転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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華奈「おっと、忘れ物ですね。ストーム、戻りますよ」

ストーム1「ん? なんかあったか?」

華奈「ええ、少しだけ。いいでしょう?」

ストーム1「了解。猫のような自由な方で」

華奈「逸話的には狼でしょうけどね~私」

~暫くして~

華奈「ふう。もう戦っているようですね」

ストーム1「急がなくてもいいのか? 強敵なんだろう」

華奈「どうせ不意打ちもさほど意味がないですし、そもそも英霊の中でもすこぶる猛者、高みにいる方たちがいて一人にはい負けましたではこれから先が思いやられます。試金石です。これから先を占う、戦えるかを見極める」

ストーム1「この街の最初のように分断されて、尚しばらく生き残れるか。ってことね。鬼教官だこと」

華奈「ま、出来ないといい切れる子にはさせません。最悪私もストームもすぐに駆けつけられますしね」

ストーム1「違いない。じゃ、怪物の残りに気をつけながら行きましょうかね」

華奈「普通なら発狂と命の危険がある洞窟なんでしょうけどねえ・・・」



ロケットウーマン

 華奈たちと分かれて大聖杯に先行した一行。今までに通ってきた狭く、ジメジメしたところとは違ってとてつもなく大きな空洞。この洞窟自体が人の手を加えられていると思わしき箇所があることから魔術工房の一つと推測はしていたが、ここまで大きな物があるとは予想もできなかった。

 

 そして一行がその工房に置かれている大聖杯を見て思わず驚く。サイズはともかく、その技術の高さ。魔術師が多く集い、時計塔もあるイギリス。そこの頂点の一角を担、自身も一級の魔術師であるオルガマリーには嫌なほどに理解できる。この大聖杯は間違いなく今の魔術師なんかではロードが力を合わせようとも到底作ることが出来るものではない。弩級のものだと。

 

 「何よこれ・・・・・・・超抜級の魔術炉心じゃない・・・なんだってこんなのが極東の島国にあるのよ・・・」

 

 『資料によればアインツベルンという錬金術師の魔術師の一族が手がけたようです』

 

 『それ以外にも協力者がいたという話ですが・・・まさしく在野の賢人、時計塔のロードにも負けないほどの者たちだったのでしょう』

 

 これを起点に行われる聖杯戦争。これだけのものなら英霊を呼び出せるというのも納得だ。少なくともここにいる魔術に精通した面々はそんな所感を抱き

 

 「・・・今更だけど・・・本当に文字通り杯なんだね・・・」

 

 「これが聖杯・・・」

 

 魔術に明るくない、若しくは圧倒されているものはつぶやくような感想、何処かズレている所感を持つ。

 

 それとは反対に元、メディアは聖杯を見ること無く一つの点を見つめる。

 

 「さて、話はそこまでだ。来たぜ、ここを守る最後の英霊、セイバーだ」

 

 キャスターの話と元達が見ていた視線の先に現れるは小柄な鎧に身を包んだ騎士。肌は病人を通り越して死人、蝋人形のように白い肌。漆黒の鎧に美しい金髪。

 

 瞳は淀んだ金の瞳。携える件は漆黒であり、血を思わせる赤のラインが走っている。

 

 「・・・・・・・」

 

 その威圧感たるや今まで遭遇してきた英霊のそれとは質も種類も違う。気圧され、泣きそうになり、思わず後ずさりそうになる事を元、マシュ、藤丸、オルガマリーは必死にこらえて四肢に力を込めて踏ん張る。

 

 そんな面々を歯牙にもかけずに一通り見た後にマシュを見やり

 

 「――ほう。面白いサーヴァントがいるな」

 

 口を開き、冷笑を浮かべた。

 

 「なぬ!? テメェ、喋れたのか!? 今までだんまり決め込んでやがったのか!?」

 

 「・・・ああ。何をしても見られている故な、案山子に徹していた。だが――面白い、その宝具は面白い」

 

 「・・・・え!? 私ですか」

 

 まさかの反応だったらしく驚くキャスター、それを無視して騎士はマシュに視線を送り、ゆっくりと剣を構え始めていく。

 

 「構えるが良い、名も知れぬ娘。その盾がどれほどのものか、私が確かめてやろう!」

 

 「っはぁ・・・嬢ちゃん、アイツはアーサー・ペンドラゴン。持っている聖剣はエクスカリバー。もう分かるだろう? 油断するな、死ぬぞ?」

 

 臨戦態勢を整えるアーサー王、キャスターも華奈からもらった包みを手に持ってすぐさま動けるようにしていく。

 

 「・・・・・・・ねえ、マスターいい加減、この街の縁にもう訳がわからなくなってくるわ・・・」

 

 「・・・取り敢えず、これ以上はないことを祈って戦いましょう。それしか無いですよ・・・」

 

 青い顔をしながらも気を引き締める元、杖を構えて半歩後ろに下がるメディア。

 

 「マシュ・・・絶対に勝とう!」

 

 「っ・・・・はい! マスター! 貴方に勝利を!」

 

 「ふっ・・・では、勝ってみせろ!」

 

 言うが早いかその声は藤丸らのすぐ近くで聞こえ、いや、近くまで接近して話していた。その言葉と同時に剣を右から横薙ぎに振ってマシュを吹き飛ばそうとするもマシュもとっさに腰を落として盾を構えて受け止める。

 

 「っぐう・・・・!」

 

 華奢な男性・・・いや、女性とは思えないほどの速度、剣の重さ。吹き飛びそうになるがメディアが仕込んでおいた竜牙兵に支えられて足を崩さず、更にキャスターの飛ばした火球を避けるためにアーサー王が引いたことで倒れずに済んだ。

 

 たった一撃。その一撃で汗は吹き出て手はしびれてかすかに震える。改めて前にキャスターが言っていた自分以外全てを倒したというその実力の一端をマシュは垣間見て、一層気を引き締める。コンマ数秒でも意識がそれたら殺されると。

 

 「甘く見るなよ嬢ちゃん。アイツぁ筋肉ではなく魔力放出でカッ飛ぶ化けもんだからよ! 腹に力入れろ。今度はもっと馬鹿みたいな一撃で吹っ飛ぶぞ!」

 

「ロケットの擬人化のようなものですか・・・了解、理解しました・・・! もう、油断はしません!」

 

 「よし・・・じゃ、俺も一暴れすっか!」

 

 そう言うと杖にルーンをいくつか刻んだ後に背中にしまい、包みを解いて中身を出す。それは三本の鉄の棒・・・ではなく連結式の槍。それぞれを固定して一本の槍にしていく。

 

 「即席だが・・・これも立派な宝具、さぁ、来いやセイバー! それと所長だっけか? 頼むぜ!」

 

 荒々しい空気を放ち、今まで見たこともないほどの勢いで駆け出してセイバーに突きを入れるキャスター。セイバーもそれに対応して魔力放出を重ねた剣でいなして弾こうとするがそれも出来ずに身体を捩って避け、メディアが放つ氷柱の山を再び魔力放出で背後に飛んで避ける。

 

 「っ・・・ああ、もう! 分かっているわよ! これでいいでしょう!!?」

 

 「あらあら、猛犬・・・狂犬になっちゃって・・・やっぱり本性は獣ねえ」

 

 キャスターは基本魔術師、錬金術などの所謂研究者と呼ばれるものが当てはめられるクラス。しかし、目の前のキャスターはそんな雰囲気はまるで無く、寧ろ槍を振るってセイバーと戦っている姿のほうが何だかしっくりと当てはまり、彼自身もイキイキしているように見えた。

 

 そんな様子にメディアは顔を少ししかめるとその後に微笑み、魔術でのサポートを開始。基本氷、竜牙兵でのアシストに力を入れ、オルガマリーは考えていた作戦を開始して魔術回路を起動させる。

 

 「・・・ほう? どういう変化だ・・・? まるでキャスターとは程遠いな。槍の入手もそうだが、動きのキレもだ。本来のランサーよりもよく見えているようだが?」

 

 一方で、アーサー王は少しの驚愕と、意外な変化を少しだけ楽しんでいた。

 

 自身の持つスキル。対魔力でキャスターの攻撃は基本軽いもので済むし、魔力放出で一気に彼我の距離を詰めて不利な近接戦で切り倒せる。それ故に基本はキャスターが二人いても他のクラスに比べればさしたる脅威でもない。だからこそあの少女に一層目を向けていたが、蓋を開ければそのキャスターが自信と互角に渡り合う、援護も含めて面倒な、やりがいのある相手になっている。自身の予想が外れた事が何故か面白く思ってしまう。

 

 更には自身の直感での動きに対応して封じていくその動き。その速さは時折此方も驚くほどで何度か魔力放出で仕切り直してはまた切り結ぶ。ということしなければならないほどに鋭く、早かった。

 

 「いつもの俺なら一騎打ちだろうがな・・・今回はちょっとずるしてんのさ。恨むなら、穴熊決めたてめぇを恨め」

 

 槍の連続突きを決めてアーサー王を抑え込むキャスター。彼自身も理解している。この規格外の化物、更には自身の今のクラスととことん相性の悪いセイバーには独力では勝てない。しかし、後ろにいる若い連中との同盟を果たすために、自身の本来の戦い方を出来るようにお膳立てしてくれた英霊に報いるためにいくつかの下準備を重ねていた。

 

 槍は華奈、メディアの協力によって廃材の鉄骨からランクD++相当の槍を作ってもらい、自身の杖には肉体強化の術式をありったけ詰め込み、槍には強化のルーンを刻む。

 

 更にはメディアに道具の下地を作ってもらい、自身が合わせて仕上げた霊薬、護符の制作、装備。

 

 仕上げにオルガマリーに協力してもらって視覚共有の魔術を互いに掛け合うようにした。本来のクラスがランサーだとしても今はキャスター。強化されようとも幾らかの齟齬は生じる上に眼の前のアーサー王はどう動いてもすぐさま対応する、最適解を叩き出す勘の良さ、頭の回転の速さがある。それを封じるためにオルガマリーの視覚を共用して「自分たちが戦っている状態を俯瞰、他者の視点で見る」ことで広い範囲から予備動作を見てそれを封じる事を考えて実行。契約を結んでいない状況での魔術師と英霊の合意の上での魔術の使用を受け入れることは成功。

 

 それ故にキャスターは自身の視点、オルガマリーの二つの視点の情報を噛み合わせてアーサー王の動きを正確に捉え、フェイントや業に翻弄されること無く立ち回れる。

 

 「そらそらそらぁ! やっぱりこっちのほうが馴染んで良い!」

 

 「マシュ! キャスターを援護して! 一気に攻め込んだほうが良い!」

 

 マシュも加わり、攻める時間よりも守る時間が増えるアーサー王。この展開になるには時間とこのメンバーの合流が必須だった。初めからアーサー王が攻め込み、キャスターを狙っていたら合流自体が危険であり、他の跋扈していた英霊との襲撃で誰かが倒れ、準備もできなかった。

 

 「メディアさん・・・令呪を持って命ずる。マシュたちの援護に全力を注いでください!」

 

 その王として本拠地にて座して待つ姿勢がこの不利を招いたとキャスターは確信している。そして、この戦も綱渡りから勝てるだろうと希望を手にしていることも感じ始めている。

 

 「ふふふ・・・面白い命令ね・・・応えましょう。マスター!」

 

 令呪による命令、それによって流れ込む膨大な魔力を惜しげなく攻撃に変換してアーサー王に叩き込むメディア。攻撃は苛烈さを増し、連携も冴え渡るばかり。キャスターの攻撃以降、防戦一方のアーサー王。なぜかマスターを狙うこと無くマシュを狙うことに意識を向けていることも追い詰められる一因であり、盾で攻撃を防がれ、槍で鎧を削られる。

 

 仕切り直そうにもメディアの魔術が行き先を阻み、移動の先を読んでキャスターが回り込み、逃さないようにマシュが盾を全面に出して視界も起動も阻む。

 

 「キャスターさん! 今です!」

 

 「おうよ! 吹っ飛べやあ!」

 

 そのパターンに入ってマシュも馴染んできたのか盾を横にして移動先を塞いでキャスターの力任せな槍の打ち上げがアーサー王の横っ腹に叩き込まれる。

 

 「ッ・・・・!」

 

 鎧の一部は砕け、地面に叩きつけられるもすぐさま姿勢を立て直すアーサー王。遊ぶつもりが予想外の連携に追い込まれ、このままではあの少女の盾の真偽を確かめられない。直感、それにあれ程の盾を使う英霊はそうはいない以上ほぼ確定しているのだが、それでもこの目で確かめていない。立ち上がった場所からもう一度距離を取り、一度息を吐いて気を落ち着けていく。

 

 「このままチマチマとやるのは面倒だ・・・まとめて消し飛ばしてやろう・・・・・」

 

 剣を下段に構え、身体から溢れ出る魔力をその聖剣一つに収束していくアーサー王。漆黒の剣はさらなる暗黒を吹き出しては収束していく。

 

 間違いなく宝具開放。戦局をひっくり返すための一手を打つ、そして、マシュの盾を確かめるために巨大な一撃を叩き込むためだ。

 

 「――卑王鉄槌。極光は反転する――光を呑め!」

 

 その魔力は余りにも膨大で、その恐ろしさは竜を見たことがなくてもその姿をはっきりと幻視するほどに鮮明で、見るだけでかつていた竜の吐く息吹を連想させる。

 

 「・・・・! 皆さん、私の後ろに! 宝具を開帳・・・・・・あの攻撃を受け止めます!」

 

 その攻撃の予想される直線上にマシュが立ちはだかり、盾を構える。わからないが、身体が動いていた。アレは逃げてもどうせ殺される、ここ全てを吹き飛ばしてなお有り余る必殺のものだと、何故か分かっていた。シンプルで、とても強力な一撃を放つものなんだと。

 

 「待ちなさい! マシュ!! アレを受け止める!!? 無茶よ! そんな事を無駄死に・・・相手はあのアーサー王、その聖剣のエクスカリバーよ! 勝てる道理が・・・」

 

 「所長! マシュを・・・信じましょう。多分、マシュが、その英霊の・・・本能で分かっているんだと思うんです。受け止めないと全滅なんだと・・・」

 

 「っ・・・あぁぁあぁぁぁぁあぁあぁぁああ!!!! もう・・・分かったわよ! マシュ、勝ちなさいよ! これは命令よ!」

 

 藤丸も、短い付き合いながらにマシュのやろうとしている行動を汲み、彼女の後ろに立って下がらない。マスターと、自分を先輩と呼び慕っている女の子の行動に付き合うことを選び、オルガマリーは危険度を知りながらも初めて宝具を開帳した時のあの輝きに賭けるしか手段はないとやけっぱちながらに選んで行動をともにすることにした。

 

 そうこうしているうちにアーサー王の準備は整い

 

 「約束されたー――――勝利の剣――――!!!(エクスカリバー・モルガン)

 

 悍ましき漆黒の極光の津波が放たれる。すべてのものを飲み込み、破壊する邪竜の息吹を思わせる光の津波。歯向かうものすべてを食らい付くして壊し尽くす鉄槌はマシュ達に向かって一直線に襲い来る。

 

 「仮想宝具・疑似展開/人理の礎――――!!!(ロード・カルデアス)

 

 それを防がんと築かれる光の防陣。この破滅の光を、すべてを黒で埋め尽くす闇を一寸たりとも通さないと盾の、防陣の輝きは増していき、光と光の衝突が起こる。

 

 絶え間なく打ち付けられる暴威の奔流に押し流されないように歯を食いしばり、身体を押し付けるようにして踏ん張るマシュ。マグマの洪水が押し寄せてくるような勢いに足の筋肉は悲鳴を上げ、盾を支える手は震えが大きくなりはじめる。それは盾の支えが不安定になることと同じで震えが大きくなり、展開される光の防陣も震え、ヒビが入り始めていく。

 

 「マシュ・・・」

 

 その辛さを、苦しさを少しでも和らげたい、肩代わりしたい一心で藤丸はマシュの盾に手を伸ばして取っ手を掴む。

 

 「・・・・・!! 藤丸くん! 令呪で命じるんだ! 僕のように令呪で命じれば英霊の後押しになる!」

 

 「!・・・えっと・・令呪を持って命ずる・・・マシュ、一緒に皆をこの攻撃から守りきろう!」

 

 元からのアドバイスを貰い、とっさながらに令呪を使ってマシュへの応援になるようにと念じながらの使用。手の甲にある令呪が輝き、一角消えたかと思った次の瞬間、マシュの手の震えは止まり、ヒビの入っていた防陣は修繕されて元の美しい輝き、それ以上の輝きを放つ。

 

 「了解です・・・先輩・・・必ず、やり遂げます・・・やぁああぁああああ!!!」

 

 これだけの期待をされ、震えるほどの恐怖を乗り切ってそばに居てくれる人。信じて後押ししてくれる人。令呪によるバックアップだけではない。信じてくれる。それがマシュの心に発破をかけ、今までの消耗を吹き飛ばして盾を握る力を一層込めていく。

 

 「・・・消えろ」

 

 その足掻きを終わらそうと更に暴威を振るう黒の極光。防ぎ切ると輝きを取り戻して更に増す光の壁。衝突はいつまでも続くかと思われたが

 

 「消えるもんか! 令呪を持って命ずる! キャスター、セイバーの後ろに移動して! 続けて命じる! 思いっきりの一撃を放ってくれ!!」

 

 「ああ、これだけ受け止めりゃすげえ守りだって知るには十分だろう? 騎士王。もう終わりにしようぜ!」

 

 「なっ・・・!?」

 

 藤丸の令呪のさらなる使用によって極光を浴びること無く瞬間移動したキャスター。二角の令呪の使用によるバックアップで充実した魔力を使い、此方も宝具を開放する。

 

 「本日一番のものを喰らいなあ・・・! 焼き尽くせ木々の巨人『灼き尽くす炎の檻』(ウィッカーマン)!!!」

 

 前の発動よりもよりも焔の勢いを増し、巨大さを増した巨人がアーサー王の後ろに出現。マシュの宝具を打ち崩そうと意識が向いていたことに加えて凡庸なマスターとしか考えていなかった少年の機転はその直感を上回り、剣先を変えようとする頃には巨人の腕に掴まれてしまい、胸の檻の中に放り込まれる。

 

 「きゃっ・・・!」

 

 「わぁっ!」

 

 それによってマシュたちへの極光は消え、踏ん張っていたマシュは押し返すものがなくなったせいかつんのめるように前に倒れ込み、一緒に盾を握っていた藤丸も転んでしまう。

 

 そこから顔を上げれば業火を身にまといながら騎士王を焼いていく木で編まれた巨人。特訓の時の比ではない火力を放つその巨人にあの騎士王は倒されたのかと思った藤丸。一瞬の戦況の変化、自身が死にかけたその巨人との再びの対峙に此方への敵意はないと分かっていても思わず硬直するマシュ。

 

 「・・・・っくふ・・・メディアさん・・・令呪を持って命ずる・・・ウィッカーマンごと、アーサー王を拘束出来る魔術を用意してください・・・・・!」

 

 一方でもはや地獄でもそう見ることはないであろう激しい炎に包まれている木で編まれた巨人。その中に放り込まれて尚安心を、いや、念を入れるべきだろうと考える元は身体に鞭打ち、さらなる令呪の使用による拘束。

 

 下手な攻撃ではあのウィッカーマンの火力を下回る可能性が高く、寧ろ壊してアーサー王が脱出する可能性を生みかねない。ならそのまま拘束してそのまま倒す事を選ぶ元。

 

 その判断、メディアの行動で魔法陣が完成しようとする前に・・・

 

 「あっ・・・あぁあああ!!!!」

 

 「なっ・・・・!」

 

 「ウソ!!?」

 

 ウィッカーマンを切り裂き、アーサー王が脱出する。肌はただれ、焼け焦げ、鎧もあらゆる部分が溶けて無残な姿。傍目から見ても死んでいないのがおかしいほどの火傷、ダメージを追って尚気勢を上げ、魔力放出で魔法陣から脱出してマシュに斬りかからんとする。大聖杯を守ろうとする考えと、マシュを試す考え、敵を排除する考え全てを抱えたアーサー王の一撃は硬直していたマシュの喉元まで剣先が伸びー――――

 

 「蹴鞠」

 

 届かなかった。突如洞窟の奥から飛んできた刀がアーサー王の肩を貫いて姿勢を崩し、刃をマシュから遠ざける。その光景に呆気にとられるもすぐさまマシュも立ち上がって盾を取り、思い切りアーサー王の心臓めがけて叩き込む。

 

 「はぁあああ!」

 

 「ぐっ・・・・ほ・・・・!」

 

 胸に一撃を叩き込まれてたたらを踏み、その先に完成したメディアの魔法陣による拘束。もうこれ以上は体を動かすことも叶わず、完全な八方塞がり。

 

 「これで・・・終わりです! アーサー王!!!」

 

 トドメの一撃にマシュが放つシールドバッシュをモロに喰らい、騎士王・・・アーサー王は膝をついた。

 

 「・・・・・・・・・・・・フ。最初から聖杯を守り通す気で・・・いや、最初からもっと積極的に動かなかったのが敗因か・・・変に考え、傾いた挙げ句の敗北・・・油断と言うべきなのだろうな・・・」

 

 その目に既に戦意はなく、気配が希薄になっていくことから一同は感じていた。もう死ぬ寸前、消失する前なのだと。

 

 「結局・・・どう運命が変わろうとも・・・私一人では同じ結末ということか・・・」

 

 「あ? どういう意味だそりゃあ。テメェ。何を知っていやがる?」

 

 小さくなっていく、絶え絶えな声の中に混じっていた単語に反応するキャスター。聖杯を何から守っていたのか、そうだとして、なにに備え、待っていたのか。未だ不明な点は多く、未知が多い。それを知っているのなら今すぐにでも欲しい。情報を聞き出そうとするが

 

 「いずれ貴方も知る・・・アイルランドの光の御子よ・・・グランド・・・オーダー・・・聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだという事をな・・・おい・・・娘・・・いや、マシュ・・・だったか・・・?」

 

 「は、はい・・・」

 

 いよいよ消滅、座への退去が始まろうとする最中、マシュへ声を掛けるアーサー王。マシュがそれに応えると鎧の一部を無理矢理に引き剥がしてマシュへと投げ渡す。

 

 「その盾、見事だった・・・・受け取れ・・・王からの・・・・褒美というやつだ・・・この・・・刀の主にでも相談するが良い・・・さ・・・」

 

 それを言い切ると消滅。完全に反応が消え去り、刺さっていた刀が地面へと転がり、マシュの手には黒い鎧の欠片が残るのみ。

 

 「おい、コラ! 言いたいことだけ言いやがって! それはー――おぉおお!? やっべえ! ここで強制帰還かよ!? ああ、クソ! 納得いかねえがしょうがねえ! 坊主! 良い采配だった! 後は任せたぜ! それと所長さん、サポートありがとよ! 後は・・・あの姉ちゃんに次はランサーで喚んでくれと伝えてくれ!」

 

 取り敢えず言いたいことを言い切って笑顔で消えていくキャスター。最後まで爽やかで頼れる兄貴分としていてくれた頼もしい英霊の退去を見届けた一同。

 

 「ふぅ・・・いやぁ、疲れましたね・・・皆様、無事に勝ったようですね。お疲れ様です」

 

 「うっへえ、こりゃあすげえ荒れようだね。中で怪人でも暴れたのか?」

 

 そこに合流した五体満足、怪我も特にない二人の声を聞いて、外のアーチャーも倒し、無事であったことに藤丸達は喜びの声を上げた。




取りあえずはアーサー王撃破。深夜テンションでかいたので正直不安だらけです。でも、無事に出せてよかったです。

ぶっちゃけ、アルトリアの強さはシンプルで厄介だと思います。そして、キャスニキはキャスターらしい前準備でランサーとして暴れる。なんかズレているような?

華奈が槍の宝具を用意できたのは一度目の人生での鍛冶師の経験、そしてブリテンでも鍛冶をして武器を作っていた話から出しました。

原作でも兄貴、必要なら手段を選ばない仕事人な部分もあるのでこれくらいは大丈夫かなーと。

次回は・・・所長の運命やいかに?

最後にUA 53917件 しおり 147件 お気に入り 411件 有難うございます!

それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。
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