転生愉悦部の徒然日記 作:零課
私の更新ペースが落ちていたりしていますが、更新された時はのんびり、暇つぶしに見てくだされば幸いです。華奈、ストーム1達の馬鹿騒ぎを少しでも楽しんでいただければ本当に嬉しいです。皆様もどうか風邪、インフルエンザにはお気をつけてお過ごしくださいませ。
そして、どうぞ本編をどうぞ。長々と失礼しました。
「・・・・は? 嘘・・・な、なん・・・なんで・・?」
突然の戦況の変化。ワイバーンのみならず海魔も消え、邪竜は死に絶え、そして頼れる相棒役、仲間のジル・ド・レエまでもが気づかぬうちに倒されていた。幾ら何でもたちの悪い冗談だ。そう思うも現実というのは皮肉なもの。ジャンヌオルタの目の前に映るは憎々しい白いジャンヌに華奈、ストーム1、そして片方の戦線にいたはずのもうひとりのマスターと英霊達が駆けつけて自分を遠巻きに取り囲んでいる。
2つのゲテモノ兵器も壊せず、戦線を一つも突破できず、用意した英霊も全員倒されるどころか二騎は契約を解除されて敵対される。そして、相棒も切り札も通用しなかった。何もかもが空振り、無駄に終わったのだということを嫌でも突きつけられていく。
「っ・・・ふふ・・・ふふふふっ・・アハハハハハハ!! ッハハハハハ!!!! ああ、これが、これが私の結末だというの!? おかしいわ! 可笑しすぎちゃう!」
そして、突如タガが外れたような高笑い。心底おかしいとでも言うように右手で顔を隠し、大口を開けてケタケタと、よく通る声で笑う。
「かつてはそこの白いのみたいに国のために、神の声に、使命とやらに従って! 殉じて・・・あらがって! 救ってみせたというのに、最後は裏切られ! 落ちぶれ! 辱められ! 聖女から魔女となって神の教えを説く輩からも裏切られた!!」
ジャンヌの方を指差し、かつての半生を思い出し、今度は憤怒の怒りを露わにし、旗を何度もガンガンと慣らして憤る。かつて神の声を聞き、国のために立ち上がって戦い抜いた数年。その後の王や宗教界、民草の手のひら返し。救国の英雄は一転して汚らしい魔女。落ちぶれるところまで堕ちたジャンヌ・ダルクという女性の悲劇の最期を、それを起こした輩をどこまでも許せないと文字通り炎を巻き上げて怒りのボルテージを上げる。
「このことに私には正当な復讐する権利がある! 無かろうがやり通す! ここまでの仕打ちを何故受ける!? 敵国ではなくて味方、故国からなぜ受ける必要があるのよ!! 私をかばってくれて、その後のフランスを知るジルもやるべきだと言っていたのに! そこのよその連中が邪魔して! 手駒のみならずジルも殺してくれた!! これが神のおめぼしと言うなら理不尽、手前勝手極まるというもの!!!!」
「・・・・・・・・・・」
ジャンヌオルタの独白に、自身に再び激を入れているであろう言葉の内容をジャンヌは一つ一つ噛み締め、そして、もう一人の自分、側面だと語る女性の声に目を閉じて真摯に受け止める。
今までひたすらに変わり続けた戦場での日々に、その後の陰惨な裁きまでの時間。英霊となってすぐさま呼ばれたせいで深く思い返せず、そして同様にこの戦争でも目まぐるしい戦いの時間に忘れていたが、なるほど、客観的に自分に起こったことを見れば、それによる感状に振る舞わされているジャンヌオルタという女性の受けた精神的、肉体的ダメージは計りしれず、理不尽なものだ。
「この怒りを、炎を作っておいて今更被害者ぶるな! 悲劇のヒロインを気取るな! 一人の女になにも報いずに魔女の烙印を押し付けて売り渡し、平然としている国なんて、全て滅んでしまえばいいのよ!! それを邪魔するよそ者も、今更悔いてガタガタ震えているフランスの連中も、全て私一人であろうと殺し尽くして、塵芥にしてやるわ!!!!」
ただ、それでも愛した国なのだ、恨みも無い。苦しさも悲しさも与えた国だろうが、同様に自分も国のために敵国の兵士たちを苦しめ、殺した。その報いを受けただけなのだろ。
もう自身のことは終わった。この時代では、本来はジャンヌ・ダルクはもう死んでいるのだから。これ以上死者が復讐で国を荒らす訳にはいかない。
たった一人になろうとも竜の旗を掲げ、炎を四方八方に飛ばすジャンヌオルタの前にジャンヌは立ちはだかり、危なげながらも旗を振るっていなしていく。
「その怒り・・・復讐に走る心の根っこ。全て聞き入れました・・・もうひとりの私。ジャンヌオルタ・・・・・・」
「っは。聖女様がどうしたの? 悪いけど、御高説なら結構よ。分かっているでしょ? 神を信じて、国を信じた結果こうなった女に、何を言おうが響くわけ無いもの。邪魔よ。一番最初に死にたいの?」
顔をしかめ、あっちいけと地面から炎を走らせるジャンヌオルタの炎を旗をバトンのようにくるりと回して防ぎ、一歩前に出るジャンヌ。前に戦ったときのような動揺はなく、そっと口を開く。
「いえ、少し質問をしたいのです。私ならわかるはずです。貴女は、育ての親を覚えていますか?」
「は? そんなの・・・・・は・・・? え、な・・」
小さな女の子に聞くように丁寧に、しっかりとした声で質問を投げかけるジャンヌ、対して、まるで思い出せないのか左手で頭を抑えながら自身のことを信じられないと頭を振るジャンヌオルタ。
「黄金色の麦が実り、風に揺れる美しい景色を、ちょっとした町に行って、いろんな物に目移りした時間を。藁の上で寝っ転がって、太陽の暖かさに思わず寝息を立てちゃうような柔らかくて、温かい感触を。家族と一緒にご飯を囲むときの湯気の向こうに見える笑顔を、覚えていますか?」
「まちなさい・・待ちなさいよ!! なん・・そうよ、私なら覚えているはずなの・・・覚えて・・なんでよ・・・戦場のことや、牢屋での冷たい日々・・・苦しさ・・違う、違うの・・・違う違う違う違う違う!! それじゃない!」
ガシガシと頭をかいて膝をついてうなり始めるジャンヌオルタ。遠目から見ても滝のような汗を流し、さっきまでとめどなく流れていた炎すらも揺らぎが大きくなり、萎んでいる。
「確かに、戦場での日々、その後の事も含めて、濃厚で、大きいものです。でも、それも私達の人生で言えばほんの一部の時間。私達は、ただの村娘としての時間が多いはず・・・そして、その時間をフランスの皆に与える志も心にあったはずです。けど・・・それを裏切られ、絶望し、この理不尽さに憎悪し、憤った。違いますか?」
「え? あ、え・・・ぇあ・・・・・? っ・・・」
分からない。不気味、意味不明。そんな感情がうずまき始めていくジャンヌオルタ。問いかけているもう一人の自分は、自分の過去、思い出を語っているだけだ。そう、同じジャンヌ・ダルクなら思い出せる。簡単な質問。なのに、出てこない。欠片も出てこないのだ。記憶の引き出しを引っ張り出しても、ひっくり返しても、出てくるのは戦争と、裏切られての苦悶の記憶ばかり。
おかしい。生まれてすぐに戦争に出たわけではない。おかしい。同一人物で、同じ記憶を持っているはずなのに、なぜ欠落した部分が出る。オカシイ・・・同一人物の記憶の差異が何故大きくなる。クラスの違いもない。同じルーラークラスのはず。このクラスの特権を活かすために取ったとは言え、同じクラスでそこまでズレが、歪みが出るものなのか?
眼の前で憎らしいほど落ち着いた笑みで問いかける自分が、そして、なぜなにも思い出せないことで懊悩する自分が意味がわからなく、不気味に思えていく。この欠落は何なのだろうと。
『・・・おかしいわ・・・同じジャンヌ・ダルクで、なんで出生、戦場に出る前の記憶が出ないのかしら・・・』
二人のジャンヌの対話から距離を取り、それでもすぐさま対応できるように臨戦態勢を取りつつ、この不可解なジャンヌオルタの様子にカルデアから見ていたオルガマリーも疑問の声を小さく出してしまう。
『確かに・・・ねえ、華奈。英霊ってのは、記憶自体もクラスや、ちょっとした調整で大きく変わっちゃうの?』
「いえ・・・確かに、クラスによって、そうですね。バーサーカークラスだったり、触媒に使ったものによって多少の記憶の比重の差や思考の揺れ幅はあるでしょう。でも、それでも英霊というかつての一人の人間、生きた存在の出生からの生い立ちが思い出せないというのは異常です。バーサーカーであっても喋れなかったり、聞き取れないのであって覚えている人は大半でしょう」
「それこそ、私達。物語として後世に伝わってる英霊ならその触媒次第では行動や生い立ちが変わっている可能性もありますが、彼女は実在の人物でしょう? いくら英霊がその英霊の一側面だけを切り取るものだとしても、記憶をここまで欠乏したものはありえないはずです」
ロマニの疑問に英霊である華奈、そして今もなお生きていたアーサー王もこの様子にはしっかりと異常と告げる。自身らの物語であるアーサー王物語は後世の作家のものによっては確かにずれも存在するだろう。だが、それでも召喚ができればその英霊の人生を覚えているはずなのだ。英霊を英霊たらしめる精神性に宝具のもとたる逸話。これらを十全に振るうためには記憶の欠乏はそもそもの召喚システムが不完全としか言えない。
しかし、ジャンヌオルタの呼び出した英霊、アタランテやサンソンはかつての記憶や自身の矜持や思いを失わず、もしくはあるからこそ歪められた。マルタに至っては神の教えに背く訳にはいかないと狂化に真っ向から抗っていた。彼らの記憶は万全に持っていた。ならば、召喚は成功したのだろう。
そして、呼び出したであろうジャンヌオルタ自身の記憶のズレも共にいたはずのジル・ド・レエが見抜いたり、感づいて聖杯を使って解決すればいいのに、それをしなかった。もしくは・・・・・・・出来なかった。それほどに事を急ぎたかったのかもしれないが、違和感を感じないのもおかしな話。
『確かに・・・作品によって違う存在だったとしても、その生い立ちが書かれていないのはおかしいわ。しかも、ジャンヌ・ダルクほどの有名な存在なら。でも、その生い立ちが記憶から消え失せ、なぜか戦場で戦い始めた記憶しかない・・・』
「最初に出会ったときに、彼女の復讐の感情は、憎しみは燃え盛り、尽きぬ泉のようにありました。けど・・・かつて感じていたであろう愛や、故郷を懐かしむ感情とかは無かった、もしくは薄いように感じました。愛憎の感情がどうにも。子供でいた時間、一緒に友達でいたはずの頃の年頃の子供まで躊躇いなく皆殺しにしたと言っていたあたり、なんとなくですが感じました。勘の部分も大きいですが」
「そうなると・・・あのジャンヌオルタは、ジャンヌをもとに改変された英霊、もしくは・・・作られた?」
全員が考えていた予想を藤丸が口にし、それと同時に誰が作ったかを考え、すぐさまその下手人は当たりがつく。
村娘の頃のジャンヌになんて会うことがないゆえにその記憶や思い出を知らぬ人物、王に謁見して軍に入った頃から共にいた人物。そして、ジャンヌの死をひどく悲しみ、その仕打ちに怒った人物。共にフランスへと復讐することを望むジャンヌ・ダルクを求めた人物。
その改変を出来るほどの物を持ち、ジャンヌ・ダルクを知る人物であり、尊敬、崇拝、敬愛して止まない人物。そして、おそらくはジャンヌオルタの陣営にいた人物。
「すると・・・犯人は青ひげ・・・あのジル・ド・レエだろうな。ジャンヌ・ダルクの死後の狂い様と、何かを逃避するような放蕩ぶりと残虐さは、彼女を求めたからかね。黒魔術に傾倒したとかいう噂もあるし、あの怪物を呼び出していた辺り、ジャンヌ・ダルクの死後の側面が強いやつだろうし」
『おそらくは、カルデアの観測からも、あの海魔はジル・ド・レエの持っていた魔導書らしき本からの魔力の反応があったときに数を増していたから。それと、華奈の持っている聖杯も彼が所持していたし・・・おそらくはその仮定が一番有力かも・・・うわ!?』
今の所の持ち得る情報でジャンヌオルタの記憶の欠落を考えていると二人のジャンヌの戦闘は幕を開けたようで、一つの巨大な火柱と、まばゆい光の膜がぶつかりあう光景が目に飛び込んでくる。
「加勢は?」
「しません。ジャンヌ様の経験と意地が、ジャンヌオルタに勝てるかもと思っていますが、横槍入れないほうが良い気がしまして」
「了解。一応はいざという時の援護ができるようにはしておくか」
『華奈さん。ジル・ド・レエ元帥の軍も今勝利したようです。ただ、けが人もなかなか多く・・・』
「ふぅむ。了解です。私とサンソン様。今ここにいいる銀嶺で医療の心得を持っているメンバーで向かいます。良馬様はロマニ様と一緒に怪我のひどい兵士をチェックしておいてくださいませ」
フランスの特異点を起こし、蹂躙しようと暴れていた竜の魔女の軍。その最後にして大将のジャンヌオルタとぶつかり合う救国の聖女。ジャンヌ・ダルク。この特異点最後の戦いに備えると同時に、この歪みによって起きた被害者を減らすために竜の魔女の戦いとは別に動いていった。
「過去のことを覚えていないであろうが私もジャンヌ・ダルクであることは確かよ! いい加減にそこをどきなさい! こんな国、滅びたほうが良いのよ!」
「確かに、端的に見れば功労者、将軍を救いもせずに見殺しにした部分もあるでしょう。でも、それでもそれで救われた人はいる、希望を持てた人が、戦火に怯える人を減らせた! 国を救えたのも事実です! これ以上悲劇をこの国に降らせるわけにはいけません。私は貴女を理解していき、その上で赦します。そして勝ちます!!」
熱気で草花は萎れていき、炎がかすめれば周りは黒と灰色の炭や灰となる。復讐と絶望を吐き出して全てを焼き尽くそうと紅蓮の上に立つ漆黒の魔女。まるで生きているようにまとわりつき、身を焦がす執念の炎の苦しさの中にあって尚も折れること無く毅然とし、身を汚し、傷つこうとも一歩も引かない白の聖女。
「勝つですってえ!? 冗談は死んで言いなさい! パワー一つとっても勝てない、あの盾女達がいないとまともに戦えないあんたがどうやって一人で勝つってのよ!」
しかし、気持ちは負けていなくても自力、英霊としての基礎の力の差は埋まるわけがなく、ジャンヌオルタは依然としてその剛力を活かして旗や剣を両手に持って縦横無尽に振るい、更にはそこに炎をもまとわせて苛烈極まる連撃を仕掛けていく。
「勝てなくて良いのです。力や速度で負けていても、心と、記憶で私は勝つ!」
炎と一緒に襲いかかってくる旗や剣の連撃をジャンヌは距離をひたすらとっては回避し、剣の届かない場所であれば旗の攻撃は大胆に体を動かし、飛んだりとまるで軽業師のように避けていく。
馬力で勝てなく、速度も負け、攻撃的宝具も多くはなく、手段もあちらが上回っている。体格も同じで、同じクラス故に特性の差を活かした戦いでの有利な展開を狙うことも出来ない。宝具も使えば傷つくことはないが動けず、ジャンヌがジャンヌオルタを倒すという目的の手段の一つにはるかもしれないが決め手にはなりづらい。
じゃあどうやって勝ちを拾うのか。一つは自身の短いながらの人生の経験と、それに付き合ってくれた肉体。そして、この特異点での記憶。そして、貫き続けた自身の想い。それをぶつけるためにまずはジャンヌオルタに接近。
「はっ! そう言いながらただ突っ込むなんてね!」
当然、ジャンヌオルタは右手に持っている旗で外側から横薙ぎに振るい迎撃を試みる。それに合わせて一度止まり、ジャンヌは自身の旗を横薙ぎに振るうジャンヌオルタの旗の進行方向に合わせて添え、自身も後押しする形で思い切り振りかぶる。
「やっ!」
「なっ・・・ぁ!?」
その行動に驚くのはジャンヌオルタ。自身の持ちうる筋力での横薙ぎを更に加速され、しかも距離の長い分しなりや反動も大きな旗。身体は大きく動き、身体半分を回す。引き戻そうとする右手は焦って脇を開いてまで引き戻し、身体ががら空きの状態に。そこに姿勢を低くしてジャンヌは潜り込むように突進を再開。
ジャンヌオルタもすかさず左手の剣で突きを放つが無茶な姿勢での突きは当然避けられ、旗を振るった腕を戻そうとしているその右脇腹に旗での一撃をお見舞いする。
「がっ・・・は・・・! くっ・・・おおぉ!」
ひねった身体を戻そうとする自身の力とジャンヌの振るう旗のカウンターがぶつかる衝撃波は鎧を砕き、横っ飛びにジャンヌオルタは吹っ飛んでしまう。しかし、それも石突で地面を突き刺して支点にし、そこから地面を蹴って距離を詰めて剣での突きで反撃を開始。
「くっ・・・う! はや・・・そこっ!」
いくつかの突きを今度はジャンヌが旗のリーチを活かして捌き、ジャンヌオルタの胸の方に旗を差し込んだところで両手で旗を掴んで思い切り外に剣の攻撃をそらす。筋力の差はジャンヌのBとジャンヌオルタのAで差はあるが、それでも片手で振るう剣を両手で持つ旗でそらすことくらいなら成功する。
すぐさま距離を詰め、今度は旗を地面、ジャンヌオルタの右手の旗を防ぐように斜めに突き刺し、そこを起点に派手な飛び蹴りをジャンヌオルタの顎に見舞う。
「っづ!!! う・・・ぁ・・」
思い切り顎を揺らされてたたらを踏むジャンヌオルタの隙を突いて空中で反転させた身体をキレイに回しておき、旗を地面から抜いて距離を取る。
「なんなのよその動き! 昨日まで見せなかったくせに、急に見せてくるなんて、何!? 手を抜いていたの!!?」
「いいえ。昨日の戦いは間違いなく私の本気でした。でも、その戦いで私は貴女の動きを見ることが出来ましたし、こういう動きは子供の頃に村で戦記物を聞いて想像したものをやっただけです」
ジャンヌの動きのキレの良さの理由の一つは迷いが抜けたこと。もう一つは想像力の余地からくる旗を活かした動きにある。
もう一人の自分、それもフランスへの復讐へと走る側面という考えもしなかったジャンヌオルタの登場に面食らい、更には英霊としての出力不足やあちらのパワーに振り回されたことでたどたどしい動きがあった。しかしそれも吹っ切れ、倒すと決めた後はその精神力で突き進む迷いのなさ。そして、昨日の戦闘でジャンヌオルタの旗、剣、そして炎を使ってどういう攻撃や癖をもっているか、追いつめられたときに多用する攻撃はなにかを見ることが出来た。
一方でジャンヌオルタは華奈、ストーム1、アルトリア、マシュに清姫と潰したい相手や一度に戦った相手の多さゆえに、そしてうるさい格下と思っていたせいで動きを余りしっかり見ることが出来ず、更にはその戦いも前半は華奈がハリネズミになる様子を眺めようとしながらの戦闘。ジャンヌの動きよりもその後のピンチのほうが記憶に強く残ってしまうほどだ。
そこの差から生まれる僅かな予想と余裕、それにあわせた反撃の方法を幼い頃に聞いた英雄譚や武勇伝。近所の子供が考えていた動き、そして自身も戦場で振るった動きを組み合わせた攻撃手段を用いたからこそ、無傷での反撃を成功させた。
さらにジャンヌオルタはひたすらに復讐、怒り、それを感情の多くを締めている。その怒り、吹き出す炎に優れた身体能力で大抵の相手は何も出来ずに倒せた。しかも今は目障りでうるさいもう一人の自分が今まで周りと一緒にいて戦えていたはずなのに今は一人で立ち向かってきている。反撃すらもしてきた。
自分の怒りや力が通らない、倒しきれない相手。しかもそれは自身の側面。そこから怒りやむかつきと言った感情を表に出して振るう感情的な動き単調なものとなり、全てが速さ、重さこそあれ自身のやりやすいもの、癖が見え見えのものとなって一層読みやすくなる。
「そんなもので、思いつきが何度も通るわけ無いでしょうがぁ!!」
旗を地面に突き刺して剣を握り、持ち前の馬力を活かして一気に彼我の距離を詰めての上段からの切り下ろし。遠目には一瞬で黒い塊が距離を詰め、燃え盛る炎の柱を振り下ろす、いっそ悪魔にも見えるような攻撃。
それもジャンヌには焦る攻撃ではなくなっていた。たしかに炎の付与に身体能力の差は大きい。だが、そんなことは戦場でもよくあったことだし炎をまとった剣だって剣ではなく、それよりも当たる幅の大きいメイス。それも熱したものとでも考えればどれくらいの幅で動けばいいのかという予想も組み立てやすい。振り下ろされるジャンヌオルタの攻撃は最小限の動きでかわされ、そこにジャンヌは身体を回して砕けた鎧の右側に強烈な肘打ちを打ち込み、直後に再度距離を取る。
「私なら、わかるでしょう? 野戦、一騎打ちにおいてはノリと直感が大切なときもあると。ハッ!」
「ぐっ・・・・ギィっ・・・・!! あ・・・・」
猪突猛進、一撃こそ怖いが怒りと思わぬ反撃にテレフォンパンチを増やしてしまうジャンヌオルタと少ない情報をもとに、自身の馬力の及ばなさから真っ向勝負を避けて一撃離脱、カウンター戦法を駆使するジャンヌ。ブルファイターとアウトボクサーの対決は見事なまでに噛み合い、それはジャンヌが有利な展開に持っていく。
「さぁ・・・これで・・・・!」
一度重い攻撃を加えた場所に重ねた形の攻撃は響いたか、身体をふらつかせてたたらを踏むジャンヌオルタの様子を見て少しでも追撃を加えようと旗をやや短めに持って走り、警戒しているであろう右の脇腹ではなく、左の腹部にめがけて横薙ぎで攻撃を仕掛ける。
「なら、私もこうしましょうか・・・ごほっ!・・・・ふぅ・・ふぅぅう・・・!」
それに対してジャンヌオルタも攻撃を逃げず、反撃すらもせずに旗を腹でそのまま受け止めるという行動を選択。苦悶の声を上げ、口から血を吐きながらも左腕でジャンヌの旗をがっしりと掴み、逃げられないようにする。しまったと気づくジャンヌよりも早く旗を掴んだまま引き寄せた後に右足で左足を踏み潰し、今度は旗を掴んでいた左手でフックをジャンヌの顔面に見舞う。
「きゃっ・・・! うぁっ・・・ぁあ!!」
もろに顔面に貰い、更には踏んでいた足も吹き飛ぶ際にひねってしまい足と顔に激痛が走るジャンヌ。すぐに膝立ちの姿勢に変えてジャンヌオルタから視線を外さないようにしたのは自身の戦場からの経験だろう。
一方的に、一気に殺し切るという戦闘スタイルから泥臭くもカウンター、仕掛けてくる攻撃を自身の持ちうる身体の頑丈さを利用した受け止め、その攻撃の瞬間に近づいてくるジャンヌをそれ以上の攻撃でやり返すという一撃の交換に持っていくことにしたジャンヌオルタ。
カウンターで自身の攻撃を利用するということは、攻撃の瞬間にはあちらも反撃のためにそれなりに距離を詰めてくるということ。そこからジャンヌよりも早く動け、かつ重い一撃を振るう自分の攻撃を確実に与えるためにあえて受ける。ダメージレースへのシフトチェンジ。
「くっだらない・・・こんな国にこだわるあんたにここまで手こずるのは腹立たしい・・情けない。もっとクールに、簡単に殺すつもりでしたが・・・考えを改めましょう。ジルがいなくても、私は・・・私はやり遂げるのよ! この復讐を! そのためにもまずは一番目障りで邪魔なあんたを殺す! こんな戦法だろうとも倒せればいいのよ!!」
「くだらなくなんて・・・ここに生きる人はみな一生懸命に生きようと、もっと素敵な日々を目指して生きようとしているのです。ここで食べられた食事も、兵士の皆さんの武具も生きようとした皆様の提供だったり、戦おうと備えたもの。ここまでのものを用意できる皆さまが、あんな怪物に立ち向かえる皆様をくだらないなんて言わせません! 私は倒れないと言ったでしょう!! こんな怪我はいつものこと。まだ終わりじゃないです!」
足を捻ったせいで回避や逃げることも難しくなったジャンヌと痛みをこらえてカウンターを逃げずに貰う事を覚悟して距離を詰めてくるジャンヌオルタ。
二人の戦いは広く場所を使ってきた戦いからクロスレンジのものにシフトし、その中で剣を振るおうとするジャンヌオルタの腕はすぐに拳で撃ち落とされて遠くに転がり、ふたりとも旗を持っていないせいですぐに拳での戦い。拳闘を繰り広げる。
「ぁがっ!? ぐ・・・しっ・・・ふぐ!!」
「ぶっ!・・・・あふ・・っ・・・ん、んぁぅ・・・」
拳で腹や腕、胸を殴る音が辺りに響き、時折なにかにヒビが入った、折れたような音が鳴り、それに苦悶の声を上げる二人のジャンヌ・ダルク。
今までのダメージの積み重ねと避けきれないことでもろに攻撃をもらうも無理やりに自身を奮い立たせ、怒りと共に復讐を企てた友の思いをバックボーンにしてパワーで押し切ろうとするジャンヌオルタ。
攻撃を避けきれないまでも受け流したり軽減し、ここまでずっと戦ってくれたメンバーを背にし、その後ろにいるであろうフランスの民草を心の支えにしてカウンターと先に攻撃していた箇所を攻めていくジャンヌ。
ピンボールのように顔が弾け飛び、鈍い音が響き、拳だけではなく足も使って互いの動きを封じ、金、白の髪と一緒に汗と血が陽の光に照らされて光り輝く。
「こ、んの!」
「っぐ! う、は・・・・はか、ぁ・・・」
ジャンヌオルタの右足の蹴りで再度ジャンヌの左足を踏み潰し、左からのフックや打ち下ろしで身体を浮かせて動かし、ひたすらに足を痛めつけつつ拳で腹に拳を突き立てる。
足の痛みで意識が遠のきそうになりつつも即座に腹部に刺さる鈍痛で無理やり覚醒させされ、左手で思わず腹を抑えて姿勢を低くしてしまう。
「まだ・・・まだぁ!!」
「あ”っ”・・・・ぁあ! が!」
それでも決して戦意は衰えずジャンヌもジャンヌオルタの右脇腹に左のショートフックを連続で打ち込み、意識を下に向けさせたところで右でのアッパーで先程蹴りを見舞った顎に寸分違わず打ち込む。
力に差があっても的確に放り込まれる拳はガードしても腹部に伝わる衝撃に意識を持っていかれ、姿勢を低くしているジャンヌに目を取られた間に顎に再度叩き込まれる拳に踏んでいた足も離し、痺れて力の入らない足に自身の拳を叩き込んで無理やりに言うことを聞かせて立て直す。
「!! っ!! ぐぅ・・・っ・・ぁ!!? は」
「っづうぁ! ひゅっ・・・ふぅ・・・っぶ・・・ぁ!!」
そこからまた始まる接近戦からの殴り合い、掴み技や投げに行こうしようとしても手を撃ち落とされ、足技も大きいものはカウンターを警戒して出せない。取れる手段、可能性の高さから自然と殴り合いになり互いの纏う服も、地面も、顔にも手にも真赤なバラを咲かせ、尽きぬ闘志を身体に注ぎ込んでエンジンを噴かせてボロボロな体を動かす。
「っあぁあああああ!!!」
(クソクソクソクソクソ!!! こんの糞聖女のせいで殴る度に体がしびれる! 痛みが強い! ふざけんじゃないわよ私の力を利用するなんて、すぐにサンドバッグにして、その後で八つ裂きにして燃やさないと気がすまないわ!!!!)
一見すれば途切れること無く放たれる重機関砲の如き連打。それも無理やり、意地で振るっているものであってジャンヌオルタの両方の肋骨は旗の攻撃で数本はへし折れ、更にはこの殴り合いでもそこを幾度となく打ち込まれ、痛みを自覚させる。これだけでも辛いというのに、更には自分が攻撃するために腕を伸ばせばそれに筋肉が脇腹を引っ張るでせい骨まで引っ張り、痛みと痺れで攻撃のキレは落ち、動きも鈍る。
電流が身体を走り、動くなとストップを掛けるのを無理やり黙らせて殴り続ける。惨めな最後を遂げた自分。何もすること無く、報いること無く見捨てた国を殺し尽くすために、倒れない、倒れたくないと悲鳴をあげる身体に活を叩き込み続けて痛みすらも体を支える怒りに変えようと気を強く持つ。
「はぁあぁあぁあぁああっ!!」
(攻撃も防御もおぼつかない・・・もろに貰うし、踏ん張れない・・・足を使って回避も難しい・・・でも、でもまだ立てる! 戦える! 気を強く持たないと、この私には勝てない!)
ジャンヌオルタの豪腕にさらされても受け流し、立ち続けて抵抗を続け、カウンターを返しているジャンヌ。しかし、その反撃も足をかばって、腰の入っていない手打ち。体格は同じでも持っている力が違えばさして痛みはなく、その中でもダメージレースについて行っているのはカウンターと顎、両脇腹に先に大きなダメージを与えている箇所を上手くちらしてダメージを与えているから。
軽いパンチでも身体は泳ぎ、左足を使えばそれだけで痛みに意識が向きかねない。土台を半分壊された状況で放たれる攻撃ではもう弱点を確実に射抜くしか無く、それを撃つために右足にほぼすべての重心をおいて軸足にし無理矢理に体に鞭打って軸足の補助に使えないはずの左足を無理矢理に支えとして動かす。
勝つと決めた。この女性は自分が止めると決めた。だから引かない。この体を完全に壊し尽くされようとも魂だけでも戦い抜いてみせる。決めたのならとことんやり抜くと諦めない、ギラついた炎を瞳に宿して立ち向かう。
二人のジャンヌの戦いは苛烈さを極め、赤どころか青あざは腫れすらも見えてくるほどのものになる。炎に服は焼けて肌も焦げ、汗すらも流れた先で血と一緒に蒸発する。炎のリングとかした焼け野原での殴り合いはこのまま続くかと思っていたが、ジャンヌオルタのショルダータックルで最終局面と動き始めた。
「これで・・・おわりよっ! 聖女様ァアアァアア!!」
身体でのぶつかりに身体を噛み合わせた直後に右からのフックでジャンヌのガードごと吹き飛ばし、続けてもう一度右からのスマッシュでがら空きになった顔面に一撃を見舞い、巻き添えを貰う距離から吹き飛ばして漆黒の槍を用意。ジャンヌを貫こうとするが、その行動は顔面に一撃を貰って尚も壊れているはずの左足で踏ん張ったジャンヌの放った右のボディを貰うことで意識が途切れて槍を放つことは失敗。
「っ・・・・!! っぁぁあ!!」
そこからジャンヌは再度ジャンヌオルタの右肋への左フックを放ちしびれるような衝撃を与え、右足を軸に今度は右でのストレートをみぞおちに炸裂。ソーラー・プレキサス・ブローをとっさに成功させ、ジャンヌオルタの身体がくの字に曲がる。
右ボディの2連発に更にはみぞおちの一撃。今度は左が来るのかと意識を下に向けたジャンヌオルタに届いた衝撃はその予想を覆して弧を描いて飛んできた左のスウイングブローを顎に貰った強烈なもの。
その後も右足を軸に身体を独楽のように左右に動かして重心を右に左にと振り回して片足だけでも腰の入った連撃を絶え間なく放ち、最後に心臓めがけて放った一撃でようやくジャンヌオルタは倒れ、立っていたのは二度も国を救った救国の聖女。ジャンヌ・ダルクその人だった。
「っはぁ・・・・かは・・・っふ・・・ふぅ・・・わ、わたしの・・・・勝ち・・・で、す・・・」
ジャンヌオルタ「くっそ・・・ここまでなのね・・・復讐だけしか無い私は結局それすらもだめ・・・はは・・・フランスには私は何も出来ない。ただ邪魔者、ゴミとして滅ぼされる・・・それが、運命なのかしら」
華奈「ふぅ・・・ジャンヌ様は無事に勝利・・・それにしても・・・欲しい・・・あの魂は、素晴らしい・・・・・・・・!」
ストーム1「は?」
銀嶺隊「(始まった・・・)」
ジャンヌオルタ「げふっ・・・! おぁ・・・ガハッ・・! くっそ・・・いき・・・・ひゅぅ・・・が・・・っハ・・・! あぁ・・・・」
華奈「復讐は私もゴメンですが、フランスが出来なかった、貴女を裏切った人ができなかったことをするのは如何でしょう?」
ジャンヌオルタ「・・・けふ・はぁ・・・・?」
華奈「裏切った輩が出来なかった偉業。例えば、私達と一緒に人類史を焼き尽くした犯人をぶっ殺す。カルデアに記録されますし、英霊の方々も認めるでしょう。救国どころか人類を救った英雄。それほどの人物を見捨てた大馬鹿者と貴女を裏切った方々に鼻で笑えますよ。こんなに見る目がないんだなお前らはと」
ジャンヌオルタ「・・・・・・・」
アルトリア、ロマニ「(あ、これスカウト、そうでなくても縁をより深く繋ごうと考えています(るかなあ))」
華奈「貴女に勝ったジャンヌ様を超える業績を刻むのもよし。私達と一緒に戦うのが嫌なら、今回の敗北も次の糧にして・・・そうですねえ。もっとしっくり来るクラスで来る、狂化を施さずとも賛同してくれる方を募るのも良いかもですね」
ジャンヌ「ハッ・・・・ハァ、ッ・・・・ですね。私も・・・・貴女ほどの力を持つ方が一緒なら心強いですし」
ジャンヌオルタ「けほっ・・・ふざけ・・・ないで・・・・でも、そう・・・ね。やり返されることの後悔は・・・・見せつけた・・・今度は、そいつらが望んだって無理な高みに・・・ふっ・・ぎ・・・! なら、今度こそ私が望むものをこなすために、一度休むわ・・・ありがと・・・次のチャンスであなた達を殺すかどうか決めてあげる・・・・・・・・・わ・・・・・・」
華奈「ジャンヌオルタの消滅を確認。ロマニ様。良馬様。敵性反応はありますか?」
良馬『いいえ、敵性反応ゼロ。英霊も、いないですね』
ロマニ『完全に君たちの勝利だ・・・! フランスの特異点を攻略したんだ! お疲れ様! 華奈、藤丸くん、マシュ、アルトリア、ストーム1、みんな!』
ジャンヌオルタもここで退場。次回はフランス編のエンディングです。多分ですが、フランスで契約する英霊は少し数が増えるかもしれません。
二人のジャンヌによる血みどろの殴り合い。河川敷どころか焼け野原とゲテモノ兵器が立ち並ぶわけの分からん世紀末な状況。最後の黒い槍が放たれたらストーム1が妨害に入っていたと思います。
深夜テンションで書いているので誤字脱字、少しおかしな部分が多いと思います。できる限り直していきますので申し訳ありません。
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。