転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「ふぃー・・・・はぁー・・・・お腹の傷が開かなくてよかったぁ」
「お、俺は一体・・・も、申し訳ねえ! 騎士様に高貴な方!」
屍鬼になりかけていた連中に陽炎をフラッシュバン代わりに使ってくらんだ間に刺突で斬撃を飛ばしてかすり傷を作りつつ屍鬼化の状況を浄化しておいてみれば記憶はあるようで皆様即座に土下座。
「まあ・・・屍鬼になりかけていた人をあっという間に・・・すごいわ! 貴女。名前は?」
「私は華奈。しがない剣士です。さてさて・・・ふぅー・・・その剣をもらいますよ」
「私はネフェルタリ。よろしくね。? 何をするの?」
ネフェルタリ様と挨拶をしつつ、土下座している人から剣をもらい、刀で刀身を三つに縦に切って真ん中で金属の棒にしたものを折り曲げる。
「ふむふむ・・・・・・お、すぐですね。ここですか」
ダウジングロッドを即席で作り、すぐに水脈を発見。表の地面はひどい有り様ですが、やはりあるものですねえ。
深山を突き刺して地面をいじくって地面に穴を開けてしまえば・・・
「ふふふ。やはりあるものですね。しかもやはり豊富でしたか」
大地は焼け付いている。文字通りの荒れ地。炎が舐めたあとのようですけど、それでも早々に大地は死なない。底力はまだありますね。
「ぉおおおおお!!! 水、水だー!!」
「わぁあ・・・! こんな荒れ果てた場所で水を!?」
「まだまだありますよ。えーと・・・」
妖精さんに渡されていた豆菓子に加工するように持ってきていた種。火を通していないのと、何でも水と土があればサイバ◯マンレベルですぐ成長するとか。
水の湧き出る場所の一部で豆を数粒植えてみれば・・・おぉ・・・ト◯ロかな? すっごい伸びる。伸びますねえ!
で、すぐに実をつけて、青々とした果実が鈴なりでたっぷり。ふむふむ。味もいいですね。私も魔力補給したいですし、血肉を補給するためにも何個か持っていきましょう。ネフェルタリ様の分も・・・
「皆さん、この水場と果実は譲るんですが、ここの場所でなんというかー・・・大きな勢力を持つ人らって知っています?」
「はぐうぐ・・・うめえ・・・うめえ・・・お、おぉ・・・そうだなあ・・・ここから東に行けばなんだ。聖都という場所があって、騎士たちがいるらしい。で、西の方に行けば、まあすぐ分かるだろう。
太陽王という奴らが支配する砂漠があって、その奥に太陽王というやつがいる。ただ、そこは砂漠と砂嵐がうずまき、人食いの獣も当たり前にいる場所だ。とてもじゃあねえが。いかないほうがいい」
「太陽王・・・それはファラオの・・・そして・・・」
「神王、あの方がいるかも知れませんね。ふむ。感謝します」
泣きながら水を飲み、果実をかじる人らに話を聞くと、多分私がここに落下しながらあの槍兵を馬ごと空中で蹴り飛ばした場所が聖都。あれは派手だったと、方向的にも多分あっている。
で、もう一つが砂漠に住まう太陽王。王を関するもので太陽を名乗るとなればファラオなどのいわゆるエジプトの王様たちがいるはず。
ネフェルタリ様もそれを考えていたようでにわかにソワソワ、目をキラキラさせています。
「ネフェルタリ様。私はこの特異点を解決する役割を持つカルデアという星見の組織の武官であり英霊と思ってください。そして、その上で貴女様を護衛して、太陽王に会いに行こうと思いますが、いかがします? 危険な旅路ではありますが」
「是非! そして、私もサーヴァント。英霊ですが貴女ほど、華奈さんほど強くはないです。砂の民であり、その女王としては恥ずかしいですが、どうか一緒に・・・!」
「お、おいおいおい!! 待ってくれ騎士さんに王女様! あそこは危険だ! それよりは聖都に行くほうが! 俺達も恩を返したい・・・!!」
「ま、まて! 化け物たちが来るぞ! それに強盗も!」
はぁー・・・水に果実の匂いにつられて少ない餌を求めに来たであろう化け物・・・む? バイコーンの類に、トカゲ、ヘビのたぐいですか。それに強盗は・・・屍鬼ではなく人間のまま。うん。殺しましょう。
さてさて~・・・ふぅ・・・暴れさせてもらいますよ!!
「えーと、この肉はこうして焼くと美味しいのと、これはこうやって、ああ、骨の方はこうして使うとかごにできるので果実を持っていくときは使うと良いでしょう」
「あ、ああ・・・いや本当に・・・強いなあ騎士さんは・・アンタ一体、何者だい?」
結局手負いの私でも数分かからず仕留めきれたので皆さんに手伝ってもらってその場で猛獣魔獣化け物は解体して皮と骨で果物をいれるかご、牙や爪、角で簡易なナイフや槍、投げ槍。を作ってから皆さんに采配。
「華奈。あーカルデアに所属している騎士ですよ。ささ、乾燥させてないので重いですがその荷車で水と食料を持って聖都、そこに集まる人らのいる周辺の街、集落で商売でも家族にでも分ければいいでしょう。
お待たせしましたネフェルタリ様。行きましょうか」
「ふふふ。いえいえ。動物の毛皮や骨の加工。お見事でしたよ。そして、これからどうかお願いします」
「ではでは。栗毛ー」
果実と水で体力も気力も魔力も回復できたのでなんとか呼べそうな栗毛を呼んでネフェルタリ様を乗せて、荷物、もとい食料と水を持っていざ出発。
「ありがとうよ騎士さん、女王様!! アンタたちは救世主だ! 必ず恩は返すぜ~!!」
屍鬼になりかけていた人たちとも別れの挨拶と手を降ってから互いに反対の方向に歩きだしていざ出発。
栗毛に心配そうに舐められたりしましたが大丈夫ですよ私は。
「あ、待って待ってー!! ねえ、そこのお二人ー!!」
歩いていると、後ろから女性の声が聞こえ、振り返ると白ビキニに法衣? をつけて手には錫杖を持つナイスバディの美女。そしてその後ろからついてくる。緑髪の筋骨隆々で和装を纏う弓を背負う快男児。ついでに脇には米俵を抱えている。
「はぁ・・・はぁ・・・いやー間に合った! ねえねえ。さっきの立ち回りと、見事な人助け! 刀を地面に突き刺して水をわかせて、大樹を育て果実を実らせるその絶技!
神通力の類でしょう!? 私達と一緒に旅をしましょう? 私も今から西に向かうところなの!」
「おおう。待てい三蔵殿。そこのお二人にも予定がある。流石に急に頼むのは失礼であろう。拙者は俵藤太。見ての通りサーヴァント。クラスはアーチャーだ」
「あ、そうよね。まずは自己紹介から。私は三蔵法師。気さくに三蔵ちゃんって呼んでね!」
おぉう・・・ビッグネーム。日の本の東国における武芸の開祖。龍神すらも困り果てる大百足も退治した伝説の戦士。そして、日本人だと西遊記などが有名ですが仏教の教えを広く広め、学問のために命をかけた大旅行をしたまさしく仏徒の鏡の三蔵法師。いやあ・・・思わず頭が下がるというものです。
「私は華奈。しがない騎士をしています。こちらはネフェルタリ様。あるファラオ。あー・・・王様の妻であり、これから砂漠の行く先にあるという太陽王の神殿にそのお知り合い、もしくは旦那様がいるかもということで旅をしようと思います」
「私はネフェルタリ。華奈さんの紹介通りあるファラオの・・・ラーメスの妻なの。それで太陽神がいるという場所にもしかしたらと思って。良ければご一緒します?」
「うんうん! 旅は愉快でないといけないからね! 一緒にいきましょう。GOGO!!」
私だけでは少し不安だった砂漠の旅。これはいい感じになりそうです。あ、そういえば砂煙からネフェルタリ様を守るために先程始末した盗賊から頂戴して水洗いしておいた外套と、砂よけの加護のあるボタンを外套の留めに使ってと。
いざ出発。途中三蔵様に自分も栗毛に乗せてほしいと言われましたが食料と水があるので拒否。駄々をこねましたが修行と思いなさいと言っておきましたら素直に歩いてくれました。
「~♪ ~~♫」
「ふぅーむ。良い音色だなあ。華奈殿。ふふふ。心地よい」
「ねー。その歌。なんて歌なの?」
旅の中ただただ歩くだけなのも暇でしょうし、先程始末しておいた奴らの肉体や素材、樹木で作ったギターとオカリナとハーモニカ。これらで演奏をしつつ。ワイルドアームズシリーズの音楽を弾いていましたが皆さんすごくいい感じ。
「あるゲーム。遊びの曲ですね。ふふふ。うーん。せっかく西に向かうのです。新天地を目指すアメリカの曲と、そうですねえ。三蔵法師様と、孫悟空のことを歌った曲でも奏でましょうか? どちらも歌い手は男性なので私の声ではあれでしょうけど」
「まさか。すっごく上手で聞いていて楽しいもの! 是非聞かせてほしいわ華奈さん。栗毛も急かしているわよ?」
「私も~! 旅の中でこんなにきれいな音楽を聞ける機会はなかったもの。お願い!」
「ははは。華奈殿は多芸だのお。拙者からも是非。風よけにはなるのでな。頼む」
藤太様が前に出て私とネフェルタリ様を風から守りつつ警戒をしてくれるのに感謝しつつ、じゃあ。ということで「GoW◯st」と「モンキーマ◯ック」を演奏しつつ砂漠の旅を満喫中。なんでか人食いの獣もワイバーン以外はてんで襲われないので楽ちん楽ちん。
これ以外にも知っている。演奏したことのある曲を弾いたり、吹いたりしつつ旅を続けていましたが、いつの間にやら夜。
あれほど暑かったというのに、夜になると砂漠はとたんに極寒地会へと早変わりするのが恐ろしい話。
深山で砂漠の中から巨岩を取り出して、かたなでくりぬいて、かまくらに煙突を付けて砂が入らないように工夫をしてから中で焚き火を囲む。
焼き肉に果物の飾り切り、少し味気ないと思いましたが旅先で水は貴重品。多くは使えません。
「いただきます。はぁー・・・みずみずしい。染みるわぁ。はふぅ・・・お肉は食べられないけど、これだけでもいいわ」
「食べていいのでは? ふふふ。私が徳を積むと思い、そして旅を続けるためにもどうでしょう?」
「え!? い、いやでも・・・」
「うーん。例えばですね三蔵様。三蔵様は『不殺生戒』を守り、そして今は私から食事をもらいましたよね? いわゆる托鉢です」
まさか三蔵様に仏教の話を説くとは思いませんでしたが、そうでもしないと下手すれば太陽王の神殿でもなにか起こしそうですし前もって言っていくべきですかねえ・・・多分、英霊としての使命というのも無意識に感じていそうですし。
「そうね。実際この果実も、肉も華奈ちゃんが私にくれたものだし」
「これはいわば『三種浄肉』に当たるものだと私は思いますので三蔵様は戒律を破っていないと思います。そして、三蔵様も修行の際に『乞食(こつじき)』をしたでしょう?」
実際、私が魔獣たちを殺して解体したあとに猛ダッシュで追いかけていたのでころすさまを見ていないので戒律は破っていないでしょうしね。
「ええ。その際に托鉢もしたわね。というか似たような感じかも?」
「その際に例えば私は果実がありますが、肉だけしか今はない、お肉屋さんの場合、その肉を、僧侶様に功徳を積むため、また真心から渡したかったのに断るわけには行かないでしょう?」
「う、うん。そりゃあ食べ物を分けてくださる方の御心を粗末にするのはだめだもん」
「だからこその『中道』だからこその『不殺生戒を破っていない三種浄肉』なら食べてもよいはずです。それも許可する戒律は仏様の教えであるはずですし。砂漠の夜は冷えてしまうもの。お肉でお腹から温め、焚き火で体を温め、そして楽しくみんなで過ごして心を温めましょう?」
そう言ってシンプルな塩だけで味付けした肉のスープを三蔵様に渡せば笑顔で受け取って食べてくれました。
「いやーすっかり戒律に縛られすぎていたようね私。中道。そう。それが大事! 華奈。忘れかけていた教えを思い出させてくれてありがとう! そしていただきます。んー・・・はぁー・・・ほんと・・・すっごく美味しい・・・
華奈ちゃんも藤太といっしょに私の弟子にしてあげる! まさか仏教に理解の深い子がここでも出会えるなんて!」
「ええ!? いや、私八百万信仰・・・あーいや、それならむしろ弁財天や多くの神様が御仏様と関わりありますし、まあ。いいですかあー」
「ははははは。まさか騎士の華奈殿から三蔵の意見を変えるほどの仏教の戒律を聞くとは思わなんだ。お礼に今度水が豊富な場所では是非拙者の無尽俵で美味しいお米を馳走すると約束するぞう!」
まったく愉快な人達です。っとネフェルタリ様の方にも気を向けてみれば何やら興味深げに目を見開いて果実をかじったまま口が止まっています。
「あれ? ネフェリタルちゃん? 大丈夫?」
「はむっ! あ、ああ! はい。いえ。戒律や教えとか、そういう話を聞くとモーセを思い出して・・・三人の話がすごく面白いのもあってついつい」
ああ、そういえば時代的にも確か既知の仲、そしてその話しぶりだと、ふふふふ。大事な友だちだったのでしょうねえ。宗教などの違いはあれども垣根を超えた友情。いいものです。
「ふふふ。可愛いですねネフェルタリ様。ふーむ・・・では、そうですね。より良い生き方を教え、そして色んな人と優しく過ごすのが仏教。その開祖ブッダ様のお話でもします?
それとも三蔵様のお話をしましょうか? 音楽でもいいですよー」
「じゃあ、ブッダ様? のお話のあとに音楽をまた。今度は優しい曲をね?」
このあとはブッダ様の話をして、あの方の功徳、戒律のたとえのわかりやすい例えを教えて、私と藤太様で即興演奏をして、月が頂点に上ったところで私とネフェルタリ様は休みにつきました。
「さてさて・・・あの人達の言う人食いの獣も数が少ない。スフィンクスが見えてきたのでまあ、ファラオの誰かがいる・・・でも、あの神獣を従えられる人なんて真面目に神代のファラオの中でも一握りでしょうね」
「あの遠目に見る人の顔をした獣? へー神獣なのね。じゃあ、私の言うことも聞いてくれるかな? 私、一応仏僧だけど」
「いやいや、宗教と主が違うだろうに。怒られるだけで済まんぞ三蔵殿しかし、そうだなあ。人食いだの死の砂漠と言うには穏やかだ」
「私の存在。でしょうか・・・?」
「おそらく」
そりゃあ、ファラオの妻。その方のそばにいる聖者と竜神のかごを持つ武芸者に、私は・・・まあ、特になにもないですがネフェリタル様の馬を引くものですし、いわば従者。頭もいいので多分下手に手を出したらやばいと理性と本能でわかっているのでしょう。
なのでそのファラオの子飼い? ではないであろう、砂漠に住む魔獣たちを蹴散らしつつ進むだけでいいのですが、進むことしばらく。ブワリと風が強く舞い、空にはスフィンクスが私達の進路の前に。その上には英霊の気配が。
「そこの侵入者! 昨晩はほっておいていましたがこれ以上の侵入はこのファラオにしてホルスの化身ニトクリスが成敗しましょう!」
降り立つスフィンクスの上に立つ紫髪のロングヘアに、長いケモミミ? を持つ美少女で、三蔵様に負けず劣らずの格好。手に持つ杖と感じる空気はなるほど神代の時代のファラオ・ニトクリスと言っていいのでしょう。まず女性のファラオ自体が少ないですしね。
三蔵様たちがなにか言う前に私のほうが前に出て頭を下げて両手を前に出しつつ拳を握ることで無手。何もしないことを示しつつ言葉を紡ぐ。
「申し訳ありませんニトクリス様。私は神王オジマンディアス様の愛妻ネフェルタリ様をここの主。太陽王様たちの庇護のもとにあるべきと考えて来た次第です。そしてその神獣とニトクリス様。ファラオがいるのなら是非、ここの主に謁見を願いたく」
「なっ・・・! 嘘を言うな不敬もの! この先におわすファラオに対しても無礼千万! これ以上その頭を上げるな! そのままスフィンクスに踏み潰させて・・・」
「お待ち下さいファラオ・ニトクリス様! 私は確かにネフェルタリであり、オジマンディアスの妻です! そしてその騎士は私を守ってくれた恩人。嘘であるのならアビス神の天秤を用いて神殿の中で容赦なく殺せばいいこと。どうか私達を通してください!」
外套を外して素顔と衣装を見せるネフェルタリ様。その振る舞いや空気に何かを感じたようでニトクリス様と、私の頭の上に今にも踏み潰そうとしていたスフィンクスの動きが止まる。
「うぅうむ・・・・いや、しかし・・・ですが万が一というのもある・・・それに、よく見ればなにかの加護を持つ武者に、破廉恥な見た目ですが聖人と見受けられる女・・・くぅ・・・ぐくぅう・・・
・・・いいでしょう。では、その言葉の真偽は我らが神王の前で裁定を下しましょう。付いてきなさい」
私の頭を覆う影が消えて、スフィンクスはくるりと向きを変えてニトクリス様は付いてきなさいと言う。いやはや、流石にここで切合いは流石に勘弁なので良かったです。竜種を超えるときもある神獣との喧嘩は傷がまだ癒えていないのもあって少し手間取るかもですし。
ふぅ・・・どうにかついていけばなにか巨大な建物が見えてきました。さてさて。神王様はいらっしゃるか、あるいは別のファラオか。
というわけで4人で砂漠の旅。そして、早速次回神王に出会います。