転生愉悦部の徒然日記 作:零課
~カルデア~
華奈「・・・」(下総の映像を見ている)
ロマニ「どうしたの? 華奈」
華奈「ふーむ・・・特異点。その差異はまあ、良いとして・・・その差異を利用してこの状況を作る。並行世界を選別してここへも被害を与えられる手段がある??
・・・・・失礼」
ダ・ヴィンチ「まあ、おっかない話ではある。君も参戦しに行くのかい?」
華奈「まさか、あのメンバーがいれば問題ないですよ。私は帰りを待ちます。ただ、少し休憩がてら手入れをするだけですよ」
「半年前、ふらりと私と武蔵は出会い、そして刃を交わした。その際に、ほんの短い間であったが私の皮は剥ぎ取られた。家光公への忠義も、我が剣の流派も、家のことも、何もかもがどうでも良いと思えた。消え失せたのだ。
後はなんとも容易いもの。ただ一匹の獣、剣鬼がこの世に残ったというだけよ」
「私が・・・あそこで誘って、剣を交えたせいで・・・そうなった。この惨劇も、私が剣を抜かせなければ・・・」
なんともはや。まるで大きな雪崩が起きるそのきっかけは些細なもの。ただ二人の戦士が戦った。おそらく時間も数分ほどであろうその戦いがこの下総を地獄に変えた一旦。元凶の一つ。
流石にこれを予想はできない。武蔵ちゃんも流石に沈痛な面持ちと、普段の飄々とした振る舞いもできない。いくらなんでも、この被害を見て、惨劇を見ては。
「馬鹿を言うな新免武蔵。これは私の本性。柳生但馬守という男の理性の奥にある本当の目的というだけよ。だからこそ、我が御留流の刃を見せて返礼としている。
どれだけ高説を重ねようとも人殺しの技術。そこに愉悦など無いと考えていた。だが、あの戦いでその生死の刹那が溶け合う感覚に、技術をまんべんなく振るえる愉悦。ああ、これが本当の切合か、これが戦い、剣豪を相手にするという本当にことかと。
故に・・・剣鬼となっても尚、貴様と私どちらが強いかを確かめるために来た。さあ、立ち会え! 新免武蔵よ! 二天一流。数多の豪傑との戦いであの時より更に磨かれた絶技で私を殺してみよ!」
破顔している。本当に楽しい瞬間が、待ち望んだ瞬間が今ここにあるのだと心底伝えつつ剣を抜いて一歩前に出る柳生殿。
本気だ。わたしたちの知り得ないことがきっかけで起きたこの立会。剣豪同士の、文字通り逃げられるものではない。
「・・・・・・そのためだけに、この非道を・・・?」
「ええ、そうね。『そのためだけ』傍から見ればちっぽけなもの。だけど・・・どんなに非道でも、外道でも私は但馬殿を責められない。その心が分かってしまうから。
カルデアには剣を楽しんで私の先を既に手にして、そして世を守る、人を守る、魔を、国を守るために戦った華奈さん。信仰のあり方を守るために、翁としての掟を守るために在り続ける初代翁殿。どの方も何かを守るために剣をふるい、楽しみ、愉悦のために剣を振るうことは殺生を伴うことはない。
だから、一層にこの悪逆を成してでも立ち会いを求めるのはおかしいでしょう。でも・・・それでもわかる」
藤丸にマシュにはたしかにそうだろう。10代半ばに神仙術の縮地と武蔵ちゃんが漸く掴んだ概念を切るという剣術の極みを手にして、その先は守りたいもののために戦い続けた華奈という母にして師匠。彼女を見ているからこそその対極のあり方を見せる柳生殿、それを否定できない武蔵ちゃんは。異常だろう。
「私も剣士だから。我を煮詰めて、突き詰めた人間だから。強者と戦いたい! 真剣勝負で切磋琢磨をして一人では届かぬ高みを目指していつか届くと信じて!
剣神とは言わずとも剣聖、いやさ眼の前にあるものをつかみ取って死にたい! だからこそ。こうしてここにいる! その勝負。受けて立つ但馬のじいさま!」
「武蔵さん・・・」
「・・・分かった。僕らは上に行こう。マシュ。みんな。柳生殿が武蔵ちゃんとの戦いがしたい。それだけが目的なら、その間に僕らは上で清姫様を生贄にしようとしている相手を止めよう。
だから・・・元さん。武蔵ちゃん。負けないでね! 行こう。マシュ!」
「先輩・・・はい! 武蔵さん。ご武運を!」
華奈のような戦士、防人の類ではなく武蔵ちゃんや柳生殿は求道者。道を求める。極めるもの。そのためなら時には非道をも飲み込める。だけど、そのあり方も基本は人を守りつつ自分を高めていたからだろう。藤丸もマシュも認めて、みんなも先に登ってくれた。
あとは残るのはこの三人。私と武蔵ちゃんと、柳生殿だ。
「元。何で残ったの?」
「剣豪同士の戦い。いくらなんでもありとはいえ見届人は必要でしょう。それに武蔵ちゃんは大事な人だし仲間だ。生きてカルデアに戻ってもらう。だから勝ってきて、その傷を治させて欲しい。絶対に死なせやしない」
「・・・そう。じゃあ、この後にご褒美の方を私は頼むから。見届人よろしく。さあ、行くわよ但馬のじいさま。柳生新陰なにするものぞ! 月影ごと切り捨ててくれるわ!」
互いにまた一歩近づき、そして、切合が始まった。
「ふっ・・・」
「しっ!」
武蔵ちゃんと柳生殿の立会は、今までのどの英霊剣豪との戦いとも違う。異色であるのにかかわらず王道。私のよく知る剣術勝負といったところになる。
ただしその切合の速度や剣戟の激しさは今までよりも別物。鋭く重く、そして互いの太刀が見えないときすらもある神速の勝負。
ひたすらに合理を極めた剣術には隙がなく、あらゆる動きを想定した型を実戦でそのまま繰り出し、使えるのは恐ろしいとしかいえない。
「はぁっ!」
「むん!」
ただ、武蔵ちゃんも負けてはない。アメリカから華奈に鍛えられ、実戦経験を積んで、英霊剣豪たちとの死闘。早く鋭く、そして自由な剣術と時には組み術は打撃も使う相手との経験がここでも生きるようで最短最速で飛んでくる剣戟を確かに捉え、躱し、いなす。
実戦剣術の極みと型を極めた合理の剣術の極み。
「くっ・・・!」
しかし恐ろしいのは柳生殿とその剣術。数千数百という剣筋への対応をものとして、後の先、先の後と相手の行動に合わせて最適解を常に動かしていく。
二天一流の相手との力量を埋め合わせて動く最適解。ある意味野生の勘。武蔵ちゃんの天性の武器といってもいい太刀筋ですらも対応して逆に一手一手詰将棋のように押し込む。
二刀流の手数を活かして刃を差し込んで茶を濁すような形で切合から距離を取るも気がつけばすぐに間合い。息のつく暇もない戦いとはこのことか。
「はあぁああっ!」
「むっ・・・く・・・!」
ただ、武蔵ちゃんも負けてはいない。押し込まれて入る。だけど王手は、致命的な一手は打たせない。その攻撃をしのげるほどの剛力、崩れた姿勢からでも立て直して、攻撃を仕込める速さ。日々の鍛錬。そしてカルデア屈指の剣豪にして最近では最も意味不明な戦いもできる戦士との経験があって合理の連撃に食い下がり、抗える。
負けるものかという気炎が火を吹く戦い。
お互いに譲らず。だけどいつ勝負がついてもおかしくないというのが常に続いていく気の狂うような千日手。
一瞬一瞬で勝負の天秤が交互に傾くメトロノームのように揺れるシーソーバトル。
時折武蔵ちゃんに回復の術式をかけていくが、それでも目が離せない、時折呼吸が止まるほどだ。永劫と思える。だけどほんの一瞬かもしれない。そんな時間が続いてしばらく。体内時計の感覚が狂っていたときだ。
武蔵ちゃんの一撃が、柳生殿を切り裂いた。あらゆる剣術の型を使いこなせる合理と計算の剣鬼を、ねじ伏せたのだ。
「・・・・・・無念・・・我が刃、貴様に届かなんだか」
「いえ・・・貴方には私一人では届かなかった。貴方はやはり極みへ至った剣神よ。助けが在り、師があり、そして・・・仲間がいたからこそ。勝てた」
「そうか・・・ああ・・・悔しいが、しかし・・・大変、愉しいものであった・・・三厳め。このような心地で剣を振るっていたとは・・・上達もするはずだ・・・良き切合・・・感謝する・・・」
負けたというのにまるで楽しみ倒した遊びの余韻を噛みしめるような顔で息絶える柳生殿。これだけの悪行を尽くしてまで戦えたこの一戦。きっとそれほどに、楽しかったのだろう。
「武蔵ちゃん大丈夫?」
フラフラと倒れそうな武蔵ちゃんを支えつつ、回復魔術で傷と疲労を取り除いていく。
「いやはは・・・流石に、あのじいさま相手では疲労が来るわね・・・どっと来て・・・・!」
武蔵ちゃんも強敵を倒せたことに安堵するが、同時に上で感じる魔力の気配。戦闘が始まったのだろうか。
まだ終わらない。下総の騒動を引き起こしまだこの世界を魔界のように変えようとするやつを倒さないといけない。
「行くしか無いか・・・! いこう」
「ええ! 更に首級をあげて、元からの、マスターからのご褒美と頼みごとを積むためにもね♪」
やれやれさっきまでの疲労はどこへやら。でも頼もしい。これが最後になることを願い私達も階段を駆け上がる。
「っぐ・・・! この・・・怒りも道理わからぬ小娘、小僧共が! しかしまあ・・・よい」
上階で待っていた妖術師なる人物。下総を地獄にしようとしていたのは天草四郎なる人物。しかも、平行世界を渡り歩きここにたどり着いたという、アルトリアや武蔵ちゃんとの同類の人物だった。
彼はあの島原の乱を起こして地獄を味わった人物。なるほど。この下総を、徳川の世を終わらせてしまおうと動くのも納得してしまう人物というもの。英霊剣豪の宿業なしでもきっと何かあればそうなりかねないと思える悲劇があそこにはあったから。
しかも時期的にはちょうどその島原の乱が終わった後のこの特異点。何もかもが揃っていると言えるもの。
「ここまで食い下がられて、怒りも抑えきれぬ。英霊も守護者ももう遅い、遅きに失したわ! 我が慟哭、甘受せよ! 固有結界・島原地獄絵巻!」
私達で対処しようにも既にここは敵地の奥。本拠地。備えていたであろう防御結界で攻撃を防ぎつつ天草が展開した固有結界に私達は飲まれていった。
そこは、黒煙と業火渦巻く灼熱地獄。なぜそこに草木があるのか、燃えているのがあるかもわからぬほどのもの。
辺りは常にモヤと煙と炎。肌で感じる。この空気自体が普通なら毒だ。ロンドンでの対毒対策礼装を更にウルクの神代の環境に強化した礼装がなければ英霊でない私や藤丸、武蔵ちゃんはあっという間に苦しんで死に絶える地獄そのものだと。
目標は違いますけど、キングダムの龐煖を思い出しましたここらへんの武蔵ちゃんや柳生殿を見て。
華奈「ストーム、プロフェッサー様。少し頼みたいことが」
ストーム1「問題ないけど、何をするんで藪から棒に」
プロフェッサー「一応頼みのものは用意したが、シミュレーションシステムの方で呼び出したこのビークル。そして、バルガシリーズにバラムを」
華奈「それらは量産機ですしねえ。ちょうどいいので今のうちにゲッターに喰わせておきます」