転生愉悦部の徒然日記 作:零課
華奈「分担作業しましょうか」
皆「OK」
~華奈サイド~
ジャンヌ「見張り中ですが・・・英雄のお二人の話を聞かせてください!」
華奈、アルトリア「「普通のOL(俗物)でしたが?」」
ジャンヌ「だからこそなのでしょうか・・・?」
ストーム1「敵の英霊を発見!」
華奈「駄目だ! ・・・・ではなくて、えー・・・? アタランテ? でいいんですか? わからないですし一応はそれで」
アルトリア「ランスロット・・・また貴方ですか・・・」
藤丸サイド「(通信伝達)ボスケテ(毒電波)」
華奈サイド「ぬわー!」
華奈「う わ ら ば !」(気絶)
~藤丸サイド~
藤丸「あ、ありのまま起こったことを話すぜ・・・俺は戦力を求めて移動していたらこのフランスの状況に何もせず喧嘩してこちらの道を塞ぐ英霊の女の子二人に怒った・・・
その直後に一人と契約して戦力ゲットして、想い人認定された。
な・・・何を言っているのかわからねーと思うが俺にも分からなかった・・・
頭がどうにかなりそうだった・・・
超展開ラブコメだとか、最強ハーレムものだとかそんなチャチなものじゃ断じてねえ
もっと恐ろしいもの、わけのわからないものの片鱗を・・・」
エリザ「私を無視するな~!!!!」
清姫「恋路を邪魔するんじゃありませんの!!」
マシュ、クー「「どうしてこうなっ・・・グワー!」」
~黒ジャンヌサイド~
黒ジャンヌ「? 何かしら?」
アタランテ「なんか敵が倒れたっぽいぞ」
黒ジャンヌ「よし殺せるチャンス」
~現在~
黒ジャンヌ「ふむ・・・・あの銀髪女が倒れているようね・・・もう片方のマスターもいないみたいだし・・・今のうちに殺しておきましょう・・・行きますよ!」
「敵が来たぞー!」
「迎撃体制! 敵は・・・ワイバーンおよそ1500! こちらに一直線です!」
先程の思わぬ不意打ちを喰らい、防御に努めていた華奈達の陣営に見事なタイミングで押し寄せるワイバーンの群れ。それに銀嶺隊が既に作っておいた防衛陣、ブリテン時代に幾度も戦った経験を活かして数的不利ながらも防御の優位性も利用して立ち回る。
『おっ・・どれどれ・・・・こりゃあいいじゃないの。俯瞰で戦場を見れるというのはアンナに魔術やレギアたちに乗せてもらった時以来だな』
そんな戦場に部隊長、副官の一人のヤマジがカルデアのモニターから戦場を見回し、指示を送っていく。他の場所でもモニターを出してダンカン、クラークらが指示を飛ばしてワイバーンの大軍を防ぎ、徐々に、しかし確実に優位に立ち回れるように準備を始めていく。
『でも・・・これじゃ華奈たちに英霊がすぐ殺到するわ! 数は・・・黒いジャンヌ? らしき英霊を含めて4騎! 応援には行かないの!?』
オルガマリーは銀嶺の副官達の行動に対して早速疑問を投げかける。そう、あくまでも副官たちはワイバーンの大軍を押し留めて殲滅を第一に考えているようでヤマジたちには華奈たちに救援を送ろうとかは一人として発言せずに自身が担当している戦場に意識を傾けているだけ。
部隊の質なら円卓最強とも言われた銀嶺、その副官達、強兵が助けるだけでも絶賛気絶中、混乱している華奈達の助けになるはずだ。そういった考えからの疑問だったが。
『ん~やめたほうがいいわね。多分だけど、下手に加勢してしまうとそこの穴を突かれたり、またすぐに逃げ出してしまうでしょうし、それこそ逃げてから今度はどんな手を打つか。相手が聖杯を持っているのなら、引きこもって英霊を補充されるよりはここで数を減らして心を攻めたいし』
『本当に危険ならわかるんだけど、今回は多分大丈夫。勘というか、直感というかね』
『だからまあ、ここはしっかりと抜かれないようにケツを守ってやるのさ。大将も気絶はしたが、どうせすぐに復活するだろうよ』
そこは副官たちが問題ないとバッサリと切り捨てる。負けるというよりも、相手が逃げるだの、勘だのと最悪を想定していない、していても、このタイミングではないというのだろうか。あんまりにも変わった回答にオルガマリーは一瞬固まるもすぐに再起動し
『なら、せめて藤丸と連絡を取って合流してもらうわよ。外から、あのクー・フーリンが攻めれば敵には重い一撃だろうし、不意も付ける。その時にあなた達が動けば勝利に近づけるのではないかしら?』
せめてもと代案を出す。あのワイバーンの数には藤丸たちも気づいているだろうし、隣の藤丸達を見ていたロマニのモニターの方では既に大方の問題は片付いたのか安堵の表情が見える。先程の音量を下げてもダメージを喰らった毒電波、もとい女同士の口喧嘩への介入と武力制圧は決着が付いたのだろう。
何故か一騎は藤丸に惚れたから戦力としてついてくるだろうし、この状況でも戦争のプロたちは問題ないと言った。なら、より追撃、増援に重きをおいた考えはどうだろうと言った意見だが、これには現場の兵も副官たちも笑顔で応え
『そのとおりさ。このくらいで死んじまう大将たちじゃない。それよりも、このワイバーンや英霊であちこちに飛んでフランスを荒らし回るほうが嫌なんでね。それで行こう』
優しくオルガマリーの頭をヤマジやアンナが撫で、すぐにモニターに視線を戻す。
『敵の英霊、華奈、ストーム1に接触!』
その間にもどうやら敵の英霊は華奈たちに到着したようで、カルデアにも、銀嶺にも緊張が走る。それを確認するためにもう一つ新たにモニターの映像が現れる。
「はぁ・・・・はっ・・・・ようやく、どうにかなった・・・」
肩で息を切らして滝のように汗を流す藤丸。英霊の喧嘩が自身もまだ理解しきれていない展開で収まりかけたかと思えば再発し、思わぬ攻撃(音波)で不意打ちを食らってから再びエリザベートの方から喧嘩をし始めるというひどい状況に。
これをマシュ、クー・フーリンの二人と戦ってどうにか抑えたわけだが
「きゅぅ・・・・・・」
「ぐぅう・・・・・」
清姫は目を回して気絶。エリザベートはそれは見事なたんこぶを作って地面にうつ伏せで倒れている始末。戦力になるはずの英霊が早速負傷。
「ぜぇ・・・な、なんか無駄に疲れたぜ・・・しぶとすぎだろあの赤髪の嬢ちゃん」
「はぁ・・・はぁ・・・宝具を使われる前にどうにかしましたが・・・疲れました・・・」
マシュとクー・フーリンもあのボイスをダイレクトにもらってからの戦闘。しかもエリザベートの方はランサーだったせいもあってか、どこかで戦闘経験を積んでいたからかマシュ、クー・フーリンにもどうにか食い下がり、しばし善戦。清姫も不意にあの声と戦闘に巻き込まれてしまうと収穫どころかマイナスになりかねない状態になった。
『み、皆! 大変だ! 今華奈達のほうが・・・って、何があったんだい!? 敵との戦闘が!?』
ロマニの緊急の連絡を送るもこちらの状況に驚いて逆に慌てふためいてしまう始末。清姫の加入? までは映像自体は見ていたので戦闘に、それも清姫まで倒しているという状況に思考が乱れる始末。
「その、ドクター・・・喧嘩の矛先がこちらに再度向いてしまいまして・・・い、いえドクター! それよりも今華奈さんたちが!? 何があったというのですか!」
周辺に敵はいない、というよりもこの戦闘でいても逃げたであろうことや目下の脅威は鎮圧できたところで緊張の糸が緩んだのもつかの間。華奈達の方で問題が発生したということにマシュが食いつき、疲れを見せる表情がすぐに緊迫したものに変わる。
『あ、ああ・・・その・・・エリザベート? の声をそのまま聞いたせいで他のメンバーはともかく華奈が気絶して、その様子を察知した敵が攻撃を仕掛けてきたんだ。今のところはそれぞれが一騎づつ英霊を受け止めていて、ワイバーンや骨の怪物は銀嶺が食い止めている』
戦況は五分。場所の有利性と経験で抑え込んでいるのだろうが、五分である以上時間とともに戦局は敵サイドに傾きかねない。銀嶺とて不死身の軍ではなく、相手もまだ隠している英霊はいるかもしれない。華奈達の五分という状況はすぐさま崩れかねない薄氷の五分であると全員は考えた。
「そんな! それでは・・・・」
「・・・・・・急いで戻って華奈さん達の援護に回る! また派手に戦えば使者の方にも分かってくれるかもしれないし、味方になりえる英霊の呼び水にもなることだってある! それに・・・」
「それに・・・?」
戦力増強の行動は中断し、引き返すことを選択した藤丸。もう少しだけ頑張ればきてくれるかもしれない英霊の参加、呼びかけは断念して一刻も早い加勢を選択。華奈たちと同じ数という英霊を、最初に3騎倒されてなお用意できる敵の戦力の無尽蔵さになにか嫌なものを感じた故に。もう一つは
「出来るならここで決着をつけたい。こんな蹂躙で人が死ぬのは沢山だ」
まだ蹂躙された直後城や村の様子を自身の目で見たわけではないが、周辺への遠慮なく華奈たちがぶっ壊すほどにそこの住民を皆殺し、虐殺を怪物で行っていたという。これを一日、一刻でも早く止めたいという、勝手ながら芽生えた正義感からくる行動選択。
「了解だマスター ここらでもう一発ガツンとかますのも。あの姉ちゃんだけが戦力じゃねえって見せつけてビビらせる。悪くねえ」
『なら、気をつけて欲しいわ。華奈達の推測になるんだけど、予想できる英霊はギリシャでも有名な狩人のアタランテ、そして・・・円卓最強の一角を成したランスロットとなっている。少なくとも英霊の中でも上位に位置するであろう傑物。気を引き締めてかかることよ』
その発言、意思にクー・フーリンは主の粋な心に面白さを感じ、同時に真紅の瞳を光らせる。少なくとも華奈、アルトリア、ストーム1。戦い方、強さの種類は違うが誰もが一時代を作った戦士。これが下手に進むのは危険だと警鐘を鳴らす相手、しかも予想ではこれまた高名な戦士や狩人。それと槍を交え、武を競える。更には主にその戦果を与えられる。騎士として、戦士個人としても心がうずく。
「はい・・・! ここで決着をつければ、大きな打撃を与えることができれば特異点攻略も容易になるはずです! 急ぎましょう先輩! ここで私達の増援は大きな打撃になりえます」
マシュも藤丸の言葉に自身の正義感というのか、人情に火がついたか戦闘以外では珍しく声を大きく上げて賛同し、救援に駆けつけようと準備を始める。
「あら、そこの方、少し待ってもらえないかしら? 私もその戦っている方に会いたくて」
「悪いね。彼女の我儘、頼み事なんだが付き合って欲しい。こうなるとてこでも動かないからさ。実際は動かないどころかこうして動き回っているんだけども!」
そんな一行にさらなる乱入者、檄文に興味を抱いて接触してきたのはそんなときだった。
「つっ・・・・くぅ・・・・面倒極まりないですねえ・・・」
あの爆音放送で気を失った直後に水をぶっかけられて無理やり起こされた華奈に待っていたのは敵の襲撃。防衛陣地を敷いてワイバーンや怪物のたぐいは銀嶺に任せ、英霊は英霊同士でやりあっていく。ここまでは良かった。
しかし、相手の英霊がまだ3騎もいた事。黒ジャンヌ含めれば4騎。ここの英霊との頭数は同じであり、ワイバーンや怪物自体は銀嶺はなれているから今のところは問題ない。『この調子』で行けば質が数を凌駕し、包囲網を敷ける。ヤマジたちもそれをするために敢えて動いていないだろうし、動いていたらこちらから待ったをかけるつもりなのでこれもよし。
問題は増援、英霊の隠し玉がどれほどの数で、どのタイミングでこちらに仕掛けるか。これを察知できないのが辛い。下手すればここが持ちこたえられずに崩れてしまい、防衛戦が崩れる恐れすらある。それに備える意味でもヤマジたちはこちらの備えになるし、最後の最後まで隠していたい。その状態ですぐさま他の援護に駆けつけて相手をひとりひとり削っていきたいのが本音だが。
「・・・・・・」
遠巻きにこちらに弓で攻撃を仕掛けるアーチャーに阻まれてそれもままならない。恐ろしいほどの俊足、それを殺すことなく木々を死角にせわしなく動き、華奈を一歩も動かせないように矢で動きを封じる。
華奈自身もそれをはいそうですかと流すわけもなくアーチャーから放たれる矢をいなしていくが、それだけだった。
(・・・・・・恐ろしいほどの威力。矢の形状も相まって衝撃波だけでも身を斬られそうになり、重さも正直いなす、流すだけだ。真っ向から受ければ吹き飛ばされる。もしくは・・・受けそこなって体の一部がやられるか・・・耳もまだキンキンするし・・・耳で探るにも時間がもっと欲しいです)
四方八方から大砲の威力の矢が正確無比に襲ってくる。それを打ち破ろうにも相手の速度は凄まじく視界の端に捉えるのがどうにか。自身の不調を差し引いても油断できない相手であり、たやすく打ち破るのは不可能な相手。相当な手練の女射手。ストーム1の言っていたアタランテと仮定してもそう問題ないだろう。
「やれやれ・・・狼、猪・・・害獣だったり、食べ物として狩られる場合は多いですが、まさか狩人に本当に狙われるとは、わからないものですねえ・・・・うっ!」
自身が率いた魔狼、魔猪を旗印とした銀嶺。そのトップにいた自身が獲物として狩人に狙われ、ジリジリと追い詰められそうになっている。洒落のような状況に思わず苦笑するが状況はそれを許さない。次から次へと無数の矢が放たれては華奈の命を狙う。徐々に軍服も切り裂かれていき、自身の腕や足にも少しづつ、少しづつ傷が見え始める。
「・・・悪いが、主命でな・・・お前にはしばらくそのままいてもらおうか・・・」
苦しそうに、あるいはどこか無機質になろうとするアーチャーの声を皮切りに矢の密度は増し、華奈の動きを封じて行く動きは早くなるばかり。矢の土砂降りに華奈は歯を食いしばってこらえるだけであった。
「・・・・・貴女は何者なんですか? 竜の魔女・・・・」
「ハァ? 今更何を言うのです。私はジャンヌ・ダルク。旗の聖女・・・まあ、そんな物は捨てて、今はこれを掲げていますがねっ・・・・!」
二人のジャンヌ・ダルクの対峙。華奈への救援に行こうとしたジャンヌを黒いジャンヌが立ちはだかる形で押さえ込み、白いジャンヌ・ダルク、黒いジャンヌ・ダルクの対決という摩訶不思議な勝負は黒いジャンヌ・ダルクの旗の一撃で幕を開けた。
「くうっ!・・・・ぅぁ!?」
力任せに右腕に持っていた黒い、竜の模様が書かれた旗での一撃を白いジャンヌは受け止めるが、抑えきれずに数メートル先まで吹き飛ばされる。
「私はジャンヌ・ダルクでありながら神の奇跡を信じない! 竜の魔女、フランス全てをこの炎で燃やし尽くす魔女!!」
それを黒いジャンヌは追撃する形で踏み込み、すぐさま距離を詰めて今度は左手の剣で白いジャンヌに斬り上げを叩き込む。これを旗の柄で受けた白いジャンヌは再び宙を舞い、すぐさま黒いジャンヌが振りかぶっていた旗に叩きつけられて地面へと押しつぶされてしまう。
「かはっ・・・・! あ・・・!」
肺の中の空気を一気に吐き出される感覚、息の詰まる感覚に苦悶の表情を見せるも一瞬で立て直し、自分を地面に押し付ける旗を無理やり取り払って立ち上がり、距離を取る。
自身が英霊としての力が未熟ということを差し引いてもこの苛烈な、遠慮も容赦もない攻め方に加えて全力の自分でも及ばないであろう出力、馬力。たとえ『ジャンヌ・ダルク』の戦い方を知っていて対処、癖を知っていたとしてもこれではジリ貧だ。
「あーらら、なっさけないわねえ。私。いえ、旗の聖女様? これくらいであっさり喰らっちゃうなんて。悪いけどどいてくれないかしら? どっちかと言えば、貴女みたいな絞りカスの力しかない馬鹿よりも私をコケにした女をなぶり殺しに行きたいのだけれど」
そんな力の優劣を理解している黒いジャンヌはにやりと口の端を上げ、どうでもいいと手をプラプラと振ってあっちへ行けとポーズを見せる。ここまで力の差があればすぐにでも殺せる。眼中にないという意思を示している。
更にはその先では動けずにいる華奈を標的にしているときた。悔しさと同時にやらせるものかという感情が白いジャンヌの中に湧き上がる。再度旗を強く握り、その切っ先を向けて行先を防ぐ。
「行かせるものですか! このフランスだけではなく、あの方たちまで害するとは本当に私なのですか!? 昔聞いて憧れたでしょう! 狼の騎士、カナ・フナサカ。救国の女騎士に!」
自身だと、竜の魔女だと語る黒いジャンヌ。それでありながら華奈を殺すと言い切る。それだけではなくフランスを、自身の故国を焼き尽くすとまでいい切った。自分の側面だとしても『ありえない』という言葉しか浮かんでこない。しかし目の前で自身を見下し、先に進もうとする、ジャンヌ・ダルクと語る女性は何のためらいもなく言ってのけ、迷いもない。
自分にもそんな感情があるのだろうか。憧れた騎士ですらもすぐさま害せる気概があったのか・・・そう思いながら右からの横薙ぎで胴を打ち据えようとした旗の動きには腰が入っていない情けないもので
「私だからこそよ! 私を裏切った全てを焼き尽くす! 殺し尽くす! そのために私は魔女となって蘇った!! 憧れであろうと私の邪魔をしたものは全て殺すだけよ!!!」
ひらりと黒いジャンヌはバックステップで回避。すぐさま旗でがら空きになった白いジャンヌの横腹を鎧ごと壊す勢いの反撃を叩き込まれる結果に終わってしまう。
「げほ・・・・つぅ・・・」
「まあ、良いでしょう。まだいじらしくこんな国を守ろうと足掻くご立派な聖女を私の手で終わらせて、その間もあの狼の騎士だとかいう女がボロ布のようになっていくさまを眺めるというのも一興です。あの女の死に様を見れたら満足としましょう」
地面を再び転がる白いジャンヌを一瞥して黒いジャンヌは少し離れた戦場から響く弓の音、矢を弾く金属音に耳を傾ける。戦闘は以前こちらが有利。円卓のランスロット、ドラゴンライダーのマルタでは相性が悪い可能性を考慮して遠距離での戦闘に長けたアーチャーをぶつけた結果は成功のようだとほくそ笑む。
こちらの用意した隠し玉と併用してこの前の報復、そして反抗勢力を飲み干す。そういった意味では白いジャンヌの首も良い宣伝になるかもしれない、ついでに、いい娯楽だと思考を切り替え、一層悪辣な笑みを黒いジャンヌは浮かべる。
「ですから・・・・行かせませんと言っているでしょう! 貴女のことを理解して、その上で何故竜の魔女となったか納得行くまであがきますからね!!」
「いいわね・・・余興にはいきのいい道化が必要だもの。せいぜい足掻きなさいよ、聖女さま?」
再度黒と白の聖女、旗を掲げるものはぶつかり合い、フランスを守らんとする盾、フランスを焼こうとする矛のぶつかり合いは益々激しさを増すばかり。
駆ける駆ける駆ける。自身に戦場は限り無しと言わんばかりに縦横無尽に駆け巡り、時折ぶつかり合ってはそこが嵐の中心地となる。ぶつかり合うは青の騎士と黒の騎士。互いにその色を象徴するような聖剣、あるいは獲物を持ってぶつかり合う。
円卓の主であったヒロインX、もといアルトリア。円卓最高の騎士と謳われ、最古参の一人ランスロット。今なお騎士道物語、英雄譚、おとぎ話として広く知られる彼らの戦いはその伝説を色褪せるものではなく、黒と青の疾風は駆け回っていく。
「全く! 姉上に何度も助けてもらいながらまた迷惑をかけるのですか!? 円卓でこれ以上借りを作っては会う度に土下座と謝罪が必要になりかねませんよランスロット!!」
「■■■■■・・・! ■■■■■■!!!!!」
エクスカリバーの二刀流、さらには魔力放出の精度にも出力にも磨きをかけたアルトリア。円卓を率いていた時代とは比較にならないほどに研鑽も自力も上。それでもランスロットは3つの武器でアルトリアと渡り合い、それどころか要所要所では圧倒すらしていた。
一つはバーサーカークラスであること。狂化を得る反面高いステータスを英霊として手にし、それは本来一番当てはまるであろうセイバークラスも凌駕するほどの基礎能力を存分に振るう。しかもその逸話が華奈、アルトリアとは関係の薄い『鏡は横にひび割れて』のことが由来なのだろうか。アルトリアの声、華奈の事を話してもまるで動じずに手にして武器をためらいなく扱っていく。
「■■■■―――!!!!」
「くっ・・・! ぐぅ・・・!!?」
それほどの狂化を施されてもなおランスロットの2つ目の武器、『無窮の武練』でどんな状況下、武器であろうともその動きのキレ、振りの鋭さを衰えさせるものにはならない。ぱっと見では数打ちの剣と枝を駆使して子供のおもちゃのような外見の獲物を手足の延長のように使い、その特性すらも本能と経験、鍛錬で刻まれた体はどんな精神状況でも理解して扱う。
アルトリア目がけて振り下ろされるそこらへんでもぎ取った枝の右袈裟懸けをアルトリアは剣で受け止めるもしなって左肩に直撃しそうになるのをとっさの魔力放出で距離を取ることで避け、そのまま引き際に枝も絡め取ることでランスロットの手から奪い、遠くに放る。
「・・・くっ・・・厄介なスキルですね・・・とりわけこの組み合わせは・・・!」
それでもアルトリアの渋面は晴れることはなく、優位性も獲得できたわけではない。
「■・・・・■■■・・・・・・・・」
ランスロットは自身の獲物が一つ無くなったことに気づくとすぐさま少し背の高い雑草を手にし、それを黒く、赤いヒビが入ったものへと変化させる。
ランスロットのもう一つの武器は宝具『
(とにかく武器のリーチも、癖も変わる上に、枝葉となれば幾つもの刃が襲うくせに下手な受け止め方であれば肉を裂かれる・・・今の草も・・・)
「■■■■!!!」
アルトリアの思考を遮るように突撃を敢行して武器に変えた雑草をまるで鞭のようにしならせて打ち据えんと動くランスロット。雑草のいくつもの葉は複数の鋭く薄い刃となってしなり、形を変えて襲い、それに対処を謝ればもう一つの剣で首を狙ってくる。一度距離を取ればその間にランスロットは別の武器を選択してアルトリアはまたそれの対処に思考を裂かれる。そんな戦いが何度も繰り返され、そして互いに決定打が見つからずに泥仕合の体を成しつつあった。
「ああ・・・! もう・・・姉上の救援に行かないといけないのに・・・! 円卓は円卓どうしで騒ぎを起こさないといけない運命なのでしょうか!!?」
何度かエクスカリバーを放とうともしたが、それすらも長くアルトリアの側で戦ったせいか、本能が察知したかすぐさま回避、距離を取られる。放つ前にアルトリアの足場を崩してしまうとむしろエクスカリバーを放つこと自体が命取りとなりえる状況を作られる。
このいらだちに歯噛みし、少しばかり怒りのボルテージが上がっていくアルトリア、それを意に介さずに狂ったままにその恩恵と自身の強みを活かしてひたすらに倒さんと立ちはだかるランスロット。最高の騎士たちの戦いは天秤がどちらに傾くかは未だ分からず、周辺を2つの嵐が再び蹂躙することとなる。
「参ったね。あんたみたいな美女とはディナーのお誘いなら迷わず応じたってのによ」
「ずいぶんと軽いわね。そんな様子じゃ女に好かれないわよ?」
ストーム1と華奈たちは観測できずじまいだったもう一騎の英霊。やたらと露出度が高い白を基調とした衣装。紫の長髪の美女。十字架を模した身の丈以上の杖に亀のようにも見える巨大な竜。
これだけの、特に目立つ竜は捉えられるはずだったが、ストーム1達の確認できる範囲外に控えていたということだろう。それだけにストーム1は腑に落ちなかった。
前線に張っていたランスロットにアーチャーの二騎にすぐに追随できる機動力を持っていたのは先程自身の前に何やらどこぞの亀の怪獣のように飛んできた事も踏まえて奇襲のためだったはず。それだというのにストーム1にすらも目の前で堂々と降りてきて、こうして話もできている。
(しかしまあ・・・この姉ちゃん・・・十字架となりゃ取り敢えずキリスト。それに竜・・・竜を倒した、って逸話ならまだしも従えた、共にいても問題ないほどの関係を築けている・・・・そんで、キリストで竜に関係、女性で有名所と言えば・・・)
「まさか。意外とファンレターだってもらうんだぜ? 上司にゃ恵まれているしなあ。あんたはどうよ、聖女マルタ」
「! どうしてマルタだと・・・?」
飄々、軽薄そうな印象を受ける話し方、少し抜けたような話し方をしていたストーム1、それを狂化を自身の精神ではねのけながら見定め、どう戦おうか考えていた矢先に自身の真名にたどり着いたことにマルタは一瞬眉根を寄せるもすぐにポーカーフェイスに戻る。
「俺の知り合いにEDFのフランス、ドイツ支部の連中がいてな。あんたの祭りに参加した時の話を聞けたんだよ。マルタ、タラスクの見た目とかもな。祭りの起源たる本人に合うとは思いもしなかったがねえ。全く贅沢だぜ。この戦いは救国の聖女にもうひとりの聖女。天国だって言われても信じちゃうさ」
くつくつと笑みを絶やさず、相手の英霊がマルタとわかったことで今の自分の武装、相手の戦力の可能性をストーム1は頭の中で整理していく。
(マルタなら少なくとも2000年以上前の人物、しかも神の子からの奇跡を経験している・・・自身も相当やれると仮定。そもそもタラスク自体もあのリヴァイアサンの子供・・・俺自身の特攻は入るにしたってあの分厚い甲羅をどうやって剥がすか・・・)
今回は銀嶺とも連携することを考えて武器の一つはセントリーガンの固定兵器で既に全て援護に使っている。もう一つの武器は連射型スナイパーライフルドゥンケルN236R。威力も連射性も悪くはないのでこれで戦えないことはないが、仕切り直し、あのタラスクに威力負けしないという意味ではショットガンのガバナー、バスターショットあたりでも用意しておけば良かったと戦い方を再構築していく。
自身よりもはるか昔、それも竜を御して今なお語り継がれる英霊、女性であれど何をしでかすかわからないというのは冬木でのマスター、マシュ、アルトリアを見ていれば嫌でも理解できる。油断なく、手強いものと仮定して初動を探る。
「あらら・・・そんなふうに思われるとはね・・・まあ、天国どころか地獄をここに再現しそうだと言うのに聖人が多いというのも・・・ええ、酷い皮肉だわ・・・」
(身なりからして軍人。知識自体はそれなりにあるし、タラスクを見ても臆さない。場所を相当くぐってきているのかしら? もしくはそういった、怪物、竜のいる戦場に身を投じていた・・・まさかね。現代の戦場でそんなものはないでしょう・・・けど、これ以上惨劇を作り上げる前に、私を止めてもらうには・・・まあ、どうにかなるかもしれないわね)
マルタ自身も相対するストーム1の様子からその経験、胆力を探り自身にも伝えられた様子から武器をいくつか保持していることを踏まえて自身が自身を抑え切れなくなる前に倒してもらえる相手かもしれないと予想を立てて少し希望を見出す。
今回の召喚自体、頼まれたって来たくないものだった。フランスに呼ばれ、滅ぼすために、民草を焼き尽くすために狂化をかけて令呪で縛り付けられる。あの方に教えを請い、迫害されてもなお信じ抜いて平穏な世界を夢見た自分の考えとは、生き方とは真逆もいいところ。
そんな地獄、腸も煮えくり返る状況にも幸運と思えるのはそんな非道を止めてくれる存在、戦力の登場だった。マルタの理性が狂化を抑えきれなくなっても関係ないほどの実力を有した者に自身の手で民草を殺して手を血で赤くすることがないようにしてほしい。目の前のライフルを構えた男はそれを叶えてくれるかもしれないのだ。
暴れろ、狂えと自身を蝕む狂化、そしてこの出会いの嬉しさで自然と体は震え、杖を構えて戦闘態勢を取る。
「さて・・・お話はいいかしら? いい加減、こんな戦いは終わらせたいの・・・・・・・私を止めてみせなさい」
「ああ、ちゃちゃっとマスターたちの援護にも行かないとだしな。それに、そんな苦しい顔は似合わねえなあ。もっと花のような笑顔があんたには似合うはずだ。・・・・・すぐに楽にしてやるよ」
ストーム1もドゥンケルを構え、戦闘態勢に入る。ドゥンケルのセーフティーのロックを外したその瞬間に聖女と嵐を冠する戦士の戦いは幕を開け、激しい銃声、全てを焼かんとする炎、光弾の轟く戦場となった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
それを遠目から眺め、機をうかがう2つの存在はどこへ仕掛けようかと品定めをしていると華奈たちは気づかないまま、4つの英霊達の戦場、その軍と怪物の群れの戦い合わせて5つの戦場での争いは加熱するばかり。
優勢から急降下。ギャグからのシリアスに切り替わるくらいに変な切り替わりでした。次回で藤丸たちは再度合流でしょうか。
ストーム1のマルタに冠する情報ですがEDFシリーズでは主人公はロンドン、欧州に救援で行く場面も多いのでそこで現地のEDFの支部の人と話していたという妄想です。
ストーム1の手持ちであったドゥンケルシリーズはEDF5にてレンジャーに実装された連射タイプのスナイパーライフル。いろいろと使い勝手がいいので愛用する人も多いはず。
ガバナーはEDFシリーズではおなじみの一回の射撃でかなり多くの弾丸を発射できるタイプのショットガン。弾数は少ないですが一応使える部類のものです。
最後にUA 70546件 しおり 170件 お気に入り 489件 応援ありがとうございます! UA7万超えまで行けたのは皆様の応援のおかげです。こんな駄作を見てくださって感謝です。
そして、長らく待たせてしまい申し訳ありません。あいも変わらず待ってくれる皆様には感謝しかありません。これからもどうかよければ暇つぶしに読んでくだされば幸いです。
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。