転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「今だ! イシュタル神」
「イシュタルでいいわよ! は!」
「なんだ、その程度かニャハハハハハ!! 痛くない! めちゃくちゃ痛くない!」
ストーム4のサンダーボウガンからのミラージュという雷撃兵器からの思念誘導兵器のコンボで見事に足場を奪われたジャガーマンに突き刺さるイシュタルの矢。頭に食らったはずなんだけど、涙目ながらも空元気を見せて踏ん張るジャガーマンがすごすぎる。
「せぇい!」
「ぐほぁ! やっぱりいったぁ~~い!!」
「うわぁ。マシュ容赦ないわね。だいぶんまともにヒットしたけどいいの?」
「問題ない。あの手合は殺してしまうくらいでないと反省はしない。前も私達とストーム3で散々痛めつけたのだがあの調子なんでな」
怯んだジャガーマンにマシュの盾でのアッパーが顎に当たって自分の意志以外で初めてこの密林を飛ぶジャガーマン。
うーん。あのストームチーム二つを相手にして生きている時点で、うん。神霊なんだなあ・・・今もなんか元気そうだし。
「そこ! 流石に殺したらサーヴァント、神霊クラスでも死んじゃうでしょ! たった一度の召喚の奇蹟。マスターなしとかありえない。正規雇用を夢見て走る茶虎の猫耳ジャガーマン。
女神じゃないけどこちとらナワルの神様だぞ! 少しは敬うべきじゃニャいのかにゃー!?」
「え! はぐれサーヴァントだったの!?」
「その割にはケツァル・コアトルの部下として振る舞っていたが・・・」
「ククルんとは腐れ縁! それにアタシを見つけたらすぐに殺しにかかってくるんだもん! 言う事聞くしかないじゃん! だからマスターが見つかるまでの間はくくるんのおこぼれに預かっているだけニャのな!」
まさかのトンデモ発言・・・ではないのかな? 相性とかもあるし、下手に魔獣戦線とウルクに目をつけられて、ケツァル・コアトルからも狙われては流石にこの珍獣英霊。いや神霊? も大変だろうし。
んー・・・それなら。もしかして引き込めるかも? ジャガーマンって確か、ケツァル・コアトルのライバルの戦士だったらしいし。ちょうどいいお菓子を持ってきているし。
「ねージャガーマン。それじゃあ良ければ僕と契約しない?」
「え。あんた本気?」
「たしかに頼もしい戦力だし、この密林の奥深くの街まで楽に行けるが・・・」
「ふぅーん? なるほど素敵な可能性だ! だが、そんな可能性はないといい切ろう! だけど、せっかくだしなにか一回言ってみれ?」
あ、話聞いてくれるのね。それじゃあ、背中のリュックから・・・
「こちら、契約するにあたっての前賃のカカオのパウンドケーキと、ひんやりチョコドリンクです」
カルデアの皆に作ってもらって送ってもらった南米の女神に会いに行くとうことでもらっていたチョコのスイーツセット。たしか、チョコの原料のカカオって南米の神話とか古代の王様だと神様への供物、長寿のおくすりだったよね?
「・・・・・・はい味方になった! たった今そっちの味方になったニャー!! うっわ、なにこれすっごく美味しい! ありがとうマスターお姉さん頑張っちゃうわ!」
すごい勢いで契約が結ばれて、僕の差し出したおやつに食らいつくジャガーマン。なんか懐かしい味と言っていたけど、昔もこういう美味しいおやつがあったのかな? 恐るべし神代。
トンチキだけど神霊が味方になってくれたしガイドにもなってもらえるから最高だね!
「交渉成立。さすがです先輩!」
「いやーありがたい。イシュタルとストーム4の連携でようやく隙を作れるほどの戦士。密林で闘うのは本当に手間だったし」
「・・・うるさいのが仲間に来たけど、まあ実際手間だったのは事実、良しとする他ないわね」
うん。色々言われるけどすごい美人で面白い人が来るのは歓迎。挑む相手も南米神話の最高神だし。エリート戦士は助かるよ。
「じゃあー早速仕事と行くかニャー。ガイドはするから、ククルんの秘密も話しつつね」
この後、なんか部下? 舎弟? の獣戦士たち相手に薙刀とマフィア風の現代服に着替えたジャガーマンが大立ち回りをしたり、色々ありすぎたけどとりあえず頼もしいのはよくわかった。
「す、ストーム4! 助けに来てくれたのか!」
「ああ、遅くなったな。ジャガーマンも私達の味方だ。皆も無事なようで何よりだ」
僕らがまずウル市にたどり着いた先では僕らがこの特異点に来る前にケツァル・コアトルに連れて行かれたという戦士の方が。なんか、ウルクの兵士よりもすっごいガタイがいい気がするけど気の所為だろうか?
「なに! あの戦士を! そこの味方と、い、イシュタル様! なるほど・・・その戦力なら行けるのか・・・」
「そういうこと。だからお姉さんもウルクの味方。君たちをちゃんとククルんから開放できるよう頑張るニャー。まったく。今は戦力が増えるし恩を売れるけど、こういうところがテスカンに漬け込まれるのにー」
「もしかして、死傷者ゼロ? なんです?」
「む? ああ、そうだ少年。最初は一日100人づつ試合形式で挑んできて、殺したと思えば・・・同時に蘇生させて、ここで訓練をさせられているんだ。だが、ある日を境に『んーあの子が来ているのならこの襲撃も止めマース! だって面白いことをしてくるでしょうし!』
と言ってそれ以降は基本訓練とここ、そしてエリドゥの政務をしている」
「ほーう。ウチの大将。一体ここの女神に何をやらかしたんだ?」
いや本当に。とりあえず元さんから聞いたエレシュキガルの被害も実質ゼロだったところを踏まえて、三女神同盟、色々あるけど基本死者を出していない・・・?
「んーなんでもククルんが言うには、どこかの世界での戦いで相当やり合ったらしいわね。そっちの指揮官の一人の銀髪ボインちゃん。だからその戦いが来るときは絶対に今までの分を我慢した分以上のものが来るってウキウキで。
戦いの神をそこまで言わしめる戦士がいるってウルク魔境すぎニャイ?」
「ええ。今はウチの隊長はいないけど、そこは保証するわ。女神相手でも怯まずに喧嘩を売るし、破壊の化身相手でも切り合う頭のねじイカれたド変態だから!」
「ドMの貴様が言うなテンシ!」
「はぁん♡ ああーいいわ。タカビーいい子なストーム4の罵倒! もう一回! プリーズプリーズ!!」
「あの、ところでそれはそうと訓練というと、皆さんはここの兵士として?」
そうそう。忘れていたけど死んだけど復活させられた兵士のみなさんもここで奴隷ではなく、生贄でもなく兵士として訓練をしている。
だからこそのガタイも納得だし、同時にそれをさせられているというのが不思議だ。
「そうだ。俺達はウルクの民。戻りたいのだが今まではそこのジャガーマンに追い返され、訓練を積んでいた。どうにも、あちらも自前の群を作るようですでに部隊編成もしつつある」
「ふーむ・・・人を理解したうえで更に鍛えて手駒にする。か。訓練に割く時間がウルクよりも多いし、戦の神様、王様の経験もあるケツァル・コアトルの指導力ならたしかにこれほどに屈強な兵士に育てられるのか」
「その通り。実際今は私達が密林で魔獣たちを排除しているけど今はここの兵士たちの個人武力はウルクの兵士たちを超えているし、何よりそこののっぽな兄ちゃんの言う通りククルんは戦の神。本性を出せばゴルゴーンよりもずっと恐ろしい。
ケツァル・コアトルは言葉じゃ倒れない。その在り方を、思いを示すにはあの子の魂を打つ行動を示す真っ向勝負じゃないと駄目。そっちの戦力は悪くないけど、前にククルんを認めさせた銀髪ボインの剣士がいない。其の上でどう動くか。そこは考えておくべきよ」
うーん・・・ますます、南米の女神の皆さん華奈さんと相性良すぎない? いや本当に呼べなかったのが残念だ・・・
とりあえず全身全霊で挑むべきということで休憩のためにジャガーマンの持つ権限内で空き家を借りてそこで一晩過ごすことに。いやあ・・・暑いあのジャングルでジャガーマンという珍獣との戦いは疲れたしありがたい・・・
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テンシ「あ、ねえねえ。ウルクから連れられた兵士の皆。良ければだけど明日一緒に来ないかしら?」
ウルク兵A「な、もしかしてケツァル・コアトルのもとにか?」
ヤマジ「そうそう。とはいっても闘うわけじゃない。見てほしいのとちょっと仕事を頼んでほしくて」
ウルク兵B「ま、まあ逆らうわけじゃなければ訓練と、それくらいは許されているが・・・しかし、君たちはあの女神と闘うために、そして俺達も連れ戻すために来たんだろう? それでいいのか?」
テンシ「ええ。うちの隊長がそれでいいって言っていたし。えーと・・・これと。こういう内容なんだけど」
ウルク兵たち「「「「ふんふん・・・・・・・」」」」
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「マシュ、藤丸。昼はよくこらえてくれた。お陰でいい場所と食事が取れた。我々ペイルウィングはプラズマコアが自動で周りの空気からエネルギーを生成するゆえに他の英霊よりもずっと魔力消費が少ないが、流石に食事を取れないのは辛いのでな」
「はい・・・ですが、ウルクの皆さんのあの士気の高さを見ると、闘うことを放棄して何もしないのは・・・」
「それは違う。彼らは何もしなかったわけではない。あらゆる事をしたうえで、考えたうえでそばにいる人達を、家族を、仲間を守るために従順に従うことを受け入れた。まあ、まさか生贄にされたはずの兵士たちが皆生きていたのも含めて、いい意味で予想を裏切られたがな」
空き家の1つ。ジャガーマン、僕、マシュで食事を取りつつウルクとは対象的に無気力だったウルの市民に対して憤慨しかけていたマシュを抑えてくれたストーム4。装備を外して黒髪のにあうスタイル抜群の鋭い目がにあう美女の顔を見せて苦笑する。
「でも、それでもウルクの皆さんを見ていると・・・!」
「そのウルクの兵士たちでもゴルゴーンを、ティアマト神を見たときは怯えていた。人は恐怖を覚えるものだ。それに、ウルクには賢王がいて、闘う手段と意志を提示したからこそ。英霊がいたからこそ成り立っている。
マシュのそれは強者の驕りであり傲慢だ。貴女も戦う力を持たず、英霊の力がナシで、藤丸くんも武器を持たずにジャガーマンと殴り合えといえばやれるか?」
「それは・・・・」
「無駄死にになるだろうな。それよりは撤退して次の機会を待つと動くだろう。彼らもそうした。チャンスを待つことにした。その結果生贄も許容してしまった。まあ、その生贄も生きていたが・・・人はみなが戦えるわけではない。戦えるようにする準備と時間が必要だ。それが出来ないままにあの状況にさせられたのが今のウル、エリドゥの皆だ。
マシュ。貴女のその盾の英霊ギャラハッドも生まれつき戦士だったわけではないだろう? 貴女の育ての親で、ギャラハッドの育ての親の華奈や銀嶺隊から鍛えられて、心持ちを教えられて、支えられながらここまで来たはずだ」
「確かに・・・」
僕もマシュもハッとして、そして頷く。マシュを支えつつ常に暴れていた華奈さんとストーム1。僕も最初はマシュの後ろにいるだけだったけど、拳銃を持ち、今はM9レイヴンというEDFの、英霊にも通用する武器を扱えるようになったのは皆が僕を鍛えて、教えて、守りつつも支えてくれたからこそ。
それも出来ないままに、冬木に来たばかりの頃の僕と、英霊の力を持たないままのマシュでここで戦えと言われても、多分何もせずに被害に目をつぶり、華奈さんたちを待っていたはず。
「人がみなウルクの民のように高潔で戦いに挑める覚悟と良心を持つわけではない。刃を持てぬもの。牙なき人達もいる。そして、時代を問わずにいろいろな人がいる。この特異点では魔獣もいる。それがその牙なき人々に襲うだろう。
それを守るために軍人がいる。二人のその武器や力は、英霊はその人々を守るために積み上げた力がある。彼らのために戦い、敵に一発くれてやる。それが私達EDF。ストームチームだ。誰も彼もに戦士の覚悟を強要するな。戦士として守る気概を持て。マシュ。でなければ、あの女神相手にその不満を揺らがされるぞ」
「はい・・・ありがとうございます。ストーム4。あなたの言葉で私もわがままになっていたのがわかりました。英霊の力を、ギャラハッドさんの力もないと逆上がりも出来なかった私なのに、華奈さんが医療用ポッドで体の寿命を伸ばしてくれないと今にも死んでいたかもしれないのに、それを見落としていました」
「気にするな。わたしも兵士として、混乱するもの、絶望するもの、兵士たちに何もかもを求める者たちを見てきた。それを見続けてきた。そして・・・絶望的すぎる戦場ゆえに生存を諦めたこともあった。だから、少し気持ちがわかるだけだ」
「いえ。今はお陰で気持ちを切り替えられました。ウルの、エリドゥの皆さんを助けつつ、三女神同盟ケツァル・コアトル。彼女を倒すために今は全力で戦います」
「その意気だ。ふふ。少し酒を飲みすぎたか。私はもう休む。二人も早く休めよ。きっと明日は激しいものになる」
『元! ちょっとどうすればいいのだわ!? あの玉ねぎ、なんか銀色の玉ねぎの鎧の人形になって! 冥界騎士団と名乗って仕えるといい出したのよ! 冥界で花が咲いたのはいいけど、予想外の形過ぎて困惑中よ!』
『・・・日本の冥界では閻魔大王の裁判の道や灼熱に極寒といろいろあって地獄にも花が咲くとは言うが・・・流石に予想外過ぎます。ネギの方もすぐに伸びて、なんか騎士たちがそばを作ってくれたのでいただいていますが』
「あはははは!! いいじゃないの。あんた以外ガルラ霊以外いなかった冥界が賑やかになって。その玉ねぎ騎士団で冥界を綺麗にしたらいいんじゃないの? 今ネルガルの権能で太陽の日差しも冥界におけるんだし」
「ま、まあ冥界も彩りよくなりそうでいいんじゃない?」
藤丸君たちとは別の空き家で聞く冥界の話は、華奈の用意したアヴァロン産玉ねぎはなんか、銀の玉ねぎ鎧となってしかも意思を持つ不死の生き物。冥界で生き物が誕生するという滅茶苦茶具合とその行動にエレシュキガルもニトクリスも困惑しつつも晩ごはんをいただいているとか。
『いやいやいや! 流石に早すぎてまだ理解が追いつかないのだわ! どんだけやりたい放題なのよ貴女の家族! わたしも察知できずにあのおじいさんと一緒にいつの間にか背後にいてネルガルの悪意を切り取るわ、冥界でも育つ植物をくれたと思えばこれだし!』
『・・・我が弟が知ってこいというのも納得です。あれは予想ができない・・・まあ、そういうわけでして。どうにか冥界は無事。いえ、賑やかになっています。そちらも明日の戦いに備えて早めの就寝を』
ギャーギャーと賑やかに騒ぎつつも通信は終了。いやはや。本当に何が起きるのかわからないけど、エレシュキガルの声もなんか本気でいやがっているわけではない感じだし、そのままにしておこう。
「ほんと、変なことばかりするのねーアンタの家族。その武器もそうなの?」
「ああ、いやいや。それはストーム1から」
「に、しても未来の武器はスゴイわね。しかも元たちの数年後くらいのものでしょ? 人類は頑張っているものだわ」
武器を眺めつつ面白そうにコロコロ笑うイシュタル。美しいけど子供っぽく。大人と子供の中間。高校生くらいのこの色気なのに、すごく惹きつけられる不思議なものだ。
「まあ。いいわ。せっかくだし戦う前に貴方の男としての技量も見てあげる。ちょうどふたりきりだし・・・おいで? 私の神性を知っているでしょう?」
「ははは。いいのかい?」
「ええ。せっかくだしたくさんの女を味わえるほどの男。女神の寵愛で蕩かして私のものにしちゃうから」
「さて、これからケツァル・コアトルと戦い、神殿においているものを破壊する事で神性を落とすのだが、1つ俺達から提案がある」
「皆が持ってきているそのスナイパーライフルにアサルトライフル。あれを使わない方向で挑むってのはどうかしら?」
『ちょ、ヤマジにテンシ。何を言っているんだい! その武器を使わないのはもったいないじゃないか!』
朝、エリドゥに移動しつつ提案された作戦。それはあえて狙撃を使わないままにケツァル・コアトルと闘うという選択。
大量のウルクから連れて行かれていた兵士たちを引き連れつつ、その提案にロマニも僕らも驚く。
「まあ、たしかにそうだ。効率、最短で闘うとなればドゥンケルで狙撃がいいとは思う。ただ、相手はそれを読んでいそうなのと、もう一つ。「銃」という存在が彼女のトラウマと、その後の惨劇を引き起こしそうでなあ・・・」
「南米って、大航海時代、ついでに世界規模での大規模黒人奴隷貿易も始まった際にそりゃあ散々な目にあったし、銃を持った白人たちに文明も金銀財宝も持っていかれたでしょ? あれを再現しちゃうと・・・ちょーっとどうなるかなって」
「あーあれは私達、ククルんもテスカンも南米の神殿や宝物、神具を軒並み略奪されて、尊厳を落とされたからにゃー。うん。多分神格が落ちてもその場で多分一人二人。いや半分以上はこの場で道連れにするために本気を出すと思う。
残虐無比、冷酷な女神の顔で戦の神、王としての采配を振るって、自分も暴れまわるだろうねー・・・多分わたしも最優先で殺されるニャ」
「私達の武器はもはや銃とはいえないものだが・・・なるほど。それはあるな。要は地雷を踏んでしまうというわけか。それに、真っ向勝負ともいえず不意打ちをしてしまう形にもなる」
なるほど。できる限りケツァル・コアトルを怒り以上に納得させる形じゃないと何が起こるかわからない手段を取るべきではないと。
難易度は低いかもしれないがその後の問題が大きくなる方を選ぶか。あるいは難易度は高いかもしれないけど、そのほうが後腐れなく行ける方を選ぶか。
「そうなると・・・真っ向勝負か狙撃を選ぶか・・・になりますね」
「ある意味神話、文明の崩壊を再現することになるから、その逸話に基づく形なら確実だろうけど、それでも怒れる女神の恐ろしさはゴルゴーンのこの半年の猛攻を見ればわかるというものだし・・・」
「じゃあ、銃は使わない方向で行こう。できる限りの真っ向勝負で」
そのほうがいいと思った。銃を使わずに自分たちでぶつかり合う。武器を使うにしても別のものを。そう思って、ドゥンケルのマガジンを外し、ガンケースに入れて背中に背負う。元さんも同じ意見のようで武器を収めてくれた。
「じゃ、二人には世界に二つとない恐ろしき武器デスクローのスペアを二つあげる。戦士としては甘い選択だけど、その心意気と、ククルんを本気で怒らせないことには感謝して。で、作戦はどうするのか教えてちょそこのホモイ兄ちゃん。マゾの姉ちゃん」
「おう。じゃあな・・・」
「おや。皆さん待っていましたヨー! んー? 武器の方は、銃は使わないのですね。あれは私達には悪い思い出と同時に効くものですが」
「コアトルさんだ! そして、あれが斧!? でかすぎない!!?」
エリドゥの太陽神殿について出迎えてくれたラテン系の美人さんのコアトルさんと、神殿の奥にある巨大すぎる。多分100メートルはあるんじゃないかなって思える巨大な斧。あれがマルドゥークの斧なの!?
「あ、はい。武器の方は使わない。今日は真正面からコアトルさんに挑みに来ました! 説得も兼ねて!」
「んー? 私は藤丸君か、華奈さんがお嫁に来ればそれでいいですが。まあ、今は個人ではなく神様としての対応ですね。なるほど。その挑戦を受け取りましょう。本来はそっちにいてはいけないお馬鹿さんもいますが・・・華奈さんは何処?」
「あ、やば。戦闘になったら私真っ先に殺されるわ。そんな未来が見えた。確実に」
「大将はウルクで現在土木作業。土と格闘しているよ。そんで、女神・ケツァル・コアトル。俺達は真正面からアンタを知るために、そして仲間にするために、ルチャ。プロレスで勝負をしに来た!」
「私達じゃあ、隊長には負けるけどそれでも。舞台は最高のものよ!」
ヤマジさんとてんしさんで展開するもの。それは。太陽神殿の入口を囲むようにして現れる観客席。そして真ん中にプロレスリング。側には実況と解説の席が。
そこにウルクから生贄としての体で連れてこられていた兵士たちが座り、エリドゥの兵士たちも入ってきて、実況と解説もスタンバイ。
「さぁー! 始まりました南米の女神ケツァル・コアトルに挑みに来た我らがウルクの戦士たちによる乱闘勝負! 偉大なる戦士であり王であり女神に挑むはヤマジ、テンシ、マシュ、イシュタル神の四名! 実況は私あーでらんすの中野さんでお送りいたします!」
「私の方は藤丸たちの補佐につかせてもらうぞ」
「あ、それじゃ私はのっぽの兄ちゃんの方に」
「え? え? え?」
あまりの急展開に周りを見回しているコアトルさん。なんか結婚とか言っていたけど、それもすっ飛ぶほどのことに驚きっぱなしだ。
「では! これより太陽神殿攻略チャレンジについて説明させていただきます! いまから四名の戦士がケツァル・コアトルにルチャで勝負を挑み、勝敗がついてから藤丸、元の二名のマスターがジャガーマン、ストーム4の護衛を付けたまま太陽神殿を駆け上がり、神殿の頂点の神具を破壊できればウルクの勝利!
逆にケツァル・コアトルは戦士たちを見事退け、妨害を成功させればケツァル・コアトルの勝利です! 異色の肉体のぶつかり合う大連戦! これを制するのは何方になるかぁ~~!!」
『いやあー・・・まさかウルクで超人プロレスをすることになるなんてね・・・しかもヤマジの提案って・・・』
「でも、勝負の土台で挑む。最初からマスターを狙われないのはいいことかと」
「はぁー・・・まあ、こういう勝負も必要よね。じゃあ、この少女の体に染み付いている武術でだけど、相手させてもらうわよラテン系女神! さあ、勝負よ!」
「・・・・・・藤丸さんたちは。これをいいと思ったんです?」
「はい。被害を出していない、人を愛している女神なら出来れば好きなもので勝負をして、勝負を捧げながら挑みたいなって」
正直舐め腐っていると賢王なら怒るかもしれない。だけど、生贄としてウルクから誘拐した人も、ウル、エリドゥの生贄の人たちも生きていると知った。それなら、こっちもそんな女神に非道な不意打ちはせずに話し合えるチャンスも作れるんじゃないかと。ヤマジさんの提案に乗ることにしたのはそれだ。
何も言わずにブルブルと身を震わせていたコアトルさんは。
「っっっっ~~~~~~~!!! もう最高!! ムーチョムーチョ♡ スゴイわ! こんなに派手な勝負で、ルチャをぶつけて知り合おうと、私に挑みに来るなんて! 神に捧げつつもその神を倒しに来たなんて破綻ぶりも、何もかもが初めてで素敵!!
いいわよ。その1VS4の変速マッチ! 凶器もありの無制限一本勝負。からの神具守備チャレンジこのケツァル・コアトルが受けます!」
すっごく目をキラキラさせて大喜びしていた。ああーなんだろう。本当に人を好きなんだろうなあ。なんかずれている気はするけど。
「じゃあ先鋒はオレとテンシだ」
リングに上がり、モンゴルマンのコスプレをするヤマジさんに、すでにレオタード衣装で膝と肘にサポーターを付けているテンシさん。
「ではでは。試合。開始ぃ!!」
カーン! とゴングの音がなり、女神との試合が始まった。
「フッ!」
「っ! 甘い!」
「なんのっ!」
ヤマジさん、テンシさんの見せる戦いはかなり空中戦を意識したものだった。コアトルさんがタックルで来たのを受け止め、むしろコアトルさんの膝を踏み台にして膝蹴りをもう片方の足で側頭部にぶつけるも、コアトルさんは怯まずにそこからドラゴンスクリューをしかけてヤマジさんの足にダメージを与えつつ、マットに寝かせてテキサスクローバーホールドに移行。
「させないわ!」
『おおっとテンシのテキサスコンドルキックのカットが決まったー! コアトル神流石にひるんだ! その間にヤマジ脱出! 胸に足蹴をして距離を取る! その間にテンシ、ロープにかけて反動をつけたヤクザキックが炸裂!
それで怯んだコアトル神をヤマジが掴んでバックドロップー!! カウント! 1,2! 外される! ヤマジ選手にアックスボンバーを! ああっとテンシが受ける! 鼻血を吹きつつ空を飛ぶ!』
「あふっ! なんて激しい素敵な一撃ぃ♡」
「今度はこっちの番デース!」
コアトルさんも負けじと空にふっ飛ばして恍惚の顔で受け止めていたテンシさんに向かって飛ぶようにジャンプ。
『おおっと! そのまま空中のテンシにボディーアタック! そしてそのまま掴んで柱に投げ飛ばして激突ぅ! テンシの甲高い悲鳴と同時にリングが揺れるー!! 着地せずにコアトル神リングロープを掴んで引き伸ばし、反動をつけてヤマジに突進!』
「またじゃ・・・何っ!」
「千の技を持つ戦士でも、私の殺法とルチャの技は二千ありマース!!」
「ぐぉおぉお・・・・!!」
『ああっと! なんと! ヤマジのカウンターを避けてコアトル神見事にロープワークを用いてヤマジを拘束! 超人絞殺刑を敢行だぁ!! 極まっている! これはヤマジ苦しいかぁ!!』
「な、なん・・・のぉっ!」
「ホワッ!? こ、これを・・・!?」
「いらっしゃーい・・・セイヤッ!」
『返す返す! ヤマジ超人絞殺刑を見事力技で解除して、コアトル神をリングの反対側に! そこに待ち構えていたテンシがコアトル神を回してブレーンバスター! そしてもう一発とパワーボムが炸裂! リングが揺れる! 立ち上がるコアトル神にすかさずヤマジのドロップキックが炸裂ゥウゥう!!』
「あれを返すの!? ヤマジどれだけ強いのよ!」
「多分、あれはヤマジさんの逸話もあると思います」
確か、ヤマジさんはまだカリバーンを主兵装だったとはいえあのアルトリアさんと長く切り結んで時間稼ぎを出来た、銀嶺隊の最古参かつ、第二世代の円卓の騎士。多分、相手が強ければ強いほどにヤマジさんも粘れるスキルが有るのかな?
テンシさんは・・・多分銀嶺帯でも指折りのタフさだから、それで持ちこたえているのかも。
「うふふ・・・いいわいいわ! もっとやり合いましょう! 貴方たちの空中戦も技術も素晴らしい! これを味わえるのはルチャドーラとしても最高! もっともっと! その戦いを見せて!」
試合結果 ケツァル・コアトル◯ ヤマジ&テンシ× 10分28秒 フィニッシュホールド ヤマジ(ココナッツクラッシュ) テンシ(フランケンシュタイナー)
「ふっ! づっ!」
「あぐっ! んぐっ! いい根性しているわね、イシュタル!」
『激しい激しい! 拳の交換を交わす二柱の金星の女神! それはキャットファイトと言うにはあまりに壮絶な怪獣大決戦! 美しくも猛き戦神の応酬であります!』
今度はイシュタル、マシュとのタッグでの戦いだったけど、それは最初から肉弾戦。プロレスと言うよりは組技もありの殴り、蹴り合い。ビンタの応酬から今は互いに一発殴れば一発殴り返すというストロングスタイルでぶつかり合う。
「でーも・・・まだまだ、私には届きまセーン!」
「くぁっ!? な、んて馬鹿力なのよこの女神!」
「イシュタルさん!」
「おっと。良いスピード。でも、組技の練習が甘い!」
『おおっとコアトル神イシュタル神に力でゴリ押し! そしてそのふらついたイシュタル神をマシュがカットに入りますがタックルを読まれてしまう! 見事なアームロックが決まったぞぉ!!』
「ぐぅっ・・・・あ、あぐぅうううう・・・・!!」
「ギブですか? それでも構いませんよ私は」
「いいえ・・・だ、だれが・・・・! 戦士として守ると決めたんです・・・ギブは、しません・・・づっ・・・!」
「これ以上力を入れると折れますが・・・好きな子ですが、その覚悟を受け止めないのもルチャドーラの名折れ。なら・・・ぐっ!」
「私から目を離しすぎよコアトル! はぁっ!」
アームロックで拘束されていたマシュを今度はイシュタルが鉄山靠でカットして腕と肩を抑えるマシュの前に立つ。
「マシュ! どうにか闘うしかないわよ。徒手空拳が苦手でもあの盾を使うようにコアトルのやつを振り回したり投げ返すなりはできるはず。私ならダメージは通せるから、少しでも削っていくわよ!」
「はい・・・!」
「八極拳っていうらしいけどね、これは打撃の使い方もあるのよ!」
『おおっと! イシュタル神強烈なローキックと見せてのハイキックでコアトル神の肩を蹴り飛ばし腕を防ぐ! マシュがすかさず滑り込むようにして足を掴んでの豪快なジャイアントスイング!
3回転、4回転と勢いを増して、コーナーポストに放り投げるぅ!! 柱がしなりグワングワンとロープが揺れる! イシュタル神分身をしての飛び蹴りの連続攻撃で息をつかせない! これは効いている! 効いているぞ! マシュも呼吸を整え、気合十分! キックを受け止めてイシュタル神を柱のてっぺんに叩きつけたコアトル神をバックドロップで追撃をさせない!』
なんとか連携は形になっているし、イシュタルの攻撃は少なくとも通っている。だけど、それでもイシュタルの顔を見ると軽減している。あるいは想定よりも少ないのだろう。ピンピンして反撃を笑顔でしてくるコアトル神に苦い顔を見せている。
カットの技術はヤマジさんたちが秀でている分、イシュタルが強くてもどうしてもコアトルさんの攻撃が通ってしまう時間が増えて消耗が増えていく。
「ふふふ。さぁ。まだまだここから。ショーを盛り上げて、私に捧げてね?」
「くっそ・・・本当に・・・タフだこと!」
試合結果 ケツァル・コアトル◯ イシュタル&マシュ× 8分13秒 フィニッシュホールド イシュタル(キン肉バスター) マシュ(三角絞め)
「くっ・・・試合は負けたか! 急ぐぞ、藤丸君!」
「はい!」
「援護はする。急げ!」
『さぁ! ここからはいよいよ第3ラウンド。神殿の神具、アスティックカレンダーを我らがウルクの戦士が砕くか、コアトル神が守るかの勝負! 勢いよく階段を駆け上がるマスター二人にコアトル神が襲いかかります!』
背後ではすでに激しい雷撃と棍棒のぶつかり合いが始まっていて、流れ弾でシンでもおかしくないような激闘を背にはしっている。
「ぐっ・・・! 善の存在であるのにこの威力・・・! 神への特効と、回避能力。空中戦は伊達ではないですネ! さっきのルチャにいても良かったのに」
「あいにくと肉体は華奢なんでね。貴様らのような武闘派には及ばないのだ。っち! うぐっ!」
「ククルん! 悪いけどここから先は通さないぜ・・・ギニャー!!」
『ストーム4! 飛行ユニットを活かして見事に立ち回り攻撃を避ける! そこにジャガーマンも入るがあっという間にふっとばされる! 今私も寒いものを感じました! しかし、時間を稼いでいる! ジャガーマンも再度気合を入れて闘う!
そうしている間に藤丸、元の二人はどうにか神殿の中段に! 早い早い! あっという間に上層へ!』
もう少し、もう少し・・・!
「おっと・・・これ以上は無理ね。少し、本気出しちゃおうかしら?」
「なっ、ぐあぁぁっ!!?」
「あ、ちょ、私しん・・・・ほぐぁっ!?」
後ろで聞こえる二人の悲鳴。見ないでもわかる。やられたんだろう。死んでこそいないけど、もうこっちのフォローは出来ない。
このまま走り続けるか? いや、そうなれば二人とも捕まっておしまいだ。皆で考えたこの作戦も駄目になる。そもそも。自分たちの気合とか、意思をわかり合うためにこうしていたわけで・・・
いや、それに付き合って、喜んでくれる人、じゃない女神なら・・・!
「元さん! 先に行って何時でも壊せるようにして! ぬぉおおお!!!」
「え、あ、ちょっ!! 藤丸君!!?」
「こいつをくらぇえええ!」
思い切り自分なりにやるしかない! これが僕にできる最高の時間稼ぎ。神様に向ける気合だぁー!!!
「なぁっ!!? 階段を自分から逆走して跳んできた!? この勢い・・・っ! プランチャ・・・! うっ・・・!」
なにか柔らかい感触があたった後に視界が黒いまま体がグルングルンと回り、コアトルさんに命中したことだけはわかって転がりながら二人で地面に衝突。
「先輩! 生きていますか!?」
「め・・・目が・・・」
「ハァイ。マシュさん・・・生きてマース・・・藤丸君がなんでか・・・プランチャが見事だったのでわたしも受けを取れましたが、伝説級のルチャドーラで、女神だから出来た芸当ですよ?
それに・・・例え元さんが私のカレンダーを砕けるとしても、私が避けて貴方を助けないとは考えなかったんです?」
「い、いたた・・・その・・・神具を砕こうとしてきた僕たちの勝負の内容を飲んで挑んでくれて、あんないい笑顔をするくらい人間を愛している人なら・・・受け止めてくれるって・・・信じていました・・・」
無事に元さんは祭壇の頂上について、何時でもその棍棒? 槍?で壊せる。だけどそれをしないのは、コアトルさんの様子を見ているからかな。
ふらついている中、コアトルさんは急に感極まった表情をしている。
「っっっ~~~~!!! あーーも~~う!! 藤丸君に皆も大好き大好き!! だーい好き~!! 私、女神同盟に入ってよかったー!! ヤマジにテンシ、イシュタルに元、ストーム4! 皆人として、英霊として、戦士としても最高すぎます!!
レフェリー&実況の中野さん! 私、この勝負ギブアップね! 女神同盟も抜ける! だって藤丸くんと契約するんですから!!」
苦しいくらいにその大きな胸と体で優しく包みこんでくれるコアトルさん。う、嬉しいけど苦しぃい
『試合終了~~!! まさかまさかの番狂わせ! 元がアスティックカレンダーを砕くことなくコアトル神のギブアップ宣言によってこの勝負ウルクサイドの勝利! 人間の意地と勇気、そして愛の判断が見事女神に届きましたぁ~~~!! スゴイぞ藤丸くん! そして戦士の皆さん! この偉大なる勝利に拍手が鳴り止みません!!』
終了のゴングの音がなり、たくさんの歓声が僕たちを包む。
「さ、勝者は観客に、ファンに応える義務があります。勝者インタビューも気になるので是非是非。コメント楽しみにしていますよ?」
「あだだだ・・・・いやーやったなあ藤丸君。プロレス技も教えておいてよかった」
「ねー・・・にしても太陽神の攻撃・・・素敵だったわ♡ あ、そうだそうだ。おーいジャガーマンに、コアトルさーん。私達の領地からの捧げ物とファイトマネーってことでカカオを使ったお菓子あるから皆で食べよー」
「おおーゥ。まさかのチョコバーにカカオドリンクまで!? カレーもある!? わぁーお! こんな素敵な試合初めて! もうこれだけで大満足すぎてもっと進化しちゃう!!」
ヤマジさんとテンシさんが持ってきていた捧げ物とお菓子の数々を持って皆で勝者インタビューをしつつ。なんか濃い時間を過ごしつつ、僕らは無事に三女神の一角を力を落とすことなく引き込みに成功した。これで後はゴルゴーンだけだ。
思えばここにエミヤとメディアもつれ込んでしまえば冬木の同窓会が出来ちゃうという。そういう意味でも面白すぎるバビロニア。桜ポジはパールヴァティーになるんですかねー。そしてシトナイなら女神たちなので姦しい第七特異点になりそう。
玉ねぎ鎧はダクソで有名なあの鎧。玉ねぎ動画シリーズ面白いですよね。
多分この試合の内容を賢王に見せたらキン肉バスターで倒れたりボコボコにされるイシュタルを見たらまた笑い死ぬんじゃないですかねえ。