転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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そう言えば華奈とストーム1の関係ですが、バッドエンドで華奈が「こいつはヤバイ」と言っていた英霊がストーム1。まあ、平行世界、可能性の一つで殺し合った仲でもあります。こっちの華奈はハッピーエンドのルートで知らない。ストーム1自体は抑止に呼び出される際に記憶を封じられ、終わった後に関わった記憶を消されていたりで互いに本気でメモリーカードだけが触媒だと思っています。

ストーム1が抑止に召喚される際に記憶封印、消去されるのは「何でこのくらいの可能性を許容できんのだバカバカしい」という理由で速攻で自害するからです。

隊長? 峰打ちですよあれは。


マシュ・キリエライトの憂鬱

 無事に学校の廃墟に到着したカルデア御一行。マスターたちが休めるための簡易の拠点を作成するために学校後にいた怪物を全滅させ、比較的崩壊の少なかった体育館、その教官室を改造することに取り掛かった。

 

 華奈の深山で崩壊の危険がある場所はすべて新たに生み出した石の柱に補強され、それを起点にキャスター二人組が魔術で補強、魔除け、気配認識阻害の術式をありったけ詰め込んでいく。

 

 そうして仮の休憩室が完成して一息つくカルデアの面々だが、その中で一人だけ別の息を吐く存在が一人。

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 マシュ・キリエライトその人である。

 

 サーヴァントとしての力を得て危機を乗り越え、共同とは言え英霊を倒したという功績を上げて、そして皆の休息の場ができたというのにその表情は浮かない。沈んでいるままだ。

 

 「ちょっと。藤丸。マシュが落ち込んでいるわよ。ケアしてあげなさい。貴方がマスターでしょ?」

 

 そっけなくオルガマリーはマシュを軽く見やると藤丸にさじを投げ、一人早速整理のついた教官室に入っていく。心配はしているようではあるが、それでも踏み込まないのだろうか。視線をときおり投げかけるがそれだけで無関心の素振りを貫く。

 

 「あ・・・その、マシュ。やっぱり・・・アレのこと?」

 

 藤丸も感じていた。いや、周りの英霊の面々を見て思っていたことをそれとなく出すとマシュもうつむきながら頷き、ぽつりぽつりと話し始める。

 

 「はい・・・その、私はデミ・サーヴァントとして先輩のもとで十分すぎるほどの経験を積みました。けれど・・・その、宝具が使えないのです・・・使い方すら分からない欠陥サーヴァントのようなのです」

 

 『ああ、そこを気にしていたのか。マシュは責任感が強いからなあ・・・でもそこは一朝一夕でいく話じゃないと思うよ? だって宝具だし。英霊の奥の手を一日二日で使えちゃったらそれこそサーヴァントの面目が立たないと言うか』

 

 ロマニがすぐさまフォローするが、その発言に召喚、合流していた英霊一同はその発言に呆れてしまう。本当に英霊を使役する、カルデアの組織の人間なのかと。

 

 「あ? そんなものすぐに使えるに決まってんじゃねえか。英霊と宝具は同じもんなんだから」

 

 「英霊とはかつてその英霊がこなした業績や逸話。その武具も含めて呼ばれるものですから使えなきゃいけないんですよ。例えばシモ・ヘイヘが呼ばれてモシン・ナガン持っているのにモシン・ナガンを使えないなんておかしいでしょう?」

 

 「俺もマスターも使えているからなあ。マシュちゃんが少し変わっているとは言え、英霊の力を使えている以上バグみたいなもんだわなあ」

 

 英霊の面々の発言で益々顔色が暗くなるマシュ。彼女も英霊をそれなりに学んでいたためによく分かっている。英霊は基本その呼出した人物のみならずその英霊の逸話、武器、クラスに合わせた宝具があることを知っていた。

 

 それは英霊の自身を示す、やもすれば弱点を晒すものであると同時に戦況をひっくり返す、切り札にもなり得るもの。先程の戦闘でもそれを使えていればと考えていたマシュにとってはもどかしく、辛い悩みでもある。

 

 「恐らくは、デミ・サーヴァントという特異な召喚、状態が原因なのでしょう」

 

 「ああ、恐らくは詰まってるのかもしれんな」

 

 「オイオイ。魔力の便秘かい? それも鬱屈も流してほしいがねえ。どうしたもんか」

 

 どうしたものかと考える一同。これから攻め入るはキャスター以外すべてを倒したセイバー。そしてまだ残っている上に立ち回りもしっかりとしたアーチャー。未だ宝具もわからない状況では此方も札は揃えておきたいのは確かであり、そしてマシュ個人の悩みをなんとかしてやりたいのも本心。

 

 少しの間を置いて、キャスターと華奈が顔を上げ、不敵に笑う。

 

 「声も上げた、経験もマシュ様みたいな戦を知らぬ方には過酷な刺激。これを数度経験しても尚もこれなら、もう理屈こねくり回すものではないですね。マシュ様、藤丸様はここのグラウンドに。ストーム。元様、所長様の護衛をしなさい。いいですね?」

 

 「了解した。こりゃあちーときっついことになるなあ」

 

 「ほう? 俺と同じ考えか。姉ちゃんキレイな顔してえげつないねえ」

 

 そう言ってすぐさま教官室を後にしてグラウンドに向かう華奈、キャスターの二人。それを追いかける形で続くマシュ、藤丸。

 

 「あ、ちょっと待ちなさいよ! 一体私に無断で何を始めるつもりなのよ!? ここには休憩できたのでしょう!!?」

 

 「・・・嫌な予感がするけど、行こうかな。メディアさん・・・」

 

 「貴方は寝ていなさい」

 

 追いかけるオルガマリー、元も行こうとするがメディアに魔術を講師されてすぐさま教官室のソファーに寝かされる。その少し離れた場所に腰掛け、華奈から貰った一杯分の蜂蜜酒を飲み始める。

 

 「おや、お姉さんは行かないのかい?」

 

 「どうせろくな事しないでしょう? 休憩場所を崩されたくないもの。それに、これだけ念入りな準備の入った仮拠点。少しの時間稼ぎは出来るしそこまで離れないだろうから休むわよ。アンタも行ってきなさい、あの子の護衛でしょうが」

 

 「ヘイヘイ。全く厳しい優しさだぜ。ま、テレビでの星座占いでも見ていたら良い。今日はお姉さん大吉だぜ? 俺が保証する」

 

 肩をすくめながらオルガマリーの後ろを追いかけるストーム1を見送った後にメディアは教官室の扉を閉じ、テレビのリモコンを見て

 

 「・・・こんな状況で大吉ですって? それにテレビも壊れているじゃないの・・・はぁ、自分で自分を占うなんて自演も良いところよ」

 

 ぼやきをぶつけた後になにか無いかと教官室を物色し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わってグラウンド後。そこにはキャスタ-、華奈、ストーム1、マシュ、藤丸、オルガマリーが集まっていた。

 

 元の事に休憩所を守ってくれる、連絡係をメディアが受け持つとストーム1から聞いて安心した一同。マシュは自身の宝具に関わる事から強い期待を示しており、やれと言えば大抵のことはしていきそうなほどの気合を放っている。

 

 「それで私は何をすれば良いのでしょうか!」

 

 「俺も来たけど・・・英霊の問題ってどうするの?」

 

 気合い充分なマシュに少し何をすればいいのか少し困惑気味な藤丸という対象的なコンビ。程度はあれど前向きに進もうとする姿勢を嬉しく思い、ここにいるマシュを除いた英霊の皆は微笑む。

 

 「ま、ようはよ。宝具ってのは英霊の一部みたいなもので、手足だ。制限や消費の問題で使えないものもあるがそれさえどうにかする、気にしなければすぐに使える。それをあれこれと考える時間もねえし、説明も面倒」

 

 そういいながらマシュの盾の裏に何かを刻んでいくキャスター。

 

 「じゃあ、お嬢ちゃんは俺と一緒に街の観光、観戦と行こう。なあに、お代は俺のおごりだ」

 

 「なっ!!? えっ、あ、ちょっと離しなさい! 私を一体どうする・・・きゃぁああああ!!!」

 

 一方でストーム1はオルガマリー所長を抱えて学校の屋上まで飛び移り、藤丸らが見下ろせる位置に移動。

 

 「所長!?」

 

 「ああ、所長様は気にしないでくださいませ。必要な処置ですので。さて、キャスター様準備は?」

 

 「バッチリだ。これならいい具合にわんさか来てくれるだろうよ」

 

 いきなりの行動に驚くマシュ、藤丸、オルガマリー。三人の訳のわからぬ行動に疑問が浮かび、特にオルガマリーはひときわうるさく吠える。

 

 「ちょっと!! 何をするの離しなさい!? アイツの使い魔風情がいったいなにをしようと・・・」

 

 「落ち着けお嬢ちゃん。怒ったって喉が渇くのとシワ一本増えていくだけだ。俺はそういう女性も好きだが、今はちょっとそれどころじゃない。カーニバルが始まる」

 

 「カーニバル!? 一体何が起こる・・・・」

 

 「所長~! ご無事ですか!?」

 

 「・・・・・・・・この音は・・・」

 

 混乱する二人をよそ目に聞こえ始めてきた音に藤丸は意識を向ける。この街に来てからというもの何度も聞いている足音、それに合わせて響く武器の揺れる、こすれる音。

 

 「盾の嬢ちゃんには厄寄せのルーンを刻んだ。俺でなきゃ消せないぜ? これから有象無象、数も比べ物にならん怪物がここに殺到する。俺らも襲われるが、それ以上にお前らにまっしぐらだ」

 

 その言葉を裏付けるように怪物の足音や武器の音は増え続け、遂には何重にも重なり、あらゆる方向から響き、こだまする。

 

 「ようは、屁理屈もへったくれもない精魂果てるまでお二人は戦ってもらいます。頭なんぞ使わずに本能を出して英霊の業を出せるようにします」

 

 「もしかして馬鹿なんじゃないです・・・・」

 

 「先輩!」

 

 藤丸がそういい終わる前にマシュが視線を遮り、直後に無数の金属音が響く。盾の隙間から藤丸が華奈の方を見れば右手にはアサルトライフル・AF99が握られ、此方に銃口を向けていた。さっきの音と硝煙から見て、此方に発泡したのだろう。

 

 「お二人は戦闘経験もそれなりに積んでいるので、数だけではあっさりいなしかねない。なので、私もお二人を攻撃します。言っておきますが、このライフル。数秒で戦車もヘリもスクラップに出来る銃ですからね。マシュ様も藤丸様もしっかり気をつけてくださいね」

 

 「はああああああああ!!? 何で同士討ちを始めているのよ! 休憩どころか殺し合いをしているじゃないの! 認めないわ。華奈! マシュ! 藤丸! すぐさまその私闘を止めなさい! これは命令よ! カルデア所長オルガマリー・・・ヒィイイ!!!」

 

 「おっと、やっこさんアイドルめがけてまっしぐらか。人気者も大変だねえ。俺も所長さんも」

 

 身を乗り出して静止を試みるオルガマリーの鼻先をかすめる矢。そして次々屋上にもめがけて押し寄せる化物の群れ。見通しがよく、矢も簡単に対処しやすいが、ここもまた危険区域になり、すぐさまオルガマリーもストーム1の後ろに隠れることになり、ストーム1もかんしゃく玉で応戦を始める。

 

 それは、残った、当たることなく飛んでいくかんしゃく玉も下に落ちることであり、藤丸ら、化物に敵味方お構いなしに降り注ぐ。藤丸には当たらないように配慮はするがそれでも爆発で飛び散る爆風、瓦礫、化物の体の一部。まさにこの場所は修羅場、戦場となった。

 

 「さ、生き残りなお二人さん。あんたら、ここで駄々こねてもその次には死ぬかもしれねえぜ?」

 

 こうして敵味方お構いなしの大乱戦場が出来上がり、過酷すぎる特訓が開始される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・ハァっ・・・・はぁ・・・も、もうこれ以上は・・・無理です・・・・もっと合理的な教え方を・・・」

 

 大乱戦が始まって暫くした後、マシュたちだけではなく周辺にいた英霊、生者の面々は皆巻き込まれながら戦うことになり、爆弾と銃弾と火球と矢玉が飛び交い、盾に刀に杖にかんしゃく玉にライフルで互いに殺し合うことに。

 

 その戦いも化物がいなくなったことで一段落。グラウンドの焼け焦げて真っ黒な土が骨のせいで白くなるまでの激闘をこなしたのにも関わらずマシュは宝具が使えず、このスパルタ方式からの変更を願い出ていた。

 

「ふむ・・・・もうひと押しですかね。マシュ様、第二ラウンド行きましょうか」

 

 「見込み違いの可能性もあるが・・・あの魔女もいるし俺もキャスター、治療も早く済むわな。・・・・・どれ、もう少し様子見と行くか。構えな。でなきゃお前さんもマスターも本当に死ぬぞ?」

 

 がそんな事知ったことかとバズーカを構え、刀を用意する華奈。杖を構え、今度はキャスターも本気で戦意を向けてくる。先程味わった化物とは違う。影の英霊たちと同じ研ぎ澄まされた気を向けられることに消耗したマシュ、藤丸らにはとても、とても重い重圧となってのしかかる。

 

 「待って! これはマシュの特訓であって彼は関係ないでしょう!?」

 

 「いいえ、オルガマリー様。マスターと英霊は運命共同体。マスターが死ねば英霊はいずれ長く顕現が叶わずに殆どが敗退・・・」

 

 「英霊が負ければマスターは英霊の前に何の手も打てずに死ぬだろうな。英霊が高潔でも使役する輩がそうとは限らねえ。しかも今回みたいな怪物や化物も襲い来る機会も多いだろう。今の坊主みたいな輩なんざすぐ餌食だろうよ。だから・・・」

 

 「「守ってみろ(なさい)マシュ(様)」」

 

 「あっ・・・・! ああっ、あああああ! もう・・・もう!!」

 

 そう言ってマシュに攻撃を開始する二人を見てひとしきり声を張り上げ、薬を一気に飲み込んで固唾をのむオルガマリー。

 

 事実なのだろう。二人の言っていることは聖杯戦争に当てはまり、マスターと英霊の関係の一端を示す。そして、特異点での危険性も嫌というほどにわかった。街一つが、英霊七騎を呼び寄せる戦いが狂っただけでこれだけのことになった。今後もこういう事があるのなら間違いなくここで宝具を手にすることが出来なくばマシュはこの先も戦えない。たとえ戦えたとしてもこの戦いでの事を引きずって何処かで躓く。

 

 それはいけない。ならここで嫌でも成長してもらうしか無い。ここで何も出来ない自分のもどかしさを歯噛みしながらオルガマリーは二人の行く末を見届けることにした。

 

 「ふむ・・・・所長さん。アンタいい女になるぜ。今はどーんと構えるのが正解さ。そんで、そのよく通る声で必要なら励ましてやれ。マシュちゃん達、すっごく嬉しくて元気出すぜ? 頑張っているやつは、おんなじように頑張っているやつの言葉にゃいっちゃん嬉しいもんだ。アンタみたいな努力家からなら尚更な」

 

 ストーム1に頭を撫でられ、それに対して怒りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アンサズ!」

 

 呪文を唱え、刻まれたルーンから放たれる火球の数々。

 

 「はい、そこ甘い」

 

 マシンガン、バズーカの雨あられを撃ちまくり、一瞬でも隙を見せれば刀で斬りかかってくる。

 

 「くっ・・・・!! うぁあ! ぐっ・・・・・・!」

 

 間断なく、常に続く波状攻撃にマシュの肌は焼かれ、爆風の破片や跳弾、盾をかいくぐって振るわれる刃に徐々に切り傷を作られていく。

 

 「やれやれ、弱い者いじめに見えちまうなあ。特訓、それもこんな場所じゃあ仕方ねえとは言え何処まで持つか」

 

 「・・・・・・・何処まで出来ると思う?」

 

 薬をもう中毒にならないかと言うほどに飲み、気持ちを落ち着けたオルガマリーはストーム1に問いかける。副作用は依存症は問題ないと聞いているが、本人のこの性格、気質をどうにかしないとどのみち依存しそうだと少し思いながらもストーム1は答える。

 

 「そうだな・・・後、一度大きなショックを与えてそれでも尚駄目ならこっから先はもう駄目だろうな。この特異点の解決は俺たちでどうにかしてマシュちゃんにはここで留守番だろうさ」

 

 「そう・・・もし何らかの体の不調を細かに調べようにも今のカルデアはあの状況だし・・・良くも悪くもここが必要なのね」

 

 眼の前で必死に食い下がり耐えるマシュの姿を見ながら泣きそうな顔を浮かべるオルガマリー。これからのことを見据え、この無茶振りを止めることなく必死に自分を抑えるその姿に思わずストーム1も唸る。

 

 「だろうな。マスターとはここでしか会話をしていないが、基本馬鹿や酔狂をやるにはその確信足り得る理由や動機がなければ動かん。・・・・・・しかし、こんな鉄火場で同士討ちにしか見えないこの戦いの意味を理解して見守る所長さんはすげえな。良いトップだ」

 

 「なっ!? いきなりこんなところで何を・・・っああ!」

 

 思わぬ不意打ちに驚いているあいだに戦況は動いており、マシュが火球に打ちのめされて体制を崩してしまう。防ぎきれなかったのが一部あったのか藤丸も服の一部が焦げ、地面を転げ回った時に着いたであろう汚れ、傷が幾つもあり、あちらも満身創痍という状況。

 

 「っ・・・・はぁ・・・はぁ・・・・! あっ・・・ぐくぅ・・・・!」

 

 「・・・・・・シメですかね」

 

 「ああ・・・さあ、どうした! お嬢ちゃん! ここで守らなきゃ主もろとも丸焼きだ、守ってみせろ! 我が魔術は焔の檻、茨の如き緑の巨人――――」

 

 キャスターの魔力が爆発的に高まる。間違いない、宝具の発動の前準備、セーフティーを外し始めている段階。

 

 「マシュ様。良いですか? 貴女様は無駄に倫理、情報に囚われすぎています。魔術では精神要素もまた重要なファクター。今何をしたいのか、柵だとか任務だとか捨て放って心からやりたいことに全力を出しなさい。例え、今の自分の状況がどうであれ」

 

 「マシュ・・・俺は信じているよ。ここまで戦ってくれたマシュを」

 

 二人からの信頼、激励。そして眼の前に迫る死の予感、恐怖。疲労であれこれと余計なことに頭は回らず、身体も動かない。魔術でどうとか、誰かの救いの手をくれるという希望的観測も出てこない。

 

 (守らないと・・・使わないと先輩が消える――――偽物でもいい。今だけでもいい。私が・・・私がちゃんと使わないと・・・・・!)

 

 「因果応報、人事の厄を清める杜、倒壊するは『灼き尽くす炎の檻』(ウィッカーマン)! そら、焼かれて土に帰るこったなあ!!」

 

 キャスターの宝具が発動し、燃え盛る木で編まれた巨人、が目の前に現れ、マシュを、藤丸を焼き殺さんと迫ってくる。逃げても纏う炎で殺され、立ち向かおうにも今のマシュたちではただの自殺行為。退くことも、進むことも死になってしまう。この絶望的状況にマシュの感情は弾け飛び

 

 「ああ、ああぁあああ――――――――!!!」

 

 真っ向から立ち向かい、踏ん張ることを選択した。盾を強く地面に打ち下ろして楔としても使い、その燃え盛る巨人の拳を受け止められるように腰を落とす。

 

 何が何でも通さない。ここを守り切る。後ろにいる守りたいものために体に残っていたあらん限りの精も根も力もすべてを吐き出したその叫びに盾が輝き――――マシュの前方に盾の数倍はある巨大な魔法陣が出現。その光の壁はウィッカーマンの拳を封じ、動きを封じ、炎を封じ、そして、ウィッカーマンが消えても尚残る炎をすべて封じきり、自身を、そして藤丸を完全に守りきって見せた。

 

 そして炎も消え去り、魔法陣が消え去った後、しばらくの静寂の後。満足げな表情のキャスター、華奈。信じられないとほうけているマシュ。眼の前で起きた宝具のぶつかり合いに驚きで目が点になっていた藤丸。いつの間にか屋上から降りていたオルガマリーにストーム1だけが残っているだけだ。

 

 

 「あ・・・・・・私・・・宝具を、展開できた・・・・・んですか?」

 

 「はい、マシュ様。その通りです。お見事な宝具でしたよ。アレ程の宝具を受け止めるとは」

 

 「―――ヒュウ、まさか一命を取り止めるくらいはやると思ったが、マスター共々無事とはな。褒めてやれよ坊主・・・いや、マスター。嬢ちゃんは間違いなく一線級の英霊。そんで、信じ抜くことが出来た坊主も立派なマスターだ」

 

 拍手をしてさっきまでの闘気を引っ込めて満面の笑みで応える華奈。太鼓判を押して爽やかな笑みを浮かべるキャスター。先程までの殺伐とした空気は何処へやら。宝具開放の成功を喜ぶ和やかなムードが燃え盛り、廃墟となっている学校のグラウンドに流れる。

 

 「良いもん見させてもらったぜ。ほれ、所長さん。組織の長として、アンタからも激励の一つでもくれてやんなあ」

 

 ぽんと背中を軽く押してオルガマリーを前に押し出してやるストーム1。それに押される形でマシュたちの前に出されたオルガマリーは

 

 

 「・・・・・・・・コホン。思わぬ訓練によって不安もありましたが、無事に宝具を発動できて嬉しい限りです。・・・・・・・・あー・・・よくやったわ。マシュ」

 

 しどろもどろ、拙いながらも認めてくれたオルガマリー。まだ恥ずかしさがあるのだが、それでも褒めることは必要だろうと絞り出した言葉にマシュは嬉しくなり、満面の笑みで応える。

 

 「はい! 有難うございます所長!」

 

 「うん。本当にすごかったよ、マシュ」

 

 「! は、はい! やりましたよ先輩!!」

 

 藤丸からの言葉に輝かんばかりの笑顔になるマシュ。先程の疲労も忘れていそうな程の笑顔で頬を赤く染める表情は年相応で此方まで元気をもらえる程。皆が集まってそこからしばらく談笑したり、笑いながら教官室に戻っていくことに。

 

 (しかし・・・血の繋がりが無いとは言え、育てた我が子が女の子に宿り、英霊の力を貸してその子は殿方に気づいていないけど思慕の情を抱く・・・あれ? これって下手すれば精神的同性愛? マシュの精神に引っ張られて目覚めた可能性も? ・・・まあ良いですけど、両者が良いのなら)

 

 その間も育ての親の少しズレた思案が悶々と続いていたのはここだけの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、教官室でメディアから傷を治してもらい、オルガマリーの予備の薬の補充。カルデアからちょっとした食べ物と水を受け取り休息。その合間にマシュの宝具はマシュに力を貸した英霊、その宝具の真名が未だわからないので仮の名前としてロード・カルデアスと命名。

 

 起動も数度試した結果問題はないので一度休息を取ることとなりマシュ、藤丸、オルガマリー、元らは二時間ほどの仮眠をとることにし、見張りとしてメディア、キャスター、ストーム1、華奈が起きることに。現在はその起きている面々でちょっとした小話をしている最中となる。

 

 「で・・・メディア様。元様の容態は? 良馬さんたちも観測している状態と照らし合わせたいのですが」

 

 「そうね・・・レイシフト? 適正が低いのと魔力を結構消費したのもあって中々の摩耗具合よ。さっきはすぐに寝かせたけど・・・下手に長引かせても危険じゃないかしら?」

 

 『はい。その通りです。存在確定のための観測はしているのですが、バイタルを見てもあまりいいとは言えません。これ以上の、カルデアに帰還しても身体に後遺症が残らないラインを想定した時間は、五時間がせいぜいでしょうね』

 

 負担と適正値がない状態でのレイシフト。更には緊急時の確立を著しく下げた状態でのこと、むしろ負担がほぼないマシュ、藤丸、華奈が奇跡なのだろうと考え、同時に残り時間の目安がはっきりする。

 

 「まあ、ダラダラするのはあまり良くないし良いくらいだろう。陰気なサウナのようなこの街も飽き飽きしていたんだ、ちょうどいいさ」

 

 「これからは強軍行、待ったなしの戦いでしょうからね。私ももう少ししたら一時間だけ仮眠を取ります。その前に・・・冬利様、フラム様。現在のカルデアの状況は?」

 

 モニターの画面が新たに増え、そこにフラム、冬利が映り込む。

 

 『そうだな・・・カルデアの館内洗浄は五割進行したが、爆発の故障とまだ職員の死体が多すぎているのもあって上手くいっていない。それにバラバラ、消失した身体もあったり、爆発の際に飛び散った糞尿、血肉の臭いでとてもじゃねえが一部は作業ができなくてゲロはいたり、精神やられる奴らもいるから今は洗浄した部分での死体集めと職員チェック、それ以外は簡素でも病原菌を防ぐためにシャッターやバリケードを作って隔離状態。中央の機材の修復に努めている』

 

 『私も同じです。カルデアスは一応復旧。レイシフトはもう少しで問題はなくなりますが、可動のための電力の安定が今のとこ上手くいってないですね。そちらの存在をしっかり捉える、存在させるための観測にそのためのバックアップ、現在進行系で職員の治療に今使えるカルデアの電力を使っていますので、帰還のためのレイシフトへの準備はもう少し後になります』

 

 一応は順調。ただ、此方もすぐさま帰還して再準備、少なくともオルガマリー、元を帰還させることも難しい。出来るならすぐに言っているだろう。それを言わないということは「全力で用意してはカルデアの悪化、復旧の遅れが出てくる。その上でも少なくとも二時間では無理」ということだろう。

 

 「分かりました。その間に此方も特異点攻略をしておきます。ですので、そちらもどうか焦らず、逸らずに」

 

 「ええ、分かっていますよ華奈。では、私は作業があるのでこれで」

 

 「了解。んじゃ姐さんも無理はするなよ?」

 

 そういったところで通信は切れ、映像もすぐさま消える。

 

 「では、私も寝ましょうか。ストーム、キャスター様、メディア様。お願いします」

 

 腰を上げ、体育館の中にいた栗毛に体を預けて華奈も意識を落とし、短い休息を取り始めた。この狂った聖杯戦争を終わらせる英気を養うために。




~二時間後~

華奈「では、参りましょうか」

藤丸「いざ、決戦! ですね」

マシュ「傷も回復。魔力もカルデアからのものでバッチリ。問題ありません」

オルガマリー「まさか簡単な調査のはずがこうなるなんてね・・・でも、盾の宝具もあるし、イケるかしらね」

華奈「守りが出来るというのは大きいですからね。貴女様があの戦いを無理やり止めなかったからこそですよ。有難うございます。オルガマリー様がトップで良かったです」

オルガマリー「ッー!! っ、そう・・・なの・・・ええ有難う。でもあんな無茶、馬鹿はこれっきりにしなさい。でないと減給するわよ?」

華奈「それは怖い。副業をしなきゃいけないのは大変ですからね。出来る限りしませんよ」

キャスニキ「おーいお前さんら早く来い。案内するからよ。置いてくぞ?」

ストーム1「待ってやりな。女の化粧と話は長いんだ。待ってやるもの男の仕事だぜ? キャスターの兄ちゃん」

キャスニキ「へいへい。まー実際、焦る必要はないか。確実が一番早いし、英霊もここまで早く減るとは思わなかったしな」

マシュ「おまたせしました。では、大聖杯のところに行きましょう!」



マシュも覚醒第一段階終了。後は大聖杯に行って大乱闘を開始するだけですね。

はてさて、次回も上手く書けるのか、少し心配ですが皆様よろしくおねがいします。

最後にUA 50920件 しおり 143件 お気に入り 387件 応援ありがとうございます! とうとうUA 50000超え・・・嬉しいです。本当に。いつも拙いこの文を読んでくれて有難うございます! どうかこれからも宜しくお願いします。

それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。
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