転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「ほへぇー・・・熱いねえ・・・流石にこの暑さは」
「ですね・・・今までの特異点の中でもそうそう感じたことがないほどの日差しです・・・」
あれから神殿の探索と襲来する新選組もどきたちを撃退していたけど、その間ずっと日差しがとても強かった。アスファルトの強烈な照り返しとか熱を溜め込むものに比べるとずっと涼しく過ごしやすい邪馬台国。の時代の日本だけどそれでも汗を掻く。
それによっていくら肥料や水をいいものにしても暑さのあまりに稲も弱っている。気温いくつだろう・・・
「大丈夫? 弟さん。はい。どうぞ」
「おぉー・・・助かります・・・ほふぅー・・・」
水をぶっかけて卑弥呼の弟さんの甲羅や体を冷やして、専用の小さな帽子をかぶせておく。どうやら元現地人? の弟さんでもきついようだし相当だなあ。
「これでは稲が弱りそうですし・・・どうしましょう」
とはいえ、今はカルデアと通信もまだできないし、たとえ呼べたとしても流石の銀嶺帯でも天候操作は・・・ハジケモードの華奈さんならできそうだけど・・・田んぼの水を冷却したりとかできればいいのになあ。
ひとまず、食事の方針とかをどうしようか卑弥呼たちに相談しに行くかあ・・・
「ふーむ・・・この日差しも、凶つ闇、ないし神の影響としたばあい、やはり壱与と芹沢さんを叩くほかないでしょう。根拠地などに心当たりはないですか?」
「そうねえ。壱与を名乗っているのなら私の後継者としての意味合いも兼ねてあたしがいた神殿じゃないかしら?」
藤丸たちの話を聞いてとりあえず襲撃の方を早めていくかとなり、みんなで相談していく。そしてまあ、当然信勝の方は逸るわけで。
「なら早く行こう!」
「んーでもあたしの神殿は見たけど、例の凶つ闇がすごく濃く、強く渦巻いていてとてもじゃないけど近寄れないわね。最低でもあたしと同じ鬼道の使い手か、似たような技術を使える人がいないと。ね」
「そんなあ・・・」
「私の方も魔除けなどの魔術はあるけどあれは最早ちょっとした神霊レベル・・・どうしたものかしら」
「ウィー・・・そんならまた周りの神殿を壊す他無いじゃろ」
「ですね。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。といいますしこういうときこそ焦らずです。うーむ。今日は塩が美味しいですねえ」
「卑弥呼ちゃんでもできないかあ。謙信の言うことが妥当かねえ」
「あー岡田くんまたお酒のんでー! ご飯も食べないとだめだよ謙信ちゃんも! にしても・・・まあ、この日差しの方はあの闇の影響ってよりは、シンプルに日照りって感じでしょうけど」
「いや、それで稲が弱っているのは大変じゃないの卑弥呼?」
なんというか、やっぱりコツコツと動くほかないのかあと思うのと、この面々日照りの中でも酒とつまみがあればいいという感じかつ朗らかだから藤丸たちも変に緊張感が抜けていると言うか。
とりあえず、田んぼの水を増やすかしばらくは狩猟や海での魚と貝を取ることで米の不足分を補うか。そう考えていれば民衆のみなさんが。
「卑弥呼様・・・ここ数日の日照りで稲が弱っています・・・」
「どうか、雨を降らせてくれないでしょうか」
ふむ。藤丸たちの不安は民衆のみんなも感じていたようだね。
「あー分かったわ。じゃ、少し待ってね? ・・・・・・・・・・・」
「え? 眠り始めていませんか?」
「というか、こいつ今しれっとお天道様をどうにかするといいよったが、ほんにできるもんか?」
サラッと雨乞いの頼みを応えてくれる卑弥呼はいきなり目を閉じて眠り始めた? が、弟さんは気にしていない。
「現役時代は威厳が損なわれるので神殿の奥でしていましたが、これが姉上の祈祷なのです。それで託宣を受けるときはこうしていまして」
んー所謂一種のトランス状態。というよりは意識を深く沈めて神の声を聞くようにしている感じだろうか? 思えば巫女や神職に関わる英霊はそこそこいたけどこういう場面を見るのは殆どなかったかも。
「・・・・・・! よし。明日はみんなで浜辺で遊びましょうか!」
「ええっ!? いやいや、雨がどうこうとかの話だったのでは?」
「いいのいいの。こういうのは思い切り楽しみにしていた方が良いし」
ど、どういうことだろうか? みんながみんな頭に疑問を浮かべるばかりだ。
「何を訳のわからないことを言っているんだよ! そんなことをしている場合じゃないだろ!」
「うーん? まあ、卑弥呼を信じる他無いかあ。僕は見回り行ってくるよ」
「なんというか、まあ、今は信じる他無いわね」
卑弥呼の託宣から翌日、夜明けからずっと大粒の雨がザーザーと心地よく降り注ぐ。大雨というわけではないが、日差しを塞ぎ、熱くなり続けていた大地と水を冷やすにはちょうどいい。
「先輩! 雨が・・・!」
「降っていますね・・・」
「あちゃー・・・やっぱりこうなったかあ・・・」
ただまあ、心底遊びを楽しみにしていた卑弥呼は少ししょぼくれているけど。隣でみんなもどういうことだろうかと首を傾げる始末。
「はははは。姉上は昔から大事な用事を立てた日はよく雨に降られまして。しかも遊びの予定となればなおさら」
「すっごい体質だねえそれは。まあまあ卑弥呼。お弁当はちゃんとあるし、ご飯は楽しもうね?」
なるほど。そのうえで託宣で神様から遊びに行く予定を立てれば雨来るかもね。ってことなのか。落ち込む卑弥呼にも一応弁当は作っているので、まあ食事で気分を治してもらおう。
民衆のみんなも喜んでいるし、うん。良かった。
「それじゃあ、遊びに行く予定は潰れたけど代わりに神殿の方の攻略をいきましょうかねえ。せっかくの弁当もあるし」
一さんの言葉にみんなうなづく。そのほうがきっと気晴らしにもなる。
「そうね。遊びに行けなかった分の鬱憤は神殿と埴輪にぶつけるわよ! 体動かしたほうが御飯も美味しいし!」
「まあ、とりあえずそこの話はみんな家の方で話そう。風邪を引いちゃうよ」
とりあえず屋敷に戻り話そう。あそこは雨漏りもないし。
「じゃあ、今回は神殿の方には僕と、先生。そして元と卑弥呼。エレナ。それと沖田ちゃんでいく?」
「はい。新選組もどきたちの警戒もしたいですし」
「私も先輩と一緒に残ろうかと」
今回の場合は戦力を多く。というわけではなく二分して新選組もどきたちに対する防御も残しておくことに。大真面目に、そこそこ強く数もいる彼らは油断できない戦力だし。
「私と信勝殿もここを守ろうかと」
「では此度は私は残ります。あの新選組もどきとやらが来るかもしれませんしちょうどよいのでここの村の者から兵士になれるものを募り調練をしておくべきかと」
「確かに。防御柵や逆茂木を用意しても、そこに矢を射かけたり石を投げる人がいるだけでも違う」
「それと以蔵は・・・あら? 今日はいないのね。どこ行ったのかしら」
「さっき神殿の場所を話すまではいた気がするけど・・・酒でも貰いに行ったかな?」
「まあ、あいつは置いておきましょう。とりあえず私達で次の神殿を攻略しにいきましょう」
話はまとまった。そこも踏まえて善は急げ。雨が強くなる前に動くべきだろう。
「ところでお前の姉上って本当に女王だったのか? そんな風には見えないけど」
雨が降り続く中、その音を聞きながら邪馬台国に居残り組の僕らはふと信勝のそんな話が始まった。
「ははっ、これは手厳しい。たしかに私の姉上はあの通りの方ですからなあ」
「ですが、とても優しく人のために怒ることもできるし行動もすれば能力もある。まさしく国を治める人にふさわしいかと」
「ありがとうございますマシュ殿。ですが、姉上もなりたくて女王になったわけではありませんから・・・」
「どういうこと?」
なんとなく感じてはいたけど、そこも触れるのね。そう思いながらもつい口から出てしまった。信勝の方も、なんでだと気にしている。
「その昔、この地の民は木の実の採取や狩猟でその日暮らしをするのに精一杯でした。いつ飢えるかもしれないという不安と戦いながらそれでも必死に毎日生きるしかなったのです。ですが、ある時に外つ国から米が伝わりました。やがて我々も米を育てられるようになり飢えに怯えることが減っていったのです。
我々は豊かに。そう・・・豊かになったのです・・・すると、どうなったと思いますか?」
「どうなったって・・・良かったじゃないか」
「いや・・・多分それは違うよ信勝」
「何でだよ姉上のマスター。豊かになったのだろ?」
「豊かになったのはいい。だけど、それって・・・お米がたくさんある。信勝の時代でもお金代わり、年貢に使われる財産でもあるものをたくさんあるって見られると周りはどう思う?」
「・・・!」
日本だと貨幣以外に長く米やその地域の特産品を税金代わりに収めている。というのは僕でも知っている。そのうえで米という保存できるし食べられるものが今までと違いずっとある。お金代わりになる食べ物。それはつまり・・・
「そのとおりです藤丸殿。我々は豊かになった。しかし同時に豊かな我々とそうでない周りの集落。持つものと持たざるもの。裕福、幸福の尺度を米で計れるようになってしまったのです。その結果米を持つものが持たざるものを支配してゆきその土地や米を求めて国同士で争うようになったのです」
「米そのものが貨幣制度や国力、国富の始まりのようなものですし、それを求めて、米をより多く求めて飢えないように、豊かなになりたいという我欲からの土地の奪い合いが始まったのですね・・・」
マシュの言う通り。華奈さんからも貨幣制度、長期保存できる食品や腐らない貨幣は物流の距離を伸ばして集落や村々をつなげることもできたのだろう。だけど、その結果、自分の村のことだけで精一杯だったのに、他の村の豊かさを知るようになれた。
その結果は・・・飢えないために、より豊かになりたいという我欲での争いか・・・
「そんな・・・それなら僕らの時代とまるで変わらない・・・」
「まだ宗派に関しての争いがないだけましかもだけど・・・本当に変わらないのかもね」
「聞くところによると信勝殿の時代も争いが絶えなかったとか。人の性。なのでしょうな。ですが長く争い続けているなかで疲弊した我らは救いを求めました。人ではない。神の如き力を持つものを求めたのです。それが姉上でした」
「・・・・・・」
「姉上は小さい頃から遠くから声を聞こえていることをこっそりと教えてくれていました。それこそ明日の天気から戦の行方まで未来を見ているようなものです。とはいえ、それを姉上は私以外に誰も教えるわけでもなく、仲よく我らは暮らしていました。
・・・しかし、ある日、昨日のように日照りが続いている中で私はうっかりと周りに姉上の力のことを話してしまった。あとはもうあれよあれよと姉上は女王に祭り上げられてしまいました」
それが邪馬台国女王卑弥呼の誕生。か。救いを求めた結果、ある意味ではそれは・・・人身御供とも言えるのかもしれない。漫画で見たことあるあの振る舞いじゃなければ救いはあるかもだけど。
「実際に姉上の託宣は神の如きもので争いでも災害でもたちどころに対処の術を伝える。そこからは皆があれこれと皆が姉上を崇めて邪馬台国はまとまり争いのない国となったのです。私もそれで良かったと思いました」
「争いのない平和な国・・・」
「すごく理想的ではあるけど・・・でも、卑弥呼の方は女王として思うことはなかったの?」
「・・・本当に鋭いですな。藤丸殿は。ええ。私も最初はそれで良かったと思っていました。ですがある日神殿でひとり祈る姉上を見て思ったのです。ああ、私はなんということをしてしまったのかと」
「・・・それは、卑弥呼さんを一人の女性から隔絶した女王としてのあり方を押し付けてしまったこと。ですか?」
「・・・・・・・・っ!」
マシュの方も・・・うん。そうだよね。義母が華奈さん。円卓の騎士をよく知っているからこそ。僕もなんとなく分かった。王としての装置と期待を押し込めてしまった。それは。似ているんだ。アルトリアさんに。
「女王となってからの姉上はまさしく神のごとく託宣を届けるために生かされ続けるそういうモノとなってしまいました。まさしく国をまとめるための人柱といえばよいでしょうか・・・」
「なんでだよ! そんなに嫌ならやめればいいだろう!」
「私もそういいましたが姉上は笑顔で『みんなが幸せならそれでいいでしょう?』と言ってきたのです。あの優しい姉上を女王という名の人柱に祭り上げてしまったのが私なのです。私が亀の姿になったのも、きっと何かの神罰なのでしょう」
「何でそんな話を・・・」
「ははは。同じ偉大な姉を持つ者同士、似たような境遇なのでついつい話したくなってしまったのです」
「フン。お前なんかと一緒にするな。僕の姉上は凄いんだぞ! お前の姉上と違って弟の僕の力はまるで役に立たないんだ。姉上は、この世にただ『姉上』なんだ!」
あっちゃあー・・・・・まるで反省していないというか、うん。思い至っていない・・・
「それは違うよ信勝」
「何だと!」
「だって、信長も言っていたもの。信勝がいれば比較的相談相手や任せたい場所があったとか、兄貴や一門衆が包囲網で死にまくったあとの一門衆の行動で相談したかったなーって酒を飲みながら言っていたし。信勝の手腕とか頼りにしていたと思う」
「私の方も、騎士王アルトリアさんの義理の姉のお母さんがいましたが。王として振る舞い続ける。常に張り詰めて動き続けるのは疲れる。気を置けない時間。『王として』『戦士として』の時間ではなく『家族として、一個人としての時間』を用意して癒やすのも、愚痴を聞くのも大事。と言っていました。そうやって助け合ったからこそ、穏やかにブリテンは解体して次世代にあの島を託せたと言っていました」
「そういうことです。姉弟というのは助け合うものですからな」
「っ・・・・・・・・!!! ・・・・・」
あー・・・信勝にはこのトリプルパンチは劇薬だったかなあ。でも、真面目に信勝の手腕はかなりいいものだし、本当にそう思っていたかもしれない。そこを考えていてほしいな。信長は、僕らも頑張っていくから。
「あ。先輩! 黒い靄が晴れていきます!」
「元殿たちがやったようですな。これで・・・乗り込めるものです!」
姉妹で仲良くして滅びる中でも血筋や身内を守り残せたり無事に過ごせるようにできたアルトリア姉妹たち。それを見ているとまあ、こういうことを言えるのかなって。
あと真面目に本能寺事件で信長も嫡男も死んだあとに真面目に信勝がいればまだ織田家の方で統治ができたかもしれないですよねーってのは歴史を見ればよく分かる。