転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「小太郎くんからの連絡。・・・ええ・・・!? いや、ええ・・・これ、スゴイことになっていない!?」
朝餉を終えて、少しの間心地よい休暇を味わっていた中に急に飛び込む藤丸の連絡とそれにつられてみんなで空を見れば、その反応も納得だ。
英霊剣豪が現れるときに降りる夜と赤い月。しかし英霊剣豪は愚か怪異の類もまだ周辺にはいない。
「藤丸。一体どうしたの。あといつの間に通信機の類を?」
「大尉さんたちから味方との報連相に使えるようにって予備を持っていたんで渡していました。じゃなくて。土気城が消えて、新たにそこに面妖すぎる怪異と魔のに詰まったような城が出てきたと。
そしてそこかしこで人が妖魔に変化して暴れまわったり、町の内外で大量に出現してと大騒ぎのようです! 現在は胤瞬さんと段蔵さんで連携して対処しているけどそれでも被害は増えるばかり。すぐに来てほしいと!」
「土気城跡地、観測できました。確かに・・・別物と言えるほどに変化しています・・・! そしてそこかしこで・・・ひどい・・・あちこちで火の手も上がっています」
とんでもない内容。まさか、いや、あり得た話ではあるけど妖魔の出現の数も、その被害の速さも今までとは桁が違う。
マシュも庵の屋根に登って望遠鏡で土気城跡、その周辺を見てその光景に息を呑んでいるほどだ。
「ちょっ。黒縄地獄のあとにすぐにこれ!? 元と村正のじいさまの食事や治療で元気になったけど、流石に気が滅入るわよ! ああ、もう。行くしか無いか! おたまさんも心配だし!」
「もちろん。私も普段大尉から鍛えられている分英霊には負けるけどマラソンしつつ射撃もできる。強行突破しよう」
ドゥンケルの弾数をチェックして、身体強化の魔術をセットして、ガルバニズムシステムをドゥンケルにつなげておく。これでリロード速度や反動をできる限りストーム1の練度近づけておくべきだろう。
「近接戦なら、僕が。マシュ。いける?」
「もちろんです先輩。私もこういうときのために一応護身用でこれを持ってきましたので」
藤丸はドゥンケルを構え、マシュも華奈とストーム1、プロフェッサーから借りてきたであろうショットガン、フラクチャーを装備して盾を背中にしょっている。
対大軍用のアサルトライフルとショットガン。しかもマシュが藤丸を守るために大事にしている盾を背中に構えている辺り、藤丸への信用もだが、それほどにあの街の状況がひどいということか。
「村正さんは・・・この結界術式を展開しておけば庵には妖魔はよってこれませんし、ここでどうか事が済むまで・・・」
「いいや。儂も行く。ガキどもに手を出されるかもしれねえ状況に何度も泣き寝入りは勘弁だ。それに、足はある。ほれ」
村正さんも行く気のようで、同時に英霊がいるのは助かる。そしてここから村正さんは庵の裏から馬を数頭連れてきた。
「二つ里が潰れた際にその里から馬を近くの里から分けていくことになってな。ちょうど人数分ある。馬の早駆けは問題ないか?」
「もちろん」
マシュも藤丸も銀嶺隊との訓練で流鏑馬ができるくらいには鍛えているし、マシュはギャラハッドの経験と力もある。私も馬術を学んで早駆けは問題ない。
うーん。いい馬。連れて帰れないかなあ? 銀嶺隊の、栗毛のようなバカでかい馬と比べると小さい・・・いや、サラブレッドのサイズはあるんだけどね。
「私と田助はお守り?」
「いいや。儂と一緒に行くぞ。何をするかわからねえ輩が本腰入れたってんなら何してもおかしくねえ。儂らの側が一番安全だ」
全員で行くことになり、馬にまたがる。うん。もともとは農耕馬なのかな。脚もしっかりしているし気性も良さそうだ。
馬に乗り怪異の群れに弾丸の雨を叩き込みながら前に行く。ウルクの魔獣やラフムに通用したEDFの武装。馬たちの走りの邪魔はさせないぞ。
「皆さん! ご無事でしたか!」
「ははは! 流石は早い。まさしく兵は神速を尊ぶ。か」
「小太郎くん。胤瞬さん。段蔵さんは?」
「ここに。避難指示をしておりました」
ドゥンケルの遠距離狙撃能力とその速射機能で敵に牽制をして、そこにレイヴンとフラクチャーというガトリングガンを小さくしたようなアサルトライフルとショットガンの弾幕は容赦なく敵を穿ちぬきさほど障害にならずに城下町に到着。
そしてそこでは既に避難行動を始めている人たち。おそらく三名で妖魔を退けつつ避難路を確保していたのか。流石だ。
「しかし、流石にこの急変故に拙僧等でも全ては救えず・・・眼の前で人が妖魔に変わり襲う。それに手をかけるというのは些か堪えるが、それでも人を守るためには致し方なし。
既に東の、城の近くは全滅よ」
「僕らの方も今どうにか避難できつつある人たちと侍衆たちが10名の塊で逃げ遅れた人達を探したりしつつ妖魔を倒す手伝いをしているだけで。無力で申し訳ないです」
「いえいえ! むしろこの状況下で避難をできるのはスゴイことです。しかし、城の近くが全滅とは・・・」
「城の外で警備や政務を行っていた者たちは不幸中の幸い被害をすぐに受けずに済んで活動しているものもいますが、妖魔は城の近くが特に多く現れていまして。それ故に城づとめの侍たちも多くが死に絶え、もはや妖魔のたまり場、拠点となっているほどです」
「ったく・・・少し前に賑やかさとうまい飯を楽しんだ場所と思えね変わりようだ。舐めた真似してくれる」
村正さんの言うことが私達の総意だ。こんなことをして、相手は何をしたいのか。英霊剣豪といいやることがことごとく悪趣味としか言いようがない。
「はいはーい! 列はしっかりと作って。乱せばソレだけ妖魔に喰われるかもしれないですよー」
しかし、この状況では結局おぬいちゃんと田助はどこかに預けたほうがいいだろう。予想以上に惨劇としかいえず侍衆たちも頼れない。
そんな中で聞こえてきた声。そこに振り向けばおたまさんがいた。無事だったのかとホッと少し安堵してしまう。
「おたまさん。無事だったんですね!」
「あら、あなた達はいつぞやのお隣さん。あなた達は妖魔の退治に来たので?」
「はい。しかし、おたまさんは避難誘導を?」
「まーそんなところです。喧嘩と火事は江戸の花。といいますのでこういう避難は慣れています。とはいえ・・・流石にこの状況は未経験ですが避難する経験はありますし、しかもまあ侍様たちもお忙しいとくる。
だからできることをするということで少しだけお手伝いを。こういうときには女も頑張るものですから」
全くたくましい。江戸の芸姑さんはこういうときにも頼りになるものなのか。ふむ・・・
「すいませんおたまさん。おぬいちゃんと田助くんも一緒に避難してもらっていいですか?」
「はあ。まあ、あなた達にはボーナス? とやらでいくらか金子も包んでもらいましたし、どうせ避難する状況に子供一人二人は問題ないので。いいですけど」
「ありがとうございます。それなら、この木箱を。怪異が襲ってきたときにこれの両端を持って横に引っ張れば結界が守ってくれるはずです」
「え? 貴方がた術師だったんで? はあーあーたしかに服装なども独特ですが今の陰陽師はこういう服装なのですねえ。ええ。受け取りました。ささ、おぬいちゃん。田助ちゃん。お姉さんと一緒にいきましょう」
「助かる。良い女ってのは頼れるもんだね。さてと・・・」
おぬいと太助君を預けて、ひとまず見据えるのは禍々しい地獄の城と言ってもいいほどの禍々しい城を見据える。
「まさかまさかここが敵の住んでいる場所とはなあ。灯台下暗しというべきか合理的というべきか。まあ、これ以上は相手もやることがないからこうしてきたんだろうが、ちょうどいい。ここで終いにするべきだ。アホな妖怪騒ぎもこれまでにするぞ」
「もちろん。そのためにも私達は来たんですし。すぐにいきましょう」
「おうともさ! それに拙僧等が突っ込めばそれにつられて妖魔も来る。その分だけ避難する民にこないようにできれば一石二鳥」
「この陣容なら挑むのも問題ないでしょう。皆さん。急ぎましょうあの城へ!」
私、藤丸、マシュ、武蔵ちゃん、胤瞬さん、村正さん、小太郎くん、段蔵さん。おそらく今ここにいる最大級の戦力。下手に手をこまねいているよりも敵の本拠地ごとふっとばすべきだ。
皆で気合を入れて、群がる妖魔に弾丸と刃を見舞いつつ先へ先へと進んでいく。
「私は・・・段蔵は。皆様に・・・言わねばいけないことがございます・・・」
地獄の物となったような城の中を突き進み、妖魔たちを切り払い、蜂の巣にしながら天守閣を目指す中、ふと段蔵さんが話をし始めた。
「段蔵は・・・皆様の。敵でございます。エンピレオ殿、リンボ殿から機があれば皆様を英霊剣豪と協力して屠れ。と。しかし、皆様を見ているとその気持もゆらぎ、加えてあの結界術を持って戦いに割って入れない中そのゆらぎは大きくなり申した。
人の世を壊していいのか。地獄にしていいのかと。そしてズルズルとこうなり・・・今は、ワタシの意思で皆様に頼みたいことがございます・・・
もちろん・・・背信行為をしていたゆえ、手土産代わり、罪滅ぼしになるものではございませんが、この土気城跡。いえ。厭離穢土城で成されようとすることを伝えたいのです。そのうえでワタシを壊して、先に進んでくれると嬉しいです・・・」
「そっか・・・うん。いやー予想はしていたから、しょうがないよ」
「・・・え?」
「一応忍びかつ、英霊でもないけど、風魔の一族の加藤段蔵だけどと変なところはあったから警戒はしていたのよ」
「え、えーと。そうですね。私も一応・・・でも、ずっと仲間でいてほしいと先輩も私も思っています。今も」
「はははは。拙僧もなにか影を感じていたが、なあに。結局はこの地獄を作る手伝いもせず英霊剣豪討伐にも手を貸してくれた。御仏様も謝れば赦してくれよう」
「僕ら忍びはそういう裏切りは日常茶飯事でしたし、警戒はしていましたからね。でも、それでも動く気配がないのでもしやと思っていました」
「儂もそう安々とコソコソされるより眼の前でやってくれるんなら気が楽でいいと思っていたしのぉ。ま、何もしないもんで結局杞憂に終わったが」
「私も怪しいけど、まー何もしないしということで楽だったし、今からでも仲間になってくれ嬉しいかなって」
みんなの言う通り。裏切ってはいたけど、だからといって実害もなければむしろ助力をしてくれて、しかも英霊剣豪と戦い、怪異から侍や民衆を守っているので。まあ、なんというか嘘と思えるような発言でもある。
カラカラと笑いつつも段蔵はちょっと拍子抜けしたような顔をして思い詰めるような顔に変わり、しばらく逡巡してから顔を上げた。
「で、では・・・段蔵だけが気づいていない・・・忍びとしては失格ですが・・・えーと・・・私の意思で皆様とともに在りたいと思います。そして・・・この穢土城ですが・・・この城自体が大きな術式を行うための結界術式となり、その起動に関しても・・・ここの城主の娘。清姫様を生贄にして起動します。
皆様にはそれを阻んでもらいたいのです。でなければ、この厭離穢土城は完全に下総に根付いてしまい妖魔の国、地獄とかしてしまう。そして・・・その影響は藤丸殿、元殿。貴方がたの世界にもこの穢土の暗黒が流れ込んでしまいます」
「「「!!!!」」」
特異点の影響。しかもそれは本来人理の中でも大きな流れのない。強固なだけの小さな場所の下総からこの地獄のような影響が溢れてしまう。それは一大事と言える。
この特異点が小さなものの分、それがすぐ完成してしまう可能性があるし、そうなれば人理焼却とは言わずとも日本に来る影響は多大すぎるものだ。急いで止めないといけない。そう実感させるには十分だ。
「なら急いで・・・っ・・・!」
「はははは。はははははは。笑わせますね。自分の意志? そんなものが許されるとでも? 朽ちかけたからくり人形ごときが。ふふふ。なんとも愚かしい。自由意志! 人造物に訪れた自我の芽生え! 愚か愚か愚か。愚かがすぎればこうも笑えるのですか。無聊の慰めにはなりましょうや」
眼の前に現れた術師。一度竹林の中で遭遇したあの肉食獣のような男がその場にいた。
「キャスター・リンボ! 妖術師のそばにいたかと思っていたが! 皆様、お気をつけくださいませ。この者の妖術はみなさまでも当たれば危険すぎるものです」
「ンンン。大逆を行っておきながらその程度の認識とは。次はもっとしっかりと修復・・・いや。もっと壊しておくべきだったか? 壊れかけのからくりが足掻くさまが面白く徐々に壊してやったが、中途半端に直しておくべきではなかった。ンフフ。次は頭脳の7割を潰しましょう」
「きっ・・・貴様・・・いま、何と・・・!!?」
「壊した。といいましたが? 朽ちていた貴様を拙僧は拾い上げましたが手ひどく破損いたのはせいぜいが外装と手足の武装のみ。主に動けなかったのは魔力切れによる動力切れ。なので頭脳記録をぐちゃぐちゃにかき混ぜて壊れかけた人形にしたまでのことです」
「っっっ!!!」
「反吐が出る。ろくでなしってえのはお前のようなやつのための言葉だろうよ」
「全くだ。貴様が英霊剣豪を生み出したものであろう。姿を見せい!」
ただ修理して、仲間にするのではなくあえて壊して、完全に自分の傀儡にするのではなく記憶を一部残してこの状況さえも楽しんでいる・・・本当に悪辣悪逆。人の悪性は英霊や特異点をとおしてみてきたつもりだったが、まだ上がいると言わんばかりの存在に腸が煮えくり返る気持ちになる。
「ンフフフ。ではでは。お会いするのは二度目になりますね。皆様。私のことはどうか・・・安倍晴明とお呼びくだされば」
「「いやそれはない」」
「なにっ!?」
出てくるなりろくでもない事実を伝えたと思えば今度はこれだ。全く。カルデアマスターを舐め過ぎではないだろうか。
「ええ。私も安倍晴明と縁のある英霊とは話を聞いていますがそのような人の皮を被った外道のようなことはしない。守護者がそのような振る舞いをすることがないはずです」
「それにまあ、悪辣で悪趣味。そのようなことをする意味がないし。あの安倍晴明なら忌み名を背負い英霊剣豪にならずともすぐにこれくらいはするだろうからね」
華奈に紫式部の平安組から効いている話と術の凄まじさを話だけとはいえ聞けばこんなことをするとは思えない。まあ、それもあくまでもこっちの反論の否定材料はうわさ話だけとあちらも理解しているようで笑みをすぐに戻す。
「まあ、いいでしょう。その真偽は我が腕前を見てもらえれば問題ない。さて・・・ではしばらくこの茶番に付き合ってもらいましょうか」
「抜かせ、外道がよ。おいマシュ、藤丸、小太郎。そこの段蔵は任せた」
「拙僧もこのリンボとやらを相手する。流石にいかな宝蔵院の槍とはいえ、種子島に爆破への対応よりは妖術師のほうが殺しやすいのでなあ!!」
「武蔵ちゃん。私等は」
「ええ。背後は、段蔵ちゃんは藤丸たちに任せるわ。わたしたちは眼の前の外道をたたっ斬る!」
「あ、あぁああ・・・! わ、ワタシ・・・わたし、、は・・・! そのように、すべて、仕込まれていた・・・もう、申し訳在りません皆様・・・か、身体が止まらない・・・思考が・・・止めたいのに・・・心が、そう思っているはずなのに・・・!」
背後では既にマシュと藤丸、小太郎で身体が勝手に動いて攻撃をし始めている段蔵を相手している。おそらく、朽ちていたという四肢と外装を修理する際に起動すれば段蔵の意思とは関係なく動くように術式を仕込んでいたのだろう。
壊した頭脳の方も、その際には身体の主導権を奪いつつも意識は残す、壊しきらなかったことで絶望のまま仲間のための、風魔のための技術が今見方に牙を剥く様を当人としてみる。悪趣味だ。本当に。
「マシュ。小太郎。盾と、レイヴンの組み合わせで戦うけど、いい?」
「もちろんです。先輩の援護射撃は頼りになりますし。段蔵さん。何の気兼ねなく。貴女の技量を見せてください。ちゃんと対処して、その間にリンボはみなさんが倒してくれます!」
「ええ。段蔵殿。僕たちが貴女を止めてみせます。だから、見ていてください。貴女の鍛えた、愛した風魔の忍術を。貴女が信じだカルデアの戦士の強さを!」
いざ、このふざけた妖怪騒ぎの元凶の一人とその被害者を止めるときだ!
クライマックスですねー。というかリンボもとい道満。段蔵ちゃんとカリオストロに脳みそクチュクチュ仕込んだ挙げ句に藤丸にもイドの仕込みをしたリトでどんだけ人を改造して悪意を乗せるの大好きなんですかね。