転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「やあ、少し話をいいかな。ラヴィニアちゃん」
「あ、あなた・・・は・・・」
「さっきも見ていたよね。海辺の方を」
ラヴィニア・ウェイトリー。彼女の方は常に私達を見ていた。同時にだがその視線の類も町のみんなのそれとは少し違っていた。
恐れや不安、訝しむようなそれではなく。いやそれもあるだろう。だけどそれ以上に観察する。調べると言ったまるで調査のような感覚を覚えた。
きっと何かを感じているのかもしれない。外なる神という彼女の祖父の言っていた言葉に、錬金術師の系譜を継ぐ家。もしかすれば。そう思って声をかけたのだ。
「あ・・・う・・・え、と」
「私は何もしない。ただ、できれば相談をしたい。今のこのセイレムの異常さを解決するために。アビーの悩みを解決するためにも。ね」
「・・・ぅ・・・うぅ・・・・・・」
しばしの葛藤。その思考は長く及び、煩悶した後に、何かを覚悟したか。口を開いた。
「・・・カーターは・・・?」
「今はマシュと藤丸、メディアがお芝居の練習をしつつ監視をしている。だから、何かあればすぐに教えるよ」
「わかった・・・あたしたちウェイトリー家は魔神柱に運ばれて、脅迫されていたの・・・このセイレムが本来、いるべき場所でないことは、分かっていた。時代も食い違っていた、し。
で、でも・・・魔神柱によって、外部には逃げることが、できなかった・・・一族もろとも、魔神柱の囚われになっていたから・・・わたしの両親、も・・・おじい様も・・・うぅ・・・」
嗚咽と恐怖が交じる顔。相当な扱いを受けていたか、あるいはそれほどの・・・いや、そうだ。普通はあんなの怖くてたまらないはずだ。異形の怪物。醜悪の一つの形と言ってもいいほどの相手なのだから。
「それで、魔神柱が現れて命令をするときは、蠢く黒い柱のような、濡れ羽の塊のような、異形の怪物の姿で・・・」
「ふむ・・・それで、君たちは何をするように・・・?」
魔神柱は、今まで特異点で姿を表す際は何かしらの手下になり得る英霊たちを用意していた。今回の場合は英霊ではなく一般人・・・ではないが英霊ではない魔術師の一族。
外なる神と呼ばれるものを扱うそうだが、その知識を借りようとしたのか?
「なにも・・・ただ、成すべきことを成せ・・・と。ウェイトリー家は、代々、錬金術師の家系・・・あたしたちの一族の悲願は外なる神が御臨終成されること・・・一族以外には秘匿されていたことを、何故か魔神柱は知っていた・・・」
「なるほど・・・いや・・・しかし・・・うーむ・・・」
アメリカの遠い魔術師の系譜の悲願を知り、そのうえでその知識を利用して動かそうとしていた。ソロモン72柱の魔神。その知識で思い当たる連中を呼んだか。だとして、それを持って、外なる神という連中を呼ぶことを悲願とする一族をどう利用するのだ?
その長老たる人物も、弟子であり後継者であるラヴィニアちゃんの両親も既に絞首刑にされた。用意は終わったのか?
「ありがとう・・・なんとなく想像はついた。そのうえで、聞きたい。キミは・・・どうしたい? キミを大事に思う友達が苦しむこの魔女裁判を。君の一族を囚え、苦しめた元凶の作るこの仮初の場所を。壊したい?」
「もちろん・・・でも、できる気が・・・しない・・・」
「いや、できる。僕たちと君がいればきっと。アイツラとは何度も相手に・・・!」
なるほど。合点がいった。魔神柱は、魔神柱である限りカルデアに対処ができないと考えたのかもしれない。
たとえ神霊に近い出力とパワーを持ってもその怪物に比較できるような怪物、その手したと言える怪生物やメカを叩き潰してきたストーム1、そしてビースト、魔神王ゲーティアにティアマトとあの規格外のさらなる規格外と言えるような存在も対処策を打ってきた華奈。
あのコンビがいる限り、そしてカルデアという英霊と知識の集う場所では地球にいる神々や怪物では対処が厳しい。実際に原初の母とも真っ向から殴り合うことができたほどだ。なら、たとえストーム1、ストームチームの特攻範囲に入るとしても華奈の知識の知り得ない範囲かもしれない外なる神を利用することを選んだ?
ただ、その儀式はできる限りバレないように、あるいは完全に呼び出してフルパワーを振るえるようにするためにこのような念入りかつイレギュラーなものにしたのかもしれない。
「ほん、とうなの? あの怪物を・・・?」
「ああ、それに、もしこの状況を壊せば私達の中でも一番イカれているけど、頼りになる戦士たちもこられる様になる。だから、協力してくれないかな」
「分かった・・・それなら、外なる神のことも教える・・・外なる神は・・・大いなる・・・門と鍵、であせられる。六つの扉は上下、左右、前後のあらゆる空間を意味して、いる。決して光届かぬ、あたしたちの宇宙の外側。窮極の門、の彼方に、鎮座なさっている。それでいながらあらゆる空間と隣り合い、全てと、繋がり合っている。全にして一、一にして全なる者。と・・・」
全にして一、一にして全なる者。か・・・あらゆる空間と繋がり合う・・・まてよ・・・なるほど。これは確かに・・・危険だし、魔神柱も欲しがるわけだ。なにせ、それを利用できれば最初から人理焼却からの運河逆行。ゲーティアの計画もすべて早く終えることができているはずの存在だから。
「さて・・・今回の被告、マタ・ハリよ。貴様についての罪だが・・・」
「待ってください判事。この裁判について、私ともう一人参考人を追加したうえで裁判をしたいです。公平で厳格な裁判をするためにも」
夜、またもや行われる裁判。今回の相手はマタ・ハリ。おそらくだが・・・その美貌を持つけども多くの男性のお誘いを断っていたことからの私怨も混んで人をたぶらかす魔女という体で裁判にかけられることになったか。
ただ、その早急な裁判の中で私以外で第三者をいれることを申し出た。
「ほう。参考人を。か。判事。彼らはこの町にとってはよそ者だが、それ故に誠実に努力して良き隣人として演劇で皆を元気づけようとした。神の慈悲。そして魔女という存在をより確かに見抜くためにも良いと思えるが」
「ふむ・・・わかりました・・・では。元。その参考人を前に」
「ええ。では。ラヴィニア・ウェイトリー。お願いします」
私の言葉と同時に即席裁判所となっている教会に現れるラヴィニアちゃん。その存在に。この中では異端の一族の出現に場がざわつく。
「な・・・元。貴様は彼女を呼んで一体何を・・・」
「魔女を裁こうとしている邪なる存在を皆様のもとに晒そうかと思いまして。ラヴィニアちゃん!」
「れ、霊体を物質化するイブン・グハジの粉末よ! そして、ゾンビの、グールを割り出す呪術の粉末よ。この裁判劇を壊してしまいなさい! 元さんや、み、みんなは正直にしているのに、マスクをつけて、嘘を振る舞うのは、良くないわよね?」
ラヴィニアちゃんの一族の作れる粉末と、カルデアの中で魔、ゴースト系のエネミー対策で仮拠点に振りまく錬金術の魔除けの効果を持つ粉末を振りまけば、途端に私達以外の住人が苦しみだしたと思えば、その本来の姿になる。
ランドルフ・カーターは、いや魔神柱はカラスの頭を持つ人間との異形となり、町の住人全てはグールの本性を出す。あの夜の襲撃の際に得た情報をもとに調べればというが、まさかここまですべて死者の存在で作られていた魔女狩りの町とは。笑えない冗談だ。
「ウェイトリィイイ・・・・」
「ふん。こんな化け物がアビゲイルのおじさんとか、仮にも私の主人だったとかたちの悪い冗談よ」
「ああ、いやはや灯台下暗し。最初から私達を監視下におきつつ一人ひとりを絞首刑にしようとしていたとは」
教会の扉を蹴破って入ってくるメドゥーサ、そして魔術結界を展開していくキルケー。
「さあ、マスターにみんな。最早セイレムの町。という虚構の部隊は崩れ、魔を持って悪さをなそうとしていた魔女狩りをしていた奴らがその魔女よりもたちが悪いと白日のもとにさらされた。もはや私達をこの町に縛り付けることは出来ない。
思い切り暴れられるはずだよ」
「あ・・・ええ。力が戻ってくる! 本来の出力で行けるわ!」
「あ、え・・・そ、そん・・・ティテュバ? それに、ラヴィニア・・な、なん・・・おじさまも・・・」
「ふん・・・ああ・・・そうだよアビー。これは君のためにすべて用意したもの。そして、魔女裁判の痛みを知る者たち。何より・・・君がこうしたのだ」
グールの群れを本来の出力で薙ぎ払う中、唐突に世界がひっくり返るような衝撃に困惑するアビゲイル。一方でエレシュキガルは特に強く戦える。
「ここが最早死者の国というような状況なら、私の力が存分に振るえる!」
「ふん。まだ人の姿と言葉を吐くのね。それなら・・・コイツラで相手してもらうわよ!」
生者がまるでいない状況。死者の徘徊するような場所ならそこは即ち冥界。冥界の中でなら全能を振るえると自分のルールを当てつけて暴れるエレシュキガルに、まだ人のふりをしようとしている奴らにメドゥーサがラヴィニアを守りつつその短剣、魔獣の祖、怪物の父となる物の名前を持つ。
メドゥーサの血から生まれたとされるクリューサーオールで斬り伏せ、そして召喚される魔獣たちによってその本性が暴かれてしまい、喰われ、焼かれて最早裁判も何も無い。
裁くべき立場をごまかしていた彼らはその嘘のつけを払うことになったともいえるか。あるいは魔神柱に呼び寄せられて、囚われてこうするほかなかった反省していないのか。まあ、何にせよねじ伏せるのみだ。
「ふん。まあ、不完全といえども一度門を開けば冥界だろうと審判の日の場であろうとも、かの神は現れる。さあ、アビゲイル。かの魔女裁判を起こした元凶よ。その身に。降ろすが良い」
「え、あ・・・わた、私が・・・この状況を!? うそ、あのおまじないが・・・そんな・・・あぁあ・・・・!」
「アビーさん!」
マシュが手を伸ばして魔神柱からアビゲイルを抱き寄せて引き離すも、既に遅いか。アビーの体には途方もない魔力と存在が入り込み、融合しようとしている。オジマンディアスがラーをその肉体に降ろしたような感覚だが、感じるおぞましさが段違いだ。
「カルデアよ。彼女を。姪を。アビーを返してもらおう。彼女は私にとって大事な姪であり、我らが宿願を叶えるべき存在なのだから」
「こんな悪辣な環境を用意するやつのもとにアビーは渡せない」
「そのとおりです! こんな魔女裁判。その悲劇もこれ以上演じさせないですよ魔神柱!」
「魔神柱ラウム。ここで仕留めきる!」
そして、何の感情かは知らないがアビーを求める本性を表して肉の柱となった魔神柱ラウム。こんなろくでもないことをしてくれたやつへの落とし前をつけなければいけない。
「私は雑魚どもを抑えるから、アイツラは頼んだわよ」
「ふふふ。大変興味深い術式を見せてくれたお礼だ。ブタにして殺してやろう」
メドゥーサは魔獣たちとグールを相手して、キルケーは教会に魔術結界や支援を始めて私達に力をくれる。
「少し手を貸すわ。メドゥーサさん。あなたには料理のお礼もあるし」
「そう? ま、助かるしお願い」
マタ・ハリは私が渡していたEDFの支援兵装のショートセイバー。光の刃を高速で振り回しその範囲内にいるグールたちを豆腐のように切り捨てていく。
「あぁあああ!」
「はぁっ!」
魔神柱の放つ魔力の爆炎もエレシュキガルのやりの太陽の炎熱によって相殺。そこから槍檻とトリケラトプスの頭蓋骨が雨あられと飛んできて魔神柱を穿つ。
「再生はさせません!」
「援護するよ!」
盾を椅子の前において即席の壁代わりにしつつ片手でショットガンのフラクチャーを。藤丸はハーキュリーで再生していく魔神柱の傷口を狙い再生を阻んでゆく。
魔神柱という大物である存在だが今この場はキルケーの領域であり、そして死者はびこる場所という冥界のような場所ならエレシュキガルの自分ルールをぶち込める場所にしやすい。
いくら魔神柱が強かろうとも、その魔神柱たちと戦ってきたのが私達だ。
「「ガンド!」」
「ぐっくぅう・・・ぉおおお・・・!!」
「手は離せないけど、こっちをあげる!」
藤丸とのガンドでラウムの動きをある程度にぶらせてエレシュキガルとマシュのラッシュの手助けをするけど、それでもまだ不完全に動きを止めきれていない部分で攻撃しようとしているラウムにマタ・ハリに渡していたアタッシュケースを少し小さくした箱。それをいくつか投げてスイッチオン。
セントリーガン。ZEブラスターを放つ。レーザー光線を放ち、その殲滅力はストーム1もプロエッサーも認める一級品。故に、その危険度から用意するのは少し相談されたが持ち込んだ甲斐はある。なにせ魔神柱相手にも通用して肉を焼き焦がす。
「助かるぞマタ・ハリ。やぁあああ!!」
その間に哪吒が上空に跳び脚に炎をまとっての蹴り。矛での乱舞をラウムに見舞い、切り刻み、焼き尽くす。
「ぐがっあああぁああがぁああ!!」
「火力集中! 一斉掃射!」
たとえ魔神柱でも、手数の多さと自分の取り巻きや護衛となる存在が弱いグールだけ。アビーの方はまだ動けないらしいのも相まって思い切り叩き潰せる。
「がふ・・・うごぉお・・・あびー・・・アビ、ゲイル・・・」
この攻撃でラウムは全身血まみれの頭はカラス人間に戻り、魔力量も大幅に減少。後もう一息。これを終えれば・・・後はアビーの方に降りつつある神をどうにかしなければ。
華奈がもしこの状況になったら下手するとスパモン(空飛ぶスパゲッティモンスター)を召喚して触手と麺が絡み合う海鮮和風パスタなバトルになっていました。そしてアビーとラヴィニアはパスタと触手プレイでお腹いっぱいご飯を食べさせられる。