転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「ほう・・・ふむ・・・迷惑もかけたことだ、せめてもの詫びという訳にはいかないが行ってみるとしよう」
「はーい、ここにサインをお願いします。ふぅ・・・これで今季のものも無事に納品完了。お代は妖精郷に送られるそうですし取りあえずはこれで一段落・・・? む? この感覚は? ・・・・・まあ、少しの寄り道くらいなら」
~カルデア~
華奈「皆さん到着ですね。さて、始めましょう」
元「僕は準備に入るからいいけど、華奈もどうしてこっちに?」
ロマニ「すぐに分かるよ。さ、電力のスイッチを入れて。準備開始だ」
カルデアの召喚ルームに入った一同。独特な雰囲気とマシュの盾を模した召喚用の土台。その他の施設とは違った空気に慣れたメンバーでも改めて気を引き締める。
今残ったメンバーの殆どはここでの召喚を見ることがないままであったために、理屈やシステムは分かっていても目の前でそれを行うことは無かったことから緊張する。
「ここが召喚ルーム・・・」
「そう、ここで英霊を呼び、契約を結びます。取り敢えず今回は多くは呼べないけど」
華奈、ダ・ヴィンチ、冬木で遭遇した英霊。人類史に刻まれた綺羅星の英霊。超常の存在がここから招かれる。それを目の当たりにするというのはやはり何かを感じ、緊張を感じるのも仕方ないこと。
「今回の爆破テロで藤丸くん以外のマスターに渡していた触媒、予備の触媒は殆ど全てが消失したり、マスターと一緒にコフィンの中だからね。解凍しての治療にかける時間も電力もないし、今回は縁召喚でお願いしたいな」
「はい。爆破の様子では触媒に関しては念入りに燃やされていましたからね。仕方ないことですが、現代に残った英霊たちの聖遺物が無くなるというのは・・・・・」
今回行う召喚の使える触媒はアーサー王の鎧の欠片のみ。残りは殆どは使えない、使い物にならない。若しくは管理、秘密裏にいくつか手元に置けた華奈も『戦闘向きの方々ではない』という理由から持ち出していないのだった。そして、英霊たちの力の一端を知る故にショックをマシュは感じているようだった。
「まあまあ、確かに触媒の損失は痛いが、今は招かれる英霊を想像しよう。ランダムや縁でも誰も彼もが世界に名を残した傑物。そんな暗い表情じゃ迎えられる側も気分が悪いだろう?」
召喚の準備のためにコンソールをせわしなく叩きながら茶化すようにダ・ヴィンチちゃんが笑う。それに釣られてマシュも表情を明るくする。これから共に戦い抜くための呼び声に応えた人たちに申し訳ないと気分を変え、改めて召喚への期待を募らせる。
「そうですね。どなたかはわかりませんが、ここに来てくれるみなさんに申し訳ないですものね!」
「そうそう。その意気だ。そのほうが強い英霊も来てくるかもってもんだ」
「ところで、華奈さんはここに入らないの?」
明るく応えて花のような笑顔を咲かせるマシュとは反対に、藤丸はなぜか召喚ルームに入らなかった華奈のことを疑問に思う。今回召喚するメンバーはオルガマリー、藤丸、華奈の三名のはず。それなのに召喚のための管理室に入ってここに入ってこようとはしない。
「ああ、そのことですか? 私が触媒になっては嫌なので」
「触媒?」
触媒になることがなぜ嫌なのかとますます頭の中で疑問が浮かぶ。円卓の騎士。しかもアーサー王も凌ぐ可能性があると謳われる騎士に馳せ参じる面々なら十分すぎるほどの戦力ではないのかと。
「私がいると私に引かれて円卓が来るかもなんですが、その場合相性が良いのは基本「私」であって皆様でない可能性が高いのです。それよりは皆様の呼び声に応える英霊や紡がれた縁で呼んだほうが今後も共に戦いやすいです。受肉した英霊なんて触媒として強力すぎて皆様の縁も何もかもを無視して反応しかねませんから」
「しかも華奈の場合は円卓の人材潤滑剤にオークニーとの橋渡し役。間違いなく馳せ参じたいという円卓、あの時代のブリテン、オークニーにいた英雄は皆来てしまいかねないよ」
「そう・・・じゃあ、華奈は最後になるのね。私に応えてくれる英霊・・・・・・か」
華奈の答えに納得すると同時に『自身の声に応えてくれる英霊』という声にオルガマリーは強く感じ入ってしまう。色々と災難すぎる始まりだが、自身の思うような肉体に再構成されて復活した肉体はレイシフト適正にマスター適正も完璧なものだった。
眼の前で見たあのとんでもない力を振るうかつて世界にいた者たちが自分の呼び声に応える。ありえないはずだった行いが出来る。胸が高鳴ってしまう。拳を握りしめ、召喚台の前に立つ。
「ロマニ。準備ができたら頼むわ。まずは私が・・・・・・・」
「了解です。準備はほぼできていますので・・・始めます」
やがて回り始める召喚サークル。電力を魔力に変換するシステムを使用して膨大な魔力が渦を成し、収束を始めていく。
その魔力の渦が環となり、三本に収まる。環が収縮し、大きく光ったと思った次の瞬間。一人の男が立っていた。
「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した。・・・・・・・君が私のマスターかね?」
そこに立っていたのは背の高い伊達男。見るからに鍛え抜かれた褐色の肉体を赤の変わった外套に黒を基調とした衣装に身を包む。白髪をやや後ろに流している涼し気な風貌。に黒色の瞳。
その細かなものはさておき、大まかな姿形には酷く覚えがある。冬木で遭遇したアーチャー。華奈とストーム1が倒した敵の一人。
「ええ・・・私が貴方のマスターよ。こんな状況だけどどうか力になってほしいわアーチャー」
それでもあれは泥に汚染されたもの。今眼の前に立っている男はそんな余計なものは無く、冬木で紡がれた縁、自分の声に応えてくれた英霊。
応えてくれたその戦士に手を差し出して握手を求めるオルガマリー。
「そうか・・・冬木での私が粗相をしたようだね。その分此方で働いて借りを返そう。見事な礼装に身なりだが、この組織の主かね?」
「あ、はい。カルデアの所長をしているオルガマリー・・・」
握手を返して笑みを浮かべるアーチャー。そしてその間にパッと見で見繕った礼装を吟味していく。
「では、取りあえずはこの施設を回ってこよう。君のサーヴァントである以上カルデアを知り尽くしていかねばならん。君のサーヴァントとして、バトラーとして戦い抜くと誓おう。では、後がつかえていそうだ。此処を去ろう」
ニヒルな笑顔でペラペラと早口で喋った後にすぐさまカルデアを見て回ろうとしていくアーチャー。一応はこの事はカルデアのモニター全てに中継しているので騒ぎは起きないだろうが、その速さに一同が呆気にとられるばかりだった。
(これ、もし中継していなかったら狼やイノシシ達に襲われて更にはヤマジやクラーク、ストームに襲われていますよねえ・・・良かった。警戒の面からも映像を流しておいて。冬木の件、若しくは今回の召喚された理由で興奮しているのでしょうか?)
一人自分の用意した警備で余計な騒ぎが起きなかったと安心する華奈をよそにその驚きから開放されていく面々。
「い、意外と愉快そうなサーヴァントね」
「はい・・・すぐに仲良くなれるかもです」
「ふむ。あの方は器用万能の戦上手。十年前も現代機器も活かしてあの手この手で立ち回りましたし、オルガマリー様はいい英霊を招けましたね」
十年前の聖杯戦争ではマスターを守る拠点にワイヤートラップ、毒、ブービートラップ。その他にも考えうる限りの魔術と科学、兵器を動員した守りを披露していた。このカルデアの守護や理解、そして華奈が頼みたいことも出来る英霊が来てくれた。これから多く招くであろう英霊とのクッション役や相談役。人材補充としては合格以上のものだろう。
「ホント! やったわ! バトラーもしてくれるみたいだし、いきなり当りかしら! ? でも、ステータスは低かったような? あ、でもキャスターの例があるし・・・・・・・後でいろいろ聞かなきゃ。宝具とか、戦い方とか・・・」
華奈からの太鼓判。そしてカルデアとも相性が良さそうな英霊。しかも執事としても行動すると言ってくる物腰も悪くない英霊が自分に来てくれたことに小躍りするオルガマリー。その映像もバッチリ中継されることを忘れ、その嬉しさに身を委ねてしばし浸っていたところで現状を思い出し、顔を赤くして咳払いをする。
「お、オホン・・・! 私は終わりました。藤丸君。貴方の番よ。マシュが倒したわけだし、その騎士王の鎧、使うのかしら?」
「うーん・・・」
オルガマリーの話に乗っかり、手にしていた騎士王のかけらを見やる。これを触媒にすればあのアーサー王が来てくれる。気がつけば目の前に一足で飛び込んで華奢な体に見合わない剛剣を振り回し、その聖剣からはすべてを飲み込む強烈な光の渦を放つ。正に誰もが知る最高峰の英霊の一角。
ただ、そのアーサー王もいいが、藤丸はそれ以上に思い出していた人物がいた。キャスターだ。右も左も知らない自分を見てくれて、マシュと一緒に成長することを見守り、導いた一人。明るく、嫌味一つ無い明るい兄貴分。味方だっからという贔屓もあるが、エクスカリバーを知って尚怯まずに戦っていった胆力、槍を使ったキャスタークラスとは思えないほどの暴れっぷり。
「いいえ。華奈さん。これを預かってもらってもいいですか?」
そんな彼ともまた一緒に戦いたい。ランダム、縁に依るものが多いがそれに賭けてみたい。藤丸は騎士王の鎧の欠片を一度召喚室を離れて華奈に渡して召喚室に戻っていく。
「いいですが、よいのですか?アーサー王と一緒にいられるチャンスですのに」
「いいんです。それに、多分華奈さんに呼ばれる方がアーサー王も嬉しい気がして」
ニッコリと笑い、召喚台の前に立つ藤丸。それを見た華奈は元に目配せで頼み、スイッチを入れてもらう。
「来てくれるかなぁ・・・」
「きっと来てくれます。だって、槍で呼んでくれと言っていましたし」
マシュもキャスターが来てくれることを望んでいるのだろう。ワクワクした様子で召喚サークルをじっと見つめ、誰が来てくれるのか穴が空くほどに見つめる。
「・・・おお? これはかなり大きな魔力反応・・・英霊の中でも格の高い英霊が来るようだ!」
ロマニの発言の直後にオルガマリーのときと同様に召喚台に魔力が渦巻き、収束、三本の環となって集まりった後に再び英霊が立っていた。
「槍の英霊ここに参上ってな。お? どーもキャスターの俺が世話になったようだな。改めてまたよろしく頼むぜマスター」
青を基調とした白いラインが走るタイツに前進を包み、血を思わせるような赤い瞳は獣のように鋭く、また手にした朱槍もそれに負けずに朱の輝きを放つ。青い髪は後ろに流して一部の長い髪は一つにまとめている。身にまとう衣服や武装は違えどその声や顔、雰囲気は違えるはずもなく、冬木で共に戦ったキャスター。その槍の、本来一番得意とするクラスでの姿だ。
「宜しく! っと・・・ランサー?」
「ああ、わりいわりい。二度目の厄介だってのに名前を教えないのはな。あの姉ちゃんや兄ちゃんがいるなら問題ねえか。俺の真名はクー・フーリン。しっかりと預けたぜ。マスター」
「は・・・・・・? く、くくく・・」
「クー・フーリンですってええええええ!!!!? 何よそれ!!? ヘラクレスやギルガメッシュ! ラーマレベルの最高クラスの英霊じゃないの!!」
「あはは~・・・ドルイドの時点でケルトとは予想していましたがねー」
サラリと告げられる事実と爆弾。ケルト神話の主人公の一人にして最高クラスの実力者。作った伝説は限りなく、その強さはまさしく無双。数多の武器を手にして戦場を駆け抜けた最強の一人。それがこのカルデアに馳せ参じた。その事実に華奈を除いた全員が驚く。
「す、凄いです! あのクー・フーリンさんに教授してもらって一緒に戦えたなんて、それもこれからもまた!」
「いや~つってもこの状態はまだまだでな。本当の俺はもっと凄いんだが・・・なにせ普通の人間の魔力の総量じゃな。ここのサポートがあっても・・・カナ? だっけか。あの姉ちゃんぐらいだろう。今ん所万全の俺を呼んで無事、問題なく戦えるのは」
少し申し訳なさそうに頭をポリポリとかきながら話すクー・フーリン。その言い分も最もであり、英霊という人間の中でも超弩級。限界の限界、その先に立っているような存在は普通に呼び出そうとすれば成功なんて出来ない。それ故に聖杯戦争でも英霊の一側面だけというクラス分けをして必要なエネルギーを少なくし、更には聖杯のバックアップもある。
このカルデアは聖杯のバックアップを電力、科学を用いて足りない分を補っているわけだが、それでもクー・フーリンほどの英霊をフルスペックで召喚となればそれに用いる魔力、それを一気にマスターに送り込むことによる設備とマスターの魔力回路の負担。成功しても長く持つのは難しく、設備かマスターのどちらかが悲鳴をあげるのは明白だった。
「だがまあ、それでもそこらの輩に負けてやるほど衰えてはいねえ。名前を預けたんだ。最後まで戦い抜いて勝利をくれてやるさ。だから、頼ってくれよ?」
そんなハンデを負ったも同然な状態でもその鋭い、突き刺さるような闘気と覇気は曇りもなく、目はギラギラとこれからの戦いに心を踊らせている。クランの猛犬。その名前に偽りがない荒々しさを醸し出す。
「何やら大きな声がしたが大丈夫かマスター? なにか変な英霊でもよん・・・・・」
「げっ・・・おめえは・・・!」
先程の大声に反応して戻ってきたアーチャー。その視線の先に移るクー・フーリンをみて眉根を寄せ、クー・フーリンもしかめっ面になりげんなりとした顔を浮かべる。
「また君とか・・・これで何度目だ? いい加減いない職場で働けると思っていたんだが・・・」
「そりゃこっちのセリフだ! こちとら坊主・・・じゃなかった、マスターと一緒に戦って紡いだ縁で来たんだよ! お前みたいにおめおめと負けて敵になってもらえたものとはわけが違う」
「はっ、それがどうした。ここでの働きはお互いにまだゼロ。現代機器にも精通して能力も利便性の高い私のほうがこれからカルデアに役立てるさ。君は大丈夫なのかい? やたら厄介な制約ばかりでマスターを困らなせなければいいのだが」
会うなり先程までのニヒルな笑みが厭味前回でクー・フーリンを煽り始めるアーチャー、それに負けじとさっきまでの明るい笑顔が一転、喧嘩腰になって食って掛かるクー・フーリン。互いに何処かで何度もぶつかっているのか、互いをよく知るような口ぶりで怒気を隠しもせずにぶつけていがみ合う。
「ンだとテメエ・・・表出ろ! ささっとカタ付けてやるぜ。今までの腐れ縁も一緒に座に返してやるからなあ!」
「いいだろう。こちらもいい加減このうんざりする付き合いに熨斗つけて送ってやりたいところだったんでな。ちょうどいい練習場所がある。そこでやろうじゃないか」
アーチャーの言葉で喧嘩する場所が決まったのかシミュレーションルームに足を運ぶクー・フーリンとアーチャー。さっきまでの和やかな空気は修羅場となり、そして英霊同士が喧嘩するという事態にオルガマリーの顔が青くなる。
「あ、待って! まだ調整が済んでいないから・・・じゃなくて! いきなり喧嘩しないで! これから一緒に戦うのに、というかクー・フーリンとあの爆発する攻撃を打てるアーチャーが戦ったら壊れるかも知らないから待って!待ってええぇぇええぇ!!!」
「・・・急ごうマシュ! なんだか怖くなってきた!」
「はい、先輩! 二人の頭をクールダウンさせに行きましょう! そしてついでにアーチャーさんの真名と喧嘩の理由も聞いておかねば」
悲鳴のような静止の声を上げて二人を追いかけるオルガマリー。追随する形で追いかける藤丸に英霊化してついていくマシュ。頼もしい戦力同士の喧嘩に慌てるスタッフと召喚したマスターを尻目に華奈は召喚ルームに入り、ゆったりと構える。
「あーメディアさん? 理由はもう分かるかと思いますが、マシュと二人の鎮圧をお願いします・・・いえ、着せ替えに忙しい? それ以上に大変な事が・・・ですから・・・・」
元の方もメディアに連絡を取り、取りあえずは行き過ぎないうちに二人を制圧するための手はずを頼む。ちなみにその頃のメディアはアンナと咲を捕まえて着せ替え人形にしていたところに召喚された二人を見てしかめっ面になり、さらには喧嘩すると聞いて着せ替えの方に現実逃避。咲から娯楽品の中にあった最新式のボトルシップの提供で手打ちにし、騒ぎを聞きつけたストーム1と合流して鎮圧に乗り出したとか。
~閑話休題~
「さて、私ですが・・・うーん・・・触媒のこれ・・・使ってもどうなるか・・・?」
藤丸から貰った騎士王の鎧の欠片。円卓の自分にと渡されたのはいいが、ぶっちゃけた話、これを使ってもアーサー王は来るのか? という疑問が華奈には浮かんでいた。
自身の知る。というか一緒に戦ったアーサー王は抑止の手が伸びる前に生きたまま妖精郷で過ごし、今も生きているはず。国に関しても仕方ないと被害の少ない方法で亡国を選んだし、その後に度々会っても未練はなかった。それ故に何らかの方法で英霊の座に登録されて何かを求めるほどの強欲はなく。これを使っても呼び出されるアーサー王は自分が知るアーサー王ではなく後世に形作られたアーサー王か別の次元のアーサー王であり、自分と一緒に戦った本当のアーサー王ではない。
あの最高の英霊を招けるというのに渋る自分は贅沢がすぎると分かってはいたが、それでも気が引ける。
(でも、藤丸様、あの戦っていたアーサー王は私達を認めてこれをくれた・・・ふむ・・・・ま、なるようになればいい。また仲良くなれるように頑張りましょう)
「よし。新しい出会いだと考えましょう。元様。お願いしまーす」
「分かった。じゃあ、スイッチオン」
それでも想いを無為には出来ないし、我儘を言える状況ではない。召喚台に鎧の欠片をセットしてスイッチを入れてもらう。
そうして再び行われる英霊召喚。先程の二人と同じく滞りなく、強いて言うなら戦闘音と何やら怒声と悲鳴が飛び交っているくらいだったが、急にけたたましいブザーが鳴り響く。
「・・・な!? 何だこの魔力は!!! 規格外・・いや、英霊じゃない!!? 生体反応あり、そのくせこの魔力量は大英雄クラスだぞ!!」
「クラス測定不能! エクストラクラスの可能性・・・なし・・・生きたものがここに来る!!? この召喚を足場に、移動台にして!?」
「いやいやいやいやいや。幾ら何でもめちゃくちゃだ。華奈、変なものをおいたんじゃないよね? あんまり英霊召喚の経験は積んではいないがそれでもこんなイレギュラーは早々ないと考えるが!」
どうにも英霊ではなく英霊級の力を持った肉体を持つ何かが来る。この召喚の際に英霊の座に呼びかける糸を手繰って。あんまりにもメチャクチャな現実と機器が示す以上に慌てふためく元、ロマニ。その中で努めて冷静であろうとするダ・ヴィンチちゃん。機械を緊急停止、故障かとせわしなく画面を追う三人をよそに召喚は進行していき、光が収まると
「セイバー問題と新鮮なお野菜の相談なら私におまかせ! バウンティーハンター兼農家。コードネームはヒロインX! 昨今社会的問題となっているセイバー増加問題、そして宇宙開拓の中でも失われない神秘も栄養もたっぷりの野菜ならわた・・・・・し・・・に・・・・?」
黒い帽子に突き出てるアホ毛。金糸の美しい髪を後ろで一つにまとめた髪型。美しい青の瞳に女神を思わせる顔立ち。何処か少女らしい身体を青のジャージ、マフラー、膝下ブーツで包み、手には美しい聖剣を手にし、背中にはもう一振り黒で染まった剣を持っている。
その顔に、雰囲気に華奈は覚えがあった。忘れることのない、かつて三度目の転生の後に一度目の出会いは魔女の手下と罵られ、切り結んだ。二度目は同盟を組み、真実を知って涙で机を濡らして彼女は謝った。それからは同盟者として互いに国を助け合い、支え合い、一緒に苦楽をともにして最後は義理の妹として縁を結び、共に国を崩壊させて民を傷つけない道を選んだ。
自身は人としての生を終えることを選んで人生を全うし、彼女は姉や甥たちと妖精郷で過ごすことを選んだ。もう会うこともない、生きている人間は英霊として召喚できない。死んで魂が座に登録されていないから。
「アルトリ・・・・・ア・・・様・・・ですか・・・?」
それがどうした。今目の前にいるはっちゃけた服装と発言だがアーサー王であろう少女は自分を見て酷く狼狽えている。自分を知っている。それも深く
「姉上・・・? 銀嶺・・・オークニーとの同盟・・・・・分かりますか・・・?」
「はい・・・皆います。銀嶺も・・・私も・・・引退後に屋敷で開いた鍋パーティーも・・・!」
自分たちが知っているブリテンでの思い出。それを話すうちに動揺は確信に変わる。驚愕に変わる。ありえないはずの再会。望むべくもない事。それが今叶っている。この事にひたすらに機械を弄る面々、シミュレーションルームでの騒ぎを置いて、二人の時間は引き伸ばされ、何も聞こえない空間が形作られる。
ありえない。こんな事はありえない。そう思っていた。妖精郷で過ごすうちにいくつもの神話の世界、裏の世界同士が繋がり始め、壁はあるものの行けないことはなくなった。
更には英霊の座とも共鳴して接続されたかサーヴァントユニヴァース。そこで自分たちはガウェインたちと一緒に農業をして日々を糧を得て、時には妖精郷以外の世界にもそれを売ったり、何故か増える自分と同じ顔の同一人物らしきものを切り捨てるために奔走していた。
その世界でも華奈は、自分の姉はいなかった。あの宇宙、いくつもの可能性を内包する世界でもいないほどに自分の姉は稀有な可能性、存在だったのか、それとも自分の世界はここだけしか繋がっていなかったのか。
姉を思いながらも王も権力もない、自由に、のんびりと過ごし、休憩時間に馬を走らせ、気ままに宇宙を駆け巡り、果てのない世界を見つめる。満たされた生活。今だってそうだ。今季の収穫を自分たちの分を除いて出来た分をお得意様に届け、連絡を入れてのんびり帰る傍らにかすかに感じた自分を呼びかける声。
普通なら罠だと切り捨てる、そうでなくとも保険や退路を確保して望むが自身の直感が問題ないと告げる。それどころか寧ろいいことがあると。神様ですら勝手にしろと言いたくなるような広さに過酷さをもった宇宙で過ごしていくうちに磨かれた直感。それを信じて飛び込んだ先は謎の設備がひしめく部屋に見覚えのある土台? そして目の前で自分を呼んでいたであろう人物を見て思考が一瞬停止する。
美しい銀糸の長髪、澄んだ蒼の瞳、それに負けないほどの美しい顔立ち。メリハリの付いた上で男を誘うような豊満でしなやかな肢体。あちらも驚いているのか詰まった様子ではあるがそれでも聞こえる優しい声色。
1500年以上の時を過ごしても片時も忘れたことはない。自分の義理の姉であり、第二の剣の師匠。ブリテンで同盟を結んでからは国の崩壊まで長く助けてもらい、苦楽をともにし、「理想の王」という人形の型枠の時間から「ただのアルトリア」という人である時間をくれたかけがえのない人。
「あ、はは・・・奇跡を超えたなにかですよ・・・本当に・・・・・・また会えるなんて・・・」
「私もです・・・姉上に・・・また・・・また・・・・再会できる・・・なんて」
カナ・フナサカ・・・・・いや、船坂 華奈との再会。言葉に詰まる。言いたいこと、今までの出来事で楽しかったことも、自分の手にした技術も山程、いや山脈になるほどある。愚痴だろうと失敗談でも嫌な顔せずに優しく聞いて、必要ならアドバイスもくれるだろう。
けど、感情が渦を巻きすぎて、暴れすぎて言葉が出ない。ただただ、今起こっている出来事に目が潤み、フラフラと互いに歩み寄ることしか出来ない。
「元気そうでよかったです・・・・・・ふふ・・・そちらも変わりないですか・・・?」
「はい・・・みんなげんきで・・・楽しく・・・過ごしていますよ・・・・」
興奮と歓喜が渦巻く中でどうにか嬉しさを表現しようと、嘘ではないと両者互いに抱きつく。その体温、柔らかな身体の感触。匂い。五感を通して伝わるすべての感覚がこれを事実だと伝え、益々嬉しさに感極まる。
(ああ・・・本当に、本当に姉上の香り・・・声、感触・・・また会えたのですね・・・)
このままこの嬉しさに浸り、甘えたい。昔のように一緒に髪をとかしあい、ハチ達と一緒に遊んで、栗毛に乗って遠乗りをしたい。そんな事を考えて甘える姿勢に入るアルトリアだが・・・
「ぬぉおおお! 狼にイノシシ、ホモに骸骨が追いかけてくるってどんな状況だこれはぁあああ!!!! たんまたんま! 俺が悪かったって! だからこのへんな鬼ごっこの状況を止めてくれええええ!」
「跳弾して襲ってくる弾丸だと!? くそっ! こんな状況でなければ一つ解析してみたいのだが・・・!」
「マシュ! そのまま挟み撃ちだ!」
「了解! このまま行けば華奈さんもいますから二人を抑えられます!」
「い~や~!!! シミュレーターの調整を無理やり終わらせた直後に逃げないで~!! もっと脆いから! 昨日修理が終わったばっかりなのお~~!! カルデアをもう壊さないで~~~~~!!!」
「二人が足を止めれば済む話なんだがなあ。全く、きかん坊で困っちゃうね~もう」
その優しい時間も外から溢れ出る怒声と地響き、そしてその元凶が召喚ルームに入り込んだことで淡くも崩れ去る。
「ふ・・・ふふふ・・・・らしい・・・実にらしいとは言える再会ですが・・・・・・・・」
ゆらりと幽鬼のように華奈から離れて静かに二振りの聖剣を構えるアルトリア。その目には驚くほどに光はなく、虚ろで、驚くほどの殺意が隠すこともなく溢れて魔力となり、聖剣に光が迸る。
「んお? セイバー! テメエもいたのか。良かった! ちょっとこの騒ぎを収めてくんねえか?」
「な・・・・・キミも招かれたのか。しかし・・・その服装は一体・・・」
「どいつもこいつも・・・・・・・・・・・1500年以上超えての感動の再会を邪魔するなあああぁぁぁあぁぁあッッッ!!!!!!!!」
その再会を邪魔された怒りをそのまま聖剣に宿したアルトリアはその後修羅もかくやという大立ち回りを披露してアーチャー、ランサーを瞬時に鎮圧し、改めて銀嶺の面々との再会、カルデアの職員、華奈、その家族へ暴走したことの謝罪と自身の経緯を話すことになった。
新しい生きた大英雄の参加にカルデアのメンバーは驚くと同時に希望が増えたことに喜びの歓声を上げ、メディアは新しい美少女がカルデアに参加することに大歓喜。即座に写真を取りまくり、記憶に姿かたちを記憶してはフィギュア作成に乗り出す始末。
なんやかんやその後は華奈と行動をともにするということで落ち着き、やかましいことこの上ない召喚による戦力と人材確保はようやく終わりを告げる。
華奈「え~・・・取り敢えず職員の皆様にもですが、一応ベッドや床、壁紙など自室の質の向上などの資材も一通り用意しています。リクエストが有ればヤマジに連絡してください。彼の大工部隊がすぐに改築するでしょう。英霊の皆様も同様です」
冬利「一応、俺にもその際に連絡は欲しい。万が一の補修材料に残したいものやストック、倉庫の整理のために必要な情報だからそこは適宜頼む」
一同「了解でーす」
~しばらくして~
華奈(これで一応の戦力は整った・・・後は・・・藤丸様の気構えですね・・・少し酷ですが・・・致し方なし。やりましょう)
アルトリア「姉上? 一応連絡は済ませまして、私はここに残って問題ないそうです・・・姉上~?」
華奈「・・・? ああ、はいはい。良かった・・・これから改めてお願いしますね? アルトリア様」
アルトリア「お任せください! この長い間磨かれた剣術、姉上にも引けは取りませんとも!」
華奈「ふふ・・・頼もしいです。今度また組手をしてみましょうか」
取り敢えずこれで召喚回は終了。あといくつかネタを挟んでオルレアンです。長いのは自覚していますが、ネタや必要な準備を含めるとこうなってしまいました。
少なくとも藤丸の特訓とネタを挟んでからオルレアンに突撃です。その時にストーム1も大いに暴れてくれるでしょう。基本特異点にいるときがストーム1が輝くかも?
最後にUA 60219件 しおり 157件 お気に入り 445件 UA6万を超えました! 嬉しいです! ここまでこれるとは・・・! これからもどうかよろしくお願います。
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。