転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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~フランス各所~

???「これは・・・私には街を守る責務がありますが、連絡を取るくらいはするべきでしょうか・・・?」

???「あら、愉快なやつがいるみたいじゃない! 私のマネージャー候補になるかもしれないわ! 会いに行ってみましょう」

???「・・・もしかしたら、私の求めるあの方もいるかも知れませんね・・・右も左もわからぬ異国でしたが、いい目標が出来たかもしれませんね」

???「未だやつは現れないが・・・俺がこうしている以上・・・出てもおかしくはない・・・・・・あれが出る前に準備をしたい・・・しかし、ここを離れるのも難しい、どうしたものか」

???「・・・竜の魔女は偽物・・・たしかにあの方は・・・・・・・・伝令を準備せよ! 急ぎこの檄文を作った集団との接触を図る! ただし失礼のないようにな! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・裏切り、見捨てた私達に来る復讐や裁きと考えていたが・・・奇跡をもう一度くれたのか? それとも・・・」

~カルデア~

華奈『あ、アンナ様~ワイバーンの材料で「あれ」作っておいてください。多分必須になると思うので』

アンナ「?・・・・・ああ「あれ」ね。分かったわ。用意しておくから半日くらい時間をちょうだい」


銀嶺食堂開店~ワイバーンハンバーグステーキ~

 「~♫~♪~~~♡」

 

 銀嶺との合流も無事に済んだ藤丸ら。廃城跡地には銀嶺の仮拠点が既に出来上がっており、出来上がった避難民専用の物資、連絡、同時に周辺に発生した獣人、ゴブリンなどのモンスターの駆逐を行っていた。

 

 それも終わって夜も深まり始める頃。作業も一段落して休憩となった頃に華奈が今晩の料理をつくるといい出し始め、カルデアから何らかのソースと器具を送ってもらって解体したワイバーンの肉を調理していた。

 

 「おーい、マスター。もう冷えてきたがこれをすくい取ればいいんだよな?」

 

 「ええ、お願いします。一通り取っていったらまた火を付けて、最後に野菜を投入。良いきのこもありますから」

 

 「姉上。マチコがトリュフを持ってきてくれたんですがどうしましょうか?」

 

 「ん~・・・今度にしましょうか。せっかくですから打ち上げのときにでも」

 

 アルトリア、ストーム1も加わっての調理、こうしてみれば兄弟の調理しているほのぼのとした光景なのだが、何せその材料がワイバーンという豪快すぎる材料。さらにはしれっとトリュフも加わりそうという豪華な食事。

 

 てっきり携帯食料で一日の食事を終えると思っていたがさっきからただよういい香りに待っていた藤丸、マシュ、クー・フーリン、そしてジャンヌは口の中によだれが溢れ、今か今かと即席の調理場に視線を向ける。

 

 「あの・・・私も手伝いましょうか? 華奈さんもお疲れでしょうし」

 

 「いえいえ。私は楽しんでいますし疲れてはいませんよ。どうぞごゆっくり。それにまあ、危険ですから」

 

 エネミーの駆逐に宝具の常時開放。そして敵の撃退に調理と華奈の疲労を気にかけて手伝いをマシュが申し出るが華奈はやんわりと断る。

 

 そして調理場のそばに置いていた酒の瓶を一つ手にとって自身が担当していた肉料理の乗っていたフライパンに瓶の蓋を外して中身をぶっかけていく。

 

 「危険ですか? 一体・・・!」

 

 「な、フライパンから火が!!?」

 

 「流石は私が選んだ酒! い~い火力と匂いです! これなら最高のできになるでしょうねえ! あっはははははは!!」

 

 フライパンに酒が注がれていってしばらくした後に辺りの景色が明るくなるほどの光、華奈の頭三回りはゆうに超えるほどの火柱が上がり、酒の芳醇な香りがあたりに漂う。

 

 その炎に合わせて響く華奈の壊れた笑い。悪魔が調理しているのかと言いたくなるような異様な調理場とは裏腹に鼻孔をくすぐる香りは食欲を刺激し、作業を終えて警邏をしていた銀嶺のメンバーにオオカミたちも調理場を見てよだれを垂らす。

 

 「おぉう・・・」

 

 『僕たちからは匂いは分からないけど、いい香りなんだろうねえ・・・でも、フランベってことはステーキなのかな? 足の肉を使うと言ってたけど、固そうだなあ・・・』

 

 「晩酌用の酒かと思ったんだがなあ。ま、この匂いなら問題はなさそうだし、待ちますか」

 

 やがて炎は収まり、酒の匂いは収まって次に漂うのは濃厚な肉の香り、そして美味しそうなスープにご飯とパン。匂いの奏でる最高の演奏会、若しくは宣伝。誰もが腹の虫をならしてこれをよこせと脳に訴える。

 

 調理場の方も作業を終えておぼんに乗せられた料理が運ばれていく。

 

 「カルデアの調理場だと火災報知器が発動するのでなかなか出来ないんですよねえ。この料理。楽しかった・・・・さ、完成です。ワイバーンのハンバーグステーキ(ドミグラスソースバージョン)」

 

 「ワイバーンのテールスープ野菜とキノコマシマシ」

 

 「もちもちバンズとふわふわご飯の完成です。ご飯、パン。どれにするかは好きにしてください。おかわりは二回までですよ?」

 

 鉄板の上でジュウジュウと香ばしい香りと音をたてるハンバーグを運んでくる華奈。寸胴鍋と器を持ってきてくるストーム1。炊飯器とカゴいっぱいにバンズを入れて持ってくるアルトリア。

 

 香ばしい匂いの発生源が近づき、皆いつの間にか列を作って食事を取り始める。藤丸、クー・フーリンは米。マシュとジャンヌはバンズを選ぶ。

 

 「いただきますまずはハンバーグを・・・・!」

 

 藤丸が手を合わせてナイフでハンバーグをナイフで切り、一口食べる。まだまだ熱々のハンバーグを食べたことによる驚きではなく、歓喜と興奮の色に染まり

 

 「旨すぎるッッッ!!!! パリッパリの表面の食感にワイバーンの肉の弾力が残った肉の粒・・・! それが溢れる肉汁と一緒にあふれて口の中に広がる・・・・!」

 

 「ドミグラスソースとの絡み合いに互いに旨味を増しますし・・・溢れる肉汁もソースもバンズに余すこと無く吸い込まれてこれまた旨味を一切逃すこと無くすべて味あわせてくれます!」

 

 「マッシュルームや野菜も良い下味がついているから全て美味しく回せる・・・酒の匂いと火力でパリパリの表面は口の中でもアクセントになっているし・・・単品で酒と合わせても良いなあ・・・こう・・・キンキンに冷えたビールとか!」

 

 「テールスープもいいです・・・あっさりとしつつ主張する美味しさに・・・野菜のシャキシャキ感・・・!ハンバーグの強い旨味を一度洗い流して再度また新しく楽しめる・・・! 舌も顎も満足です!」

 

 大きなリアクションをした藤丸に釣られて皆が食べ始め、同様に味を堪能して目を見開いている。大成功。と華奈たちは手を合わせて微笑み、自分の分もよそっていく。

 

 『ああ・・・・僕も食べたいなあ・・・華奈の本気の料理・・・』

 

 「後で送ってあげますよ~うんうん・・・やはり足の部位は筋肉がある分、上手くたたければ旨味や弾力を閉じ込めるいい肉になりますね。ソースも一ヶ月以上仕込んで用意したかいがあります」

 

 「テールスープも今回はフランスの食材に合わせたが、鶏ガラに近い部分もあるし・・・そうだなあ、白ネギ、もやしでもいいかもなあ・・・はぁ・・・日本酒が欲しい」

 

 「姉上のワイバーンハンバーグ・・・! っくぅ・・・最高です・・・私ももっと美味しく出来るようにならないと・・・」

 

 ロマニが画面越しに物欲しそうにしているのをよそに華奈たちも食べていく。ブリテンのものとは少し味が違うが流石は竜。旨味も肉の強さも違う。足や翼あたりの肉は筋張っていたり筋肉量が多いので少し熟成や煮込み料理に使う場合が多かったがハンバーグは問題ないようだ。

 

 強めのフランベで表面をパリパリに焼いて型崩れをせずに食感と肉汁を確保。酒もそのため専用のものにしたかいがある。

 

 ソースも用意したものは問題ないし、米にもパンにも相性は抜群。注射器でハンバーグにドミグラスソースを注入して表面にはケチャップ。それを挟んだハンバーガーというのも面白いかもしれない。

 

 調理組三人はそれぞれにどこをどうしようかと改善を考えながら箸を進め、同時に準備していたワインとビールを成人組に渡して自身らも一杯ひっかけていく。

 

 『うぅむ・・・ぜひともレシピを知りたい・・・この作り方もそうだが、ワイバーンという食材・・・それにこの反応・・・負けていられない!』

 

 調理場の様子からどうにか再現をしたいとメモをとるエミヤ。モニター越しに職員の何名かもよだれを垂らしているのであちらの分のご飯も作り、銀嶺の分はヤマジたちに任せてカルデアに完成したハンバーグを送り込む。

 

 「ふぅ・・・お腹も膨れましたし、改めて情報整理、そして今後の方針を立てましょうか」

 

 「ああ、こっちもこっちで知りたいことがあるからなあ。主にそこの白い姉ちゃんのことで」

 

 茶をすすって一息吐き、気分もお腹も落ち着いたところで会議に移る。華奈たちの気になる点としては明確な敵ではない、聖杯戦争での生き残りだった前回のキャスターのクー・フーリンとは違う形でこのフランスに現れた「英霊になりたて」というジャンヌ・ダルク。

 

 「むぐむぐ・・・・わ、私ですか?」

 

 「シュル・・・・・俺は黒いジャンヌ・・・? 竜の魔女? についてだけど・・・この今食べているワイバーンを引き連れていたんだっけ?」

 

 「それと、今後ですか・・・戦うにしてもどうしていくのかがまだ決まっていませんものね」

 

 食事をしていた藤丸たちも一度食事の手を止めて話に参加。藤丸たちもあの爆発や戦力、そしてどう戦うつもりなのかを確認していくために水を飲んで一息つく。

 

 「では、藤丸様たちの疑問ですが。はい。黒ジャンヌと英霊、それの足、雑兵となっていました。英霊たちは藤丸様たちも見た爆発であらかた処理。ワイバーンは今晩のご飯です」

 

 「英霊は三騎。仮面の姉ちゃん、杭を持ったいやにダンディなおっさん。男か女かわからん美人さん。まとっていた空気からして怪物に近い、若しくはそこら関係の人物だったんだろうな。美人さん以外」

 

 「姉上から聞きましたが城一つまるごと虐殺したのを妥当、裏切りの復讐と言っていたそうですから、竜の魔女=ジャンヌ・ダルクと考えるのが妥当でしょうが・・・」

 

 ここまで話してアルトリアも途中で詰まる。華奈の送りつけた檄文。この中ではバズーカでふっとばした黒ジャンヌを偽物と書かれた。恐怖を煽らないためなのかもしれないが、調べたジャンヌ・ダルクの人生を知ればこの行為も納得に思えてしまう。

 

 「はい・・・もうひとりの私が暴れているというのは理解していました・・・けど、私自身は復讐など考えてはいませんでした。そうなるかもしれない人生を選んだのは私ですし・・・」

 

 けれど目の前のジャンヌ・ダルクはこの黒ジャンヌの復讐劇に納得はしておらず、寧ろ藤丸と協力してワイバーンと戦って民草を守ったという。今も復讐には囚われていないとも言っている。

 

 「実際復讐を考えているなら混乱した市民をその旗で殴り殺せばいい。英霊になったばかりとは言えその膂力では迎える人間はほとんどいない。では、私からも一つ。ジャンヌ様。フランスで恋しい、思い出の場所はありますか?」

 

 ジャンヌにジュースを渡してニッコリと微笑む華奈。その笑顔に少し沈んでいた表情をしていたジャンヌも笑顔で受け取って飲んでいく。

 

 「ふぇ・・・? んく・・・そうですね・・・私の故郷のドンレミ村。王に任命された王城・・・結局村から出て王城以外では基本戦地でしたがそれでも今でもまた行きたい、戻って話、空気に触れたいと思っています。姉弟に、家族にも迷惑をかけたのは事実でしたし」

 

 「あ~あ~そういうことね。たしかに変だわなあ。あの姉ちゃん。そこら辺に関するためらいや憎愛の感情を匂わせる発言がなかったからなあ」

 

 自身の故郷に王に謁見が叶い、フランスのために戦えた始まりとも言える場所。血なまぐさい匂いではなく土に牧草香るゆったりとした小さな村。最後は悲劇に彩られた人生であれ、そういった黒い感情がない場所、それでも尚光栄だと、素敵な時間だったと感じる場所がある。

 

 これにストーム1も納得がいく。自身も警備の仕事でEDFの基地での仕事でろくでもない目にあったが恩人にも会えたし、色々と嫌いになれない場所がある。しかし、霊体化して近くで見れた黒ジャンヌの表情にはそれを思い出す様子も、それにためらいを見せることもなかった。

 

 「ですよね。国に裏切られたのは確かでしょうが、自身を応援して見送ってくれた村の皆様、共に戦った戦士たち。彼らは最後までジャンヌ様を助けようと動きましたし、戦いました。でも、黒ジャンヌの表情、目にはそんな楽しかったり、輝かしい時間。それを思い出すこともなく裏切られて、自身が嬲られて、処刑されるまでのことの怒りしか無いように感じたんですよ」

 

 「仮にも聖女、それも国のためにも危険な戦地に赴いた女性。復讐はあり得るとしても、最後まで応援し続けた彼らすらもまるごと復讐の対象になるのは確かに・・・」

 

 華奈が感じていたのは復讐の動機ではなく、それを起こすことによる大事な人物、最後まで信じた人物たちへの配慮がまるでないという、記憶、もしくはその比率の歪みや欠如に依る怒りの形に違和感を感じていた。裏切った王、神官、煽る連中だけに収まらず、恩しかない者までも焼こうとしている。

 

 狂化の側面で過去、歴史の表舞台に出るまでの記憶が薄れている可能性もあるが、それにしたって復讐に囚われていると華奈は感じていた。

 

 「そんな事しません! 恩を仇で返すような・・・私が頑張れたのは皆さんの支えあってこそなのに! それに、神の声があったのもそうですが、フランスがまた私の村での穏やかな時間を過ごせるようにと思ったからこそですし」

 

 「ええ、私もこうして話しいて確信しました。黒ジャンヌは英霊にしたってどこか歪。一部の記憶に強く強調されている。若しくはそういうクラスに当てはめられて協力者と暴れようとしていた」

 

 「となれば、首謀者は別、若しくは協力者、支援者がいるというわけですか私達が追いかけた際にそこに逃げようとしていたんでしょうね」

 

 とりあえず今の所の黒ジャンヌへの仮説を上げたところで軽く華奈が手を叩いてこの話はお開きと言う意味を示す。

 

 「では、藤丸様たちへの今後の戦い方の方針ですがはっきり言うなら、包囲と避難を中心に行きます。避難はもう始まっていますね。檄文を渡した後、避難が始まっていることは各所に走らせた銀嶺のメンバーの情報で確認しています」

 

 「相手はフランスの民草含めて全て焼き払うつもりですからね。民草を巻き込んで来る戦いを強制的に持ち込ませかねないので私達と怪物、そして黒ジャンヌだけの場所を作って気兼ねなく暴れまわります」

 

 「? でも、包囲は?」

 

 避難による非戦闘員の被害の減少を避けることはわかる。相手の目的が達成できなるかもしれないし、あの昼に見た馬鹿げた爆発を街の近くでドッカンドッカンされてはたまったものではない。けど、それが何故包囲につながるかは今ひとつピンとこない。

 

 「あ~これはな。ジャンヌちゃんの存在が鍵になった。俺たちは最初に黒ジャンヌをふっとばしたことでこのフランスの危機に戦える戦力、奇跡が現れたことをフランスの連中に示した。で、最初はあくまで避難する民草を殺そうとする怪物の退治と敵勢力の殲滅にって具合の戦略を考えていた」

 

 「けど、アラヤがこのまま終わるのを良しとしなかったのでしょうねえ。マスターと契約していない英霊がこの特異点に現れた。しかもこの異常を解決したいという意思を持って」

 

 華奈たちが体験した特異点では狂った聖杯戦争の生き残りしか現地で味方になる英霊はいなかった。が、目の前の英霊ジャンヌ・ダルクの存在で特異点を引き起こした元凶に抗う存在がいる。それも、まだ他にもいるかもという可能性を秘めて。

 

 「それに大きな期待をかけるつもりはないですが、ジャンヌ様以外にも戦力となりえる、私達に協力してくれる英霊が現れるかもしれない。既にいるかもしれない。もしいたのなら民草の守りにいざという時の連携、戦力の底上げになるかもしれません。そうなれば各所に散らばる英霊との連絡して相手の出処や情報を集めて此方は叩いていく」

 

 「で、後顧の憂いがなくなれば増えるかはわからんが協力できた英霊たちとあの黒ジャンヌを叩くってわけだ。俺もマスターもアルトリアも機動力は持っている。銀嶺での伝令も使える。連絡網を敷く下地は既にできているってわけ」

 

「姉上の軍も散開していますのでモンスター、ワイバーン、敵の動きがあれば即座に通達。敵の出どころも調べ、叩き、相手の逃げ場、次善策を摘み取る・・・まあ、包囲網は半ば完成されていると言ったところですか」

 

 可能であればこの特異点に現れた敵勢力ではない英霊とのコンタクト。そのための準備も、足も、ほぼ完成に近づきつつある。そう話す華奈達の目にはギラついた、狩人の光が宿る。

 

 『それと、人の居ない空白地帯、戦闘しても問題ない場所を多く作るというわけなんだね。さっきも言ってたけど、余計な被害を出さない、それに華奈達の武器は何かと破壊力の多いものがあるから』

 

 今まで会話に入ってこなかったロマニも会話に加わり、同時にこの作戦の意図を読み取る。冬木でのかんしゃく玉もそうだが、ストーム1の譲渡可能な宝具は何かと破壊力に富んだものが多く、しかもそれは一定のプロセス、または時間を置けば交代が可能。それを好き勝手に使うのであれば被害がないようにするのは当然であり、そういった意味でも避難勧告の通知が通ったのは好ましい。

 

 それがまた被害をさほど気にすること無く使える。それは藤丸たちには心強いことであり、敵にとってはご愁傷様と思う話であった。

 

 「相手はどうにも頭数も多いみたいだからな。そういった武器が必要な場面は出てくるだろうし正解だろ。住民の被害がこの特異点崩壊の条件なのかもってのは考えることだし」

 

 「だからこそ手早く敵を討つ。かつ被害は最小限に、私達は最大限暴れまわる。明日からは忙しくなりますよ? 皆さん、今のうちにいっぱい休んでくださいね?」

 

 食べ終わった食器を集め始め、片付けの準備に移る華奈。それに続く形でゆったりとしたフランスでの夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ジル! ジルはどこよ!!」

 

 ある居城。傷を癒やして完治した黒ジャンヌは怒りを全面に出しながらズカズカと足音をならしながら相談相手を探す。屈辱的な敗北に逃げおおせるという選択を選ぶしかなったこと。その原因である女たちを殺したくて仕方がない。

 

 けれど、それ以前に自身の連れ歩いた英霊の損失自体もある。それを踏まえた上でどう殺せる手立てを考えるか。いつも相談相手となり、自身に忠実な相手。ジルドレを探して怒声を上げる。

 

 「おお! ジャンヌ。傷が癒えましたか・・・何よりです。このジル・ド・レエ、貴女様の怪我が気になって気にな・・・」

 

 「うるさい!」

 

 その頼れる協力者、かつて20半ばでフランス元帥となって英雄の一人となり、ジャンヌの死から狂っていた堕ちた英雄、ジル・ド・レエ。何なやら奇っ怪な道化のような司祭のような服に身を包んで今にも飛び出そうなほどに突き出た目玉。片手には何やら気味の悪い書物を手に持っており、爪を伸ばした手に自身の纏う不気味な雰囲気も相まって一見近寄りがたい雰囲気を纏う英霊。

 

 が敬愛する魔女に近寄り、言葉を紡ぐ間に顔面を殴り飛ばされて吹っ飛ぶ。数メートル吹き飛んで整った調度品に当たってけたたましい音が鳴り響き、埃が舞う。

 

 「ぐぼぉ・・・!」

 

 「そんな下らない社交辞令いらないわ! さっさと準備しなさい! 私を殺そうとしたバカどもを殺し切る準備を!」

 

 「おぉ・・・おお・・! そうですな! ジャンヌを傷つけ、手駒を減らした愚か者を倒すために、復讐を成すために! しかし・・・しかしですぞジャンヌ」

 

 ふっ飛ばされるもよろよろと立ち上がり、怒りに震えて旗をガンガンと鳴らす黒ジャンヌを静止するように声を掛ける。一応の情報はジルにも入ってきており、黒ジャンヌから言われなくても自身も報復攻撃を行うという考えには賛成したい。

 

 けれども、ジャンヌの輝かしい戦歴を支えたその手腕、能力は狂気や怒りに支配されども残っていた。それ故に待てをかける。今の状態で行っても返り討ち、二の舞だろうと。

 

 「悔しいですがその相手も唾棄すべき相手であろうと紛れもない敵。しかも英霊である以上一筋縄ではいかない。今一度状況を整理しましょう。その上で報復を行うのです。暖炉の薪も一度整理したほうがよく燃えて行くでしょう?」

 

 「・・・ええ、そうね・・・その通りね。冷静になるべきなのでしょう。けど、まずはあのバカどもを殺すわ。徹底的になぶり殺して、燃やし尽くす。そのための策を練る。良いこと? ジル」

 

 ジルの諭し、その口調にジャンヌも一度その怒りを収め、息を吐いて一呼吸置く。そうだ。ジルの策は素晴らしいものだ。自身の策、鼓舞したことで極限状態の兵士が最高の状態で戦えるように作戦を立案、肉付けし、兵士にも細かな指示を出す名将。

 

 彼の言うことは耳に入れておくべきものであり、その結果は勝利、最高の結果になる。黒ジャンヌもそれを知るゆえに怒りを吐き出してぶつけることを抑え、落ち着きを取り戻す。

 

 「もちろんですともジャンヌ。この愚かな者共をなんとかしなければ私達の悲願は達成しませんからなあ」

 

 落ち着きを取り戻した黒ジャンヌをみてジルも満面の笑みを浮かべる。最悪レベルの犯罪者、外道に堕ちた身なれどもそのかつての救国の将軍としての経験、知識ははこびりついているもの。映像を映し出す水晶型の魔術道具を使い、黒ジャンヌのことの一部始終と現在の状況を整理するために水晶を覗き込む。

 

 

 

 

 

 (ふむ・・・・・・これは、些かまずいですね・・・ジャンヌの無事は良かったですが、相手が危険すぎる・・・)

 

 黒ジャンヌの情報の再確認、そして現状の確認と華奈達の様子を確認していくジル。表情こそ変化はないが、冷静に、しっかりとした将軍の側面で思考を回す。

 

 (軍服風の女二人・・・あの聖剣、光の柱から恐らくはエクスカリバー、そして狼に猪を率いる軍、その主となればアーサー王、そして同じ時代のブリテン最強の一角であるカナ。もうひとりの男は分からんが・・・ジャンヌの話から怪物に対する強さ、それをたやすく屠れる武器を持つ・・・後ろにあるバイクなども含めてライダーか? 機動力はあると・・・)

 

 食事を終えて一息ついた華奈たちを観察しながらその英霊の真名。をおおよそ看破していく。アーサー王伝説は騎士の時代に読んだことはあるし、敵国の物語ではあるがフランス出身のランスロット。フランスの商人と連携したり、最終的には同盟を組む際にきっかけを作ったカナ。寧ろ自分の騎士たちにはファンも多かったし、ジャンヌも時折聞いてくることがあった。

 

 それ故にアーサー王が存命で妖精郷から出てきてカナと男を読んでも不思議ではないと推測はできる。そして視線はもう一組のメンバーに映り。 

 

 (この少年がマスターか? 覇気も武才も感じられん・・・せいぜいが新兵くらいか・・・盾の少女は・・・真名は不明・・・それにジャンヌ・・・来ましたか、貴女が・・・・・そして・・・・朱槍に青タイツ・・・? たしか・・・アイルランド、ウェールズの昔の民族、ケルト人は戦争の時は身体を青の染料などで染めたとか・・・となればその中で見た目に合致して槍を振るう英霊・・・有名所で言えばクー・フーリンあたりか・・・)

 

 おおよその推察を得てもう片方のグループは危険ではあるが、搦手を使えないことはないし、まだ手段はあると考える。しかし、敵戦力の確認から同時にそこから損失の方に意識が動いていく。

 

 (失った三騎・・・ヴラド三世、デオン、カーミラ・・・この三騎はこの面々を見る限り痛い・・・それぞれの側面を活かせれば十二分に渡り合えたはず・・・)

 

 昼間の不意打ち爆発花火大会で失った英霊たち。周辺の若い女性をさらって生き血をすすったカーミラの女性に対する宝具、またその話から来る強さは、ジャンヌ、カナ、アルトリアに対しても思わぬ一撃を与えられた。そして守備の名将でもあるヴラドなら銀嶺の軍を各個撃破した上で効率よく戦えたし、万が一の時は怪物の側面を強めて夜にでもけしかければいい。デオンはフランスの英霊の中でも剣豪としても名を馳せた剣豪。カーミラの護衛にさせて隙を突くという手段も取れた。

 

 が、その三騎はおらず相手を分断するために此方から動けば察知されかねない。人質、相手にとって障害になりうる民草も既に避難を開始していて空白地帯が出来ている。相手も躊躇せずに昼間の火力をぶち込んでくる。

 

 「ジャンヌ、昼間に失った三騎以外の損失はなく、未だ顕在ですね?」

 

 「そうよ。アーチャー、バーサーカーは戻る際の森で足止めのために読んで、医者のアサシンは私の治療。それ以外は呼んでいないし、ジルからも何も聞いていないから生きているんでしょう?」

 

 これに対して此方はどうするか。昼間に渡した英霊以外にもあの数のワイバーンをあっさり屠る能力がある以上数の暴力も薄れかねない。なら、此方が取る手段は限られる。

 

 「もちろんです。そして、幸運なことに医者のアサシンは処刑人。もう一騎のアサシンも上手く使えば一気にニつの戦力を削れます。ライダー、アサシンらをバーサーカー達と合流させて戦いを挑む。バーサーカーに正面を頼み、アーチャーが後衛で支援。ライダーはワイバーンに自身の宝具で急襲、切込み。この三騎に目が行っている間にアサシンで処刑」

 

 「それを私が指揮を執るというのね・・・・っふふ。確かに、三騎を失ったけれど、あの聖女に神代にて一時代最強と謳われた剣士、ギリシャの名のある狩人がいる・・・そして私の炎にワイバーン・・・ええ、不意を突かれずに此方が立て直せれば何の問題もないでしょうね・・・けど、ジル? 貴方は何をするのかしら? これだけで終わらないでしょう?」

 

 戦力の再集結とクラスの特色、質を活かした集団戦。一度フランスの蹂躙、殲滅から英霊同士の戦いへとシフトし直す。

 

 「もちろん、ジャンヌが指揮をとってこそ。私はですね。お膳立てをしようかと」

 

 ただし、それでも相手は軍団を呼べる宝具、しかも銀嶺だ。思わぬ横槍、このフランスに来ている英霊との合流は避ける。出来ないにしろ壁は欲しい。そこでジルは手元にある禍々しい書物をジャンヌに見せ、微笑む。

 

 「へえ?」

 

 「私の宝具で海魔を生成・・・これをワイバーンに加えて防壁とします。何かあればあちらが何かを仕掛けてくる。あちら以外の英霊が来てもこれらで時間を稼いでジャンヌが迎撃できる時間を作ります。それと同時に俯瞰で戦場を見て必要ならお声掛けも」

 

 怪しげな笑みを浮かべて献策をするジル。それに黒ジャンヌはニたりと口の端を吊り上げ、目を光らせる。

 

 「・・・・そうよ、それでいいわ! それが最高よジル! あっはははははははは!! 見てなさいよあの馬鹿共! 私の邪魔をした分、思い切り焼き殺して塵にしてあげるわ! ねえ、ねえジル、有利にことが進んだと思ったあの女どもが恐怖に染まって死ぬ時はどんな顔なのかしらね!」

 

 「それは素敵な素敵な見世物になるでしょう。貴女を冒涜して、邪魔したものはそれだけ情けない最後になる。まぐれであったということを思い知るでしょう。ジャンヌはそれだけの力があり、権利があるのですから・・・」

 

 報復の手立てが出来つつあることに歓喜の声を上げる竜の魔女、それを見て同じように歪んだ笑顔を浮かべる堕ちたかつての救国の英雄。復讐鬼達の笑い声は城に響き、闇夜の空に飲み込まれていった。




ジル「では、少々準備にかかりますのでジャンヌは明日までお待ちを。その間に改めて体調のチェックを・・・」

黒ジャンヌ「・・・そうね。ええ、休ませてもらうわ。後は頼んだわよ。ジル」



~翌朝・華奈達~

華奈「んふぅ・・・さて・・・皆の分の朝食と・・・銀嶺の皆の軽食を・・・皆が食べた食料も魔力変換されるのが嬉しいですねー・・・・・ふわぁ・・」

アルトリア「姉上も朝食ですか? 手伝いますよ」

華奈「あら、お早いですね。休んでいても良かったのに」

アルトリア「パンを焼こうと思うとどうしても早く起きちゃうのです。それに、そのほうが互いに楽でしょう?」

華奈「・・・っふふ、ですね。じゃあ、朝ですし簡単で軽めのものを・・・オレンジといちごジャムのパン、それと薄めのワイバーンのテールスープ。おやつの骨せんべいでいきましょっか」

ジャンヌ「おはようございます。あの・・・私も手伝います。それと、いいでしょうか?」

華奈「おはようございます。どうしましたか?」

アルトリア「? 生憎ですがセイバーハントの依頼ならキャンセルしちゃいますよ?」



華奈が少し壊れちゃいました。昔を思い出してテンションが少し高くなっちゃったのでしょう。酒を飲むと更に壊れます。

動き始めた両陣営。考えなくても最高の名将であり、吸血鬼にしても強いヴラド公にマシュや女性なら有利、一発逆転狙えるカーミラ、フランスでも剣豪として有名なデオン。これだけでもやばいのに神代の高名な狩人に円卓最強格、ドラゴンライダー、世界有数の処刑人に知名度抜群の殺人者が控えている。そのうえでジャンヌオルタにジル・ド・レエ。序盤から飛ばしていますよねえ。本当。

ジル・ド・レエは本当に天才だと思います。名家の生まれとは言え、20代で大国フランスの元帥、ジャンヌというイレギュラーな存在ですらも受け入れて起こした勢いを絶やさずに二年ほどあの暴れっぷり。軍才含めてかなりの人物ですよね本当。その後がひどすぎますが。

最後に UA 66495件 しおり 165件 お気に入り 475件 応援ありがとうございます! 深夜テンションで書いちゃいましたがまたゆっくり書いていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。

それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。
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