転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「決闘方式? いや、なんでそれを考えたんだい? 流石にぶっ飛んだ発想すぎて私でもちょっと考えがつかないよ」
「まあ、ここに関しては仮定、想定の上でのプランですが、ホームズ様の話を聞きつつ私の考えを聞いてくだされば」
今までの特異点でもあんまりなかった話。あの馬鹿円卓たちの行為を見たあとだとなんでそうなると私とホームズ様以外では頭にクエスチョンマークが浮かんでいますが、その理由を解説してもらいましょう。
「ふむ。任された。ではまずだがこの特異点では大きく今までと違うであろう点が2つほどある。1つは太陽王オジマンディアスは聖杯を手にしていながら自国の領地を呼び出す以外は何もしていない。そう。聖杯を持ちつつもそれだけにとどめていること。
もう1つは既に君たちも感じているだろうが獅子王陣営と太陽王陣営は不可侵条約を結んで冷戦状態。聖杯の所有者がわかっていながらそれぞれに大きな動きをこの三つ巴の構図ができて以来山の民以外はまるで大きな動きがないことだ」
「今までの特異点では聖杯を所有したものが特異点の問題の核となっているか何かと相争う、特異点崩壊に動くものばかりでしたが今回はそれがない。この崩壊する特異点という状況以外にもこれがイレギュラーなんです」
あ、と言わんばかりに皆も納得がいく。そうですよねえー色々とイレギュラーが起きすぎて見落としがちですが聖杯を所有しているものが大きく動かず、特異点に関して干渉をしようとしていない。
それでいてゲーティアの味方ではないというのが本当にすごいトンチンカン。
「で、山の翁達、オジマンディアス王、バカ円卓のうち2つの陣営は私の行動による答えと、存在を求めている。聖杯以上に。これもまたイレギュラーでしょうねえ。いや本当。ホームズ様の推理、ベディヴィエール様の話す円卓の内情。そして山の翁の皆様の情報をすり合わせるとある一定の時期からオジマンディアス様も馬鹿円卓たちも自分の管轄の場以外では大きな行動をしていない。
何だったら私が特異点に来て以降粛清騎士たちによる偵察や先ほどのランスロットによる外征がまして活発になったくらいだそうで」
「じゃあ、円卓は華奈の身柄を求めているとして、オジマンディアス王は何を求めているの? 私達に華奈と一緒にもう一度来いといっていたけど・・・」
あの人そんなこと言っていたんですかあ。やはりまだ決断も出来ず、迷っているのでしょうねえきっと。ふーむ・・・
「それは私の出す答え。獅子王を如何に倒すか。自分と比肩しうる存在をどう倒してこの特異点を戻すのか、そしてその先へのことを聞きたいのでしょう」
「その先・・・つまり第七の特異点、そして・・・」
「魔術王、ソロモン。彼をどうやって倒すか、あるいは挑むべきか。それを聞きたいのだろうね。彼は王であり聡明だ。故に魔術王の計画の凄まじさを理解している。だからこそ下手に挑むのではなく守ることを今は選んでいる。
が、恐らく妻、ネフェルタリの存在がいて若い頃の活力を、そして魔術王の用意した処刑場を味わい尚こうしてはつらつとしている華奈君を見てその判断が揺らいでいる。踏ん切りをつけるためにも意見を求めているのだろう」
さすがホームズ様。私と同じ意見です。そう。あの方は偉大であり神の化身でありますがゆえにその視点の広さと聡明さ故にゲーティアの人理焼却に内心怯んでいる。何より王という立場が勇気ある一歩を絡め取っているとも。
「そうなると、当然獅子王も華奈を求めている以上恐らくアメリカでのエジソンのように人理焼却から守れる領地を持つ術があり、その中で一度失った華奈を守るために強引とも言える手段で動いていると。
無垢な魂、いわば善き人間を集めていたのは一応人を守る意思もあるからと。そういう見解で良いのかな?」
「ええ。聖槍ロンゴミニアド。あれは星のテクスチャを縫い留める錨であり、巨大な塔。あの聖都はその塔のほんの一部に過ぎません。何よりあれは星の聖槍。神創兵器。星の内海で生み出された槍ゆえに魔術王でも壊せないのでしょう」
「そんな・・・お母さんを守るためにあんなことをしたり、人を標本みたいに扱うのは絶対に駄目です!」
マシュの心からの叫びに私達全員も頷く。ええ。そんな行為はさせられません。そしてしません。
「その通り。そしてここからの仮定が正しければきっとですが私の身柄を餌に交渉を、かつあの聖槍を傷つけさせない提案であればきっと通りますし、同時にそれを通すための文章も作りました」
ここ2日位色々と情報を手にして作っておいた皮の表紙と内側は紙の巻物の中に書かれた内容分を皆さんに見せる。
「どれどれ・・・? 『拝啓、偉大なる獅子王様へ。聖都にてくだらぬ聖罰以外での日々の時間を過ごす中いかがでしょうか。
今回は私元円卓の騎士船坂 華奈 の身柄を賭けたそちらの騎士の将たちとの勝負を挑みたいと思います。
私達の出会いはこの崩壊しつつある特異点。その現況である魔術王があってこそ。故に、たとえ私がいようともその魔術王の配下が襲いかかってきた場合、あるいは貴方様達の策に異を唱えるもの。そしてカルデアの戦力へ万全な対処ができるかを見定める意味でも、獅子王様たちの武威を示す意味でも良いと思われます。
後日、こちらの戦力を6~7人ほど用意してそちらに挑みたいと思います。貴方様への謁見を望むもの、そしてこの特異点にいる者たちで挑むゆえに心配なさらず。そしてその間は山の民を始めとしてあらゆる勢力への手出しを止めていただけると幸いです。
色よいお返事をお待ちしております。
円卓の狼 船坂 華奈より』
・・・・・いや、待って待って! 華奈。あのギフト持ちの円卓の騎士と、それを束ねる聖槍持ちの騎士王、アーサー王に挑むっていうのか!! 無謀じゃないの!?」
「私も元と同じ意見だ。頼光ですらどうにか相手できるかと言うほどの相手。マシュでもまだ難しいし、この中では戦力になるのは、決闘。たとえ相手が3対1でこちらに挑ませてくれても厳しいものがあるよ?」
あーまあ、そういう意見になりますかあ。まあ、マシュ様もまだまだ成長していけるのですがうーん・・・英霊の皆さんの強化のためのプランも考えておくとして・・・
まあ、流石に無策ではないですよ。と手を前に出して静止させる。
「皆さん。今まで私が無鉄砲に、備えや考え無しでこんなことをしましたか? そのうえで逆に聞きましょう。今すぐにでも私をあぶり出すために聖槍ぶっ放してきたりガウェインの剛力に火炎の波や粛清騎士たちによる行動を防ぐために今すぐ何を出来ますか?
あのオジマンディアス王も痛み分けないし共倒れであろうと考えるほどの勢力が本気で動けば、少なくても考える時間も思考もなく味方になりえる勢力は時間とともに消えかねないですよ」
「む・・・実際、そのとおりね・・・アメリカのように凌げるわけでもないし、しかも今回は敵の主力も動く可能性が高い・・・逃走中に見た聖都周辺のあのクレーター・・・もしかして・・・」
「ロンゴミニアドによる攻撃のものですね。カルデアにいるアルトリア様よりも成長しているであろう肉体。それはつまりより強く大きくなった竜の、ブリテンの守護竜たる赤き竜の化身たるもの心臓をエンジンに放ちます。
・・・たとえオジマンディアス様の大複合神殿でも、ただではすみませんよ?」
ほんと生前でも見ていたし知っているので説得力がこもるし、エレナ様もアメリカでのあれこれの記憶が濃いようで顔を青くする。そりゃあそうです。積極的に動き回るアルジュナや魔獣クー・フーリンみたいなものです。しかも目標はこの私。
みなさんもカルデアの英霊を呼び出すべきか。と考えるもそれも出来ない。私さえ保護できてしまえばあの聖槍の塔の機能で守れる以上カルデアを容赦なくふっとばしに行くことも考えるべき想定だから守りを薄くは出来ない。
ギフト持ち円卓の騎士に挑めるほどの戦力を出すということはそれだけカルデアに不安要素を残すわけですからねえ。空気が重くなってしまう。
「さてさて、君たち気落ちしてはいけない。君たちが想定することを加味したうえで華奈くんはこの作戦を考えた。だからこそ聞いていこうじゃないか。その作戦をどうやって成功させていくか」
「そうですね。銀嶺隊は銀の懐刀。大きな一撃ではなく確実な一撃を差し込んで楔として、風向きを変える部隊。その隊長である華奈殿の作戦です。是非、聞きましょうみなさん」
ナイスですホームズ様、ベディヴィエール様。では、こほんと咳払いしつつおかわりのお茶を飲んで一息ついて話す。
「まずはモルガン様。これをギアス・スクロール化していつでも馬鹿円卓たちに渡せるようにしておくよう頼んでいいです? あ、私の血判も・・・・イチっ。ホイペタリ。これで私はちゃんと聖都に行く強制的約束があるのであちらも余計な手出しをしないという約束を守れば私がホイホイ来る。
で、まあこの決闘ですが『カルデア』だけ。とも『山の翁』だけ。でもない。『この特異点』にいるものたち。でバカ円卓達の考えに異を反するもの。あるいは私についてくれる方で6~7人です」
『エレナさん送ってくれますか? あの愚妹たちでは壊せないほどのものにするのと蝋印をあちらならわかるものにするから』
「ええ、了解よ。輸送ポイントをセットして・・・ふむ・・・その戦力は?」
無事に私の手紙をギアス・スクロール化してくれるように動いてくれるモルガン様達。一方で、ここの特異点での戦力。という言葉をつぶやきつつ藤丸様が不安そうです。
「戦力・・・華奈さんと、ランスロットに見せた立ち回りだと、マシュ。あとは頼光さん、藤太さん、それ以外は・・・?」
「私の候補としてはそこにアーラシュ様、そして、オジマンディアス王を引き込むのと、実はもう一人既に相談を持ちかけている方がいましてね。そろそろ・・・・・お、来て良いようです」
ちょうどいいタイミングで鳴り響く鐘の音。いやはや本当にいいタイミングですねえあの方は。
「皆さん。その戦力候補のウチ一人は今ちょうどいいようなので会いに行きましょう。元様、ダ・ヴィンチちゃん、エレナ様は出来れば留守をお願いしていいですか?
藤丸様、マシュ様、あとは頼光様と藤太様を一緒につれていきましょう」
「え? 私には何も。何が聞こえているんです?」
「うーん・・・来ていいって合図の呼び出しベル?」
『そんな世俗的な呼び出しをする人が戦力なんです? お姉様。出来ました。このギアススクロールに答える形の返事と制約に沿えばお姉様は数日後に必ず聖都に行くようにしています』
モルガン様の方も用意ができた巻物の手紙を私に渡してくれる。ふむ・・・キャメロットの城門のマークに、エクスカリバーの蝋印。あとは私の宝石箱から銀嶺隊結成を祝して作られた狼の文様がある指輪で蝋印をしてと・・・これでよし。
これをアーラシュ様の弓で聖都に向けて矢文でぶっ放してもらって、祝聖騎士や英霊に拾われるまで光り続ける術式をダ・ヴィンチちゃんに組んでもらっているので拾われるでしょう。
さてさて。それ以外にも用意していくものを。と。
「な・・・・・! アズライールの廟に行くというのですか!? しかもそこからの鐘の音が聞こえると・・・・・!!」
「つまりは初代様直々に華奈殿を呼んでいるだと・・・! あ、あり得るというのか!?」
出発前にそれなりの戦力を割いていくのでハサンの皆様に話せばなんというかやっぱりドン引きというか恐怖の表情で迎えられる始末。
そこであの方角から鐘の音が聞こえると指させばますますもって皆様がすごい顔になり、しばらくして話し合ったあとに向き直る。
「・・・・・・華奈殿。あの方とは、いつの間に関係を・・・?」
「ここにふっとばされて、三蔵様たち合流してから一緒にこの村に来ての夜ですね。私に対して『獅子王に、太陽王に何を示す』と聞かれたんですよ。なので『挑む道を示す。そのための説得と必要なら拳を馳走します』と言ったら『首を狙うのではないのか?』と言われて『必要なら。でも、見極めない内に殺すのを判断にいれるのは浅慮でしょう』と返したら『では時が来れば来るが良い。銀狼』と言って消えたんですよねえ」
「そうですか・・・皆様。恐らくですが我々の、翁の偉大なる初代様が華奈殿を認めたようです。恐らくですが、その鐘の聞こえる方向に向かえば円卓の騎士など楽に対処できるお方がいるでしょう。
私のほうが案内しますので、2日、いえ1日ほど時間をいただければ・・・」
うーん・・・呪腕様。自分を犠牲にしようとしていませんかね。あの方に関しては私も一応少しは知っていますが、下手するとここにいる翁様全員首がすっ飛びかねない・・・
「いえいえ。私達だけで行きます。きっと、下手に貴方達が行けば翁の任を捨てたと判断して首を取りかねないでしょう? レギア、イネンナ!」
「! 華奈殿。一体貴方はどこまで知っていて・・・」
「偉大なる英雄王様とのご縁あってこそです。さ、皆さん乗ってください。この子達なら歩いて2日の距離も3時間でひとっ飛びです」
うちのワイバーンの夫婦を呼び出してそこに皆さまを乗せていざ出発。鐘の音を便りにするという方法ですがそこは軍で鍛えている音を察知して移動する技術は使えるので険しい谷もらくらく。
「ふむ・・・ここがアズライールの廟。なるほど。死を感じることはいくつもありましたがここまで濃密な死の気配を煮詰めて集めたような場所は初めてです」
「はい・・・空気が重い・・・それに、この威圧感。オジマンディアス王以上です・・・!」
「うぅーむ・・・拙者が昔相対したかの魔神の如き武者を思い出す・・・大百足ですら可愛いものに感じるわ」
「思わず身震いがするほどですね・・・武者震いではない。単純に、何かが・・・違う・・・」
やってきましたアズライールの廟。初代翁様の眠る場所。皆様も身震いをしてしまうほどのその場所に着いてそうそうレギアたちも怯えているので戻ってもらいつつ、扉をノック。来ましたよー
「来たか・・・銀狼。そして魔術の徒に英霊たちよ」
来た。その瞬間に皆様も更に威圧感を感じて誰もが冷や汗を流す。
まさしく死の顕現。今自分は死んでしまうという予感を想起させ、そしてそれはあちらの気分次第で簡単に実現させてくれる。
とてもではないが暗殺者。かつて人としてあった方とは思えないが、同時になるほど。アサシンの語源たるハサンたちの伝説たる初代山の翁。
巨大な剣に暗き闇夜を表したような骸骨をつけた鎧。幽鬼も怯えすくむその姿が私達の目の前に現れた。
『な、なによこの魔力量に・・・凄まじい、画面越しでもわかる死の予感・・・はぁ・・・は・・・こ、これが伝説の翁・・・・なの?』
「無理をするな魔術の徒を束ねる者よ。そして、銀狼。我が刃を牙として何を成す。何を示す。答えを持ってきたというのだな」
「ええ。神なんかに落ちて大事なものを落としたかも知れない並行世界の愚妹をお説教してきます。私と、私の戦友で!」
「ふむ・・・」
「何と言う武の局地、結晶よ・・・! 拙者があと三、四十ほど齢を重ねて漸く一射届くかと言うほどの武人だ・・・」
「すごい・・・神々でもこの方は、いえ、龍神でも斬り殺せるでしょう・・・まさしく死を与える暗殺者の極み・・・」
「よかろう。魔術王の行った人理焼却の根幹、それらを知りそして尚挑むその武勇、気骨を認めよう。しかし、それを見せるだけでは尚我が剣を振るうには足らぬ。故に」
翁様が剣を握り、私も鎧を解除してかすかな魔力も、動きを邪魔しかねないものを外して刀をすべて出していく。
「ええ。1つ手合わせをお願いします」
あの方なりの試練。初代翁様との直々の手合わせ。私と翁様で霊廟の中に入るのを皆様が驚いてしまう。
「ま、待ってくださいお母さん! この方は私も見ただけでわかります! 格が違うと! なんで手合わせを!?」
「当然、これから挑む相手は最強のファラオですらも早々手出しの出来ない神に、あるいは龍神に近づいたであろうアルトリア様とその祝福を受けし円卓の騎士達です。そしてそれを超えてもさらなる過酷な旅路が続く。
それを超える気概を持つものか。翁様頼りの情けない戦士かを見極めるため、武勇を、覚悟を翁様に示さなければいけません。これは試練であり、そして私と翁様なりの相互理解です」
「然り。英霊と人の両方の顔を持つ娘よ。魔術の徒よ。英霊よ。これは我らが挑むべき偉業の破壊に比べれば些事たるもの。手出しをすればその時点で銀狼の覚悟も無駄になると思え」
うふふ・・・武者震いがしますし、ええ。少しワクワクしますね。この方との手合わせ。
「すごい・・・」
マシュの言葉がきっとここにいる皆の総意だった。
「ハァッ! っ・・・! ん!」
大剣のひとふりだけで4つの斬撃を繰り出す初代翁。マシュ命名のキングハサンの攻撃を華奈さんは二つを刀で受け止め、もう一つを体裁きで、もう一つは足で当たらないように移動して対処。
返す刀で二刀流の連撃と斬撃を飛ばし、まるでブーメランのように飛ばして擬似的に同時に4、8つの攻撃をキングハサンの死角からも繰り出すけど、それさえ見ているかのようにキングハサンはいつの間にか華奈さんの上空に移動して刺突。
「ハァイ!」
「フン」
その刺突から床を割ってほとばしる青い炎を華奈さんも同じように斬撃を飛ばして炎を割り、上を向いて飛んでいく斬撃と炎の割れ目に突撃する形で仕掛ける華奈さんの居合術が廟の石柱を斬撃だけで豆腐のように切り裂くけどもそこに既にキングハサンはいない。
華奈さんが急にしゃがんだと思えばそこにはいつの間にかいたキングハサンの横薙ぎの一振りが華奈さんの首のあった場所を振り抜いていて数旬遅れれば首は繋がっていなかっただろう。
「ここまでお母さんが強かったなんて・・・所々見えないほどです・・・」
「ああ・・・互いに斬撃を当然のように飛ばし、炎に神仙術・・・」
「見えないところに剣をふるったと思えばそこに刃の当たる音、あるいは何方かがいる。とんでもない。これが初代山の翁様に華奈さんの武術、武芸」
青い炎が華奈さんを燃やしたと思えばそれは火炎の竜巻となっていくも、華奈さんが自分を襲う炎を切り裂き、鳥、爪、獣の顎を思わせる多種多様な斬撃を飛ばしてキングハサンを攻撃、迎撃していく。
まるで互角。円卓最強の騎士の武芸は初代山の翁に通じる。そう思っていた剣戟も、しばらくして変化が起きてしまう。
「づっ・・・! あグッ!! ・・・・う・・んぐっ!」
華奈さんが押され始めていく。止めの剣が弾き返されてしまいまるでピンボールのように弾き飛ばされては血反吐を吐く。
斬撃もぶつかり合いが押し負けてしまい回避することが増えて、どんどん体中に切り傷とやけどが増えていき、白銀の美貌と体が赤い血と黒いやけど、土の汚れが増えてしまう。
「あ、ああ・・・アルテラとのときよりも・・・押し勝てて・・・いない・・・っう・・・! お、お母さん。負けないで・・・いえ、死なないでください!」
「な、なんであんな一方的に、さっきまで互角だったのに! 華奈さんなにか試練での枷があるの・・・?」
抵抗できていたのが今はもはや一方的な攻撃に耐えつつかろうじて致命傷を避けるだけ。いじめを見ているような状況だ。
「何を言うか・・・何方も、初代翁殿も、華奈殿も攻撃も防御も何方も超一級品。今の拙者では逆立ちしても土台出来ぬほどの剣技と体術の応酬よ」
「はい。私でも出来ぬ技ばかり・・・」
「で、でもお母さん一方的にやられているじゃないですか!」
「それほどに武力の差があるということよ・・・! なんという・・・底が見えぬ。拙者が先ほど感じた武の見定めも甘いやもしれんほどだ」
あたりに華奈さんの血が飛び散り床に、石柱に、壁にかかり、マシュの盾や僕の頬にも飛び散る程に、全身血だるまになり、息も絶え絶え。
それでもまだ華奈さんとキングハサンの激闘、いや、もはや拷問とも思える試練は続いていく。華奈さんの声も小さく痛みに呻く気力も少ないように見えている中、キングハサンの剣に唐突に華奈さんが待っていたと言わんばかりに飛びかかり、飛ぶ斬撃と刀の両方で弾き飛ばす。
ただこれもキングハサンは予測済みとすぐに引き下がって瞳が光ったと思えば青い炎と斬撃が華奈さんを襲う。
「おう、か・・・!」
華奈さんを助けようと前に出そうになった瞬間、青い豪火の中から聞こえた華奈さんの声と同時に薄く桜色に光る刀と斬撃が炎を切り裂き、斬撃を弾き、そして、小さな金属音が響く。
「か、かフッ・・・・ふー・・・ふ・・・ど、どうです・・・か・・・?」
炎が収まり、そこから全身やけどと傷口が変色している全身ボロボロの華奈さんが刀を杖に立っているのが不思議なほどの状態の中、ニヤリと嬉しそうに微笑んでギラつく目でキングハサンを見る。
「・・・・・見事。銀狼よ。貴様の牙、確かにこの翁に届いた」
そう、小さな、ダメージにすらならないほどのものだけどキングハサンの鎧、その胸の部分にある髑髏の右目から上にかけて刃で切られた跡。さっき華奈さんが桜色の刀で飛ばした斬撃が確かにキングハサンの鎧に届いた証だ。
「ふふふ・・・では・・・」
「我も力を貸そう。獅子王との決闘。その戦士の一人として参列する申し出を受け入れる」
「ありがとう、ございます・・・・あ、やば・・・へぶす・・・!」
華奈さんへ課された試練は無事に認められ、先ほどまであった濃密な死の気配、戦闘の空気は霧散してキングハサンも剣を収める。
それで緊張の糸が切れたのか、べチャリと床に倒れる華奈さん。同時にドバっと血が流れて倒れた際の衝撃で炎で焼かれていた傷口も一部裂けて再出血。血の海が出来上がりそうになる。
「お、お母さん!? 先輩急いで回復治療のスクロールと止血を! 緊急バッグ!」
「華奈さん! ああ、ここまでの武芸を持って試練を超えたこと、母として誇らしいですが同時に無理しないでください! こんなボロボロに・・・急いで治しますからね!」
「天晴。まさしく八百万の神々も魅入り、恐れるほどの武芸の応酬であった。そして初代翁殿。協力感謝する」
僕らで急いで治療をしていく中、それを見届けているキングハサンの空気が少し柔らかく。笑った? 用に思えた。
「あ・・・そう、です・・・マシュ様・・・私のカバン・・・中身を開けてください・・・」
「お母さん? え、ええ! 急いで中身を・・・・お茶と・・・クッキー・・・?」
「うふふふ・・・挨拶、しに来たんですし頼み事もあるのです。運動と話を終えれば、御礼の品と、休息の一品は、必要。でしょう・・・? 翁様に・・・」
「え、あ、あの・・・えーっと・・・はい! あ、あのキングハサンさん。これをどうぞ!」
「受け取ろう。では、太陽王のもとで会おう」
クッキーの入ったカゴとお茶の入った木製の水筒を受け取ってキングハサンはいなくなった。フラフラと体を起こす華奈さんは微笑みつつ一人目勧誘成功。と笑っていた。
ほんと、この人強すぎるよ・・・
~聖都前~
ドスッ!
粛清騎士「む・・・何だこれは・・・キャメロットの紋章に、獅子王様への手紙・・・!?」(矢文を拾い上げる)
ランスロット(帰還中)「どうしたのだそれは」
粛清騎士「ハッ! 今さきほどこのような矢文が届きまして! しかし、獅子王様への手紙。何かの呪いでしょうか・・・?」
ランスロット「・・・・・!! いや、これは呪いではない。むしろ制約。何かしらの頼み事を含んだもの。そして、よく見つけてくれた。これは我らが騎士団、そして獅子王様へ届けるべき重要文書。私が責任を持って王へ届けよう」
粛清騎士「ハッ! 光栄であります! そして任務の帰還お疲れ様であります!」
~聖都キャメロット・玉座の間~
獅子王「ふむ・・・・・よくぞ届けたランスロット」
アグラヴェイン「そこにはなんと記されていましたか?」
獅子王「あの人・・・姉上がここの特異点の戦力のみで我らとの決闘を挑んできた。人数的に卿らのうち誰かと、私が2人を相手することになるが・・・うまく行けば太陽王と決戦をせず、山の民たちの村二軍を向けず、消耗なく、カルデアの増援をこれ以上入れずに挑める機会となり、我らが勝てば被害も消耗も少なく姉上を手中にできる」
一同「「「「!!!」」」」
獅子王「しかも、そのために恐らくだが、神代の魔術師による制約を課している。つまり、これを我らが受け入れればその間動きは取らねば姉上もここに向かわなければいけず、いくら戦力を引き連れようがその人数でしか我らに挑めず、そして同時に我らを試している」
アグラヴェイン「試す。とは?」
獅子王「読んでみよ」(手紙を投げ渡す)
アグラヴェイン「失礼・・・・! なるほど・・・この戦いを切り抜けられなければカルデアの次なる戦士たちにも、魔術王にも負けるであろう。そんな軟弱者たちでは土台自分を捕まえられぬと・・・大きく出ましたな」
ガウェイン「しかし、事実私も、トリスタン卿も、そしてランスロット卿、我が王とも切り結んで尚今も逃げ続けているのが華奈卿・・・先生です。なるほど。あちらから出向いてやるから我らが領地で真価を見せてみろと。先生とその選んだ戦士たちを倒せれば我らが軍門に下ると」
トリスタン「ああ・・・私は悲しい。我らが円卓の、獅子王の騎士を侮っていると見られる。いえ、それがそれ以上の目論見を考えているのでしょうか・・・?」
ランスロット「そうなるとすれば・・・我が王、そして我らの行動の意味を問いただしに来たのでしょう。この人理焼却のさなかで何をしているのかと」
獅子王「そういうことであろう。あの人は・・・恐らくそれをする・・・ランスロット卿。この手紙の返事を送る使者となれ。この決闘を受け入れる。その間はこちらも何もしないと誓うと。姉上とカルデアのもの等が逃げた方角は覚えているな?」
ランスロット「ハッ。では早速使者として向かわせてもらいます」
獅子王「うむ。いいか我が騎士たちよ。我らが大望が数日後自らやってくる。しかしそれは同時に我らへの試練を同時に運んでくる。何より姉上自身が最大の障壁。いや・・・太陽王も動くであろう。しかし怯むことなく、そして油断なく備えをせよ。いいな」
一同「「「「ハハァッ!!!」」」」
アトラス院のこともですが既にロマニの正体やゲーティアのことも知っているので実は鬼ヶ島あたりで初代翁様の言う人理焼却のことを知るということはクリアしているので華奈達は呼ばれました。
あとクッキーとお茶はキングハサンが美味しくいただきました。