転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「返事を受け取りました。では・・・3日後に再び聖都でそちらに挑む戦士たち以外は戦わせないと誓いましょう」
「ええ。こちらとしても聖罰を見せたうえで信用するのは難しいでしょうがそれでも円卓の騎士。獅子王の騎士。条約は守りましょう」
しっかりとした目でこちらを見据えているランスロット。華奈たちがアズライールの霊廟に行ってそろそろ帰るか。そう思っていた矢先にランスロットと数騎の護衛らしき騎士たちが来て構えたが、その内容は華奈の作戦が、つまりそれぞれの代表を用意しての決闘。それまでの期間動きをしないというのを飲んだということ。
「では。カルデアの代表として私元がサインを・・・」
「む、ええ。了承しました。では聖都にてお待ちしています」
ギアス・スクロールで結ばれた条約が結ばれたのを感じ、頭を下げてから去っていくランスロット。どこかホッとしているようだ。
「いやはや、肝が冷えましたわねえ。マスター。私不安でしたわ♫」
「あ、そう言ってー最初は怖くなかったでしょうに」
「あははは。いやいや、華奈に並び立つと言われた湖の騎士。そう思ってもしょうがないよ」
猫なで声でこれ幸いと私に抱きついて豊満な肢体を押し付けて甘えるアンの頭をなでつつ少し頬を膨らませているエレナさん。実際に肝が冷えていたエレナさんからしたら少し面白くないのかな?
そのむくれ顔もかわいいもの。
「なんともはや・・・我ら山の民への不干渉、停戦を数日とはいえ許可とは。獅子王にはよほどな内容だったのでしょうな」
「ある意味敵の肝心要を着いたといえますからね。とはいえ、あのトリスタンは怖い。呪椀さんもどうか気は緩めずに」
「もちろんです。初代様に呼ばれた御仁のご家族の前で、恩人の前で不手際はしませんぞ」
「元さん。華奈さんが戻ってきました。戻ってきたんですが・・・」
静謐のハサンが僕に藤丸と華奈たちが戻ってきたのを教えてくれている。つまりは成果を持って帰ったのだろうけど。どうにも浮かない顔だ。
どうしたのだろうか? ハサンが畏れ敬う初代山の翁の下から戻ったというのに。
「元。ダ・ヴィンチを呼んで医療道具をもってこい。ボロ雑巾のようなやつがいるぞ」
「だいじょーぶですよぉー・・・おふぅ・・・さ、元様。ほふ・・・次、いきましょう」
百貌のハサンが声を掛ける前に眼の前に霊廟から戻ってきたメンバー、そこで鎧以外は全身ズタボロの華奈が今もマシュの用意していた応急手当の魔術と医薬品で治療を受けつつふらついていた。
「ちょっ! 何をしてきたの!? 今までにないほど消耗しているじゃないか!」
「初代翁様と切り合いまして・・・協力は取り付けたんですが・・・いやー・・・強かった・・・あちち。染みますよダ・ヴィンチちゃん」
「はー・・・全く無茶をする。ボロボロじゃないか。それで、華奈をこうも追い詰められる暗殺者を仲間にできたのは良い。ただ、すぐに太陽王のもとに向かうとは無茶じゃないかい?」
「いえいえ・・・私は恐らくオジマンディアス様に考えを伝えるだけでいい・・・うふぅ・・・あー・・・スピンクスに乗せてくださいませ。
メンバーは・・・私、マシュ、藤丸様、元様、エレナ様、アン様、ダ・ヴィンチちゃん、アーラシュ様。頼光様は・・・ふふ。付いてくるでしょうし、お願いします」
口調はゆるいけど、この状態の華奈は引かない。行くと言ったら行く。目を話した隙に勝手に行きかねない頑固なときのものだ。
うーん・・・流石に、ほっておけないし・・・時間は限られている。その内に動くしかない。かあ・・・
「わかった。じゃあ、今すぐ行こう。ただし華奈は絶対安静。戦闘はしないことだよ。いいね?」
「ええ。わかりました。どのみち今はちょっと体が元気になっても気力がないので大人しくしておきますよ」
「お願いしますお母さん。私本当に肝が冷えましたよ・・・魔術王のせいで魂が鬼ヶ島に行ったときのように・・・」
「やーれやれ。スピンクスは3人乗り。2台じゃ足りないね。もう一台用意するからその間だけ待ち給え。アン、エレナ、手を貸して。海賊と魔術師なら木組みや雑用はお手の物だろう?」
「わかりましたわ。ではでは、再び太陽王のもとへですわね。豪華な食事を味わいつつ華奈さんも復活すればいいですが」
皆も華奈の言葉に動くしかないと理解したようで急いで3台目のスピンクスを作り上げて日が落ち始めていた中太陽王のいる神殿に向けて砂漠へとスピンクスを走らせた。
「フハハハハハハハ!! 意外と早い再開だなカルデアのもの等に銀狼殿、そして勇者殿までいるとは! 千客万来とはまさしくこのことか! 早速酒と食事を持ってもてなす! ・・・と言いたいところだが、勇者殿、銀狼殿もいる中でこそ、余は聞くべき事がある。わかるな?」
どうにか傷まみれ火傷まみれの体を無事に完全復活。いやー翁様も手加減してくれていたので火傷も傷跡も残らず良かった。のですが精神の消耗はまだまだ戻らずぐったり気味。そこを頼光様に支えてもらいつつのまま二度目の大神殿、オジマンディアス王のもとに謁見へ。
アーラシュ様や私を見てテンションが上った。というよりは社交辞令を述べたあとにゆっくりと腕を組んでこちらを見据える。
「ええ。獅子王を倒せるか否か。そしてこの先・・・特異点修復の先にある魔術王との決戦。そこに私が何を考えているか。ですよね?」
「うむ。余は偉大なる戦士である以前にファラオ。王である。故にこの人理焼却の中でまず余たちの国を、領地を守ることを優先した。これは為政者であり、民草へ永遠なる太陽の恵みと日々を与える神王たる余のすべきことであるゆえに。
しかし、しかしだ。勝手に余やネフェルタリとの歴史も、勝手に人理を燃やした魔術王への怒りもある。彼奴らへ一撃を加えてしまいたい。それに関しての意見を、考えを聞かせてほしい・・・」
「ラーメス・・・貴方やっぱり悩んでいたのね・・・私にも言ってくれれば」
「許せ、ネフェルタリ。この難題は銀狼殿にこそ聞きたいものであり、獅子王を、山の民達を見たうえでどうしたいかを聞きたかったものなのだ」
「王様ってのは大変だよなあ・・・あれこれ考えつつ、どうしたって動きが鈍る」
「まあ、だからこそ変人の私の意見をほしいと。ええ。話しましょう。ですがそれには下準備が必要でして・・・」
ちらりとニトクリス様、クレオパトラ様とネフェルタリ様。そして私以外で一緒に来ていた面々。更には、オジマンディアス様のもとにある聖杯・・・
「ふむ・・・ニトクリス、クレオパトラ。貴様らは席を外せ。神殿でカルデアのもの等と交友を深めておれば良い」
「え、オジマンディアス様!? 私達にも!」
「くどい。二度は言わぬぞ」
「は、はい・・・かしこまりました」
「私も了解しましたわ」
「そして、聖杯とネフェルタリ様も神殿の奥の方で一度休まれてくだされば。オジマンディアス様への飲み物を用意していただければ。どうかゆるりと・・・」
「・・・ええ。ラーメス。しばらく預かるわよ? 大丈夫?」
「いいだろう。それも持っていってくれ。ネフェルタリ」
「では、皆様も一度神殿から外してくれれば。そして・・・翁様。お願いします」
「承った」
皆様も神殿からでてもらい、カルデアの方からも、魔術方面でもこの神殿への外部干渉を完全に切り捨ててもらう。これでこの玉座の間は私とオジマンディアス王二人だけ。会話を一切聞き取れない完全な密室遮音の空間。
(今の死を煮詰めたような気配の声・・・余の首を切ったのは・・・まさか、な)
「さて・・・玉座の間の方も完全に繋がる道を閉じた。今、ここは余と銀狼殿だけの空間よ。さぁ、ここまで人払いをしたのだ。話してもらうぞ、銀狼殿の考えを、策を」
「はい。では申し上げます。私の持つ備えのうち一つを・・・・・」
「銀狼殿と王は何を話しているのでしょうか・・・」
「華奈の考えを、これからの旅路での対策だけど・・・王を納得できるほどのものかあ・・・」
「あーダメそうだね。盗聴も、音も一切聞こえない。魔力の方も電波も集音器も意味がない。まるで異空間の壁を何重にも用意したような厳重さだよ」
『カルデアの方でも音声や映像は一切見ることも聞くことも出来ない。本当にとことん徹底した情報漏洩を防いでいるようだねえ』
ネフェルタリ様以外皆で神殿の外に追い出され、仕方がないので入口から少し離れた神殿の周りの庭園のコテージで一息入れることに。
こらこら。カルデアの知識人が揃って盗聴しようとは趣味が悪い。まあ、気にはなるけどもねえ。
「ちょっ! 不敬ですよ! 王と銀狼殿の大事な会話。私達がその時間を乱すことがあってはなりません!」
「そうですよダ・ヴィンチちゃん。それに、私も華奈さんとダ・ヴィンチちゃんの用意している備えとやらを教えてもらえていないのにそっちが盗み聞きはずるいですよ」
「いやいやー気になるじゃないか。まさかの獅子王に真っ向から喧嘩を売る作戦を出す華奈が何を考えついたか。あの神王も動かす上奏は何なのか。王の意志を動かす考え。気にならないかい?」
「ま、まあ流石に気にはなりますけども・・・オジマンディアス王のお考えも思慮深く計り知れないですが、同時に銀狼殿の考えも読めない。聞くだけでも寿命が縮みそうで・・・それにまあ、知られる人間が少ないほうが良いのはわかりますし」
「情報漏洩や機密を大事にするのは好感が持てますが、ファラオから聞いた話。特異点でのアレコレを聞けばまあ、ニトクリス様のご意見も正しいですわ・・・」
女性ファラオ二人も流石にあの二人の会話は気になるが、多分聞けば突拍子もない作戦を出していそうで驚きそう。そしてそれを口に出す。知られてしまうのは魔術王、いやゲーティアに知られる可能性できる限りなくす意味でも大事というのはそうだ。
だからこそ私も華奈の『備え』と『作戦』を聞いていないわけだし。
「ま、何にせよオレ等の図れる話じゃあねえのなら、今はゆっくりするだけ。それにうまく行けばあの太陽王が仲間になって獅子王に挑めるんだろう? 頼もしいことこの上ねえさ! 文字通りの百人力。ギフト持ちの円卓の騎士たちでも圧勝なはず!」
「ええ。オジマンディアス様と、銀狼殿をあそこまでヘロヘロにさせてしまう山の翁。そして回復した銀狼殿たちならきっと・・・・そうですね。せっかくですし、少しだけ華奈が何をしてきてここまで来たかを話しましょうか?」
「あら、銀嶺隊の話を。いいわ。良ければ話して貰えれば。軍記、戦記という意味ではカエサル様のガリア戦記が一番でしょうけど、特異点でどうしたのか気になりますし」
「そうですね。では元。そして藤丸にマシュ。貴方達も元の補助をしつつ話をきかせなさい」
「もちろん」
「はい。お母さんが今まで特異点で何を成してきたか。それを是非知っていただければ」
「わはははは! 酒と本を引き換えに手にしたメデューサの血を利用してあのヘラクレスを毒殺してしまう!? アークを利用せずに手頃な、しかも英霊の弱点をつくとはなあ。想定していたってことか」
「魔神柱8本を瞬殺して、その次は28本をひとまとめにして集団爆撃、宝具の一斉射で始末・・・・・合理的ですが、恐ろしいのはその理解力ですね・・・英霊の強み、性質。特にジークフリードの宝具開放の際に扱われる真エーテルを増幅することで神霊たちを強化するとは・・・」
「か、カエサル様のみならず神祖ロムルス様も撃破した・・・!? あのフン族の破壊の戦士アルテラすらも打ち砕く・・・! 嘘。と言いたいですが・・・オジマンディアス王が銀狼殿と呼び、ここまで来た事実が・・・・」
「まあ、普通はそういう反応ですよねえ。でも、華奈は藤丸君たちと一緒に越えてきたんですよ。だからこうしてここで今太陽王と話している」
「はい。そして、円卓の騎士が・・・お母さんの古巣と言ってもいい。英霊として登録されている仲間たちと戦うとなっても躊躇なく戦いに行ける。本当に、勇気ある人です」
皆で特異点の中でどういう戦いがあったかと聞かれるとこういうのがあったよとピックアップして特異点でのあらましや内容を語れば皆が目を輝かせて話を聞いて驚いて、楽しんで過ごせる時間。ただ、その話の中でニトクリスが英霊の能力、適正の組み合わせという部分で興味を持った。
「ふむ・・・元。貴方のもとには神代の魔女メディア、そして近現代の魔術師エレナがいますよね。で、彼女たちの協力もあって貴方も特異点へ問題なくレイシフトできている。
私もキャスタークラスですが、貴方達の可能性を聞けば・・・私にも、なにかできることが増え・・・っ。神殿の扉が開きましたか。ということは・・・・」
『入れ。ニトクリス、クレオパトラ。そしてカルデアの者たちに勇者殿よ。余と銀狼殿の話は終わった。その結果を話す』
完全に閉め切っていた神殿の扉が開き、上空からオジマンディアス王の言葉が響く。話が終わった。華奈とオジマンディアス王の話が。つまりは決闘の参加への是非や、華奈の備えを聞いて問答が終わったのだろう。
「皆、入ろう」
オジマンディアス王に促されるままに再度玉座の間に通れば、そこには聖杯を持つオジマンディアス王だけで、華奈も、ネフェルタリさんの姿もなかった。
「オジマンディアス王。華奈の話は終わったと言っていたけど、その華奈はどこへ行ったのか知りませんかー?」
「銀狼殿は消耗が激しかったようなのでな、ネフェルタリと湯浴みに食事でもてなしている。そして・・・銀狼殿の上奏。そして問答を経て余の考えを伝える。玉音。しかと聞くが良い。
銀狼殿の決闘の戦士の一人として参加することを受け入れよう。打倒獅子王。そのために力を貸し、そして聖杯もその戦いが終われば銀狼殿へ下賜すると約束する。銀狼殿の策。愉快なものだったのでな。笑い倒したあまりに曇っていた余の目も晴れた気持ちよ。そこの女武者よ。従者をつけるゆえに湯浴み場で銀狼殿を支えてやれ」
「ありがとうございますオジマンディアス様。では、少し席を外しますね」
「で、では! 一緒に獅子王との戦いに!」
「しかぁし!!」
まさしく吉報。華奈はキングハサンには覚悟と武威を示して、そして太陽王へは自身の備えと対獅子王への献策をもってこの二大戦力を引き入れることに成功した。しかも聖杯もちゃんと渡すという約束付きだ。
喜ぶマシュやダ・ヴィンチちゃんの言葉を遮るように太陽王の言葉が場を沈めさせてシン。と場の熱が抜けていく。
「聖杯の下賜も、獅子王等を下す戦士の一人になるのも良い。だが、それはあくまでも銀狼殿の行動あってこそ。余はまだ見極めていない。聞いていない見ていない。カルデアの者たちよ! 貴様らは同じ覚悟を持っているのか、余に近しい力を持つであろう獅子王に、この星の表層を刺し留める錨であり塔であり、針を持つ戦士に挑めるのか。
たとえ決闘に選ばれることなき戦士だとしても、この先の戦いへの余の気持ちが変わることがないであろうともここで王として余が戦士たち、勇者たちの度量を見てやろうではないか」
そう言って太陽王は持っていたナイフで手のひらを切りつけて血が聖杯の中に満たされていく。
まさか・・・今からここで暴れようっていうのか!?
「銀狼殿と余によって浄化されし聖杯よ! 余の体に神を宿せ! 我が大神殿に祀る神の一柱。ラーよ!」
そう言ってオジマンディアス王と聖杯は輝きを増し、姿を変え、全身が金色の、赤き目を持つ巨大な四足歩行の翼を持つ獣に変化した。
「ワァオ。こいつはすごい! ラーと言えばエジプト神話の太陽神。文字通り最高位の神性だ! そんな巨大な神性が直に顕界するということはほぼほぼない。でも、太陽王オジマンディアスという最強のファラオの肉体、そして神を奉る神殿という空間。更にその神性を宿し維持する器としての聖杯。
それらが揃ってこそ起きたもの。時間には限りがあるだろうが・・・魔神柱なんて容易く屠る存在だ!」
「これと相対してしばらく生き延びるくらいじゃないと獅子王は愚かこの先へも渡っていけないと・・・どんな荒波と嵐、焼け付く太陽を超えてゆくのが海賊! マスター。援護頼みましたわよ!」
「本気だな。オジマンディアス。いいだろう。一飯の恩。そしてこの特異点へ希望を見出したコイツらを先へ送り届けるためにもこのアーラシュ。挑ませてもらうぞ!」
「すっごい奇蹟を見ているけど、それを感じるのは戦闘になるのね・・・まあいいわ。全部調べ尽くしてあげる!」
アン、アーラシュ、エレナも準備OK
「お母さんがここまで繋いだバトンを私達で落とすわけには行きません! オジマンディアス王! 貴方の期待に応えてみせます!」
「藤丸君も無理はしないことだ。いいかい、ちゃんとマシュの後ろにいるんだよ。でないと、あっという間に黒焦げだ!」
「もちろんです。でも、これでなら盾を超えて支援できるので礼装込みで頑張ります!」
皆も武器と礼装を用意して準備万端。私も回復魔術特化の礼装で支援をするようにしていきつつ、こちらを見定めている赤い瞳が輝いて、翼を動かしたと思えば熱風が神殿内を包んだ。
「つっ! 何ていう熱量・・・!」
「レイヴンも喰らってはいるけど・・・」
「いやあーとんでもないね! 藤丸と元の方は真面目に私が結界と冷却システムを機能しておかないと室内なのもあってすぐに焼け・・・おおっと!」
ラーを憑依させたオジマンディアス王との激闘は、こちらも反撃を繰り返してはいるがそれが効いているという素振りはまるで見せず、藤丸のレイヴンは愚かアンの銃撃で関節部分を狙って跳弾も活かして少し動きを鈍らせ、その間にマシュのシールドバッシュがどうにか。
「本当にトップサーヴァントと聖杯の組み合わせはろくなことがおきないわね!」
「聖杯がなくてもアイツはこういうことは平然とするぞ? 最強のファラオは伊達ではないってことさ。シっ!!」
やはり一番のダメージソースとなるのはアーラシュの剛弓。その一撃一撃、速度、精度はどれをとっても一級品。弓の技術で現代の最新火器であるはずのEDFのアサルトライフルに引けを取らないのは怪物と言って良い。
「ぜはっ・・・は・・・! く・・・」
「さあ、どうした! 耐え凌ぐだけでこの太陽の熱は終わることはないぞ! 勇者であるのなら、人理を燃やされて尚進む勇気。それを支える気概を見せてみよ!」
「先輩! 元さん! 後ろに!」
「魔力を回すわよ!」
前足の爪先に魔力をためて放たれる一撃。それは超高熱の斬撃となってこちらに飛び、マシュの防御スキルと大盾。そこにエレナの魔力を一部譲渡できるスキルで補強することで攻撃を凌ぐも、その余波だけでこっちが吹っ飛び、焼け付く床に手のひらが付いて熱さに思わず手を跳ね上げる。
「あつつつっ!!」
「ガンド! ガンド!」
「はあぁっ!」
「むっ・・・!」
追撃をしようとしていたオジマンディアス王に藤丸のガンドの連打。どうにか少しだけ怯んだ間にオジマンディアス王の振り上げた手。その姿勢の間にお腹にアーラシュが矢の連射。その威力でオジマンディアス王の巨体が浮き上がり、藤丸のレイヴンで目を狙うことで目眩しと、守るために顔を動かすことでよろめかせていく。チャンスだ。
「アン! 地面! エレナ。支援! ダ・ヴィンチちゃん!」
「了解~♫」
アンの連射で床の瓦礫やラーの姿へと変化しているオジマンディアス王の足跡で出来たくぼみ。そこを砕きながら乱反射しては更に床を緩くしていく。
そこにエレナが呼び出した・・・UFO? を用いて翼に攻撃・・・はしたのだけど体当たりを用いて両翼を一瞬だけ封殺。
仕上げにダ・ヴィンチちゃんの巨大なガントレット。あれを更に巨大化させたものをオジマンディアス王の顎に発射して叩きつける。質量という意味ではある意味一番重いだろうものを叩き込めばゆるい足元、アーラシュの剛弓で浮き上がったからだ、翼も姿勢制御に使えず、顔は藤丸のレイヴンとダ・ヴィンチちゃんのロケットパンチな攻撃でぐらつく。
「っ!」
「むぅ!」
その僅かな隙を逃さずにマシュが盾でぶつかり、ラーを憑依しているオジマンディアス王をひっくり返してしまう。ダウンを奪えたのだ。
「や、やった・・・! 今のうちに・・・・うっ・・・!」
「あ、あちち・・・! もう握れない・・・!」
追撃を。そう思うのだけどサウナ以上の熱すぎる玉座の間での戦闘。体中の肌がスポンジになって体の中の水を出していると思えるように汗の滝が流れて、床に付けばすぐに蒸発してしまうほどの灼熱地獄。
英霊の皆、英霊の力を借りているマシュたちはまだまだ問題ないけど、神性を含んだ熱に僕らマスターのほうが先にやられそうだ。視界がぐらつき、汗がしみるなか
「はははははははは!! 見事である! 高き太陽神であるラーを転ばせるか! そしてチャンスを逃さぬ。尽きぬ戦意。よい。認めよう。
この5分の間余の攻撃をしのいだこと、大きな一撃を与えたこと。勇者殿の助力ありとはいえ見事」
ラーを身に宿していたオジマンディアス王の変身? 憑依? まあ、変化が解けて先程の姿に戻り、神殿は熱が逃げていき徐々に最初の頃の涼しい神殿に。戦闘の余波で傷ついた玉座の間のダメージも完全に直っている。
無事に最高位の神性を相手に僕らは生き延びた。逃げるだけではない。確かに戦う意思を見せつつ。
「よ、よかった・・・死ぬかと・・・喉、乾いた・・・」
「ぼ、僕もだねえ・・・水は・・・ある・・かな?」
「フハハハ。生身の人間には辛かろう灼熱によく耐えた。回復と英気を養うための食事を振る舞おうではないか。
聖都には刻限通り訪れる。食事を取ったあとにスフィンクスで余の領域を出る直前までは送ろう。元、藤丸。貴様らも獅子王に挑む。魔術王に戦う胆力を持つものとして今はもてなそうではないか」
ご機嫌そうにオジマンディアス王も従者を呼んでまた僕らに豪華な食事を振る舞い、湯上がりらしい華奈、ネフェルタリさん、頼光さんも交えて皆で豪華な晩餐会を開いて、寝床まで借りることになり翌日にはお開きになった。
これで仕込み完了。次は殴り込みへ