転生愉悦部の徒然日記 作:零課
(#^^#)月(#・∀・)日
塩の生産ラインが整い、勢いを増していくオークニーですが、どうも蛮族の襲来の規模、頻度が冗談抜きで激しいものとなり、中々に流通体勢もラインの見通しも整わないです。今はまだ国内に充実させる、質の向上の段階のために出せませんが、いずれは以前以上の勢いで輸出する予定。国防の観点からも、産業、貿易の観点からも喜ばしくない。
ヴォーティガーン様の攻撃の苛烈さもそうですが、何より厄介なのがサクソン人の部隊同士の連携、ピクト人まで含めた広域戦略を取り始めていたことも問題でしょう。以前から部隊での規模を大きくした襲撃が増えてきましたが、ここまで連携をとった動きはなかった。
銀嶺自体はレギア、イネンナの索敵とメンバー全員の足で撹乱、潰し、倒せると分かれば即座に部隊を分けて他の部隊への援護もしやすいので問題はない。ブリテンは将の数も質も鍛えている上に経験も此方に引けは取らない故に対処できてはいますが、それ以外の諸侯への被害が甚大で由々しき事態になりつつあります。
何せ適当な人数で気ままに暴れるだけでも被害が出ていたサクソン人の傭兵部隊にそれ以上の身体能力を誇るピクト人の行動まで見合わせた組織的行動。防衛だけでは抑えきれず、攻めに出ればその出した分の兵の穴を突かれる。
私達は攻めに出て、その穴を狙った動きすらも釣りに使えますけど、機動殲滅戦に慣れていない部隊にはたいへんやりづらい状況で、ブリテンの所からも救援要請で私、ガヘリス様で出ては戦い、その帰り道にまた蛮族を殺すという昔を思い出すほどの激しいものとなっています。
この事に皆様が頭を痛めている中、少し私は不可思議に思うものがありました。何故、ここまでの財力が続くのでしょうか。未だ神秘の残る土地ゆえに地力も高いはずであろうブリテンの兵士にここまで戦えるサクソン人が大陸で安い賃金で雇われるとは思えませんし、ヴォーティガーン様もウーサー王存命の頃からや戦い続けている。ヴォーティガーン様が入植政策で迎え入れるにしても、例え此方に来る足代だけはサクソン人の自己負担だとしてもとっくに国庫は空になっていてもおかしくないほどの金が出ているはず。
入植して傭兵にする以上、食料や武具、住居の負担だけでも馬鹿にできないほどの金が出る。更には傭兵故に賃金も割増。これをウーサー王の頃から行い、そして私がブリテンに来る頃、つまりは20年ほど前も規模や激しさは違えど行っていた。
しかもそのサクソン人の多くは傭兵であり、それも私達が鏖殺したりすることもよくあるので減り方も凄まじいはず。忠義心もない彼らであればそんな危険極まる土地で働く旨味も少なく、島である以上、逃げやすいわけもない。
それなのにこの島に入植を続け。尚も勢いを増す・・・これは指揮官級、若しくは大陸に探りを入れなければなりませんか・・・はぁ、商人様のお土産、何にしましょう。
⚃月⚂日
取り敢えず私はフランスに居る商人様の元に栗毛を走らせ、急いで情報収集に勤しむことにしました。ガウェイン様たちにもお願いして敵の指揮官を一人でも多く捕まえるように頼み、私が不在の間はガヘリス様と連携して銀嶺は動くように指示もしておいたので問題はなし。
栗毛を走らせて半日ほどで商人様が住まう大きな屋敷に到着。さすが商人様。稼業は上手くいっているようですね。まあ、そうでなければ私達との商談で大口契約をポンポン出せる訳ありませんか。この前なんて砂糖2トン、蜂蜜20樽を買い込んでいましたからねえ。蜂蜜はようやく一般、少し貧しい方々にも流通できる値段まで落とせたばかりだと言うのに。
私が屋敷の門で警邏の方と商人様にお会いできないかと話していると、商人様直々に門まで来て迎えてくれて、中まで案内してくれました。なんでもあんな馬鹿でかい馬に乗る銀髪の女は私しか思い浮かばなかったからだとか。
栗毛は確かにでかいですからねえ。その分力もスピードもありますからこうして早く商人様とお会いできることが出来ましたが。取り敢えずお土産の蜂蜜酒とクッキー、燻製チーズを渡して、互いに何気ない世間話で茶を濁した後、本題に入ることにしました。最近の蛮族襲来の規模の大きさ、ヴォーティガーン様との決戦の準備をしているので当分此方には足を運ばないことが懸命であることを伝えてると、ああ、そうなのかあとあまり大きな反応がありませんでした。
商人様は何か知っておいでなのかと聞いたところ、ローマとヴォーティガーン様の間である取引が行われているという噂が流れているらしく、ヴォーティガーン様が自身の拠点をサクソン人に貸し与える事を条件に、ローマは武具、戦力、つまりはサクソン人を供給する取り決めだとか何とか。
レンドリースじみたことを両国間で行われていることにも驚きましたが、何故ここまでの情報を得ることが出来たのかと聞いたところ、ブリテンに近いローマの港町では毎日のようにサクソン人が送られていること、また戦場で名を馳せた指揮官も僅かではあるもののいないことからこの噂は最早ローマ、フランスなどの国では皆が知っている噂なのだとか。商人様はそれにちょっと細かく探りを入れた結果このレンドリースに行き着いたのだとか。
・・・つまりはローマがヴォーティガーン様に協力してもらい、サクソン人を送り込んでブリテンの諸侯を滅ぼしてもらった後、傭兵に多くを頼っているヴォーティガーン様に折を見て兵力の供給を止めて疲弊したところを喰らう。とローマサイドは考えているんでしょうねえ。まあ、どうせヴォーティガーン様もそれを踏まえた上でしょうから、そう上手くローマの思惑通りにいかないとは思いますが。
取り敢えず少なくともヴォーティガーン様を倒してこのサクソン人の入植という名の侵略行動を終わらせ、その上でローマの打ってくる手を潰さないといけないとなりますか。海で隔てられていることが幸いですが、未だ強国のあの国相手にどう立ち回るか。面倒事はまだまだ続きそうですね。
それに対し苦笑気味の商人様は私に今回の情報の土産と、贔屓にしてくれているお礼も兼ねて身の丈の半分ほどの麻袋を渡してくれました。中身を開くと大量の生姜。これはまた有り難いものを。ジンジャーエールでも作ったり、色々考えていたので嬉しかったです。お礼に私も持ってきていた金貨数枚をせめてもと渡し、帰ることにしました。
生姜はオークニーの土地では上手く栽培がいきませんでしたが、これで必要な料理や生薬、酒でも作ってみんなを元気づけながらモルガン様にイグレーヌ様、後はマーリンにでも相談しましょうか。品種改良で栽培できれば病気対策にできますしねえ。
♂月♂日
帰ってみると早速ヤマジ達の捕まえた将官の情報を聞けたのですり合わせると、見事にまあ商人様の話と合致。ローマのレンドリース作戦は本当に行われていることがしっかりと確認できました。因みにこの雇われ将官は相当に口が固かったそうで、くすぐり二時間の刑、にんにくたっぷりペペロンチーノを食べた尋問官によるディープキス一時間半の刑を受けてようやく口を割ったそうです。随分ガッツのある将官ですこと。
その後はギアスでもうこの国に足を踏み入れないことを誓わせて開放。廃人同然だったそうですので、まあ、二重の意味でここには来ないでしょう。
早速生姜のことをモルガン様、イグレーヌ様に生姜のことを話し、その後は鍛冶場に移動。少し思いついた? 思い出した? 物を準備したいので作業開始。少し刃先を伸ばした短槍を一つ作り、その石突の部分を凹ませたものを作成。それと槍の凹んだ部分に先端が引っかかるように曲げた金属製の棒を一つ。
槍の凹んだ石突の部分を棒の突起に合わせて軽く振り抜く。すると槍はそれ以上の高さを悠々と飛び、飛んでいたガチョウの頭を粉砕。うん。いい出来です。
今回作ったものは「スピアスローワー」いわゆる投槍器の一つで、普通に投げるよりも遥かに遠くに投げることの出来るというもの。これと専用の短槍を作り、突撃部隊でも援護でぶん投げたり、重武装部隊でも遠距離から殺せる破壊力を持てるでしょうし、いざという時は剣の代わりにも出来ます。予備の近接武器にもなりますから悪くないでしょう。
早速鍛冶師にこれを量産。私も練習用の道具を予備の槍を加工して作成、切った鉄の部分を溶かしてスローワーも幾つか作成。鞍にも少し手を加え、数本所持できるように改良。訓練と洒落込みました。
的当てや流鏑馬じみた訓練の結果はダンカンがぶっちぎりに上手く、聞いたところ漁網を扱う日々で肩の下地自体はできていたそうな。突撃部隊を率いることの多いダンカンに相手の分厚い装甲を破壊できる投槍が出来るのは喜ばしい限り。
ヤマジ、部隊の皆様もすぐに慣れましたし、上手く行けば何処からでも矢以上の遠距離攻撃の追加が出来るかもしれません。アンナ様もこれを気に入り、幾つか専用の術式を彫り、これを自身の雷魔術の誘導するものにするそうな。
最後に、このスピアスローワー、軽く投げても遠くに飛ぶのが楽しいのか、適当な木の棒を加工してみんなで遠くに投げ、距離を競う。又は投げた棒を魔狼達が拾うという遊びが銀嶺とモルガン様達の間で流行りました。もう完全に犬との遊びのそれですけど、大昔の狼と人間もこうして関わって今の犬と私達の関係になっているのでしょうか。
そう考えると古代の行いを再現しているなんてロマンがありますねえ。
・ワ・月☂日
ガウェイン様、モルガン様から管理者としての権限を借り受け、蛮族共と通りがかったら始末しておきながら移動、かつて私がモルガン様達を匿った森に足を運びました。
理由としてはヴォーティガーン様と交わしていた『この島の去りゆく者達のために尽力はしましょう。その上で貴方と戦う』という言葉を守るため、個人的にまた会ってみたいという考えもあるが、ブリテンサイドが勝利した場合、幻想種に寄り添うものが私やモルガン様たちしかいなくなるであろうし、早めに住みやすい、神秘の減少問題が深刻化する前に妖精郷に移ってもらおう。という考えからです。
久しい森の空気に、迎えてくれた妖精、精霊達が出迎え、久しぶりだと言葉を交わしてくれました。中には私が来るときのために道具も拵えていてくれた方までいまして、私も土産は準備していたので思わず嬉しくなりました。しかもまあ腕輪に指輪、アミュレット、イヤリングと様々。モルガン様やアンナ様と関わってそういう道具も少しは目利きができるようになりましたが、これらの性能がまたすごいこと。単純な装飾品としても素晴らしい。本当、とんでもないです。妖精や精霊の皆様は。
みんなで私が持ってきたお土産の豚汁を食べながら今回の用件を話すと、少し難色を示しましたが、一応は納得。森の幻想種、襲ってきた巨人族や竜種もどうにか無力化、または倒して魂を送り込んでいき、夕刻になる頃には森一つの幻想種全員を妖精郷に送り込めました。
これでオークニーとその周辺の幻想種は全て送ったことになるでしょうか。取り敢えず貰った装飾品や森のめぐみを幾つか頂戴して帰りました。木苺のパイとくるみクッキーを晩御飯のデザートに出しました。
♫月±日
本日はいよいよヴォーティガーン様との決戦に備えての戦略会議。私も手に入れた情報と、お菓子を持っていき王宮の戦略会議室に。そこには楽隠居したはずのロット元国王様も含めた国の武官の面々、ガウェイン様ら王族も揃い踏み。緊迫感溢れる会議室です。
・・・・・・・・まあ、私が持ってきたお菓子のせいで空気が緩んでしまいましたけど。休憩にどうでしょうかと用意しましたが、失敗でしたかね? 小腹がすいている方が多かったので皆様の飲み物も用意して、会議を再開。
アルトリア様達はほぼ全ての戦力を惜しみなく振るい、ヴォーティガーン様を速攻で討伐していく腹づもりらしいのですが、ローマのレンドリースに見える野心もあるので、私達がそこに兵力を差し向けすぎると絶対に大陸が何かをしでかしてくるのは明白。ブリテンサイドはマーリンとケイ様が留守を守るそうですので、私達は選出するメンバーは私、ガウェイン様、そして満場一致でアグラヴェイン様を推薦。驚くアグラヴェイン様はまだ自分のような若輩者でこの大戦で責務を果たせるのでしょうか。と狼狽えていました。
ハッキリ言って防御術に優れているので問題はなく、ある役割を持ってほしいのでお願いしたい。と私とガウェイン様で頼むと腹を括った顔で了解し、早速出せる兵力を考え始めました。こういう合理、そして私達には意外と甘い部分があるのですから本当に面白い方です。
話を戻し、今回オークニーは私、ガウェイン様、アグラヴェイン様の三名を選出、私が1000、ガウェイン様達はそれぞれ2000づつの計5000のの軍でブリテンと合流。そしてロット元国王、コーウェン将軍、モルガン、イグレーヌ様がオークニーの留守を守り、ジャック将軍は兵3000を率いてブリテンの守備の援軍、ガヘリス様は両国間のどちらの援軍にも対応できるよう予備兵1万の全権を任せて待機。
ガレス様も何やら出たがっていましたが、流石に王女にそれはさせられませんし、出来たとしても初陣がこれは流石に危険すぎるのでモルガン様達の護衛を頼む形で収まりました。武人としては及第点ですけど、将官としての教育はさせていませんからねえ。こんな穏やかな姫様が剣も好むとはやはりこの一族は戦が好きなのでしょうか。
守備組の話が一段落したので今度はブリテンと共に攻めに行く私達の話に。今回は大規模な戦な上にサクソン人だけではなく、幻想種もいるヴォーティガーン様の居城を攻め落とす大戦。私もその幻想種を妖精郷に送る役割を戦のさなかで行い、同時に戦力の減少を狙う。そのために今回の主な攻め駒の役割はガウェイン様、守備はアグラヴェイン様にお願いすることにし、私は遊撃に徹することを伝えました。
具体的には私、ダンカンで遊撃手として戦場全体を動き回り、幻想種を妖精郷に送り、そしてピンチの部隊を救援。ガウェイン様はヤマジと組み、戦線を押し上げてヴォーティガーン様に挑む。太陽の聖剣を持ち、加護もあるガウェイン様は突破力、攻撃力共にアルトリア様に引けを取らない。速攻勝負なら必須の存在のはず。
アグラヴェイン様はアンナ様と組み、ガウェイン様の援護、城の内部までガウェイン様を届けたら外の蛮族を救援に行かせないための蓋の役割をお願いしました。その際にはガウェイン様と同行したヤマジもアグラヴェイン様の援護に加わり、より蓋を堅牢なものにすること。
将官は分けますが、銀嶺の兵自体は私のもとに全て置き、今回は1000名(匹)全員で相手にぶつかりに行くことも伝えて会議は終了。疲れた身体と頭に糖分を送り込んだ後に各自の持ち場への準備を開始。
今回は流石に何が置きてもおかしくないので森で再会した皆様から貰ったアミュレットや腕輪をガウェイン様、アグラヴェイン様やヤマジ達に渡しておき、私も部隊に戦の旨を伝えました。士気も高く、問題はない。
人の視点からこの島を憂うアルトリア様、去りゆくもの、幻想の住人の視点から憂うヴォーティガーン様の決戦。どう動くかは分かりませんが、戦い抜き、私が守りたいものを守るために頑張らなければ。
ブリテンを終始苦しめ続けているサクソン人の入植、そして兵力。ヴォーティガーンもなんでここまで出来たんだろうなあということでああなりました。ローマが第一次大戦、二次大戦初期のアメリカみたいな扱いに。
雇われ将官の尋問、クレヨンしんちゃんの刑事編の話で登場した流血を嫌う殺し屋の殺し方で出てきたものを使いました。ターゲットの持病を調べて驚かせて心臓麻痺で殺したり、痔持ちなのでカンチョー、強烈な下痢で殺そうとしたり、やり口はともかく下調べなどはよく出来ているなあと思ったものです。
スピアスローワーはマイナーですが本当にある道具で、作るのも難しくなく、携帯も楽。もってこいだなあと準備しました。槍が数十メートル離れようとも飛んでくる。おっかないですね。
ゆるいオークニーですが、見方を変えると忌憚なく意見を出し合えて、距離も近い。円卓を再現ないし体現するような関係性に近いなと思いました。王と将軍のコントじみた話し合いに仲良く壊れた王城の掃除なんてどこまでゆるいんだか。
次回は一つの区切り、どうなるかはお楽しみにしていただけたら幸いです。
最後にUA 16634件 しおり 41件 お気に入り 168件 ありがとうございました!! ではまた次回。さようなら。さようなら。