええ。そりゃあそうなります。
「で、二日目はわざと姉上とマシュという銀嶺隊の総大将とその娘を抜いたうえでも戦い、さらにはケルト軍をレジスタンス軍の守備陣地に誘導するように動き、その際にオルガマリーとエミヤが用意したEDFの最新火器を使って対処。ぱっと見では銀嶺隊の取りこぼしを処理したように見えるでしょうけど
レジスタンスの方からは新武装はケルト軍を圧倒し尽くせる性能と自分たちがここまでの大戦果をあげられたという自信。銀嶺隊と連携をしてここまでやれるんだという経験を得た」
『つまり、レジスタンス兵はケルト軍にも戦えるんだ。前に出て、銀嶺隊と一緒ならいけるかもという自信を手に入れた』
「その通りです。自信の大きさは士気の高さ、その自信は伝播して一人一人を前に動かす熱量となる。三日前のレジスタンスと今目の前で暴れているレジスタンスは別の軍と言っていいでしょう」
そう。前に出ること。守備の有利の法則を捨てて前に出るというのはとても勇気のいること。この広い大陸の半分まで押し込まれる。逃げ続けた恐怖を振り払うというのは難しい。でも、それを三日で覆して一人前の兵士たちに育て上げてしまった。おそらくケルト軍の方でも予想外だろう。
「この成果はオルガマリー、貴女のものでもあります。いくら自信があっても兵士に多くの被害が出ては逆戻りする可能性があった。そうさせないほどの武器弾薬の用意が出来てこそ。流石はカルデアの所長。工場一つを運営するのもお手の物ですか」
「そ、そうね。ふふふ。ありがとうアルトリア。私がこれの助けに・・・」
『いやあ、凄まじいとしか言えないねこれは。華奈やストーム1、沖田君にクー・フーリンの暴れっぷりがここからでも目立つけど、逆に言えば銀嶺隊があまり支援をしなくてもレジスタンスたちも各々部隊ごとに対応をしてケルト軍を圧倒している。
半分包囲されるような状態でもその包囲も食いつぶしている始末だし』
士気の高さ、武装の更新による火力の高さ。銀嶺隊と英霊という将官の存在。これらを手にしたレジスタンス軍の「力」は数倍の軍相手にはものともしないというのがわかった。
しかも、レジスタンス軍は今日の勝ち戦を糧に更に成長して強大に、自信をつけていく。今後の育成次第ではまさしく精鋭部隊となっていけるはずだ。
「さて・・・戻りますか。後は藤丸君たちと、裏方の成果を待って動くだけになるでしょうし」
だけどこれだけで確実にケルト軍には勝てない。アメリカの被害を減らすという意味ではこの軍だけが強くては意味がないのだ。武官の方は働きを見せた。次は文官の方です。
「うおっほっほ。どうですかね? エジソン王。これらを見て、この手土産をもってしても、聖杯をあきらめるというわけにはいきませんかねぇ?」
「ぬぐ・・・駄目だ。我が偉大なるアメリカを守るために聖杯はたとえカルデアと言えども渡せない・・・」
「おやおや。しかし、そちらには以前戦線を押し上げる成果もなく、わが軍は今日で既に拠点をいくつか奪取して砦を修理して前に出ております。銀嶺隊のみならずレジスタンスたちの成果で」
金髪の髪に浅黒い肌、サングラスで視線を隠しつつも朗らかに笑う目の前の男。コ―ウェン。オークニーで文官みたいな将軍というのはアーサー王物語の書物で知っていたがなるほど納得する。
そして同時に見せられる今日行われているという戦の内容と我が国の伝令、機械兵たちからもたらされる情報と合わせて見せつけられる。レジスタンス軍が前に出て勝利している。我が国の労働体制と物量よりも緩い政治体制を敷いているあの地域の兵士がケルト軍を圧倒して進軍。失地回復を大成功させたというニュースはもうアメリカ中に広がってしまった。
「エジソン王。貴方は先を見据えて動くのはいい。しかし、いささか守りに入りすぎている。そして頑固だ。武器の方に関しても私たちの武器より自分の武器が優れていると言っていましたが、それならなぜこの成果を出せない?」
「そ、それは銀嶺隊のような存在がいないからで・・・」
「なぁにをおっしゃいますか。カルナという最高峰の英霊を手元に置いておきながら。・・・・・・まあ、武器の設計図と食糧支援の方はお土産ということでお渡ししておきましょう。いずれは華奈殿と再度じっくりと話し合っていければと思います。
レジスタンスは生まれ変わり前に出て攻めて行ける。勇気を取り返しつつあるので軍事協力。共同戦線、作戦立案もできるのでね。では」
彼はそう言って頭を下げて中折れハッとをかぶって出ていく。バタン。とドアが閉まった後に大きくため息をつきつつお土産と言って持ってきたアサルトライフル、スナイパーライフルなどの設計図を見る。
「むぅ・・・どれもこれもが最新・・・いや、私でも知らないような技術やノウハウが詰め込まれている・・・2022年以降の最新火器とはこれほどに・・・これをすぐに用意できただと?
いったいどれほどの手腕を用いて・・・」
「わわ! これ竜種の肉じゃない! しかもアルカトラズの方の!? 後顧の憂いも断ってきている・・・私たちがひーこら言っている間に一気にレジスタンスは動いているのね」
エレナ君もお土産の中にある大量の冷凍されている肉が竜種であること、我が国の海。アルカトラズ刑務所にたむろしていたワイバーンらも殲滅していたことが分かり、ますますもって頭が痛くなる。少数精鋭のレジスタンスの方がここ数日で大戦果を挙げ続けていること。
銀嶺隊が来て以降守ることはできるが攻めは出来ないはずの臆病な軍隊がいきなり数十キロの失地回復を成し遂げたこと。これらをもってレジスタンスの方。いやカルデアか。あちらが共同戦線の誘いとイニシアチブを奪うための話を持ち掛けてきて、聖杯まであきらめろと言ってきたのだ。
我が国を守るためにも、ケルト軍を物量で押し返す政策を間違いだと認めないためにも飲めない話ではあった。だけどこうして見せられる数々の成果。そして科学技術。竜種の肉という幻想種の頂点の一角まで仕留めているとなればその考えも揺らぐ。
数日前から国中に出ている新聞や情報でもレジスタンスをほめたたえているのも相まって逃亡、脱走してあちらに行くものばかりだ。
「やっぱり華奈のそばにいたあの英霊・・・ストーム1って言っていたわよね。人類最新にして英雄王が勇者と認める戦士・・・彼の方もつれていけなかったのはまずかったようね。
ね、エジソン。もう一度華奈たちと会ってみないかしら?」
「うぐぐ・・・しかし、しかしだなあ・・・あちらに主導権を握らせる。アメリカを魔術王から守るためには・・・」
「だからこそ。よ。私達は一度聖杯を取る。カルデアに渡さないと言っていたけど、魔神柱も、いくつもの特異点を越えたカルデアで何かあれに対応するための技術や対策を練っているかもしれない。
なにより、ロット王を召喚したのがかのモルガン。しかも今も生きて技術を磨いている。その娘のモードレッドに騎士王もいる。下手にぶつかれば結局ケルトを倒しても私たちも共倒れで何も残せないわよ」
「ふむ・・・・・なら、此方もこの武器を製造して、戦線を安定させてからだ。武器を見て、彼らの誠意を見てからだ。オイ、君。この設計図を急いで製造ラインに回せ!」
「了解しました!」
ふぅ・・・アメリカを守るために・・・か・・・・・・・・私は間違っていたのか・・・? だから、英霊たちの方も来なかったのか・・・? いや、そんなわけはない。だけど、この勢いの差は何だ・・・?
「くふぅ・・・銀嶺隊の目覚ましは強力だったな・・・」
「でも、納得でしたね。クラーク殿の顔、思わず驚くほどでしたし」
シータと迎える朝。クラーク夫妻の。クラークの顔に自分と嫁のシーマが驚く悲鳴で目が覚めてしまって迎えたが、シータがそばにいる。もう王様としてのしがらみもなく、呪いもなく一緒に過ごせることを夢だと思ってしまうほど。
二人で一緒に急いで駆け付ければクラークのおどろく顔に思わずぎょっとなってしまった。あの迫力はなれないな。ラーヴァナよりも怖いとは思わなかったぞ。
それから再度シータと一緒にベッドで過ごし、銀嶺隊が出て行った後に開放される華奈殿の屋敷の食堂スペース。そこではみんなが思い思いに食事をしつつ、譲り合い、おすそ分けと緩やかな時間を過ごしていた。余らも一緒に味わったが、今でいうところのビュッフェ? バイキング? のように色んなご飯をられ手大変満足であった。
銀嶺領地を回ることになったが、さて、どこに行こうかと地図を広げる。料理屋さん、浴場、広場、公園、牧場、釣り堀・・・ふーむ・・・・
「シータ。どこに行きたい?」
「ラーマ様と一緒ならどこへでも・・・」
「む・・・むぅ。じゃあ・・・とりあえず自由市に行ってみよう。色々あるようだしな」
「はい!」
とりあえず朝の賑わいがいいという自由市に出向くことに。広場から大通りに広がるそこは、まさしく銀嶺領の賑わいが集まっている一つと言っても過言ではない。
常に人の波があり、どの屋台の商品も山のよう。果実一つとってもみずみずしく、酒に肉、武具に果てには玩具に古本、古着まで扱っていてそれらがどの店でも繁盛している。
特に書物に関してはそこら辺で子供たちが読みふけ手って楽しんでいる。識字率の高さには驚かされるばかりだ。
「ほほぉ・・・」
「うわぁー・・・すっごい・・・」
「おお、そこの二人はラーマ君とシータちゃんだね?」
「む、そうである。ご主人。知っているのか?」
ただ物見遊山するだけでも刺激的だったがその中で屋台をやっている老夫婦の内男が声をかけてきた。
「ああ、私は元銀嶺隊で引退したものでねえ。華奈隊長がお前さんらを褒めていたんだよ。凄い夫婦だってな。私も隊長に救われて漁師と騎士として戦ってこうしている身だ。サービスしていくから、軽食を良ければどうだい? 魚料理は自信があるよ」
そういってニヤリと微笑む顔は深いしわの中に確かに戦の傷、鍛え上げられた肉体と気風を持っている。そばにいる狼も年を取っているが身体は大きく、目は優しくも鋭い。老兵。あの戦士たちを導いた先達といったところか。
「ふむ・・・ではひとついただこう。お代の方は・・・」
「新婚旅行をしているようなものだろう? いらんいらん。ささ。席に腰かけておきな。おーい母さん。お客さん二人―」
「はーい! ささ、座って座って。うちの料理だと揚げ物とイモ料理は最高よ♪ はい。お茶をどうぞ」
「うむ。ん・・・おいしい・・・」
「香りがいい・・・リンゴのお茶でしょうか? スッキリとしているのに甘い風味が・・・」
ただでこのお茶を出しているようで、飲み放題とは儲かっているようだ。シータのおいしそうにお茶を飲む顔が美しい・・・
ふむ・・・フィッシュ&チップス、ボイル焼き、鮮魚を買うのみならずこういう料理も売っているのか・・・うーむ・・・む? バーガー? メルルーサ?
「ご主人。このメルルーサのフライバーガーとは?」
「ああーそれね。美味しい白身魚を油で揚げて、パンで挟んで食べるハンバーガーっていうこの国の料理らしい。美味しかったんでうちでも新メニューに出したのさ。歩きながら食べられるし若者に受けているぞ?」
ほほう。アメリカの料理と美味しい魚。食べ歩きとは行儀が悪いが二度目の人生。ましてや華奈殿の元部下が出している店にあるメニュー。風評などを気にしないでいいここでなら食べ歩きという少し悪いことをして歩くのも、二度目の生。シータもいるのだし試してみてもいいだろう。
「ではこのメルルーサのフライバーガーを二つ。トマトも入れて」
「はいよ。すぐ作るから待っておきな!」
そういって娘に店の表を任せて厨房で料理を始める店主。揚げ物は自分でしたいのだろうか。嫁さんに別の料理を任せて自分で油で満たされた鍋に向かい香ばしい音と香りが漂う。数分してすぐさまぶ厚い紙に包まれたパンにはさまれた香ばしい揚げたての魚の揚げ物とそれを挟む葉野菜とトマト、白いソースが美しいコントラストを奏でて香りと見た目で食欲を誘う。
「ささ、少ししてから食べるといいわ。それと今度はこのお茶をどうぞ」
ハンバーガーを持ってきてくれた夫人がすでに飲み終わっているコップを下げて新しいお茶を持ってきてからゆっくりしてねと柔らかい笑顔を見せて去っていく。
「では、いただこう。シータ」
「はい。ラーマ様。いただきます」
「いただきます。あむ・・・・・・!」
二人で手を合わせて紙の上からパンを抑えてかぶりつくハンバーガー。そうすると感じるうま味。メルルーサ? の魚肉はシンプルな味で白身魚らしいがとてもうま味がよく、なかにほのかに潮を塗っているのかこれ単体でも美味しい。
そこにザクザクとしたころもの食感と葉野菜のシャキシャキとした感触に口の中でがぶりゅと広がるトマトのみずみずしいフレッシュな味が油と魚肉のうま味の上から違ううまさを持ってくる。
この二つを調和する。いや引き立てる白いソースの酸味とうま味、中に入っている・・・ピクルス? の細切れがカリコリと揚げ物とは違う固くも美味しい食感が広がり、それらをパンの香りとパン自体が優しく包み込んで口の中で広がっていく。
異国の食文化。手のひらより少し大きいだけのものだがこれ一つに入っている味の深さ。シータも目をキラキラと輝かせて美味しそうに食べていき頬に食べかすがついているのも気づかないほどにほおばっている。王様となって以来、食事一つにも風聞に気をつけねばいけなかった頃を考えれば想像もできないほどだ・・・
「あ、ラーマ様。ソースがついていますよ。取ってあげますね♡」
「シータこそ。揚げ物のかけらがついているぞ。余も取ってやろう」
互いに食べかすを取って頬を赤らめながら口に入れる。小さなものだというのにシータの頬についていたというだけで最高の食事になる。そして、一通り口の中がバーガーの味に満たされた後にお茶を飲めば、口の中がスキっと変わりゆく。
柑橘系を思わせる酸っぱさは強くなく語り掛けるように鼻腔を通り抜け、油と食材を流してさわやかな、まるで果樹園で収穫作業をしている側にいるような感じさえもするほどの味わいと香り。先ほどまでシンプルな食材の組み合わせでうま味を満たし尽くされていた口の中にさわやかな風が通る。
これはいける。美味い。二人で話すのもほどほどに味の感想ばかりを言いつつ食べていけばあっという間に完食。
店主にお礼と一応食事代を無理やりに押し付けて次の場所に。
「おぉー・・・大きいですねえ・・・」
「うーむ。余も軍馬を何頭も見てきたが、これほどとは・・・」
「華奈さまの愛馬栗毛の愛娘ですからね。大きいですよ~この子はタナボタチャン。大根とレンコンと。あとクルミ味噌に野菜スティックをつけたやつ」
「「クルミ味噌?」」
銀嶺隊と言えば全員が騎乗技術を持ち、軍馬と軍狼、軍猪らが仲良しなのも特徴。ゆえに牧場も広いので来てみればわかってはいたがどれもこれもが大きな馬ばかり。その中でもひときわ大きく、鹿毛の可愛らしい牝馬がこっちを見てポコポコと歩いてきて挨拶と言わんばかりにお辞儀をしてくれた。
そしてここの牧場長に説明されると栗毛の娘。好きなものに早速二人そろって首をかしげる。
「華奈さま考案の麦や大豆を使って作る調味料? でして。いやーこれと人参とリンゴを見るとうちの馬とイノシシはみんな・・・っとわ!?」
これですよーと好々爺が持ってくるツボに入っている茶色のペースト状の物体に野菜を棒状に切ったもの。悪い香りはしないが、見た目が悪いこれを好むのか? といいつつも柵を見ればいつの間にやら馬も猪も集まってそれを見て涎を垂らしている始末。そ、そこまで美味しいのか・・・?
「もともとは私らの栄養補給、塩分補給の健康食なんですがこの子らにもあげると大好評で。人でも美味しいもの何で、ささ、おひとつどうぞ。こら、服を噛むんじゃない。あげるから」
服の裾をはみはみされながら馬たちにねだれている好々爺に渡された野菜スティック。味噌を先っぽにつけて食べてみると・・・みずみずしい野菜にかかる味噌の濃密な塩味とうま味。野菜の水分が味噌を口の中で溶かして広がり噛むたびに何方のおいしさも広がる最高のもの。
これは食べたくなるし馬たちも欲しがるというのも納得だ。目の前で馬たちに順番にクルミ味噌をつけた野菜スティックを食べさせている好々爺を見てこうもなるとシータと二人で苦笑。
「ささ、せっかくですし乗馬でもしていきますか? いずれ軍務をするのであれば足は必要でしょう。ラーマ様はまだしも、シータ様に無理はさせたくないでしょうし」
「そうだな。ではこのタナボタチャン? とやらに乗せてほしい」
「かしこまりました。おいでタナボタチャン。鞍をつけるよ~」
蔵をつけてもらい、シータと一緒に乗る。その大きさゆえに少し手間取るかと思ったがシータも余と同じ英霊の座を同じにしていたり、弓術を受け継いでいるからか身体能力は問題なく大きなタナボタチャンに乗ってタナボタチャンもすぐに言うことを聞いて草原をかけてくれる。
その脚はたくましくしっかりと地面をつかんで蹴り。その大きさゆえに広がる草原と黄金の麦の畑。畑。何もかもがみえてどこへでも行けそうだ。
余の前で馬にまたがって一緒にその景色を見て、シータの髪、背中の感触。聞こえる声が、今日ずっと過ごして感じることが出来るのがいとおしい。ああ、こうしたかった。かつてもシータを追い求めて、一緒にこうして馬でどこまでも駆けて冒険をして、銀嶺領みたいな知らない街を二人で歩いて、食事して。お土産をハヌマーンたちにわけたりとか。そんなことをしたかった。
何もかもがすべていかず結局要らない王様というしがらみで何もかもを失ったが・・・英霊となってこうして叶うなんて。奇跡というものはあるのだな。
「すごいですラーマ様! どこまでもいけそうで、あのヘリから見た大地をどこまでも、自由に行けそうで・・・!」
「ああ、本当にそう思う。この馬はいい馬だ。そして、優しく。強く・・・素晴らしい景色を見せてくれる」
タナボタチャンも嬉しそうにいななきつつ馬脚を速めていろんなところに行った。柵を飛び越えて城壁を。城壁の外の皆の様子を。泥団子づくりを休憩時間に頑張る子供に麦を収穫している少年。
狼の子どもたちと戯れるイグレーヌ殿にワイバーンのレギアとイネンナが配達をしている風景。老夫婦たちが絵本や自分らでもできることをやっていてそれを見守りつつ食事を作る夫人。老夫婦に集まる孫たち。
栄えている。そして何より皆がやることを相談して頑張る穏やかで活気のある幸せな場所。あの屈強無比な軍が生まれるのも、守ろうと強くなるのも納得の場所で、それをシータと一緒に見れたのは幸せ以外の何物でもない。これはきっと座の方でも永遠に刻み込むべきものだろう。いやそうする。
「おおっと。帰られましたか。もータナボタチャンもサービスするのはいいけどちゃんと相談しないとだよ」
「いやいや失敬した。しかし、おかげで最高の時間を過ごせた。迷惑料と乗馬の代金だが・・・」
「ああ、それなら結構。彼女もいい運動になりましたしね。いずれ戦いの時にはこの子も出向くので、ぜひ乗ってやってください。あ、それともう夕方。いいお店があるので夕食はそちらに行くといいでしょう」
急な脱走して数時間駆けていたというのに起こることはせずむしろ戦いの時にタナボタチャンに乗っていいよと言ってくれる牧場長に頭を下げ、タナボタチャンの鼻筋を撫でてから余たちは地図に記された店へと向かった。
「いらっしゃいませ。おや、ラーマ様とシータ様ですね。どうぞこちらへ。まずはゆるりとお過ごしを」
牧場長に教えてもらった店に入ればそこは大変奇麗だが木材と石材を使ったシックで物静かな場所。何やら音楽を魔術の道具で流しているようで店内に響く心地よい音楽とほのかな酒精と料理の香り。そして香木の香りその雰囲気を引き立てる。
現代でいうところの喫茶店? に近しいのか。ぴしりとスーツを着こなす初老のマスターには顔に大きな傷があり、これまた元銀嶺隊の隊員だったのだろう。穏やかな着こなしの中に鋭い動きと武の匂いが隠せていない。
お通し? という文化で出された冷水とドライフルーツをつまみつつ、何を頼んだものかと思っていたところにキャンペーンメニューというものが目に入る。
「脱獄記念。プリズンブレイクセット・・・? 店主。これは一体?」
「ああ、これは華奈隊長がお二人が無事にアルカトラズ刑務所から戻れたことを記念して作ったメニューでして。モルガン様の長子ガウェイン様の大好きなポテト。銀嶺隊特産の鶏肉。チーズなどを使って出来たメニューでございます。
メインはそのポテト料理。ドリンク。ご一緒にスープ、サラダとデザートがついてくるものですね」
「ほほう・・・では、シータが余のもとに戻ってきてくれた祝いにこれを」
「私も。あ、ドリンクは木苺ドリンクで」
「余はぶどうジュースを」
「かしこまりました。ではでは。ジャズ、バラードというカルデアにいた銀嶺隊隊員たちが持ってきてくれた音楽を聴きながらどうかお過ごしくださいませ」
頭を下げて裏の厨房に回るマスターは仕草もてきぱきとしている。
「いやはや・・・ここまで素晴らしいとは思わなかった。最高のデートだな。シータ」
「私もです。でも、ラーマ様。貴方が。大好きな、愛している貴方がそばにいるからとっても楽しいんです。一人で過ごすのよりも何万倍も、ずっと」
「余も・・・僕もだ。シータ。本当に、何度も。ずっとそう思っていた。夢のような一日だ」
何度も何度もこの一日でかみしめたか分からない幸せ。ひと時の泡沫の奇蹟でしか来れないはずの英霊で。特異点でありえないはずだった再会をして、呪いを解除してもらい、戦乱の中において平和な場所で一日自由にデートできた。
奇跡を越えた奇跡だ。何度シータの身体の感触を、においを、声を、全部感じて側にいつづけること。こんな日をくれた華奈殿にはどうお返しをすればいいのか。あのクー・フーリンやメイヴとか言う女王を倒しただけでは足りないほどの時間をくれた。王であるはずの余もこれに報いる方法はちょっとどうしたものか。
「シータ。明日から余は戦に行く。シータもよければ・・・一緒に来てほしい。敵には指一本。髪の毛の先すらも触れさせない。必ず守る。どうか側に・・・」
「ラーマ様。私も英霊。しかも離別の呪いのせいで座が一緒にいたおかげで今はラーマ様の弓術と弓をもってアーチャーのクラスで顕現できました。私も戦力になります。華奈さまに、カルデアに恩を返さないと私もラーマ様の后として廃ります。貴方が成したいことを成すための戦いに、今度は私も連れて行ってくださいませ・・・」
「シータ・・・・ああ。もちろんだ・・・! 我ら夫婦なら最強。必ず戦い抜いて、一緒に勝ち鬨をあげてみせようではないか!」
「ふふふ。その後は出来れば是非二人で過ごして。あ、そういえばモルガン様からWデートのお誘いが来ているのです。夫婦二組で一緒に友達になりませんかって。そこもしましょうよ」
「それはいいな! 元王族同士、色々と話せることもあるだろう」
一緒になって過ごすこれからの日々。特異点を攻略すればなくなる。出来ないであろうことだが未来を考えて明るく過ごすのは本当にいいものだ。
「お待たせしましたお二人とも。プリズンブレイクセットでございます。ソースはお好みで」
マスターがちょうどいいタイミングで持ってきてくれたのは柵の形、牢屋の格子をイメージしたようなポテトがハンバーガーのパンのように全部を包んでいるポテトの塊。
サラダは小さなパンの塊とソースをかけているもので、スープはコンソメスープ? というものがある。なるほどこのポテトの塊を牢屋と例えて食べることで脱獄と捉えているのか。洒落ている。
ソースを上からそれとなくそっとかけてからナイフを入れて切り分けて、フォークで刺して一口。
「・・・・・・・・うまい」
「美味しい・・・!」
何度目の美味しいだろうか。ここの領地の食事にはずれはないのか? ほくほくのポテトなのに外はカリッとしていて塩味がいい。そしてそこにチーズと鶏肉の味わい。ポテトという牢屋を壊した後に広がる凶悪な熱ウマなチーズと肉の囚人が脱獄して余の口の中にうま味と一緒に暴れていく。
かみ砕けばかみ砕くほどに牢屋が砕けるほどにそのうま味を助ける。いわば囚人の武器と言ってもいいほどのソースが一つ一つは素朴な味をさらにうまく引き立てていく。まさしく鬼に金棒。虎に翼だ。
熱々のポテトの塊に、口を冷やすためのひんやりしたサラダがまさしく熱い脱獄劇の後のオアシスのように染みる。
「はふう・・・ホカホカします・・・ん~♡ すっごくこのジュースも美味しいです!」
シータも口の中を冷やすためにのんだ木苺のジュース。それがよほど美味しいのだろう。可愛い顔をさらに可愛く丸くさせながら両手で頬を抑えながら食を楽しむそれは応急の豪華な食事では見れなかったものだ。
余のぶどうジュースを飲めば甘く芳醇。だけどスッと後味が残り過ぎずに通り過ぎていくのがたまらなくうまい。美味しいのに美味しすぎてすぐに飲んでしまう。味わうためにのむのを我慢するジュースというのは経験がない。
「おや、お二人ともあっという間に食べましたね。では、食後のデザートにマシュマロとクリームたっぷりハニーパウンドケーキ。チョコドリンクでございます」
あっという間に食べ尽くし、その後に出される白と黄金色のコントラストが美しいケーキに、とろりとまろやかな感じがわかる美味しそうな甘そうなドリンク。チョコ。とは?
専用の小さなフォークで切り分けて食べると蜂蜜と牛乳? を加工したのだろうか? のクリームと生地。ふわふわでまるで浮雲のような心地よい食感だが甘みと同時に風味がすごく美味しい。
甘く、身を焼くと思うほどに美味しく。活力をくれる。二つの甘さが口の中で踊り。まるで宮廷の踊り子たちが目の前できらびやかに舞っているようだ。
そしてチョコドリンクを飲めばその口の中を濃密。まさしく泥のように粘度があるがその美味しさが凄まじく甘く叩き込まれる。ヴリトラの魔の軍勢を思わせるような濃密でガツンと来る強力なそれは先ほどまでの軽やかな甘みの舞を一気に塗り替えてゆく。
だというのに一緒に来る甘さはまさしく天上のもの。豊かで、大地の如く口の中に根付くようなもの。黒い土のような飲み物だがまさしくそれにふさわしい味わい。味わいの違うそれはまるで互いの強みを持つ舞姫がそれぞれに引き立て合い、センターを取り合う踊りの勝負。
ああ。こんなにインパクトのある最高の味・・・甘み。まるで飽きさせない。
「ふぅ・・・ご馳走様・・・大変美味しかった」
「ご馳走様です。はぁ・・・幸せです。・・・・・・・・・・・・・に、しても・・・ん・・・ぽかぽかしてきました」
「む・・・シータもか? 余も確かに・・・身体が熱いな・・・」
食後の熱さだけではない。何か身体の芯から熱い熱を感じて、疼くような感触。何より、火照るシータが今朝よりもずっと美しく、いとおしく。そして・・・一層シータを欲しい。そう思ってしまう。
「ああ、ご夫婦には説明していませんでしたね。カカオ。チョコドリンクの原料ですね。これはギリシャ語で神の食べ物と言われ、王侯貴族の栄養食品。神への供物。通貨にもされるほどのものでして。滋養強壮効果もありますが、ふふふ・・・ほれ薬、夜の勝負にもいいそうです。
どうかお二人で心地よい時間を。そしてまたのお越しを」
あ、あのマスター! 去り際になんてことを言うのだ! それが無くてもシータは魅力的すぎるのだが、いや・・・! でもこのドキドキ・・・ほてりが・・・・!!
「ラーマ様・・・いい、ですよ・・・♡」
「シータ・・・ああ・・・今晩は、お願いする・・・」
この後、二人で浴場で身を清め、宿を借りて一晩、シータと思い切り愛を確かめて求め合った。
銀嶺領。恐ろしいが素晴らしい場所だ・・・
オークニー&カルデア式練兵術。
ポケモンSVで新登場したミガルーサのモデルと思われる? メルルーサ。北米沖でも取れるそうですね。白身フライに良く使われる食材。日本やアメリカだと大衆向けの魚なんですが欧州だと高いとか? 同じ魚でも地域によって値段が違うのも面白いですね~