転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「ゴボっ・・・かふっ・・・・」
やられた・・・まさか抑止がここまで早く手を回すとは。疫病や大災害、天変地異ではなく英霊を十人以上も用意し、更には軍までも用意、虚報を回して私達を殺しにかかるなんて。
あのマーリンの警告から5ヶ月ほど、危険のラインを私も彼も読み違えたのだろう。
「はぁ・・・っ・・ゴボ・・・っ・・うぁぁ・・・」
臓腑は三分の一を焼かれ、腱も関節も左腕を除いて関節もろとも潰された。毒も打ち込まれて吐き出す息も腐臭が漂う。肺も腐り始めているのだろう。息を吸うだけで喉を割かれるような感覚に陥り、吐くたびに毒と熱で焼かれている思いだ。
周りを見ても私と共に出立した銀嶺、おおよそ2500騎はすべて死に絶えた。抑止も私がもうじき死ぬことで目的を果たして満足したのか、それとも私達とぶつかり、半数は討たれたのでこれ以上は無駄だと判断したのか、残った英霊は皆退去して行った。幸いだろう。アルトリア様、ガウェイン様なら討ち果たすだろうが、それでも相手は遠慮も慈悲もない。被害は間違いなく出る。それもかなりのものが。
「幸いなのは・・・う、ぶっぅ・・・・『あの英霊』を倒せたことでしょうか・・・」
あの英霊は危うすぎた。半神、聖剣、超越的な技量、多様な宝具、誰もが油断の出来ない英霊だった。しかし、あの英霊だけは通してはいけなかった。あれを通せば、最低でも国が一つ、間違いなく滅びただろう。少ない勝機に賭けて挑み、ハチ、花子、栗毛、レギア、イネンナを借りて、彼らの死と自身の無謀な攻撃をもってどうにか討ち果たせた。
「み・・・・な、死んで・・・謝りませんと・・・はぁ・・・約束・・・守れませんでしたし・・・げぉ・・・」
妖精郷に送る約束を果たせなかった、そして、私のせいでついてきてくれた仲間、魔獣達が、副官、家族が死に絶えてしまった。死地を共にし、苦楽を共にした仲間を自身の・・・しかも抑止という訳のわからないもののせいで。
(はぁ・・・それなのに、皆最後まで私に感謝して、笑って逝くのですから・・・大馬鹿者ばかりです)
指揮官としても最悪の結果。撃退はしたが、自分ももうじき死ぬ。後継者はどうするのか、この事を民にどう説明するか。全部アルトリア、ガウェイン達に任せてしまう。これがどうしようもなく情けない。仲間を生かしてやれなかったことが悲しい。思わず負の側面に呑み込まれそうになってしまう。
「大将・・・まだ、生きているか・・・?」
何度も聞いた声だ。何とか頭を動かすと、アンナを抱えながら、ヤマジが向かってきていた。彼自身、腹は裂けて臓腑が飛び出し、毒を貰っているのだろう、顔の所々に醜い膿や斑点が出来ている。
アンナも利き手の右腕と左足が切り落とされ、その美しい真紅の瞳も片方が無くなり、出血の具合からもう長くはないだろう。
「華奈・・・悔やむことはないわ・・・私達は・・・勝ったのよ」
「カナの大将・・・そうだよ。僕たちは勝ったんだ・・・だから、そんな顔をしないでくれ・・・ゴホッ・・・」
ダンカンとクラークもどうにか腕一本だけ、下半身の一部がなくなりつつも這いずってここまで来て、華奈に勝利なんだと口々に言う。
「ですが・・・皆様・・・私も助からない・・・皆様も・・・ヒュー・・・ぶ・・・死んで、しまうのに・・・私の、せい、で・・・・」
そう、彼らにも引退して穏やかな生活をさせる準備をしていたのに・・・それが、計算を読み違えてこの有様だ。そんな情けない指揮官に、将に何故ここまで・・・先に死んでいった皆もそうだ・・・
『大将! 最高の死に場所を有難うよ!!』 『カナ様・・・女の私にこのような最高の晴れ舞台、感謝します! ご武運を!』 『隊長。貴方と共に戦えて光栄です。では、先に失礼します』 『この部隊に相応しい強者ばかり。思い切りぶつかってやらァ!!』
誰もが私と一緒に、矢で討たれ、槍に突き殺され、剣で切り裂かれ、宝具で蹂躙された。絶望したはずだ、諦めたはずだ。円卓にも届く、凌駕するような化物ばかり。それなのに、皆笑って・・・・・
「そうは思ってないです。カナ様。皆、目的を果たすために戦いました。そして・・・ぐふっ・・・私達はそれを・・・果たせました・・・」
「クラーク・・・! もう、喋らないで・・・!」
「華奈・・・いい? 相手が何であれ、私達を害して・・・キャメロット、オークニーへ向かうあれ程の・・・ヒュッ・・・怪物・・・それを・・・はぁ・・・追い払ったのよ・・・」
「つまりは・・・僕たちは・・・『防衛戦』に勝利したのさ・・・国を守れた・・・同盟相手を・・・守れた・・・おぅぶ・・・これだけの被害で済んだ・・・国土もこの一帯だけしか荒らされていない・・・」
「大将も言っていたよな・・・『国の礎は人、大地は荒れても耕せますが、人の死はそれ以上に難しい』と・・・それを守り・・・ゴホっ・・・ゴホ・・・ここだけの被害で済んだ・・・俺たちの勝ちさ・・・」
「だから・・・それを出来るカナ様に・・・それだけの事を出来る最強の軍を作った・・・優しいカナ様ならやってくれると・・・皆・・・・・・・目を輝かせて・・・託して逝ったのです・・・・・・・」
やめて。そんなふうに言わないで・・・私は・・・敗将なのに・・・もう、死んでしまうのに・・・そんな風に言われては・・・なにも、積を感じなく・・・後悔が・・・無くなってしまう・・・積を果たせずに死んでしまうのに、これすらも良しと思って・・・
「大将・・・俺は・・・しがない大工で・・・ぶふ・・・そのまま戦火に巻き込まれて死ぬか・・・何もわからないまま死ぬだけだったろうさ・・・・・・それを、王に会わせてくれた、王姫にも・・・戦場に戦える強さを、騎士の位を・・・聖剣を・・・楽しい試みを、上手い飯を・・・夢のような時間だった・・・・・・俺は、此処で最後にここで逝ける事を感謝している・・・・・・・感謝し・・・・ているぜ・・・カナの大・・・・将・・・・」
ヤマジが事切れた。アンナを最後の力で優しく降ろし、ただの肉塊となって地に臥してしまった・・・涼しい顔で、安らかに・・・眠るように・・・
「僕もだよ・・・僕みたいな農民が・・・騎士になって・・・あのアーサー王に一泡吹かせた・・・・そして・・・戦える力で・・・蛮族を倒して・・・・・・お風呂を作って・・・・・皆と漁をして・・・ウナギ、蟹を最高の・・・・・ご飯にしてくれた・・・蛮族に襲われたら、女は犯され、子は売りさばかれ、男も売られる、殺される・・・そんな弱い立場にも耳を貸し、声を聞き・・・・だれもそんな事で怯えないような日々を・・・安らぎをくれた・・・・・・・有難う。カナの大将・・・・・また、あの世で・・・ご飯食べようよ・・・・・」
ダンカンも死んでいった・・・最後まで、人を安心させる・・・歳に不相応な優しく、純朴な顔で・・・・
「華奈・・・? 私、いえ・・・・・皆も、何一つ最後の瞬間まで貴方の選択に後悔も無いわ・・・・・・・・浮浪児同然の私を見つけて・・・・人間は・・・私だけの・・・・一人きりの世界から・・・こんなに多くの友ができた。師匠が出来た・・・貴女にまた会えた・・・最高の人生だわ・・・・そして、同じ場所で・・・最後を一緒に迎えられる・・・・・・最高の死に方じゃない・・・有難う、華奈・・・来世があるのなら・・・また、私を愛してね・・・・? 私も・・・貴女を・・・・愛しているから・・・・・」
アンナも・・・気丈に振る舞い・・・子供をあやすような優しい声で・・・その美しさを失わないままに・・・動かなくなった・・・・
「私は・・・まだ若輩ですが・・・・・・・これだけは・・・誓って言えます・・・この部隊は最高の軍でした・・・職業も、階級も、性別すらも差別なく・・・・・・・楽しげに語らい、相談しあい・・・馬鹿をやれる・・・・夢のような・・・楽園でした・・・・・・・誰もが驚く私ですらも受け入れて・・・語らって・・・私もここまでの・・・この瞬間も・・・・・・カナ様と一緒に・・・戦えたことを何一つ後悔していません・・・・・・シーマとの時間も・・・・・・皆との時間も・・・忘れること無く抱えて・・・死ねる・・・最高です・・・・・ですから、カナ様・・・どうか・・・貴女様も笑顔で・・・あの世にいる、皆が悲しみます・・・もしくは・・・笑われちゃいますよ・・・?・・・」
クラークも・・・・・・・・何とか笑顔を作って・・・優しい瞳を見せて・・・・・・・死んだ・・・・
「コホッ・・・・ああ、そうですか・・・・・皆が・・・そういうのな、ら・・・・・・」
正直な所、心残りも、心配もある。けれど・・・・・・
「あっははははは!! 幸せでした・・・! あれだけの軍にこれ以上国を荒らさせることをさせず!! 皆と一緒に死ねて・・! やりたいことをやって!!! 誰かのために戦えて! ここまで過ごせて!!・・・・本当に、本当に・・・幸せです! ああ、いい人生だった! ・・・・・・・ゴボっ・・・」
笑ってしまおう。笑顔のまま死んでいこう。自分をここまで支え、最後まで一緒に死んでくれた皆が心配しないように。そうなのだろう。私のような馬鹿女がここまでの大戦果を残して死ねる。分不相応な素晴らしい最後だ。
今できることは笑って死んで、またあの世で皆に再開して、謝って、そして一緒に・・・
(ああ、ただ・・・ギャラハッドに、モードレッド様・・・銀嶺の残りをお二人に任せるのは・・・ガウェイン様に遺言を読んでくれるのかは・・・・国家の解体は・・・心残りでしょうか・・・? 上・・・手・・・・・・く行・・けばい・・・・いのですが・・・・・・・・・・・・)
その後、あまりに規模の大きな戦の音に、銀嶺、自身の伝令から報せが入ってこないことに不安を感じたアルトリアが軍を率いて見たものは、自身の聖剣を何度も何度も振るったような荒れ果てた大地、生きているものは誰ひとりいない銀嶺騎士団、そしてそれを率いていた華奈とその副官達の亡骸だけだった・・・
銀嶺騎士団の多くの死去、それも旗揚げの時期から多くを支え、円卓にも比肩するとも言われた副官達、その主であり、円卓の剣の師でもあった華奈の死は多くの衝撃と悲しみをこの島に運んだ。
そして・・・・・・・・・悲しみに暮れるモルガンが華奈の自室に足を運んだ際に見つけた自分とガウェインに宛てた遺書、何が残されているのだろう。あの聡明で勇猛な姉は何を残したのだろう。もういない姉の言葉を、思いを全て心に刻むために封を切って読み耽る。
「拝啓 麗しき妹 モルガン様 素晴らしき太陽の騎士にして王 ガウェイン様
この手紙を見たということは、私は貴方方に何も伝えることが出来ずに戦場で死に絶えたということなのでしょう。普段からやんちゃしたり、私の部屋にも遊びに来るお二人ですが、机の日記や封をした手紙を勝手に読んだりはしませんでしたものね。
まずは、申し訳ありません。この愚将、端女では、上手く事を運ぶことが出来なかったのでしょう。あれだけの特権や兵権を持たされながらにこの不始末をお許しくださいませ。
私のような見たことのない人種、しかも女であり、出自もよく分かっていない私をここまで召し抱え、重宝し、楽しげな時をくださったことは正に私にとっては夢のような時間であり、どんな宝石や黄金よりも価値のあるものです。
それに報いるためだったのですが・・・被害などは大丈夫だったのでしょうか。皆は、無事でしょうか。死んだことや、私はキリスト教徒にはならなかったので、別の神様のところに行っていることですし、もしかしたら死後の世界からもブリテン、オークニーは見るには遠いかもしれませんから。
こんな私でも貴方様達の姉であり、師匠。導いてやり、話を聞いてやり、助けなければいけないのにここで死に絶える私を怒って下さい、なじって下さい。勝手に逝った私は、受け止めることが出来ない、謝ることが出来ない。だから・・・せめてこうすることでしか最後の気持ちを表すことが出来ませんでした。
モルガン様。その悲しい境遇に負けず、女としての全てを犯されようと迫っていて尚も母を庇い、思いやり守ろうとした強い女性であり、魔術で、自身の努力で国を支えた偉大な魔術師よ。
ガウェイン様。太陽の加護に聖剣を持ちながら研鑽を忘れず、常に明るく、優しく、円卓、国王であり続けて国を明るく照らした剛力無双でも名を馳せる偉大な王よ。
家臣として、過ごせたことは幸福でした。家族として、愛することが出来たことは私の誇りです。愛しています。
最後に、私から残せるものです。
醤油や味噌を保管する地下室と、拠点内の幾つかの部屋の中に隠し金庫があります。そこには私が蓄え、本当にどうしようもないときのために出そうとしていたお金が少しばかりあります。モルガン様、イグレーヌ様、ガレス様、ガヘリス様、アグラヴェイン様、モードレッド様、ガウェイン様のそれぞれの飼っている狼の首輪の裏に鍵を入れておいたのでお使いくださいませ。
足りないでしょう、はした金でしょう。けれど、これが私に出来る最後の奉公です。
皆様で穏やかな夢の時を、安らげる家族との時を、民が笑えるように・・・やり残した事、お願いします。
忙しくも、騒がしく、愉快で、幸せな時間でした。
カナ・フナサカより」
最後の置き土産だったのだろう。これ以外にも華奈の親しかった者全てに書いた遺書がその宛名の人全てに届けられることになり、誰もが自身よりも相手を考える、思いやる姿勢に涙を流し、嘆いた。
――何故、この偉大な方を救えなかったのだろうか。と。
モードレッド、ギャラハッド、モルガン、イグレーヌは誰よりも悲しにくれ、その嘆き、慟哭はその街全てに響き渡り、聞かぬ人はいなかったほどだった。
華奈、ヤマジ、アンナ、ダンカン、クラーク、率いていた銀嶺のメンバー全ては国葬以上の規模で行われ、魔獣も魔猪も欠けること無く最大級の敬意を持って執り行われ、その際に集まった人々は誰もが銀嶺の今までの行いを褒め称えた。
武を見れば誰もが認め、暴れまわるその姿は円卓、アーサー王も一筋縄ではいかないと言った。
脚を見れば誰もついていけぬ速さで馳せ参じ、多くと戦い、多くを救う。
人を見れば変わり種ばかりだが心優しく、魔獣も無闇矢鱈と暴れずに此方を労る心を見せた。
文を見れば新たな食材の発見、衛生対策、国の財源たる産業を幾つも興し、オークニーを、ブリテンを支えた。
そして、それほどの騎士団が崩壊したことに危機感を覚えた。『銀嶺ほどの戦力を倒す連中がいる。自分たちは大丈夫なのか?』と。
それからのブリテン、オークニーの崩壊は一気に早まった。
オークニー国内は今までその機動力、攻撃力で蛮族を防ぎきっていた刃の銀嶺の壊滅。その事によるかつての蛮族の闊歩が再び起こるのかと混乱状態が始まり、コーウェン将軍の一族の領地で育てていた魔獣たちで形だけでも整えたが、それでも尚皆は「銀嶺」を求め、すがる。
強硬手段は防げたが、中には華奈達の遺品である聖剣、聖槍、多くの礼装をも求めるものがいたほどと言えばその焦りよう、混乱具合も分かるというものだろうか。
500騎でアーサー王の軍に大きな一撃を叩き込んだかつての戦歴からも、誰もが求めた。残された銀の牙を。ブリテンからも残った銀嶺の騎士を合法非合法問わずに求め、脅し、引き抜こうとし、その度にガウェインにガヘリスが間に入って執り成しに入るが、諸侯の恐怖と、銀嶺の確執は深まる。
まだ多くのことを学んでいたモードレッドは師匠達の穴を埋めるために躍起となって戦場に身を晒して暴れ続け、どうにか銀嶺の威を繋ぎ止めようとあがき続ける。
ギャラハッドはこの事態を、これから悪化する事態を自身の血筋、生み出された目的から聖杯を求めてガウェイン、アルトリアの両名から許可を貰った後にモードレッドに自身の部隊を預けて聖杯探索に向かい、発見。
無事に聖杯に選ばれた。しかし、手にした聖杯の魔力に触れ、切り離しきれなかった成長の魔術式が暴走、寿命がそこで尽きて天へと聖杯と共に登ってしまう。
その穴を埋めるために多くの若く、未熟な少年すらも駆り出され、将の穴を埋めるために魔術師、剣士の才能はあったものの、戦に出ていないガレス、年老いて引退していたコーウェン、後方支援を主としていたモルガンも前線で戦って大きな穴を埋めようと必死に駆ける。
ブリテンもその崩壊の速度は尋常なものではなく、華奈を救出来なかったと嘆くアルトリア。トリスタンはかつての恩や頼りにしていた精神的支柱の一つを失い自身を責め、嘆きと悲嘆に暮れたまま円卓を去る。
華奈、トリスタンの穴を埋めるために円卓も奔走するが、円卓の中でも随一の機動力と特異な流動殲滅戦を誇っていた銀嶺、そして、弓兵による援護射撃を得意とする部隊の将の損失は簡単に埋められるものではなく、華奈を救援できなかったことによるアルトリアへの不信や銀嶺を屠った部隊の存在を察知できないことから恐怖を感じ、大陸の領地を持つランスロットに飛びつき、靡いてアルトリアを廃してランスロットを王に据えていこうという貴族の動きすらも起きた。
ランスロットはこれを拒否、これに異を唱え、食料を、安全を求めて諸侯達が反乱を起こす、ブリテンを離れる者が相次ぎ、それを鎮めるために戦力を割かれ、摩耗する。
一方でアルトリア自身もさらなる破壊力、力を求めて、この形で国を終わらせまいと主兵装の一つにロンの槍を加え、アヴァロンをしまうことになった。その結果、今までアヴァロンにより止まっていた肉体の成長が急激に始まり、子供の体系だったアルトリアは見事な肢体の美女に成長。
蛮族の侵攻は止まることもなく、更には諸侯の反乱の鎮圧。内外ともに混乱状態にブリテンも、オークニーも陥り始め、混沌となり始めた。
ガウェインはこれに対し華奈の隠し財産で両国の戦費を賄い、オークニーの面々で遠征を行い、フランスと同調してローマを叩く作戦を立案。アルトリアも戦費の補充に今はこうでもしないとどうしようもないと判断し、ローマへの遠征を依頼。
アルトリア、円卓の面々で島の反乱、ガウェインが攻め入る前に来ていた蛮族らを討ち果たすためにブリテンに残り、討伐を開始。ガウェインらが帰ってくるまでの間、留守を守るために必死に抗い続けた。
ガウェインらも半神、その分霊の側面を持つ面々が多く、神秘のない大陸ではマーリンに準備してもらった礼装で体力の消耗を防ぎ、その半神ゆえの強み、身体能力を生かし、華奈、ジャック、コーウェンに仕込まれ、実戦でも磨かれ続けた戦の才能を振るってフランスと連動してローマを叩き、サクソン人、及びローマにブリテン、オークニーへのこれ以上の武力介入、侵攻をしないことを和睦協定としてどうにか結ばせることに成功。一年にも及ぶ遠征劇は幕を閉じる。
多くの死者が出るも、掴み取った勝利を抱えて凱旋したガウェインらの目に入ってきたのは、一年もの間でロンの槍の侵食を急速に受けて人の枠を外れ始めていたアルトリアの姿だった。
半神、あるいは自身の根源が神であるガウェインらは即座に悟る。あれはいけない。アルトリアですら無くなり、華奈の意思を託したものですら無くなり別のものである恐ろしいナニカに成り果てる。そして、その先は間違いなくこの島、若しくはそれ以上の規模での惨劇が起きると感じ取ってしまう。これを止めるには、命脈を立つ他ないだろう。人としても終わらせてしまうためにも。
これ以上の惨劇を防ぎ、この惨劇だけでこの島にはびこる悲劇を終わらせることを選んだガウェインらオークニーの面々はアヴァロンを手放して成長した肉体により発覚した性別詐称の事で憤っていた、それよりも前からアルトリアに反感を持っていた諸侯をすぐさま自身の傘下に纏め、加えていく。モードレッドもその際にクラレントを手にし、自身が選定の手に出来たこともより多くの戦力を集めるために一役買った。
円卓の騎士、そして島の多くを領地に持つ故に離反した諸侯を除いても尚も多くの兵士を抱えるブリテン。
数は少なくとも、諸侯の戦力を得てブリテンも油断できない兵力を持ち、ガウェイン、ガヘリス、アグラヴェイン、モードレッドとこの島でも指折りの将と数えられる騎士にまだ残る銀嶺隊。
戦線に出ること自体がなかった、出たとしても極稀なモルガン、イグレーヌ、ガレス、既に引退して老齢のロット、コーウェンすらも剣をとって立ちはだかるオークニー。
かつて二十年近くも同盟が続き、互いに足りぬところを支え合った両国は、最悪の形で割れ、壮絶な血の雨をこの島に降らせる。
元から優れた技量に華奈の剣技、それを振るう上に肉体は成長し、竜の因子もそのせいか昔よりも強力。更には神霊よりになったせいで一層強力な力も振るえる強大な存在。
そんな神への領域に足を踏み入れ始めたアルトリア。それに仕える円卓の騎士。誰も彼もが倒れ伏し本来なら到底叶うはずもない存在に皆が文字通り死に物狂いで立ち向かい、結果としてガウェイン、モードレッドの両者のその執念はアルトリアと共に討たれる形で幕を閉じる。
「叔母上・・・・・カナ・・おばちゃん・・・いや、先生はさ・・・・・・今のおばうえ・・見たら・・・・・・すっげー・・・悲しむと思うぜ・・・・・・・・何か・・・違うんだよ・・・・・疲れていても・・・・悲しんでも・・・前のほうが・・・・親しみを・・・・」
「アーサー王・・・・・・いえ、アルトリア・ペンドラゴン・・・叔母上・・・・・私は・・・カナは・・・人で有り続けて・・・人の目線で接し・・・・・・・・笑い・・・かける貴女様が・・・・大好きでした・・・こんな・・・・・・こんな力に・・・・・・・すがらないで・・・・・・・くだ・・・・さ・・・・ぃ・・・」
後悔と悲しみに沈んだ目でアルトリアを見つめ、その言葉を伝えた後、両者ともアルトリアの目の前で倒れ伏し、物言わぬ冷たき骸となった。
静まり返った戦場に、先程までの熱気、狂気を冷やすかのような冷たい風が吹く。オークニーは、一部を除いて皆死に絶え、ブリテンも、ベディヴィエールやランスロットなど生き残れたのはごくわずか。国の体裁など、ここまでの失態をやらかしては、国を保つことも、かつて話し合った穏やかな国家解体も夢のまた夢だろう。
「何で・・・・・・・何で・・・こうなったのでしょうか・・・・・・・・」
聖剣を返還しに行くベディヴィエールの背中を見送り、改めて周囲の骸の山を見渡す。
殺してしまった。自身の母を。
殺してしまった。自身の種違いの姉を。
殺してしまった。ガウェインを、ガヘリスを、アグラヴェインを、ガレスを、モードレッドを。愛しい甥を、姪を。
殺してしまった。彼女の・・・自身のもう一人の、血の繋がらない義理の姉の残した部隊を。
殺してしまった。姉らを受け入れた王を、その同僚の将軍を。
華奈が愛し、友情を育み、自身もまた愛していた、信頼していたものを・・・自身の手で血に染め、殺した。ただ、守る力が欲しかっただけなのに、神だろうとなんだろうと、守れるだけのものを求めただけなのに・・・話し合うことも、止めることも出来たのではないのか? しかし、今の惨状は何だ。自身も戦を止めることが出来ずにこの有様だ。
「嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・・嫌だッ!!!!」
血涙を流し、歯が割れんほどに食いしばり、死にそうな身体とは思えぬほどの怒りを吹き出し、紅く染まる空を睨む。
愚かだとは分かっている。彼女を殺した相手にこれをすること事態愚の骨頂。分の悪すぎる賭けになるのだろう。けれど、望まずにはいられない。あの素晴らしき日々を、人である時間をくれた、笑顔をくれたあの銀の牙達に会いたくて、手をかけてしまった家族たちの笑顔を・・・過ちを犯す前の時間を取り戻したくて仕方がない。
「巫山戯るな!! こんなっ結末を誰も、誰も望んではいないのだっ!!! 認めてたまるか!!!!!!」
一度は手にしたが、取りこぼしてしまった万能の杯。これを求める、これで全てをやり直す。たとえそのために契約する相手が自身の愛おしい姉を殺した世界であろうとも。
「我が怒り、怨嗟の源たる悍ましい元凶よ! 私の魂なぞ明け渡してやるッッ!!!! だから、寄越しなさい! 全てを望める聖杯を求める闘いを、機会を私に与えろ! こんな結末を根本からぶち壊すために!!」
緩やかな終焉のために。あったはずの柔らかな時間のために。たとえそれを成すために仇敵に頼ろうとも、機械仕掛けの神にすがるしか無くても、これを覆し、望んだ時に変えられるのなら。コテコテの、子供だましと言われるほどに使い古された喜劇に変えてみせる。
例え、誰が相手であろうとも、地獄すらも生ぬるい苛烈な戦場であろうとも、目的を成すために・・・・・・・
世界との契約を行使した。
出来うる限りのバッドエンド・・・書いていて、うわぁ・・・と自分にドン引きでした。
救いがあったとしたら、抑止の被害を抑え込み、全滅なれども皆が墓までついていく銀嶺の絆と後悔なく幸せな時間だったと告白されて、笑って死ねた華奈、そしてその華奈と共に死ぬことが出来たヤマジ、アンナを始めとする銀嶺メンバーでしょうか。