転生愉悦部の徒然日記 作:零課
アルトリア「互いの引き出しをよく知っている分めんどくさいですねえ!!? 大技も封殺してきますか!」
ジャンヌ(白)「ふっ・・・! なんで・・・なんでこんな・・・?」
ストーム1「うぉっと! ああもう、こんな美人な飼い主に珍しいペット、テレビに出たほうがいいだろうによ!」
クー・フーリン「マスター少し先に行くぜ!」
マシュ「あ、ちょっと、クー・フーリンさん!?」
藤丸「わかった! でも、無理はしないでよ!」
エリザベート「あ、ちょっと子鹿! どこ行くのよ! 勝手に喧嘩ふっかけて何がしたいのよ!!」
清姫「まぁ。それで引き返しているんですのね?」
ロマニ『そうなんだ。だから、意外だったけど二人が来てくれるのは本当に助かる。今は一人でも戦力が欲しかったからね。それ以外にも来てくれるなんて思わなかったけど』
良馬『あ、ちょうど先程のお二人も華奈さんのところに到着。戦闘に入りますね』
「うぅく・・・っ・・・! くぅ・・・」
アタランテの猛攻、常に動き回り、絶えず重い矢を四方から打ちすくめられる攻撃をしのぎつつ、華奈はある回復を待っていた。
(あと7秒・・・それだければ耳は治ります・・・その後は・・・)
聴覚の回復。耳さえ治ればこの俊足の狩人の攻撃や足取りを視覚以外でも感じ取れるようになり、考えていた方法で捕らえることも可能。引っかかるかはわからないが、警戒心をもたせる意味でも使っていきたい。
幸いなことに、相手も主命といいこちらを追い詰めてはいるが、最後のひと押しだけは入れないように抗っているのか、それとも狂化では使えないのか宝具開放まではしておらず、ただこちらを矢の雨で拘束しているだけだ。
(まあ・・・最初であれをかました私を嬲るつもりかもしれませんが。しかし、それにしたって・・・ああ、なるほど。では、少し早めに行きましょうか)
その真意、おおよその敵の戦力に察しがついた華奈は一つ考えついた作戦を開始。回復した聴覚に早速自身の宝具で妖精たちから貰ったアクセサリー、飾り気のない銀の指輪を一つ右の親指にはめ、右鞘の近くにしまっておいた小さな、手のひらサイズの円柱状の物体を取り出して地面に転がす。
「! ・・・何をするつもりか知らんが・・・!」
それに気づいたアタランテもすぐさま剣山状態の華奈の近く、自身の矢の隙間をかいくぐって矢を放ち、起動を防ごうとする。
が、その神業で射抜いた円柱状のそれは矢で射抜かれると同時に爆発を起こし、周辺が一瞬白むほどの閃光、そして耳をつんざくような高い音が鳴り響く。
「がぁああっ!!?!?」
「!?」
爆撃、この剣山の状況を打ち払う風の魔術、そういったもののたぐいだと考えていたアタランテ、そして、近くで華奈を狙い、身を潜めていたものはその音と閃光のコンボに面食らい、その目を焼くような閃光と耳を抑えたくなる不快音に目をつぶって両手で耳を抑える。
「見ぃ~つけたー・・・・」
そんななかでもアタランテの声を聞き分け、この不快音で気配遮断を緩めた相手の声と気配を感じ、即座に華奈は両者の気配、距離を察知。潜んでいた伏兵にはアタランテの弓を地面から蹴り飛ばしてぶつけ、華奈はアタランテの方に木々を伝って一気に距離を詰めていく。
「くそっ!」
それでも流石は神代の狩人。とっさながらに華奈の声と目を閉じるまで寸前の位置にいた華奈の場所から相手の行動を逆算して矢の雨を再度振らせる。矢が地面に突き刺さる音が絶え間なく響き、静寂がこの場に訪れた。少しだけ回復した目を開くと、おぼろげながらにハリネズミのような状態になっている人影に、華奈の着ていた服。
「・・・・や」
「ってませんね。失礼」
安堵の息を吐こうとした直後、背後に背後から感じる声、振り向くもその瞬間にはアタランテの弓は華奈が左手に握る桜色の刃に弦を切り捨てられ、矢を持った左手は右手で抑えられて後手に抑えられる。その直後に華奈はアタランテを抑え込んでいる右手で押さえた手の指で服の一部をひっかけ、木々を縫って戦線離脱。
「な・・・なにを! す、る・・・・・?」
「ふぅ・・・狂化を斬るというのは中々に難儀ですね。これを着けてください。少しお話があるので」
その早業に驚く前に敵である自分を生かしておいてどうするというのか。華奈の手に矢を突き立てようと右手を動かそうとして、アタランテは違和感に気づいた。敵意、自身を蝕んでいた狂化、その破壊衝動、殺戮衝動が無くなっていた。それに戸惑っている間に華奈は戦場から離れた森、その木々の大きな枝の一部に腰を下ろし、右親指に着けていた銀の指輪の代わりに今度は金と銀が交差し、小さくダイヤがはめ込まれた指輪を自分とアタランテにはめさせる。
「・・・些か信じられんが、狂化を切り、更には契約までも切るとはな・・・だが、助かった。この狂化に呑まれ、子供を害するのは身が焼かれるよりも辛いこと。・・・ありがとう」
「いいえ。こちらも狂化を解いても敵対されずに済んで良かったです。私は船坂 華奈。まあカルデアのしがないマスターです。貴女を殺さずに捕まえたのは、情報がほしいのです。こちらも、いい加減この戦いにケリを付けたので」
敵の捕虜から情報をもらう。しかもアタランテは黒いジャンヌの呼んだ英霊。ワイバーンが兵士だとすれば将官から情報をもらえる。敵の居場所やまだ備えがあるのか。華奈はそれを知るために刀でアタランテの『狂化』と『契約』を切り、自身の宝具で自分がカルデアに人間として認知され続ける認識阻害の指輪を自分とアタランテに着けたのだ。アーチャー故に単独行動のスキルでまだ問題なくこの場には留まれるだろうし、必要ならこっちの魔力を渡してやればいい。
アタランテの方も召喚と契約には乗り気ではなかったようで、すぐに話してくれるらしく、少しの間を置いて語り始めた。
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「ヴィヴ・ラ・フラーンス♪」
「ごフォ!?」
「あー・・・・懐かしい顔、できればこんな形で見たくなかった」
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「なるほど、敵の本拠地はオルレアン、で、実働部隊は黒いジャンヌ・・・ジャンヌ・オルタで裏からのバックアップはジル・ド・レェが。聖杯もそこにあると」
「あぁ・・・・・しかし、こうして話していても見つからない・・・いや、カナの英霊の気配すら感じないとはな。相当に便利なようだ、この指輪は。それに・・・あの自身の身代わりにした的? や閃光と不快音を出した筒。円卓の中でも手広くいろんなことをしたというのは一応は知っていたが・・・大したものだな」
ササッとメモに情報を整理し、アタランテにはお礼のチョコバー(魔力入り)を渡しながらのしばしの情報交換。アタランテの方はチョコバーの味よりも自身は愚か、目の前でメモを取っている華奈から英霊の気配を感じない、人間と同じような気配しか取れないこと、閃光手榴弾、それも英霊の自分たちにも効果のあるものを用意できたことに感心しているようだ。
「まあ私の自作ではなく、ブリテンの妖精やそのたぐいの皆さんからの貰い物ですけどね。宝具に昇華されちゃいまして。後は閃光手榴弾は自作。的に関しては閃光の間に私の刀で土人形を作って服をかぶせただけです。目がくらんだ直後ならそれでもいいかなと」
自身の宝具、妖精などから貰ったアクセサリーを使用できる『妖精の宝石箱』使用できる物によって数の制限、限界量があるがそれでも妖精が持ちうる、強力な道具を使用、誰かに譲渡、貸出できるのが便利なものだ。自身とアタランテも現在認識阻害の指輪をつけて敵の目を欺き、カルデアには自身で連絡をさきほどしておいたので問題なし。
アタランテからも情報を十分にもらえた。そろそろ移動するべきだろうと華奈は腰を上げ、ちらりとアタランテを見て。
「さて・・・私はもう失礼しますね? 今はもう貴女も自由の身で英霊の一騎。せっかくです。少し自由にされては如何でしょう」
木々を蹴って戦場へと移動していく華奈。それを見てアタランテは少しの間逡巡した後
「あ! まっ・・・・・・そういえば・・・後詰めが来るとか言っていたな・・・どれ、一つ働こう。罪滅ぼしになるかはさておき」
弓の弦を直し始め、微調整、まだ不快音や閃光での影響は残っているかを確かめ始めた。
「っくそ・・・やっぱ片手落ちの状況でのこれはきつい。ライダーってのは、皆こうなのか?」
「余計な言葉を吐いている隙があるのかしら!? タラスク!」
マルタとストーム1の戦場は幻想の世界、ちょっと変わったSFファンタジーの光景を見せ、火を吹き視界を防ぐタラスク、その間をマルタが魔力弾を使って攻撃。これをしのげばタラスクがその質量、怪力を活かした突進。
「げっ・・・!」
「そこっ!」
更にはマルタ自身が躍り出て肉弾戦を展開。嫌に慣れた足を交えた拳闘の攻撃は怪物、メカと戦い慣れてはいるが対人間に慣れていないストーム1を苦しめる要因だった。タラスクはどうにか武器と特攻スキルで押し返せてはいるが、それ以上のもうひと押しのための武器が一つ無いことで対処策を封じられていることを差し引いてもこのアドバンテージは大きく、身体には火傷、数箇所の打撲が出来ていた。
「くっ・・・! 聖女かと思ったらシュートボクサーってか?」
炎も、突進も自身のアーマーや経験で軽減、いなすことこできる。けれどマルタの、今までのストーム1の経験した攻撃に比べたら小さく、鋭い一撃一撃がアーマーの隙間、覆われていない部分を縫って突き刺さっていく。
「町娘ってのは、たくましいものなのよ! はぁああ!」
杖を上空に投げて肉薄したマルタの左ショートフックがストーム1の肘を横から叩いてしびれさせ、再度振るうことでドゥンケルを持つ手の甲を叩いて銃を叩き落とす。
続けてフックを撃つ際にねじった身体を戻す反動で打つ右フックで顎を打ち、左手でまだしびれの抜けないストーム1の右腕を掴み、引き寄せて左の膝蹴りを鼻先に炸裂。
「つぅう・・・」
たたらを踏んで下がったストーム1にさらなる追撃のために上空に投げていた杖を手にしたマルタはそのまま魔力弾を杖から発射。ふらつき、銃を落として守りの体勢が取れないストーム1に撃ちまくる。
(これまでね・・・アーチャーと、あちらのセイバーは今はわからないけど、他はおおよそ優勢、互角。こいつも口だけだったか・・・)
タラスクをも押しのける怪物への強さ、炎や突進を受けて尚耐えられる頑強さはあったが、英霊との戦いにこうも弱くてはアサシンも倒せるか怪しいものだ。これ以上は時間の無駄と判断したマルタは魔力を高め、宝具開放の準備を始める。
「うぐ・・・いてて」
(くそ・・・こりゃあ、一つ切り札を使うか。マスターに隠しておけと言われたが、あれを使わなけりゃあ問題無いと言われたし・・・)
フラフラと立ち上がるストーム1も流石にこれを凌ぐには今の状態では無理と判断。もう一つの手段を使うために魔力を高め始めるが
「愛を知らない哀しき竜・・・・・ここに。タラスク! 星のように!!!」
それよりも早くマルタの宝具が発動し、タラスクが手足を引っ込め、凄まじい回転をしながら四方から火を吹き流星のようにストーム1へと激突、大爆発を起こす。
辺りの木々が軒並みなぎ倒され、クレーターができるほどの攻撃。吹き飛ばされた土が雨となって降り、焼け焦げた地面にタラスクだけだった・・・そう見えたが
「すげえ衝撃だ。流石は音に聞こえし竜。攻撃も凄まじいねえ」
聞こえてくる男の声。それもさっきまで対峙し、見切りをつけて宝具でとどめを刺したはずの相手。ありえない、少なくともこうも喋れるほどの元気さなど。目を見開き、タラスクとその爆心地に目を凝らすと、タラスクの甲羅を受け止め、立っていた男がいた。
「な、何よ!? その姿は! さっきとは別人・・!」
まるで特撮の防衛隊、その兵士のようなコンバットスーツに銃ではなく、全身を黒の鋼で包んだ、ゴーレムのような鎧。左手に盾を、右手には巨大な丸い槍を手にし、盾でタラスクの攻撃を受け止めていたのか、まるで傷一つ無い。先程のストーム1が一般兵ならこのストーム1は重武装兵。堅牢な鎧で身を守り、その巨大な武装で敵を屠る、黒金の兵士だった。
「第二宝具・・・『嵐を冠する四の兵』さっきの俺はレンジャー、今の俺はフェンサーって言ってな。まあ、いわゆるモデルチェンジってやつだ」
マルタの動揺を見逃さず、盾で受け止められて尚押しつぶそうと動くタラスクの甲羅にストーム1は右手に持つ巨大な杭のような槍。を放つ兵器。ブラストホールスピアを発射。岩山を思わせる頑強な甲羅は撃ち抜かれ、更にもう一撃で完全にタラスクの心臓を吹き飛ばす。
それでも勢いの衰えない巨大な槍はタラスクの身体を貫通していき、射線上にいたマルタの心臓をまるごと貫き通してそこで止まる。
「ゴホ・・・ッ・・・隠し玉ってわけね・・・ふふ、やるじゃないの」
「楽にはしてやれなかったが、止めてやれたぜ・・・済まなかったな。約束、守れなかった」
死に体となったタラスクから自身の纏うパワードスーツの起こす膂力で槍を引き抜き、楽な姿勢を取らせてやると。心臓を穿たれて仰向けで倒れているマルタへ申し訳なさそうに頭を下げる。フルフェイスのマスク故に表情こそ見えないが声色で申し訳ないと思っているのは伝わり、それを聞いたマルタは血を吐きながらも笑顔を浮かべ
「いいえ・・・息苦しい、やりたくもない破壊衝動を起こす狂化も気にせず、これ以上この土地を汚さずに済んだ・・・気が楽になれました。重荷が、全部おろせた気分です・・・・・ありがとう、ストーム1・・・異国の戦士・・・」
花のような、憑き物が落ちた優しい笑顔で笑いかける。狂化という鎖も砕かれ、この特異点を終結させる希望も見つかった、満足した表情だった。
「おっ、いいね。やっぱ聖女は、女の子は笑顔が一番さぁ。さあ帰って休みな。座に帰ろうとも派手な花火を見せてやるからよ。じゃあな」
それに対してストーム1も表情こそ見えないが笑って応え、マルタとタラスクへと手を合わせた後にすぐさま背中についているブースターで加速、他の戦線に急変するために駆けていく。
「・・・ふぅ・・・中々の骨太・・・これで楽になれるわ・・・タラスクもありがとう。もう私達も休みましょうか」
その背中を見届けた後にマルタはタラスクとともに消滅。聖女は望みを託して去っていった。
「おーう、アルトリア、苦戦しているようだな。その狂戦士・・・よこせや」
「ランサー! ってことは・・・・戦力加入は中断ですか」
アルトリアとランスロットの死闘、互いに守りの技術の上手さと手の内を知っていることで傷一つつかずにいた勝負に突如現れた槍兵。クー・フーリンの乱入に一度激戦が止まる。
思わぬ戦力の追加に助かったと思う半面、自身らの作戦は潰れてしまったと気を落としもしてしまう。
「■■・・・・・・? ■■■、■!」
ランスロットは思わぬ敵の追加、しかも油断ならない強さを感じさせる敵一度踏みとどまる。が、すぐさま自身の獲物を横取りした青の槍兵。クー・フーリンに突撃、上段から剣の打ち下ろしを仕掛けていく。
「っと・・・! へえ・・・バーサーカーの割に鋭い攻撃じゃねえの。苦戦するわけだ。行け、旗の嬢ちゃんのピンチにはマシュとマスター、後は清姫って奴が来ている。今のうちに敵の退路を断つなり、相手の残った駒を潰してきてくれや」
それを槍で受け止め、反撃の一撃を振るおうとするクー・フーリン。しかその重く、鋭い一撃に返しの一手を打てずにバックステップで立て直す。
「はぁ・・・相手はランスロット。円卓最強の一角です。たやすい相手ではないですよ。私は敵戦力の刈り取りと行きますので、任せました」
アルトリアも仕方無しとクー・フーリンの意見を呑んで引き下がる。クー・フーリンはどうも引く気もなければ、背中の雰囲気でわかる。サシでやりたいと語っているのがわかる。最悪自身が距離を取れていればピンチの時にエクスカリバーでも打てばいいだろうと考えて戦線を離れていく。
「へっ・・・いいじゃねえの。さぁて・・・・・構えな。主への御首、手柄にも申し分なし、ラッキーなもんだ。いくぜ!」
浮かべる笑みは狂戦士にも負けない戦好きの顔。この特異点での戦闘、行われたのはせいぜいが眼中にもない雑魚、英霊も姦しい娘二人をのしただけ。自身が戦いたいと思えるほどの相手には巡り会えなかった。敵の主力らしいのは華奈たちに倒され、英霊の包囲戦でおしまいかと思ったら起きたアクシデント。それからの強敵との戦い。
自身の戦闘への欲求を満たす相手に、マスターへの手柄としても悪くない。朱槍を握りしめ、自身から突撃を仕掛けていく。
「■■! ■■■■!」
もちろんそれをハイそうですかと流すランスロットではなく、自身の持っていた左の剣で受け流し、右の木の枝で反撃。それをクー・フーリンは石突のほうで受け止め、切り返す。
武器の多様さ、ハチャメチャさには自身の養父、師匠、その他生前の経験で慣れてはいる。そのまま数合ほど打ち合い、相手の手の内、癖を探っていく。
「つぇえな・・・なんでも武器に出来ちまうってのもそうだが、まるでそれが長年愛用した武器みたいに使いこなされる・・・なるほど、面倒くせえ。なら、こっちに来な!」
打ち合いのレベルは似たり寄ったり、相手の武器の切り替わりも槍のリーチの長さ、持ち手を自由に調整できることで寄せ付けないようには立ち回れる。ただ、それでは決定打はつかめず、強烈な突きでランスロットを奥へと飛ばした後で近くの林にクー・フーリンは入っていった。
「■■■■ーーーー!!!!」
普通なら罠、それも槍使いがわざわざ動きの制限されやすい林に入るのは明らかにおかしい。冷静な戦士、判断ができるのならそう考え、思いとどまりもしよう。
しかし現在のランスロットはバーサーカーのクラス。細かな計算や考慮を考える思考は残されておらず、自身の獲物を逃した余計な邪魔者。排除するだけの、暴れることに思考を塗りつぶされたランスロットはそのままクー・フーリンを追いかける形で突貫。戦場は森のなかに移る。
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「クリスティーヌ・・・・・・・」
「栗だかクリスだかなんだか知りませんが、舌なめずりが過ぎますよ、優男」
「なっ・・・!」
「首、貰いましょうか」
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「■■■!!! ■~~!!!!!」
「おーおー・・・暴れるねえ・・・どこもかしこもぜ~んぶなぎ払いやがって」
森のなかで行われる戦闘は先程よりもランスロットの攻め一辺倒になり、クー・フーリンは突きで牽制しながら距離を取り、ちょこちょこなぎ払いや斬り上げを繰り返しては周辺の樹を傷つけながら対応。ランスロットはそれに対して剣で枝葉を切り飛ばし、そこかしこにある木々をもぎ取り、へし折って宝具で武器に変え叩き折り、切り裂き、森のなかでもあたりの木々を障害物と捉えないほどの暴れっぷりを発揮していた。
「■! ■■■、■■!!!」
粉砕した木々は全て武器、多少の悪路など気に留めないほどの足運び、膂力、速度。1ランク底上げされた狂化の恩恵は多少の技量も問題ないほどの馬力で攻め入る。
「ヘッ! いい気になんなっての・・・お前はもう、ここで戦っている時点で負けなんだよ・・・ッ!」
それに対してクー・フーリンはもう一度突きを心臓目がけて放ちランスロットはそれを持っていた宝具化した棍棒で受け止めることで勢いを一度殺す。場所はすでに荒れ果てていた林の一部だったところ。いつの間にやら同じところに着いていた、いやクー・フーリンはここを狙って誘導していた。
「そらそらそらぁ!! どうしたぁ!? 円卓最強ってのはびっくり一つで揺らいでしまうのかぁ!?」
勢いの止まったランスロットに対してギアを上げ、折れた大木を蹴り、凸凹した地面すらも足場にして縦横無尽、槍兵の、自身の足を十二分に活かした高速機動からの四方八方から飛んでくる突きの雨あられ。時折槍、足で蹴り上げる土も目隠し代わりに飛んでいき、とことん相手を撹乱していく。
「■!! ■■■■!!!!! ■■! ■・・・!」
対して一度勢いを殺され、ギアを上げられて体感的には倍以上に感じるクー・フーリンの攻撃に面食らうもすぐさま立て直し、剣と小さな枝で防ぎきり、倒れていた長い枝を鎌のようにして周辺を一気に薙ぎ払う攻撃を繰り出してクー・フーリンを補足、動きを止めようとする。
「ちぃっ・・・!」
長い枝が胴体目がけて飛んでくることにクー・フーリンは槍で受け止めて、ランスロットの枝を掴んで奪うことは出来たが力押しに吹き飛ばされ、たたらを踏むように着地。微かに体制を崩す。
「■■■!!!!! ■■ーーーーーーー!!!!!」
その隙を見逃さずに一気にとどめを刺さんとクー・フーリン目がけて駆けていくランスロット。奪われた枝の代わりに視界に映った枝を握り『
「っはは! 引っかかってやんの! 油断しやがったなあ!」
待ってましたと大笑いをあげながら冴えるクー・フーリンの朱槍は即座にランスロットの両手の甲、肩を突き刺し、槍を鎧に引っ掛けてランスロットの身体を捻るように動かすことで根っこに足を取られた、右足をねじることで動きも奪う。
「■■!!!!???? ■■! ■!!!?」
痛みに苦悶の声を上げるランスロット。関節と手の甲を壊されて武器を握れず、足も片足が自由に動かせないことで機動力は完全に潰れる。そこにとどめを刺さんとクー・フーリンは宝具を解放。朱槍が朱の輝きを放ち
「これでおしめぇだ! 喰らいなあ!
自身の持つ朱槍。それが持つ因果逆転の一撃は『心臓に槍が命中した』という結果を生み出し、クー・フーリンの妙手から『槍を放つ』という原因を起こし、見事にランスロットの鎧を砕き、心臓を破壊。勝負はついた。
「■■■・・・・・」
霊核を砕かれ、限界が維持できずに退去のために光の粒となっていくランスロット。薄れゆく狂化の中で、一つ腑に落ちないことがあった。先程の自身の姿勢が大きく崩れたことだった。普通なら根っこごとき粉砕、気にせずに突き進めるはずの彼が何故根に体制を崩されたのか。死の間際で自身の敗因を考えていることを察したクー・フーリンは槍を引き抜き、ポリポリと頭をかき、口を開く。
「冥土の土産だ。あれ、見てみな。ほれ、足を躓く前に握った枝」
その方向を見れば、自身の持っていた枝、それと『一緒に握っていた別の木の枝が転んだ原因の根っことつながっている』光景だった。
「森ってのは文字通り木が地面の土台の一つだ。種類によっちゃあそれこそ地面深くまで根を張りめぐさせるやつから浅く、広く根を張らせるやつまで多種多様。お前はそれを全部武器にできる。視点を変えれば『自分でも容易に壊せないもの』がどこでもできるわけだ。だから俺は罠を張ってみたのさ。地面のあちこちに生えている根。その中でも引っ掛けやすそうなものをな」
今度は周辺の地面を指す。ただの目くらましかと思っていた土をかける行為はそれだけではなく、いくつかの地面を掘り起こし、露出している根っこ、岩。いくつかは細いながらに足を取られやすい形状をしており、まるで草結びをいくつも展開しているような状態の地面とかしている。
「で、ちょうどいいのを見つけたからお前さんが握りやすいようにいくつか見繕ったり自分で用意して握らせたってわけだ。どこまで理解しているかは知らんが・・・・・・・・バーサーカーでなけりゃ、ハマることもねえ子供だましだろうよ」
自力、ステータスでは負けている部分もあった、そのくせ技量は衰えない。だが、思考、判断力は戦闘以外では鈍り、目の前の相手しか映らない。そこを突いたクー・フーリンの賭け。傍から見ればあまりにもあからさまな部分が大きく、勝者のはずのクー・フーリンの表情は一瞬勝者の愉悦が消え、すぐに戻る。
「今度はバーサーカー以外の、一番得意なクラスで来な。そんときゃ、心ゆくまで死合おうや」
「・・・■■・・・・・・・・・・」
ランスロットの完全な消滅を見届けた後、槍を肩にかけてクー・フーリンは戦場を見回し、次の獲物を探した結果
「そう言えば、昨日の夜から喰っている華奈の飯・・・ワイバーンの肉だっけか・・よし、マスターとマシュへの土産も兼ねて、一狩り行くかぁ!」
晩御飯のおかずを求めてカラカラと笑い、戦場に猛犬が走っていった。
「っ・・・! アーチャーがあの女と一緒に消え・・・!? ライダーにバーサーカーも! ああ、どうなってんのよ! 相性も問題ないはずなのに!!! それに・・・邪魔よ盾女ぁ!!」
閃光と不快音。その直後にアーチャーと一番殺したい女。華奈が消えたことに苛立ちを隠せずに暴れるも、まるであの閃光を皮切りに状況は悪くなるばかり。自分の相手をしている白ジャンヌを殺そうとした矢先に巨大な盾を持った女が現れたせいで数の上だけではなくその守りに今までは思うよう叩きのめせた相手を殴れないばかりかこちらが追い詰められる始末。
「っ・・・! 重いですが・・・! 粗い! はぁあああっ!」
強引に剣を盾に突き立てて押しつぶし、剣に宿した炎で女ごと焼こうとするもその盾を持った女、マシュはそれを受けた直後に剣の勢いをできる限り殺さないようにいなしてジャンヌオルタの姿勢を泳がせ
「そこですっ! やぁっ!」
白ジャンヌはマシュとジャンヌオルタを挟むような場所取りからの旗での打ち下ろし。身体を泳がせたジャンヌオルタはとっさに旗で防ぐも姿勢を崩した状態では持ち前の力も意味をなさずに押し切られ、そのまま旗に押される形で身体を盾に打ち付けられてしまう。
「ぐっ・・・! くそっ・・・クソクソクソぉおっ!!」
「うるさいですよ・・・全く、まだ自分の状況を理解できないのですか・・・?」
がむしゃらに盾を蹴り飛ばし、その反動で白ジャンヌを狙おうと飛ぶも新たに加入した戦力、マスターの前に立つ清姫の放つ火炎弾で側面を狙われ、剣で払い落とす間に距離を取られてしまう。
最前線をマシュ、真ん中にジャンヌ、清姫。最後尾にマスターの藤丸という陣形、マスターも含めて4対1という状況。しかも即席も良いはずのメンバーの連携、補助を指示し、回す藤丸の存在。そして新たな軸になったマシュという存在がことさらに大きな壁としてジャンヌオルタに立ちはだかる。
「ジャンヌ、緊急回避! そして応急手当! マシュには瞬間強化! 清姫は相手が距離をとったら火球をお願い!」
「はいっ!」
「感謝します!」
「はい、マスター♡」
藤丸の礼装に仕組まれた魔術式を起動。マシュは肉体の強化を短時間ながら施されていくことでジャンヌオルタの馬力、炎を問題なく盾で受け止め、流していく。ジャンヌオルタの力は確かに強く、炎の熱も、威力も並大抵のものではない。
しかし、それに負けないほど恐ろしいものをマシュはすでに味わっている。冬木での経験、見えない刃を、炎をまとった巨人が押しつぶし、焼き殺そうと迫る圧迫感を、熱を知っている。アーサー王の突撃を、冴え渡る剣技を。聖剣の奔流を受け止めている。
カルデアでの鍛錬でも何度も恐怖を、経験を積んでいる。危険であることには変わりはないが、その経験で決して炎にひるまず、力に面食らうことなく攻撃を受け止め、その強化される馬力でジャンヌオルタの攻撃を受け流し、逆に所々では押し返しすらしていく。
「ふっ・・・!」
そのマシュという大盾に気を持っていかれている間に白ジャンヌという槍が迫りくる。傷もある程度癒えて頭も落ち着き、更には藤丸からの緊急回避という魔術のバックアップ。余裕がある分より冷静に攻撃を見切れる。
「っ・・・あぁああ!!!」
マシュに旗を弾かれ、また身体を泳いだ隙を狙ってきた白ジャンヌに二度はもらわないと泳がせた身体をぐるりと回転。右手の旗で横に薙ぎ、その勢いを活かしての左手の剣での突き。
それを白ジャンヌは身体を地面に這うような低さまで落として避け、突きを緊急回避のサポートを使って回避。懐に潜り込んだ直後に突きで伸びていたジャンヌオルタの腕を掴み、そのまま上空に投げ飛ばす。
「シャァアアッ!!」
「んっ・・・のぉおお!」
上空に投げ飛ばされたジャンヌオルタに清姫の特大級の火球が放たれるもジャンヌオルタはとっさに上空から漆黒の槍を発生させてそれを盾に凌ぐもその余波で体制を崩したまま地面を転がる羽目になる。
「・・・・っうぅ・・・うう・・・・なんでよ! なんで私がこんな目にあっているのよ! 数も勝っていた! 手駒も文句なし! それでなんでこんな奴らに手間取って、あまつさえ援軍も来るのよ!!」
自身の手勢のワイバーン、怪物の大軍も銀嶺に食い止められるどころかすでに決着の着いている英霊、情けないことにその勝者は自分の召喚した英霊ではなく野良の英霊、敵対している英霊であり、その英霊らに戦力を削られている始末。盛り返すきっかけになりえたであろう自身のところにはマスターの一人まで来て抑え込んでくる念入り具合。もうひとりのマスターは何やら行方不明になってはいるが、同時にアーチャーまで行方不明。
それでも目の前のジャンヌらが動揺していないのは無事であるという確信、もしくは連絡がすでに来ている、策を知らされているから。処刑、暗殺用に連れてきたアサシン二騎も何やら補足されたようで戦闘の気配が感じられる。これだけの情報が揃えば嫌でも理解する。自分の負け戦だとジャンヌオルタも理解する。
それだけに、余計に腸が煮えくり返る。回りはなにも自分を助けられず、一人で敵に倒される。しかもあのイギリスの英霊がいる敵軍に。繰り返されるのか。また、結局成し遂げられずに終わるのか。
それだけはまっぴらごめんだとジャンヌオルタは怒りを糧に身体を奮い立たせ、憤怒の炎を燃やす。一人二人殺し尽くす、そうでなくても手傷を追わせて反撃のきっかけを作る。そのために宝具を開放しようとしたその時
「「「・・・・・?」」」
地面が大きく揺れた。
ゲオルギウス「汝は竜! 罪ありき!!」
華奈「ふぅ・・・回りの戦線は問題ないというわけでいいんですね?」
良馬『はい。藤丸君たちも無事合流成功。このまま華奈さんたちは敵を遮断し続けておけば問題ないでしょう。敵が来てもそこからならすぐに発見できるでしょうし』
ストーム1「っはぁ・・・やれやれ・・・ゾンビだのリビンデッドは藤丸君らにゃちと刺激が強すぎるなあ・・・せめて映画から見せてあげなきゃ・・・・な・・・?」
アルトリア「英霊の首をゲット~♪ って・・・地響き・・・・? なんですかこの規模・・・万単位、それ以上の軍のレベルですよこれは・・・」
クー・フーリン「お? 敵の追加か? 総決戦って感じがしてくるなあ・・・!」
フラム『華奈! そこから20キロ先から大量の魔力反応! 特大レベルのものもいくつか発生しているみたい!』
オルガマリー『規模は・・・1万ちょい!!? 急いでここを離れるか応戦・・・ってストーム1、その格好は?』
華奈「おや・・・使いましたか。アレは残していますか?」
ストーム1「おう、問題ねえって・・・・それよりも・・・何じゃあの敵影・・」
アタランテ「・・・・・・気味が悪い」
マリー「え? どれどれ? もしかしてフランスの救援かしら?」
モーツァルト「そんないいものなら皆こんな顔はしないよマリー。逃げる準備をしたほうが良さそうだ」
エリザベート「なになに! 私のファンが来たのかしら!!?」
ロマニ『ここ・・・英霊何人いるんだろうね。あ、あの怪物の大群を指揮しているらしいキャスターかな? の映像が出せるよ。はい』
ジルドレ(ブチギレ&顔芸状態)「ジャァアァァアァァァァァアアンヌゥゥウウゥウゥッゥッ!!!!!!!! いまこのジルめが助けに参りますぞおおお!!!!」
一同「「「か、怪物だぁあああああ!!!!」」」
今回はこれにて。アサシンたちはあっさり退場です。仕方ないね。
英霊がドタバタ押し寄せて一つの戦線に大集合。これを察知したジルドレはバカでかい海魔も召喚した海魔軍で援軍として参加。聖杯の力もあるので数もサイズも桁違い。
ランスロットの宝具はすごく便利なんですが、こういう形、もしくは近い形で自分の邪魔になるかもと思ったのをやってみました。バーサーカーならそこらへんの判断も鈍りそうですし。
ストーム1の宝具の一つはいわゆる兵科のチェンジ。今回登場したフェンサーはいわゆる重武装機動歩兵とも言える存在でパワードスーツによる重機ばりのパワーを活かして普通なら扱えない強力な武装を使う兵科です。ブースターも付いているので機動戦もお手の物。最新作のEDF5では空中戦すらも可能になっています。どうも作中ではその武装や堅牢さを活かした壁役、殿になることが多いようですが、やり方によっては特攻隊長も普通にできちゃいます。
武装の一つ、ブラストホールスピアは巨大な杭、ないし槍を発射する兵器。威力が高い上に貫通するので大物から小型にと使える反応性の高い武器。他にも連射性能を上げたものや貫通はしないが射程の長いものなど様々です。
盾は相手の攻撃を防ぎ、ダメージカットをできる武装ですが補助装備との組み合わせで相手の攻撃をほぼほぼシャットアウトできたり、相手の攻撃を反射したりできるタイプまであります。相手の強力な攻撃を跳ね返したり、何度打たれても平気な顔して反撃して愉悦を感じたりと愛用する方も多いかもしれない武装です。ちなみに今回ストーム1が使ったのは攻撃ダメージを軽減できるタイプです。
次回は再度合流と休憩の話になるかもです。
最後にUA 72252件 しおり 171件 お気に入り 490件 応援ありがとうございます! 次回も良ければ暇つぶしにどうぞ見てくださいませ。
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。