転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「ふー。面倒くさかったので逃げましたが、これで一段落。ですかねえ?」
「いやはや、華奈君が打ち合う際にそれとなく陽炎でかすかな光で剣戟で派手に火花を散らすように見せている間に幻術を見せる仕掛け。見事ハマったねえ。
相手はまだ子供のようなもの。精神的干渉や搦手には弱いと見える」
偽エルキドゥ? と少し戦いましたが、マーリンの言葉とあちらの思惑を考えると森の近くで戦うのは大変危険。ということでひとまず幻術を使って撤退。
「しかし、あの出力、戦闘能力はまさしく神々の生み出した兵器、そして・・・可の英雄王の親友と呼ぶにふさわしいもの。本当に、あのエルキドゥは、死んだものなのですか?」
「はい。お母さんにストーム1さん。ストーム2の皆さんたちでないとついていけないような動きでしたし・・・」
「ああ、ちょっとこんがらがる話になるけど、事実だ。あの戦闘能力や戦法はまさしくエルキドゥ。しかし、今の彼? 彼女? は三女神同盟の調停役であり、すべてのウルクの民の裏切り者だ」
『一応魔力の性質の方は魔神柱のそれに近しいから、何かの仕掛けや関係が絡んでくるのだろうけども・・・にしたって、エルキドゥが敵になるなんて』
まあ、あの英雄王に最強の一角と言わしめるほどの存在。大真面目にそれが調停役として動きつつもある程度の自由行動を許されている。つまりは遊撃にも行けるってことは確かに辛い事実。
数合打ち合いましたがアルテラを想起させる程には重く速い攻撃ばかりでしたし、経験を積んでいなければ多分手傷の一つ二つは負っていたでしょう。
「カルデアの皆のショックもわかるけど事実、彼に殺された戦士は数しれない。魔獣の女神に代わって魔獣たちの指揮をとっている彼こそが魔術王直属の配下と言えるからね」
ここで更に新情報。そしてなるほど。魔神柱の性質ににた魔力。そして・・・ソロモンの遺骸を借りて復活した、いやソロモン王を騙るゲーティアなら思いつきそうな話です。
なにせ、何かの細工を加えつつ蘇らせれば最強の神獣相手にも喧嘩できるまさしくウルクの守護神足り得る戦力を引き込みつつウルクの民の心を折りに行けるのですから。
「ふーむ・・・なるほど。いやらしいやり方をしてきやがる。多分シンプルな能力差もあるだろうけど、信じられないと刃を向けきれずに死んでいった兵士も多いだろうに・・・」
「まあね。実際、彼はエルキドゥと名乗って多くの城塞都市を滅ぼし、魔獣たちを送り込んできた。ウルクの民は偽物と信じたいようだけど、あの戦闘力はエルキドゥ以外の何物でもない。直に切り結んだ華奈ならわかるだろう?
そこらの英霊がまがい物を作り出してできる能力じゃない。スケールダウンしたサーヴァントシステムで再現するにはどれほどのものが必要かを」
「ええ。あれは本当に強かった。ですが同時に、そういう形であるのならば付け込む隙も見えてきましたよ。
とりあえず今は私が魔獣のいない場所を探りつつ、ストームのブレイザーで斥候代わりの奴らは排除していきます。目指すはウルク。でしょう? マーリン」
「ああ、ウルクは拠点活動に最適だし、なにより華奈君、そして君たちストームチームは歓迎されるだろう。私と一緒にアヴァロンからカルデアに協力を申し出たかつてのブリテン、オークニーからやってきた騎士。
華奈くんの一番弟子にして太陽の騎士。聖剣の姉妹剣を握り勇猛果敢、ウルクの戦士たちからも一騎当千との称賛を受けるガウェイン。彼が常日頃から師匠である華奈くんのことを話していてウルクもその戦士が来ることを待ち望んでいるからさ」
「あ、あははは~」
「それならありがたい話だ。名前が知られている分、華奈さんから俺達も軍人として採用されたり、あるいは何らかの調査をできるであろうしな」
「また新兵スタートってのは疲れそうだが・・・まあこれもしょうがねえ。やるしかありませんかっと」
いやはや気恥ずかしい。そして、あのウルクの兵士たちにも称えられる戦いをして人々を守ってくれているのが師匠として誇らしい・・・ああ、エルサレムでの傷が癒やされる・・・
皆をハチ、花子、栗毛、黒介、マチ子に乗せて走らせていれば見えてくるのが大きな、牛や馬の絵が特徴的な青い巨大な城門。
いやはや・・・すごい。数十メートルはくだらない巨大なものですねえ。しかも私達ブリテンでもキャメロットに匹敵するほどの美しい組み方。
そして城門の前に立つ門番・・・検問をしていますが・・・ほほう。ウチの什長に即採用できるほどの武力。それに・・・多分頭が切れる方ですか。
「失礼します。門番様。私達はこのウルクに入城したいものなんですが」
「こんにちは。礼儀正しい挨拶ありがとうございます。新顔ですね? どこの街からの方でしょうか」
「ああ、彼らはギルスからの難民だ。私はこの通り祭祀場から商売の許しを得ている。彼らをウルクに避難させたいのだけど、手続きは必要かな?」
そう言ってマーリンは印鑑が押されている証文を見せて門番の方に見せてくれる。マシュは最初からスニーキングで入ろうとしていましたが、そんなことをすればすぐバレますよ。そもそも私達が最初に空からばらばらになったのもあのウルクの結界のせいですし。
「シドゥリ様の印ですね。それでしたら問題ありません。難民の受け入れでしたら、今日は西市場のメトゥラの店がいいでしょう。ちょうど二階の倉庫を難民の皆さん用に開放したと報せが届いています。生活用品は各城門で受取をしてくだされば。また、臨時の市民登録はラナの娼館で行っています。二週間以上のご滞在の際は是非ご利用を」
「ふむ・・・門番の人。ここに入る際に、検問料金、そういうのはあるか? 一応使えそうなものはあるのだが」
「いえ、そういうのはありませんし、それなりに質の良い宝石に布。これは市の方で買い取りをしてくれる業者があるのでそこでそちらの資金の足しにすると良いでしょう。何よりまずはこの長旅の疲れを癒やし、休んでください。
ようこそウルク市へ。我々は生きるために戦うもの。その全てに協力を惜しみません」
「ありがとうございます。門番様もお勤めご苦労さまです」
無事に入城許可が出たので私達もいざウルクへ。その際に門番さんからアナ様へ砂糖菓子をプレゼントされるというほっこりの一幕と、この戦時下にあっても門番の家庭がサラリと砂糖菓子を持てるほどの経済的余裕、そして豊かさに驚きました。
中世の応酬では貴族ぐらいしか楽しめなかったもの。私の領地でもはちみつと甜菜の流通は大変だったのに・・・すごいです・・・さすがウルク!!
「うふふ。何処もかしこも大賑わい。しかも区画整理も完璧。流石としかいえないですねえ。納得と驚きを同時に味わっています」
「君の銀嶺領もなかなかだったがここまでのシステマチックかつ見事な整理、そして無駄のない采配と配置は見事だよねえ。君の領地の究極。いや、原初にして頂点と言っていいほどのものだ」
「いやいや、私の領地など猿真似以下。これを王に聞かれていたら首が飛んでいますよ私とマーリンは」
ウルクの市内に入ればまさしくそこは最高の戦闘都市としている。市場は騒々しく活気に満ち溢れうなだれている人はいない。常に緊張や急かされるものはあるけどもそれは笑顔を忘れず、希望と覚悟に溢れている。
鍛冶場は常に稼働して金床とハンマーの音は街のBGMとなり彩りになるほどで、煙もそれは戦災のそれではなく戦う意志を絶やしていないという戦意の狼煙だ。
「街全体が生きようとする活気。生きようとする意思で溢れています!」
「あの城門の戦いといい、古代人間ってのはすげえな! 未知の魔獣達が、女神が相手でも怯みやしない! こいつは人類の後輩としても負けてられねえ!」
「すっげえなあー・・・・食材の流通量や店の客引きを見ても食料品が尽きている様子もないし、さっきの巨大な城壁の後ろからを大量に農耕地としてとにかく食料品を用意。
大河も利用して良質な泥で食品に建材の調達をしているんだろうけど、現代の都市にも通じるぞこれは」
「これが古代ウルク・・・都市国家の興りの場所であり、我らがエジプトと生まれを近しいものとする最古の文明都市国家」
「シュメル人は紀元前四千年前に歴史に登場した人々だが、その文明は実に細やかだった。人類最古の都市文明。数千人単位の村社会からの脱却から始まり、灌漑農耕による穀物の増産を始めとして数万人からなる都市国家群を形成した。
もちろんそれだけの国になれば文字の発明。学校による高等教育も行われている。木材には恵まれないが二つの大河に囲まれた肥沃な大地は良質な泥を生み出し、彼らは泥を練った粘土で様々な城塞を作り出した。それが泥と粘土と麦と羊の国、メソポタミアだ」
これには野蛮な都市国家だと思っていたロマニ様も撃沈して反省。
いやぁね・・・ほんっとブリテンでは王族でも文字の読み書きができない人が普通にいて、学校施設も教会でする他なく、5,6000人の村はやや都会の判定。
私の領地で教育システムを組んで漸く後半に識字率6割、人口数万の城塞都市にできたんですからそれより数千年前の時代に数万人が住まう城塞都市「郡」と高等教育システムを作り出して、キャメロットと私の領地以外では当時なかったほどの区画整理術を既に用意している。
本当に、この時代のみなさんが生み出した技術がすごすぎて私たちの時代が退化している。暗黒時代の中世ヨーロッパと言われますよそりゃあ。
「さて、このままこのウルク市の案内と行きたいところだがそれはあとにしてジグラットに向かうとしよう」
「メソポタミアの神殿ですよね。あの台形の建物がそうですか? マーリンさん」
「ああ、ではいよいよギルガメッシュ王とのご対面だ。張り切っていこう!」
ええ。既にワクワクが止まりませんよ私は!
「何度も言わせるな! 戦線の報告は新しければ新しいほどよい! 更新を怠るな! こちらがせわしなく働いた分だけ奴らの機会が減ると思え! 楽に戦いたければ足を止めるな!」
「はっ! 秘書官による粘土板づくりを1時間毎に、運搬役を三車増やして対応します!」
「よい。では次だ。本日の資材運搬の一覧はこれか? ・・・エレシュ市からの物資運搬に遅延が見られるな。街道に魔獣たちが巣をはったか」
ジグラットに通され、玉座の間に着けばそこではギルガメッシュ様が神官や武官、文官等に代わる代わる指示を与えて粘土板をテキパキと目を通しては的確な指示を与えている。しかも何がすごいかって兵卒や他の市からの人間の名前と特技まで頭に叩き込んでいるという事実だ。
まさしく賢王。英雄譚を作り上げ終え、その後に王の政務に励む英雄の姿がそこにはありました。
「・・・聞いていた想像とは違うような・・・もっと、こう。ひどい王様のイメージでしたが・・・」
「まさしく暴君って感じのはずが、賢王ですしね。丸くなったのでしょう」
アナ様の意見ももっともですし、ええ。若い頃の英雄王なら実際に色々怖いですよ。
「ふーむ・・・こんな列、どうせ後から後からひっきりなしに次の報告を持ってくる人が来るでしょうし、ここは強引に声をかけに行くのが正解ですかね?」
「ああ、あっちは場の空気を読まない。ならこっちから殴り込んでいくだけだ。多少無礼でも言いたいことを言うべきだよ」
「じゃあ俺とマスターで問題ないわけだ」
こらストーム。まあ、それぐらいがこの状況、あの王様への対応としては正しいのでしょうけどもねえ。
「それなら・・・ギルガメッシュ王! 魔術師マーリン。客人をお連れした! 忙しい? うん。知っている。だから今からそこに来るよ」
ということでマーリン様と一緒に玉座の間、ギルガメッシュ王への謁見に半ば強行的に実行。しかし・・いやー若いですねえ本当に。歳をとっても変わらないと言うか
「む?」
「帰還したのですね、魔術師マーリン。ご苦労でした。王はお喜びです」
いやあ・・・明らかにそうじゃねえよと言わんばかりの目ですけども・・・そばにいるきれいな女性。ギルガメッシュ王の秘書さん的ポジションでしょうね。
「それで、成果は? 天命の粘土板、見事持ち帰りましたか?」
「いや、そちらは空振りに終わったよ。西の杉の森にはないね。あれ。まったく・・・王様がどこにおいてきたかを覚えていればこんなことにはならなかったのに」
天命の粘土板。ふーむ。そういう物があるんですねえ。マーリンの愚痴にシドゥリ様が怒りますが、同時に私達の方に視線を移して漸く意識が向いてくれました。
「その方たちは? どう見てもウルクのものではありませんが・・・」
「よい。おおよその事情は察したわ。貴様は下がっておれ、シドゥリ。マーリン。一応そいつ等を連れてきたのは褒めてやろう。銀狼、嵐の勇者、そしてその仲間たる嵐の戦士たち。貴様らのことは若い頃の、いや英霊となった我人の関わり、そして我自身も良く知っているし、何より、既に我に使われている、仮仕えしている奴らが散々語っているのでな・・・
そら来たぞ」
私、ストーム、大尉様達を見て漸くかと言わんばかりに息を吐くギルガメッシュ様。しばらくしてドタバタとジグラットを爆走してくる音とガッチャガッチャとけたたましい鎧の音がジグラット中に響く。
「ギルガメッシュ王! このウルクに銀髪の女騎士と軽装の銃を持った異邦人が来ていると聞きこのガウェイン馳せ参じ・・・! 先生! ま、間違いないですよね!」
ガウェイン様。獅子王の騎士ではなく、私とともに過ごしてアヴァロンで元気にじゃがいもと山芋農家をしているガウェイン様。あいも変わらずの美丈夫。好青年ぶりで太陽の聖剣を腰に穿いて元気に拝手をしている。
「ええ、今も元気にじゃがいも農家をして、最近はアヴァロンでラグネル様と一緒にスイートポテトのアレンジに精を出しているとか?」
「っっ・・・はい。今も先生のお陰で穏やかに農家をして、広い星の海の星の住人に美味しい野菜を送りつつ、そこでの出会い、剣士としても充実した日々を過ごしています。そして、こうして人理の危機の際に偉大なるギルガメッシュ様のもとで騎士として戦える栄誉。すべて先生のおかげです」
「いえいえそんな。そして、ギルガメッシュ様のもとでも無事に働いていて何よりです。怪我もないようですしさすが私の一番弟子」
片膝を付いて拝手の姿勢で嬉し涙を流すガウェイン様。ああ、変わらない。いやむしろ心は成長しているのでしょう。だからこそ、ギルガメッシュ様が私達とこうして話してくれるのですし。
「師弟の再会、善きものかもしれんが、まだそれは続くだろうよ。嵐の勇者に戦士たちよ。貴様らと同じ部隊の嵐の戦士たちも来ている。ちょうど報告の日だ。ガウェインは銀狼の話を聞いて持ち場を離れたゆえに後で倍働かせてやるとして」
「はい! このガウェイン! 更に魔獣を撃退し王の負担を減らしてみせましょう! では、先生。マーリン。そして皆様。また後で会いましょう! 夜になればきっと会えるのでとりあえず暴れてきます!」
ピューとあっという間ジグラットからはしって出ていくガウェイン様。多分、これ以上いたら3倍敵を倒せとか言われる前に逃げた・・・? 逃げ足は私にいたずらしていたときから変わらずですねえ。
「よーストーム1、ストーム2。久しぶりだな。待っていたぞ」
「ストーム1、ストーム2。ようやく会えましたね。また貴方たちと共に戦えることを待っていました」
そこには全身が真っ黒なパワードスケルトンと頭のフルフェイスヘルメットアーマーを外して渋い声で話す中年になりかけくらいの男性。
もう一人は20代なかば。私(24)と同じくらい? か少し上くらいの女性がペイルウィングの衣装に身を包み、一緒に歩いている。
その声と、ストームチームと同じ嵐の戦士たち。と、なればすぐに答えは出てくるというもの。
「ストーム3、ストーム4!」
「お前たちも来ていたのか!」
「懐かしいぜ! これでストームチーム再結成だな!」
これにはストームチームの皆も喜んで握手を交わしたりハイタッチをしたりと和気あいあい。ですがすぐにストーム3、フェンサーの精鋭部隊グリムリーパーの隊長さんは粘土板を持ってきてギルガメッシュ様に渡す。
「積もる話は後だ。王様。戦果報告と、現在の戦況報告だ。受け取ってほしい」
「ふむ。現在はお前とスプリガンの副隊長たちがお前らの部隊の指揮をとっていると。そして被害もない。なら今すぐ休んでこい。そして回復を早めて戦線で敵の首を穿ちぬけ」
「了解しました。ギルガメッシュ王。ストーム1,ストーム2。そしてガウェインの認めている華奈さんの処遇ですが・・・」
「無論。貴様らと同じ部隊であり、その活躍は我も知っている。嵐の勇者、ストーム1。嵐の戦士たち、ストーム2を我の軍門のもとで戦うことを許す。せいぜい暴れてみせろ。銀狼。お前も同様だ。貴様の部隊である銀嶺隊。あれの魔獣の足、そして連携術を持って我がウルクの民と足並みをそろえてみせるが良い。シドゥリ。配置を任せる」
「はい」
まさかの速攻採用。いやはや、だいぶ厳しい視線を感じましたがある意味縁故採用。これはその分成果を見せないといけないですねえ。最初からそのつもりですが頑張らないと。
「だが! それ以外の雑種共は我に使われる価値もないわ!! さっさと出ていくが良い! 我は忙しい。雑種程度に使う時間があるほど暇ではないわ!」
ただ、マシュたちの方は使う価値もないと追い出そうとしてくる。うーん・・・まあ、この方ならしかねないですが、とりあえず話だけでも聞いてもらわないと・・・
改めてウルクのヤバさがよく分かる。宗教に根付いた考え方やいろんな思考や発想があるからこその部分もあるんでしょうねえー
ストームチームウルクで再結成。そして華奈とガウェインの剛柔師弟コンビも復活&速攻採用。