転生愉悦部の徒然日記 作:零課
藤丸「・・・・っ」
華奈「そうです藤丸様。今貴方様は死を避けることが出来ました。そこでマシュ様にサポートのために支給された礼装とかを使って」
藤丸「れ、礼装・・・?」
オルガマリー「えっと・・・藤丸が着ている服には英霊をサポートする機能があって、それのこと・・・」
メディア「はいはい。マリーはこっち。魔術の高みを目指すのなら再復習。諳んじる事ができるほどじゃないと向上は図れないわよ」
ストーム「んまあ、言ってしまえば令呪以外でのお助け機能。バックアップだなあ。なんか色々作っているみたいだが、取りあえずはその服の機能から理解していこうか」
~射撃訓練場~
ストーム1「いいか? 俺やマスターは玩具、映画の主人公みたいに銃を使ってはいるが、銃ってのは化物だ。藤丸が持っている銃ですら金属の小さな塊を音速以上の速度でぶっ放す。その反動も勿論お前さんにやってくる。だから身体の下地、撃つ際の反動の軽減、体を壊さない撃ち方。それをマスターしないといけない。取り敢えず俺が見せる撃ち方を真似してくれ」
華奈「それが出来てくれば英霊は難しいですが、あの骸骨くらいの化物なら牽制、倒せますし、英霊にも効果のある弾丸も藤丸様が上達すれば私が誂えましょう。英霊の作った武器なら、英霊にもダメージが入りますからねえ」
~廊下~
ヤマジ「いいかい藤丸くん、足腰の強さと身体の柔軟性ってのは持っているとそれだけでもありがたいもんだ。銃みたいに物によっては数キロあるブツを持って動いても疲れない、柔軟な身体は変に疲れが一箇所に集中しないから疲れないし、射撃、戦闘訓練でも稼働率のパフォーマンスは上がる。取り敢えず走ってスタミナを付け、ストレッチ。これも必ず血肉になってイイ男に近づくってものさ」
藤丸「は・・・はい・・・」
(二人一緒にランニング中)
~書庫~
アンナ「いい? 君はマシュと契約を結んで、クー・フーリンとも契約を結んだ。これは魔力というパスを通していること、魔術回路が起動していること。これは分かるわよね?」
藤丸「ええと、ようは魔力を使うための専用の通路みたいなものですよね?」
アンナ「大体はね。で、魔術回路が一応は使えて、2騎の英霊との契約も問題ない、礼装も使える。藤丸くんも魔術を使える下地が出来ているの。というわけで、魔術の初歩の初歩から教えていきます。いいですか?」
藤丸「はーい。何だか、魔法使いの学校に来た気分だ!」
アンナ「うふふ。喜んでくれたようで何より。じゃあ、取りあえずは魔術回路のスイッチの切替から・・・」
華奈から叩き込まれた殺気をぶつけられるという荒行を受けて以降、藤丸は何度もその身に感じた死のイメージ、それを遠ざけるための訓練を銀嶺、ストーム1から学んでいた。
礼装という英霊を助けるための自身の装備、護身用の銃の使い方。スタミナ、疲れにくい身体の下地作り、魔術の勉強とそれなりにハードなものだがどの訓練がどのように自分を生き残らせる可能性を上げるのか、マシュやクー・フーリンとどのように連携できるかというものが明確に示され、それを骨身まで理解して真剣に取り組むのだから成長も早い。
今では華奈の殺気を受けて尚歩み寄ることも可能になり、スタミナも部活をしている同級生には及ばないが、それでも日本の十代半ばの少年の中では高い水準になっていく。
このことに藤丸はそれが楽しく感じていたし、何よりも英霊たる存在が自分の事を見て教えを施し、成長している部分をしっかり褒める。そしてそれが自分と契約してくれたマシュやクー・フーリンと同じ戦場で戦える、勝率を上げる結果につながっている。最初は怖くて仕方がなかった華奈の訓練も今では楽しみの一つになっていた。
華奈も最初の荒行以降は基本の基本、藤丸という少年に合わせたカリキュラムを作れたことも大きい。こんな状況故に最初からあんな訓練を課したがそれが一番必要だったし、それさえ超えてくれれば精神の補強、恐怖を実感した上での無駄がない訓練は幾らでも用意できる。教育係としてオークニーでガウェインらを育て、円卓では剣術指南、銀嶺を育てた経験は伊達ではない。
そうしているうちに藤丸も華奈達に一層興味がわき、ゲームのキャラクター、円卓の女騎士という事以外でも知りたくなって調べていった結果、一つ、ある意味どうしてそこに目が行くんだという疑問が湧いた。それは
「何であんなに料理がうまいのに最近までイギリスはメシマズだったのか」
ということである。
イギリスのメシマズはイギリスのことをよく知らない藤丸でも聞き及ぶほどのネタであり、少し前に見たバラエティ番組でもタレントや芸人がその料理の味に驚いて現地の人に話を聞くという企画を見たことがある。結果はまあ勿論メシマズ、旨い店をようやく見つけてラッキーというものだったが、1500年前以上のブリテンでこれほどの料理が出来る人がいるのになんでこうなったのか。不思議でしょうがない。
このカルデアに来てからというもの三食の食事はエミヤという英霊以外にも職員の良馬さん、そして華奈、アンナ、他にも銀嶺のメンバーが作ってくれるがどれも美味いものばかり。
何でこうなったのかということを訓練がない休みの日が出来た藤丸は華奈の部屋に向かい、ばったりあったマシュも合流して面白そうだからと二人で行くことにした。
「華奈さーん、マシュですが、いますか~」
「華奈さん、いますか?」
扉の前について声を掛けるも反応はないまま。扉にはいるといことになっているのだが、寝ているのだろうか。そう考えていると何やらドタバタと騒ぎが起き、しばらくの間を置いて扉が開く。
「ああ・・・おまたせしました。どうなさいましたか?」
そこには少し頬を赤らめ息を浅く切らした華奈。後ろで少しもったいなさそうに華奈を見つめるアルトリア。何があったのやらと思うが、あえて突っ込まないことにした。銀嶺のメンバーが何処かズレた所。とりわけヤマジはいわゆるガチホモだったし、わりかし華奈もぶっ飛んでいるのだろうと。
「いえ、その・・・先輩がブリテンの、イギリスのメシマズについて疑問だそうで。華奈さんや銀嶺の皆が料理がうまいのに、何で一族に料理が伝わらなかったのか。と」
その旨をマシュが伝えると華奈もアルトリアも苦笑いを浮かべ「ああ」といった表情になる。
「では、少し時代をさかのぼった授業・・・まあ、解説になりますがいいでしょうか?」
「どうしてもそこら辺は歴史を遡る必要がありますからねえ。宗教に時代の流れ・・・少し大変ですが」
「授業や教え方も面白かったですし、お願いします」
頼む藤丸を見てやりますかと準備を始めるアルトリア、華奈。早速授業を始めるためのホワイトボードや資料、本をあさり始めていく。
「取り敢えず小さい会議室でやりましょうか。少し準備をしますのでお待ち下さい」
それを聞いて少しの間食堂で時間を潰すために移動する藤丸とマシュ。その間もアンナが作った「よく分かる魔術。その第一歩と肉体強化のイロハ」を読み進め、マシュに指摘してもらったりして充実した時間を過ごし、その光景を周りからからかわれたが。
~しばらくして~
十人くらいが集まって話せる小さめの会議室に時間になってそこで待機するマシュ、藤丸、途中から合流したオルガマリー、ロマニ、咲、フラム、元の面々。まだかまだかと待っていると
「アルと!」
バニーガールの衣装に身を包んで涙目のアーサー王と
「華奈の!」
女性用のリクルートスーツに身を包んだ華奈が現れ
「「なぜなにブリテン! メシマズ編!!」」
黒子役のストーム1がテロップの看板を出して良馬がSEを出す。何ともまあカオスな授業が幕を開ける。
「あ、姉上! 何でウサギさんでもこのウサギさんなんですか!!? 肌が、恥ずかしいです!」
「あら、こういう授業じゃなかったかしら?」
「何の授業ですかそれ! こんなうさぎが闊歩する番組子供の前で見せられるわけ無いでしょう!!?」
「確かに。あれ? 私何と勘違いしてたのでしょうか」
いきなりの相方のズレと何故乗ったしと言いたくなるような司会と進行役の暴走に一部は呆然とし、一部は写真を取りまくる。野次馬が増え、どこかの魔女も参加した辺りで茶を濁して言ったことに収集がつかず。
「お色直しをしまーす!」
アルトリアの発言で一度華奈と離れ、着替え直すことに。
~またしばらくして~
「はい、というわけでブリテン、イギリスのメシマズ文化なんですが、取り敢えず大きな原因は産業革命と言っておきましょう」
ようやく元ネタのお姉さん服に身を包んだ華奈。うさぎのきぐるみを着込んだアルトリアが戻ったことでようやく始まった授業。
「産業革命と言うとお姉さん、いわゆる蒸気機関のあれだよね?」
ホワイトボードをめくると現れる蒸気機関車、その他のイラスト。教科書や歴史の挿絵でも見たことがある絵が描かれている。
「そうです。いわゆる技術のブレイクスルー。世界が一歩科学の世界に足を踏み入れたもの。人と馬の時代から蒸気と機械、そして鉄道の時代へとシフトしていく時代ですね」
「私達魔術師にとってはあんまりいいものではないけれどね。古いもの、神秘が一気に無くなっていくわけだし」
少し渋面を作って複雑な表情を浮かべるオルガマリー。科学と魔術の融合故にカルデアには必要なものだが、それでも魔術師としてはあまり受け入れたくはないものである。
「一気に世界が変わった時代だよねえ。これで工場とかが出来てイギリスは世界の工場と呼ばれたりしたし」
「でも、少し変だよねお姉さん」
「ん? 何がかなあ?」
「だって、今では蒸気機関は古いけど、当時はそれが最新の技術で、ある意味未知の技術でしょ? 産業革命前のイギリスにそんなお金、何処にあったのかなあ」
産業革命は藤丸も知っている。教科書で小中学校で聞いたし、テストでも必ずと行っていいほど出たから嫌でも覚えた。けど、考えてみればそうだ。
「確かに・・・新しい技術、それを作るだけでも凄いコストがかかるのに、何でそれがすぐ実用化して、量産できて革命になるほどの下地があったのでしょうか?」
マシュの疑問ももっとも。所謂最新の機械を国中に設置しまくる。そんな金をボコボコ出して蒸気機関や道具を買って革命と呼ばれるほどに普及した。たしかに異常だ。
「うんうん。たしかにそうですよねえ。では、産業革命の前にイギリスはもう一つの時代がありました! それは何か。ずばりこれ!じゃじゃーん」
華奈の言葉に合わせてホワイトボードを回転。そこに描かれてたのは
「大航海時代と植民地経営、奴隷売買です!」
黒人奴隷を船に押し込める白人の船乗り、そして市場でそれを売っぱらう絵に優雅に屋敷でコーヒーを飲むオヤジの絵が描かれていた。
「「思った以上にえげつない!!」」
そんな授業を受けに来た生徒の声はまんまスルーしてその絵を見せたままアルトリアと華奈は話を進める。
「17~18世紀は大航海時代とアジアから紅茶やコーヒー、所謂喫茶文化が入ってきました。お茶にコーヒーは薬や健康商品として入ってきたのですが、何せ当時のヨーロッパの水分補給は水、でもそれも腐るのでより保存の効く酒だったわけです。」
「でも、それ以外で水分と分離できて多くが運べたり、保存できる、しやすいお茶、コーヒー豆はワインよりも効率がいい。しかもそれらは酒と違って眠気を飛ばす効果があったし、労働者の効率も段違い。だからイギリスはみんなこれを求めたんだね。朝の一杯なんて基本皆アルコールだったわけだし、庶民、下層階級は質も劣悪でまずいものが多いし」
「そのとおり! 朝からしゃっきり、運動能力も酔いがないから下がらない! 二日酔いでの身体への影響もない。いいことづくめの魔法の飲み物だったわけです。だけどまあ、需要が増えれば値段が高くなるもの。仕入先の国から足元見られたので此方で用意してやろうと考えて植民地を活用したわけです」
今度は二日酔い、酒で水分補給して少しけだるげに仕事に向かう労働者と茶でリフレッシュした状況の労働者の比較したイラスト。カフェインを服用するのとアルコールの服用の違いは理解できるのもの。
「ともあれ纏めますと、皆がわかり易い言葉だと三角貿易、大航海時代に開けた航路で設けたお金がイギリスなどのヨーロッパに貯まり、それを下地に産業革命時の機械の大量生産、設置が可能になったわけです」
「その中で茶葉やコーヒー、砂糖などを安く手に入れることができるようにもなった。この事も覚えておいてね。なにせ美味しいものが安く手に入るし、わざわざ温暖な国から高値で仕入れないようにするために航路や植民地を使用した部分もあるってことを。まあ、その「安く、大量に」のための戦力として植民地の人間や買った奴隷を使用したんだけど」
「あー以前姐さんに少し聞いたが、確かヨーロッパは頭金の三倍くらいの利益を手にしていたんだっけか。三角貿易やこのころの奴隷貿易で」
「なかなかにハードだよねえ・・・というか奴隷の扱いが酷い」
だいぶ濃ゆい前置きを終え、ようやく先程の蒸気機関の絵。つまりは産業革命の絵に戻る。
「じゃあ、こんなお金持ちで文化も豊かになったイギリスがなぜメシマズか、その原因が産業革命なのか。答えは上流階級は美食を非道徳的、食事は清貧かつ簡潔にという考えが行き渡るわ自国の料理を食べやしない。庶民、一般の人達は産業革命で自国民が奴隷よりも安く働かせて、遥かに効率よく利益が算出できるので重労働を強いるようになり、そもそもが食事に手を回せなかった。味を求める環境が上も下もないのが当時のイギリスです」
「うわーぁああ・・・美食という概念がなかったんだ・・・」
アルトリアも演技ではなく本気で目から光を失ってこの事実に絶句。そして思った以上におもすぎる事実の連発に咲もドン引き、フラムも頬が引きつり、藤丸も学校の授業の内容をより深くぶち込まれて眠るどころか目が冴えてしまう。
「庶民の方から見ていくと18世紀以降から紡績機などの発達で工場が建ち始めます。となればそれを動かす人がいる。それによって農村部から都市へ人が流れていきます。そこで待っているのはスモッグ排水垂れ流しの街に1日15時間、18時間以上ともいわれる労働時間。当時は働く時間、工場の稼働時間が長いほどに生産性がいいと考えていましたからとことん人を使います」
「あ、ちなみにこれが後の労働法の安全規制に繋がったのも豆知識ね」
次に現れるのは白黒写真のまるで森以上に立ち並ぶ家々、そこに地面だろうが集まり、腰を下ろしたり布切れを敷いて寝転ぶ人。そこら辺の下水に垂れ流されるものや空気全てが悪いものなのにそれを気にする余裕もないのか、疲れているのか江に映る人々は活気がなく、何処か悲しげだ。
「そんな中でまともなご飯が作れるわけがないですよね。では、労働者は何を食べてエネルギーを補給していたのか。これなんですが、今でも有名ですね。フィッシュアンドチップス、紅茶です」
「紅茶はさっきの植民地、イギリスが19世紀にインドやセイロンで紅茶の栽培に成功して下層階級にも手に入るようになったんだよ。そして他の植民地で手に入る安い砂糖。そしてフィッシュアンドチップス・・・・・・」
「まあ、所謂砂糖まみれの紅茶と油ギットギトの飯でエネルギーを補給していく。これが食事の習慣になりましたし、労働者の多くは田舎から来る、つまりは地方、郷土料理も手につかなくなりますし、そもそも今日を生きるために必死ですから無頓着にもなるのも当然」
そしてイラストは悲しげな労働者の絵から一転、美味しそうなミートパイや生姜を入れたスープの絵に変わり、その絵に皆少し美味しそうだとつばを飲む。
「藤丸くんが言ったとおり、お姉さんや銀嶺の皆の料理は美味しかったし、それ以外にもイギリスは中世では郷土料理はヨーロッパ一って説があるくらい美味しかったの。銀嶺の料理のレシピ・・・味噌とか醤油みたいな複雑な調味料は戦火とか色々あって消えたけど、料理技術や他の料理自体は残っていった。けど、都市に働きに行く労働者は十歳とかそこら辺の、所謂取り敢えず働き始められる年齢の子が多かった。そんな料理も習わないであろう時期に出稼ぎで母から離れて都市で働く・・・」
「田舎料理の伝授も、知識もない。というわけね・・・・・・」
「しかも保存技術もまだ未熟な時代なので都市部に来る肉、野菜は庶民の手に入るものは大抵が腐りかけ、傷んだものだし、故郷のものが来るなんてのも少ない。さらには蒸気機関、機械の時代で燃料となる石炭や薪の燃料価格が上昇。自分の家で自炊も難しいから外食で食事を終える。ますますフィッシュアンドチップスみたいな外食産業が発展します」
イラストは打って変わって揚げ物、腐りかけの野菜などに変化。イラストでもその痛々しさ、お腹を下しそうなものに顔をしかめる。これだけでもメシマズの土台がよく分かるというもの。
「で、更にはそんな食品、住宅環境なので少しでも安全に食べるために『肉は焦げるまで焼き、野菜は崩れるまで煮込む』という考えや行動が定着したわけですね」
「お姉さんが来る前のブリテンです。本当に有難うございます・・・・・」
「そういう時事上に追い打ちをかけるように当時はこれでも尚食中毒がひどいものでした。都市部にはいる食材はどれも下層階級にはひどいものであり、そんな質の低いものは当然食品偽造は横行。有毒な食品添加物も山のように使われました。軽い一例として牛乳は水で薄めてチョーク粉で白くする。紅茶は出がらしの再利用。マシなものでも新茶をほんの一欠片混ぜて利用。中途半端な乾かし方をしていたらそこで雑菌が発生することもあり、パンにはミョウバンを混ぜて白くする。購入した食品を安心して食べられる環境がなかったわけです」
そして記される風刺画。死神がミルクの入った器を赤子に進める絵。ここまで来ると華奈は変なテンションでごまかし、アルトリアはすっかり目が死んでいる状況。ただまあ、それでもこの解説はまだ残っているので努めて明るく振舞い、話を進めていく。
「じゃあ、今度は上流階級はうまい食事があったのか? まあ、飢えることはないでしょうね。それにお金もあります。けど、そっちはそっちで問題がありました。簡単に言いますと、上流階級の食事のステータスが『外国人のコックに食事を作らせることがステータス』だったのでイギリス料理をさほど食べない、ちゃんと知らない人が多かったんですよ」
思わぬ上流階級の発言に腰砕けな空気、さっきまでの重い空気が間の抜けた変なものへと変わる。これには解説役の華奈も苦笑いであり、同時にイギリスの上流階級、その歴史も長いオルガマリーは思うところがあるのか納得していた。
「そもそもなんだけど、イギリスの貴族や王家にはフランスとかの他国から来た人も多かったの。だから『イギリスで一番うまいのはフランス料理』何ていう皮肉も生まれたんだね。同時に事実なのが凄いけど」
「更にはここに宗教の問題もありまして、イギリスの主な宗教、上流階級に普及していた教えには食事も欲望の一つ。紳士であるのなら禁欲し、簡素で厳かに済ませるという考えが基本道徳だったわけです。あ、ちなみにイギリスだけの特徴ですよ?」
「うーん・・・・あ、もしかしてジョジョ第一部の食事シーンって!」
「はい、恐らくはそこに近いもの、もしくは意識していたのでしょうね。ジョジョ、正確にはジョナサンも時代は近いものだったはずですから」
思わぬ共通点を見つけて喜ぶ藤丸にいいネタを出してくれたと喜ぶ華奈。そして上流階級のコックのことに考えが浮かんだ冬利も手をあげて聞く。
「ちょっといいかい? 上流階級って海外のコックを雇ったわけだろ? それって権威、影響力のある貴族や王族の雇うコックの国の食事にマナーを合わせるわけだから」
「そうだねえ。時の流行や貴族間の影響、国際情勢に合わせてコロコロとフランス式にロシア式、ドイツ式、オーストリア式と変えていったりしたもんだからかなり息苦しかったと思うよ? その度にテーブルマナーを学び直して行くから混乱するし、意識は自国の料理に向かない」
「ざっくりまとめると産業革命では上流階級は自身の体面と宗教道徳のために料理に関心が向かない。下層階級は貧しさのあまりに料理へ関心が向けられない、薄れていく。中流階級は飢えもしなかったでしょうが、そこまで美味しくはなかったでしょうね。食事を作るメイドさんが下層階級の人でしたからその食生活が広まりましたし、食品の選り好みが出来てそこそこくらいではないでしょうか?」
「ホームズやワトソンは本当に恵まれていた環境だったのですね・・・これ」
あんまりにもひどすぎる大英帝国の産業革命、それ以降の食事の推移。マシュが愛読している探偵物語、あの時代を生きたホームズたちの食生活がどれほどマシだったかを思い返し、これには華奈たち先人が努力しても駄目だと理解する。どんなに美味しい料理があってもその下地全てがぶち壊されて継承する世代も都市部へ流れてほとんどいなくなる。しかもその美味しい料理を作れる料理人は上流階級で召し抱えられないから結局美味しいイギリスの料理は残らない、消えていったりするのみ。
「あの二人の時代はかなりマシだと思いますよ? ちなみに今はネットや保存技術の向上。食品が新鮮なままで届きますからイギリスもメシマズから抜け出せるかもしれないですけどね。ふふ、色々長かった話ですが如何でしたか?」
講義が終わり、黒子に徹していたストーム1が戻り、華奈も息を吐いて腰を下ろす。アルトリアものんびりと椅子に腰掛けてのどが渇いたのか水を飲み干す。
「色々壮絶としか・・・日本って恵まれているんですね」
「ふふ、日本と中国の食に関する貪欲さは異常ですよ。いや本当に。宗教を見ても抜け道や料理への情熱はすごいこと凄いこと・・・さて、今日は私が作りますがなにかリクエストは?」
「俺は筑前煮」
「華奈が作るのでしたら何でもいいですよ。あ、でもミートパイも良いかも・・・」
「俺はあえてフィッシュアンドチップスで。日本人が作ればどれだけ変わるか見てみたい」
「イギリスの味が日本によってどうアレンジされるか、楽しみですね先輩」
「おーチャレンジャだねえ。藤丸君。じゃあ、私も」
「わ、私も筑前煮で・・・」
「僕は何でも良いかなあ。華奈は基本料理に手抜きはしないし」
「姉上の料理なら私も何でもいです。どれも美味しかった記憶が・・・」
その後は口直しと気分転換でちょっとした料理会になり、ついでにお料理教室も開いてカルデアを巻き込んだ食事会に。
最初華奈とアルトリアは部屋でのんびり抱きついたり、髪をとかしたりと楽しんでいました。そこに藤丸らの来客。といった感じですね。
イギリスのこの頃の食事事情を見ると冗談抜きで嘘とかデマと言いたくなるような酷いものが本当に多いです。華奈が話してはいませんがもうどれが本当なんだと言いたくなるものがうじゃうじゃ。
後半はアルトリアも華奈も話していてキツイのか段々素に戻っていますけど。
もう少しでオルレアンスタート。ストーム1も暴れてくれます。やりたい放題の戦いを繰り広げられるようにがんばります。
最後にUA 62521件 しおり 160件 お気に入り 447件 有難うございます!
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。