転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「うーん・・・こいつはまた派手にやらかしたな。ったく。拵えが外れかけてらぁ。毒に酒に炎。英霊剣豪も色々と強みがちげえようだな」
「はぁー・・・刀身を見るだけでここまでわかるものなの?」
「あたぼうよ。鍛冶師舐めんな。しかし、こいつは一度儂の工房で手入れをしなければ次の戦いでは刀身と柄が外れかねねえ。戻るぞ」
「む。うーん。そうなるとどうするか」
無事に護衛任務も終えて清姫様からの一層の信頼と、城内の侍たちからも信頼を得て報酬もたんまりホクホクで終わった。
とはいえ、流石に英霊剣豪。巴御前に酒呑童子。千代女は自ら死を選んだとはいえ、流石にこうも連戦を、しかも鬼種で英霊剣豪の術式で更に基礎能力をあげられた戦士たちと戦えばいくら名刀といえども手入れが来るのも必然。
ただ、同時に怪異妖怪たちと戦える。英霊剣豪と戦える私達が今下総を離れるのも。と少し不安になる部分もある。
「それでしたら僕が残ります」
「拙僧も残ろう。姫様の安全を守れたとはいえいまだ英霊剣豪は残っている。それに、小太郎殿がぶつかった術者とやらも未だいるはず。
・・・おそらくあの肉食獣のような肉体と目つきをしていたあやつとは思うが。そいつ等がなにかここに仕掛けをしてきた際も拙僧たちなら少しは時間稼ぎをできるはず」
「ええ・・・僕もあの術師を仕留めようとして、失敗しましたがまた今回の件で動くと思いますし」
「そういえば、小太郎くんは何であの術者とかにいきなり喧嘩を売ろうとしたの?」
そういえばそうだ。千代女に不意を突かれて傷を追ったと言うけど、小太郎くんほどの腕利きの忍者が、真正面からぶつかれば千代女相手にも負けないほどの実力者が何でこうなったのか。
土気城では聞けなかった話だ。
「ふむ・・・まあいい。儂はちょいと念の為にここで鍛冶に使う道具を調達と飯を買ってくる。その間に出立の準備をしておけよ」
「はい。感謝します。そうですね。僕はこの特異点に召喚されたサーヴァントで、まずはこの特異点の調査をしていました。その中でふと遠くに見かけたのです。加藤段蔵。僕にとっては師匠のような人で・・・同じ風魔の忍び。
彼女が動いていたので合流をできればと思いつつ後をつけていたのです」
村正さんは庵に戻る際に食材と道具の買い出しに。僕らも宿から出る際の荷物を整理していく中語られる小太郎君の話。
「そして、合間合間に現れる怪異を対処していく中で竹藪の中に入り、どうしたものかと思う中、風が吹いて竹を揺らしてくれたのでその合間に後を追えば、ふと見かけた術師。確かキャスター・リンボとか。
其奴のみが残り、団蔵殿はどこにもいない。そこからは千代女殿の言うようにリンボと戦う中で千代女殿に背を討たれてしまい重傷。団蔵殿が心配でしたが、柳生殿のもとで英霊として動いているので安心ということですが・・・」
「うーん・・・でもさ、それの場合、下手すれば柳生殿は早々アイツラの手に落ちるような輩じゃないけど、柳生殿の上司や清姫様のお父様をあのキャスター・リンボが洗脳して、その監視のために団蔵殿を使っている可能性もあるわよね?」
「ふむ。しかし英霊剣豪のような気配もなければ酒呑童子討伐の際などに背後をつける可能性もあっただろうにそれもしない。英霊剣豪の術者と匂う部分もあるが、かといって手を貸さずにむしろ拙僧たちと手を組んでくれている。確かに読めぬのぉ」
聞けば聞くほどややこしいと言うか読めない。たしかに団蔵の動きは小太郎くんから見ても不思議に見えるわけだ。
「はい。だから、下手には動きませんが僕はここの守りをしつつも土気城を・・・団蔵殿と柳生殿の動きを見張っておきたいというのもあります。本当は皆さんの助けをしたいのですけども」
「いやいや、其れならむしろここの守りと警備をお願いしたい。武蔵ちゃんの刀を二振り直している間何かあれば教えてほしいよ。本当に気遣いありがたいし、小太郎くんと胤舜さんが一緒なら気兼ねなく僕らは一度庵に戻れるし」
「そういうことね。おたまさんにも今回の二つの依頼の報酬の金子も一部包んでおいたし、宿でそのまま過ごしてもいいでしょうし。いいかしら? 私達も其れなら安心できるし」
「かたじけない・・・その分絶対に皆様の期待に答えるよう頑張ります」
「おうさ。拙僧も食を取って気力を蓄えておく。気にせず武具を直してもらうといい。拙僧の槍も研いでもらっていたしの」
ならば話は決まりということで、おたまさんにも挨拶をしてから私、武蔵ちゃん、藤丸、マシュ、村正さん。おぬい、田助と一緒に庵に戻ることになった。
「はぁー・・・しかし・・・うーん・・・」
「どうしたの? 武蔵ちゃん」
「いえね。華奈さんや翁殿。あの人達が捉えているそこに見えないがある。あるがないもの。そういう概念や宿業を切る。捉えるという感覚を思い出しているんだけど、まだ触り。
あれを私よりもずっと小さい。おぬいちゃんくらいの年齢で既に覚えていた華奈さんはどれほどに修練を重ねていたのかなって」
指を剣に見立ててピュンピュンと空を切りつつここしばらくの英霊剣豪の戦いを思い出してその難しさに唸る武蔵ちゃん。なるほど。たしかに剣士は刃を振るい相手を倒す。だけど、村正さんは概念すらも切る業物を作ることを求め、華奈は武器があれば其れである程度までは英霊の呪術でも斬り捨てる。
「私も剣士として多少は誇りも自信もあったけど、まだまだ剣士としてはまだまだなんだなあって。その境地がわかると、余計にその難しさが肌でわかるから」
「あー・・・なるほど」
「お母さんは13歳位で縮地と概念切りを覚えたと言っていましたね。なんでも好きで剣を振るっていてできそうなことを想像しながら振るっていたら覚えたとか」
「好きこそものの上手なれとは言うけど、呆れるほどの剣才だなあ。そりゃ野菜で英霊とも渡り合うわけだ。武蔵の嬢ちゃんも頑張って届けばいいがなあ。儂の刀を問題なく使いこなせるほどにはよ」
「もちろん! 今はこの業物に助けられて、元やみんなの助け合ってこその勝利だけどいずれはこの業物に負けないほどの剣士になるんだから!」
「剣に助けてもらうとはいいこと言うじゃねえの。飯くらいは用意してやるから一度休んでこい。手入れも一応道具を用意したし、華奈とやらから貰った木炭や砥石でより良くしてやる」
ごきげんな村正さんに連れられつつ、とりあえず前向きに進んでいけそうなのが嬉しい。自分だと少し届かないとか駄目だって思いそうだけど、前向きに剣士として鍛えて行けているのが嬉しい。
「はふぁー・・・いい湯ですね・・・」
「はぁー・・・極楽極楽♪ 大衆風呂もいいけど。こういうのも静かでいいわね♪」
「はふぁー・・・あつーい・・・もう私は上がるねー」
食事を村正さんが作ってくれる間に風呂を沸かし、風呂の時間。だけど熱さにのぼせてカラスの行水レベルで先に上がって体を拭くおぬいちゃん。巨大なたらい。ビニールプールをもう一声大きくしたようなそれで湯に浸かるマシュと武蔵ちゃん。
私と藤丸は用意を終えて行水で済ませたのだけど、いやはや・・・あのサイズの肢体が今障子の向こうで何もつけずに湯に浸かっている。想像するだけで思わず興奮してしまう。声が魔羅に響く・・・!
「元さん。僕らは移動したほうがいいのかな・・・?」
「い、いちおうドラム缶風呂式だから、のぼせたりやけどに備えないとだから・・・」
藤丸くんは顔を真赤にしてマシュたちの方を見ないようにしているけど。うん。わかるよ・・・意識している相手だもんね。というかこの反応まだ抱き合っていないのか。いや私も武蔵ちゃんとはまだだけどさ。
初々しいけど、同時に桶の下は即席で組んだ石窯で火を炊いて水を温めているので熱くなりすぎないように調整をしたり、水をいれる際のヘルプ役は必要なのだ。
「はふぅ・・・あ。藤丸くんに元も一緒に入る? 江戸の風呂場は混浴だったし。どうするー?」
「え、あっ! 武蔵さん!? せ、先輩! 火の調整とか、水の調整は必要ですけど、い、いや・・・あ・・・いえいえい! 駄目ですよ見ては!!」
「あはは。マシュちゃん顔真っ赤ー♪」
この・・・武蔵ちゃんもからかうのはいいけど、うーん。できれば他の男、藤丸でも武蔵ちゃんの裸体は見てほしくないなあ。
「じゃあ、武蔵ちゃんの背中もしっかりと洗おうか。できればこのあとの事もじっくりと話したりお団子をつまみつつ・・・ね?」
「え・・・? あ、ちょ・・・げ、元・・・? 冗談ですよ? 剣士ジョーク。ね?」
「いやいや。一応武士なんだし、二言はないよね? 同じ剣士の華奈もなんやかんや色事は本気、ギャグは言わないからね。私もぜひぜひ・・・」
からかいに返す形で腰を上げて障子に近づく。武蔵ちゃんもそれがわかるようでよく分かるほどに慌てている声と様子が見える。
「あー! ちょっと待って! 待ってください! 流石に言い過ぎましたから! 待って待って! 乙女の裸体を早々見せるわけにはいかないんですからー!!」
「やかましいわお前ら! 仕事に落ち着いてかからせろこのスットコドッコイ!!」
「がふぁっ!?」
障子の向こうで怒った村正さんにたらいを投げられてそれが頭にぶつかって目を回す武蔵ちゃん。もー・・・
「たんこぶは後で治療してあげるから、ちゃんと大人しくお風呂に入って、体を拭いて着替えてから来るんだよ」
「はぁーい・・・ごめんねマシュちゃん。藤丸君」
「あ、いえいえ・・・はふぅ・・・の、のぼせそうでした」
「いえいえ・・・マシュも気をつけて」
少しドタバタをしたけど無事に夕日をみんなで見つつおやつの団子を食べて夜が近くなる。今夜は穏やかに過ごせるといいんだけど。
次回はあの人。華奈は丑御前相手に短期決戦は避けてヘッドバッドをしましたが今回はどうなるか?