転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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 かなり個人的な解釈を含みます。まあ、そこはゲーティア戦から変わらないかあー


打ち合い。巴御前

 「トライガンド!」

 

 

 指を三本向けて放つガンド。オルガマリーやフラムさんから教わったガンドの派生術を飛ばして悪霊たちを拘束、あるいはふっ飛ばしていく。

 

 

 ストームチームと鍛錬と魔術の勉強の際に教わった。魔術のイメージを弾丸、銃弾にしてガンドの精度、威力を上げる。シンプルな魔術をひたすらに鍛え上げていけば通用する。その成果が見えるのが嬉しい。

 

 

 「ナイス藤丸くん!」

 

 

 「ほっ・・・むっ!」

 

 

 元さんの方もナイフや小石を即座に炎の石にして相手をふっ飛ばしていくのが見事。やっぱりすごい。

 

 

 魔術たちをできる限り静かに対処をしていたりとかしている中、ピタリと空気が変わる。

 

 

 「灰の臭い・・・」

 

 

 「最初であったときはわからなかったけど、なるほど。燃え滓のような匂い。香のほうが良いんじゃないの?」

 

 

 「おや。今から殺し合う相手にそういう気遣いをするとは面白いですね武蔵。ええ。次回はそうしましょう」

 

 

 「英霊剣豪・・・!」

 

 

 「はい。我が忌み名はアーチャー・インフェルノ。以後見知り置きを」

 

 

 現れるのは白髪の女性武者。鎧甲冑などの違いは有るしものすごい殺意だけど、華奈さんとも近しい空気を感じる人だ。

 

 

 「あら、こんな美人とはね。ただ、流石にその炎を・・・っ! この町で向けるわけには行かないわ。思い切りやり合いたいけど、どうかしら?」

 

 

 「ふむ・・・妖術師殿からもここは燃やしすぎるなと言われていますし、そのほうが良いのでしょうけど、でも」

 

 

 話しながらも炎の刃を、あるいは弓を放ってくる武者。その一撃は町に当たらないようにしつつもこちらを狙ってくるがどの一撃も耳鳴りがするほどに強烈な衝撃と威力。

 

 

 胤瞬さんの槍を弾き返していたあの重さも納得だ。

 

 

 「どのみち徳川の世は、この世の民草もすべて燃やし、殺し、えぐるという宿業を持つのが私です。ええ、早いか遅いかの違い。それに、町を燃やし切る前にあなた達を殺せば其れでいいでしょう?」

 

 

 「ぐっ・・・! 何ていう火力・・・! この街の建物に燃え移りかねません・・!」

 

 

 「はぁっ!」

 

 

 「おっと」

 

 

 業火の矢を放ち、刃を振り下ろすのをマシュが受け止める。ゲーティアとの戦いの後、何でか華奈さん含めて霊基が上昇しているはずなのにそれでも思わずマシュが少し後ずさるほどの連撃。

 

 

 獅子王の円卓クラスは有るってことでいいのか・・・?

 

 

 武蔵ちゃんがその間に連撃を放って町から距離を取らせ、更に元さんが追撃で水属性と魔力を練り込んだウルクで用意していた羊毛の糸で両端を石に結びつけた投石道具。神代の古い時代の魔力かつ水がインフェルノにほんの少し動きを封じ、マシュと武蔵ちゃんの連携で街の外に出していく。

 

 

 「よし・・・・・ここなら問題ない。アーチャー・インフェルノ。キミの望み、炎を思い切りだして私達を燃やせる機会をやろう」

 

 

 「え! 元さん!?」

 

 

 「おや、死ぬ覚悟ができたので? しかし、我が身体、魂をすべて薪にして燃やすは人の世すべて。あなた達程度では屋敷一つを燃やす業火の前に飛び込む羽虫ほどしか火を衰えさせないと思いますが」

 

 

 「いいや、死なない。ただ、場を整えるだけだ。結界開放!」

 

 

 街の外、周辺もちょうど少し周りが平地になっていて戦いやすく、燃えるのも草くらい。その中で僕らが村正山の庵で英霊剣豪や怪異に襲われずに済むようにと使用した華奈さん、モルガンさんお手製の聖槍の塔の昨日、防御、隠蔽昨日に秀でた結界を展開できる物を使用。

 

 

 この前とは打って変わり、穏やかな河原、坂も川も、青々とした草木も有る場所に周辺が変化していく。エルサレムで聖都を作り出せるほどの機能の応用なのだろうか。魔術の素人の僕でもわかる。この場所はさっきまでいた場所とは違う。

 

 

 「なんと・・・! ここは・・・妖術師殿の気配も他の英霊剣豪の気配もなく・・・!?」

 

 

 「はぁああっああ!」

 

 

 「ぐぅっ! なんという剛剣! しかし、我が身体はもはや躯であり薪。腕を切り落としたとしても、之この通り。英霊剣豪は無敵の兵。斯様に痛みもないのです」

 

 

 動揺しているインフェルノに武蔵ちゃんが清川村正と名付けられた刀でインフェルノの弓を持つ手を切り落とす。

 

 

 しかし、そのダメージでもその切り落とされた腕もすぐにくっつけてしまい指先を動かして見せる。ティアマトのようだ。と思った。ウルクでストーム1と華奈さんがロボでボコボコにしても、斧で斬り伏せても死なずに即座に再生するような。

 

 

 「結界で被害を封じたのはお見事。しかし、だからといって私を・・・ワタシ・・・ヲ・・・!? ぐ・・・くふぁ・・・あぐっあああ・・・・あああ・・・・!!!」

 

 

 「え。ちょ。私なにかしちゃった!? 二天一流でも流石に毒は使わないわよ!?」

 

 

 「いいや、違う。洗い流されているんだよ」

 

 

 「洗い流す?」

 

 

 普通のダメージなら、弓使いなら致命傷の一撃でも意味がないと微笑むインフェルノは突如苦しみだし、一撃を浴びせたはずの武蔵ちゃんは動揺して逆に元さんはなにかわかっているようだった。

 

 

 「うん。多分華奈の刀の一つ陽炎。あれは強烈な光を放って目くらましもできる以外に魔、闇を祓う、浄化する力がある魔剣なのに聖剣よりの効果を持つもの。で、村正さんが素材の一つにしたあの懐刀。あれも多分その類。

 

 

 英霊剣豪という形に捻じ曲げられたその意思、思いの増長、強化、そういう怨嗟や怨恨の感情のみに浸してしまったものを流しきってしまうのだと思う。武蔵ちゃんがインフェルノの腕を切り落としたときに溢れ出た血と一緒に」

 

 

 「つまりは刀だけど清めの御札や、曲がった後付の術式、機構を押し流すようなもの・・・と。なるほど、人斬り包丁の刀剣というよりは錫杖や清め塩を叩きつけているようなものなのね」

 

 

 「なるほど・・・つまり、あのアーチャー・インフェルノも何らかの形で捻じ曲げられた結果と・・・」

 

 

 目の前で悶え苦しみ、のたうち回りながら血の涙と嗚咽を吐き続けるインフェルノ。美人かつ女性というのを差し引いてもあまりに酷く見苦しい光景としか言いようがない。ただ、其れがしばらく済めばその動きと、嫌なほどに充満していた殺気が消え失せた。

 

 

 「かはっ・・・か・・・はぁ・・・は・・・あぐっっぁ・・・は・・・う、ぁ・・・ありがとう、ございます・・・皆さん・・・・う・・・ようやく、正気に、戻れた・・・長い長い、悪夢を見ていたような気分です」

 

 

 ふらつきながらも立ち上がるインフェルノは先程までの憎悪の感情もなく、穏やかで優しい。でも悲痛さを隠せていない表情で頭を下げていく。

 

 

 「正気に戻れたということは、やはりなにか捻じ曲げられていたので?」

 

 

 「ええ・・・私はこの下総に召喚されてすぐにキャスター・リンボなる男から英霊剣豪としての宿業を叩き込まれ、徳川の世を。義仲様を、源氏を拒否した世を燃やし尽くす。という業を背負い、そのための武士としてのあり方を尽くすように変えられ・・・それから・・・・ええ。多くの方々を、無辜の民を殺しました。

 

 

 ・・・申し遅れました。私は巴御前。義仲様の側室であり、武者の端くれであったものです」

 

 

 恭しく再度頭を下げる巴御前。確か、木曽義仲とかいう源氏の戦士の嫁さんだっけ? 昔学校の歴史の教科書の豆知識詰め合わせみたいな本で名前を見たような。

 

 

 「巴御前・・・! 戦姫であり剛力無双、弓術は源為朝や那須与一などと並べあげられるほどの戦士・・・」

 

 

 「なるほど・・・同時に、うん。そりゃあ徳川の世を滅ぼすという宿業は噛み合いそうよね・・・なにせ徳川家康公は確か平家の血筋を持っているという話もあるし・・・でも・・・」

 

 

 「ええ・・・人の生死、殺し合いは、戦の常。それに・・・あの方、義仲様から私は尊いものを多くいただき、そして、恨み、怒り、悲しみをあのときにおいていったはず・・・それを再度燃え上がらせて、果て狂うところでした・・・

 

 

 ただ・・・それもこの結界の中でこそわかること。武蔵。そしてそこのマスターと見受けする方。わかるでしょう?」

 

 

 「もちろん。あくまで今はその心の増悪や、捻じ曲げた部分を清めただけ。英霊剣豪という術式故にキャスター・リンボや呼び出したマスターからの命令が届けばまた同じことになりかねない」

 

 

 「しかもパッと見ただけであの頼光に、鬼種、そして英霊も未だいる。例え命令を拒めても再度捕まえて術式を再度仕込めば元の木阿弥と」

 

 

 今はこの結界の中でキャスター・リンボも、英霊剣豪も中を見れず、介入できないからこそこの状態が続いているけど巴御前さんもこの結界を出ればまたインフェルノとして暴れかねない・・・

 

 

 「そんな・・・では・・・どうすれば・・・」

 

 

 「簡単なことです。武蔵、そしてそこの盾を持つ貴女。この巴御前と戦い、打ち倒しなさい。我が宿業は薄れ清められれど敵の手駒であるサーヴァントなのは変わらず。

 

 

 ここで私との切合いの経験を積んで英霊剣豪を倒すすべを、何より武芸者、戦士としての経験を積み残りの英霊剣豪を倒して太平天下の世を取り戻すのです」

 

 

 「・・・たしかに巴御前ほどの戦士との経験は千金にも勝る価値の有るものであり、何より宿業、虐殺に囚われた悪鬼ではなく戦士としての貴女との経験は得難いもの。しかし・・・二度目の人生。ここで終わらせてもいいので?」

 

 

 「もちろん。といえば嘘になりましょう。けれどそれ以上に私は再びあの衝動に、悪鬼に堕ちてしまうのが何より怖い。鬼種としての衝動での暴走もありますし・・・何より、私個人の我儘で皆様と、そしてこの時代の人々に牙を向けたくないのです。

 

 

 今この場はこれ以上余計な人の入らぬ立ち会いの場。どうか、思い切りぶつかり、戦いなさい」

 

 

 そういって巴御前は弓を取り、鉢金の角も本物。鬼主としての暴走も、英霊剣豪としての暴走も、もうしないために、自分を殺してもらいつつ僕らにこれからの戦いを越えられるための経験を与えるために戦闘態勢を取る。

 

 

 すごく凄烈だけど優しく、美しい。人のためにこうやって身を投げ出せるほどの女傑。殺したくはないとみんなが思ってるはず。

 

 

 だけど、同時に彼女の思いも踏みにじれないという考えがあるのも確か。

 

 

 「やろう・・・武蔵、藤丸、マシュ。彼女の魂をこれ以上汚されない、殺されないためにも」

 

 

 「ええ。それにここで怯んでは女としても武者としても、武芸者としても廃る! 来なさい巴御前! 完全に眠らせてあげるわ!!」

 

 

 「はい。先輩、戦闘準備を!」

 

 

 「了解・・・ここなら、僕も銃を使えるし!」

 

 

 「ほほう。其れが現代の弩・・・そして、ありがとうございます皆さん。では・・・巴御前。参る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やぁあああああ!!!」

 

 

 「うぐっ、ぐぅ!!」

 

 

 「あっ・・・なっああ!!? あがっ・・・ぐ・・・ぐぅ」

 

 

 巴御前との戦闘が始まったが、あの人の戦いは華奈さんとは違うベクトルだがまさしくなんでもありの戦いと言えるものだった。

 

 

 剛弓はスレイド、レイヴンは愚かドゥンケルの弾幕ですら3発以上は射たないと弾けないし、その威力は武蔵ちゃんを押し返してしまう。

 

 

 マシュは大盾の質量を持って踏ん張りつつ前に行くけど、そこで剣で斬りつけるのではなく、盾を掴み、踏みつけ、そのまま組み術に持っていき首や腕をへし折ろうとするほどの豪快な戦いぶり。

 

 

 「マシュ! ふっ・・・! なっ!」

 

 

 「数の有利で調子に乗らない!!」

 

 

 片腕でマシュの首を抱え込み、ねじ切ろうとする巴御前を切り捨てようと武蔵ちゃんが入るも、巴御前は刀でその一刀を弾き、もう一振りの攻撃はマシュを武蔵ちゃんのほうに投げ捨てて攻撃を中止させつつふっとばす。

 

 

 「乱戦、混戦。その中でも黒縄地獄は、頼光様は私以上の一撃を放り込みますよ!」

 

 

 その間に矢をつがえて炎をまとった剛弓が2射、3射と放たれて武蔵ちゃんたちを炎の熱で焼き殺そうと、それを押し当てるか、あるいはその矢で射殺すと言わんばかり。もはや武蔵ちゃんたちのいる場所は炎の中、燃える建物の中にいるようなほど。

 

 

 「このっ!!」

 

 

 「マシュ! 今のうちに盾を!!」

 

 

 「っ! 英霊にも通用する弾丸。擬似的な宝具なのでしょうけど、本当に早く、そして矢よりも見えづらい・・・!」

 

 

 流石にこれはまずいと元さんといっしょに二人でドゥンケル二丁での弾幕を持って弓の攻撃を中止させつつ、マシュに盾を拾いに行かせるようにしていくけど巴御前はこっちの武器の方もしっかりと意識している。生身の人間だと油断せずに意識を配っているゆえに対処して避けてしまう。

 

 

 乱戦。しかも僕らはいくら非力といえども4対1の状況。それだというのに一歩も引かないほどの乱戦の強さ。これが戦で、乱戦の中でも相手の首をねじ切ってしまう怪力と戦いぶりを見せた武者というのか・・・

 

 

 「ふぅ・・・くふ・・・はぁ・・・これが、源氏の戦姫・・・なんのまだまだ!」

 

 

 「藤丸君。レイヴンを貸してほしい。そして・・・!」

 

 

 「!! 了解しました。マシュ! 武蔵ちゃんと巴御前を挟むように!」

 

 

 「了解ですマスター!」

 

 

 ハンドサインの意味を理解して元さんにレイヴンを貸して元さんは弾幕を張りつつ回復魔術を武蔵ちゃんにかけて傷を癒やして心身気力を回復させつつ、マシュは武蔵ちゃんと左右から巴御前の逃げ場をなくしながら再度接近。

 

 

 その間に僕は三本の指を揃えて魔力を練り込み、威力をまして放つトライガンドの威力をまとめて放つ一撃。それを複数個連射。

 

 

 「っっ・・・!! 金縛り・・・!?」

 

 

 マシュの盾、武蔵ちゃんとレイヴンの弾幕の中に隠して放つ一撃は巴御前が避けつつ、あるいは切り払う弾丸の中に混ぜてあたってくれたおかげでほんの数瞬だけ動きを封じることが出来た。

 

 

 「・・・取った!」

 

 

 この動きができない間に武蔵ちゃんが明神切り村正で袈裟懸けに振り下ろし、巴御前も刀で受けようとするけど押し切られて胸を大きく切り裂かれる。

 

 

 「・・・こほ・・・見事・・・我が躯に練り込まれし宿業・・・完全に切り捨てたようですね・・・ありがとう・・・武蔵、皆様・・・武運・・・を・・・」

 

 

 宿業を捉えたか、あるいは切り捨てたか。武蔵ちゃんの一振りの傷は腕を切り落としたときのように再生も、くっつきもせずに血を流し、にっこりと、華のような笑顔を見せてから前のめりに倒れ、そのまま笑顔で退去していった。

 

 

 英霊剣豪・アーチャー・インフェルノ。いや。英霊巴御前を見事に討ち果たすことが出来た。これ以上本人の望まぬ戦いをさせないために。

 

 

 「切り捨て御免・・・私一人では絶対に勝てなかった。マスターに、戦友、そして刀があってこそ手にできた勝利。だけど・・・この経験。絶対に無駄にしないわ」

 

 

 刀を鞘に収め、息を吐く武蔵ちゃんが手を合わせ、僕らも手を合わせていると、空が白み始めた。もう夜明けか。少しでも休もう。

 

 

 本当に、無事に勝ててよかった。

 

 

 




 ということで殺す他無いけど、しっかりと心晴れやかなままに戦い抜けましたとさ。どうしても正気に戻してもあちらに召喚された以上令呪とか何らかのバックアップはあるでしょうから。
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