転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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華奈「はーい、治療も終了。死傷者もいないようですし、大丈夫ですね」

サンソン「骨折や切断も怪物の力の強さが逆に綺麗に切断、折っているからむしろ綺麗につなげた。これなら、全治5ヶ月、もしくはもっと早い回復も見込めるでしょう」

銀嶺(医療チーム)「「華奈様。こちらも無事に終わりました。それで、ジル・ド・レエ元帥からお話があるそうです」」

華奈「はい? ん、了解しました。皆様は拠点にあるワイバーンや途中退治した怪物の素材と一緒にレイシフトして戻ってください。流石に即興の氷室、地下室じゃあ熟成も少し心配ですし」

銀嶺「「了解です」」





マリーアントワネット「ありがとう。ジャンヌ! フランスをまた救ってくれて本当にありがとう!」

ジャンヌ「いえ、私は当然のことをしたま・・・いだだだだだ! す、すいませんマリー、あ、あばらが・・・!」

マリーアントワネット「あらごめんなさい。そう言えば、散々殴られていたものね。大丈夫?」

ジャンヌ「だ、大丈夫です。それに、ほら・・・もうすぐ時間みたいです」

アマデウス「どうやら今回の旅、公演はここまでのようだね。良いものを見学させてもらえたよ。戦いも少なかったし、料理も美味しかった。帰ったら今回の戦いをテーマに一つ曲でも作ってみようかな」




ストーム1「大将のスカウトと治療も終わったか。さあて、俺も帰り支度をするとしましょうかね」

クー・フーリン「だなあ。いい戦いだったし、またカルデアでもあのうまい肉を食えるんだろ? 麦もあるなら、ほらあれ。ビールでも一杯」

ジークフリート「私も手を貸そう。ここまで気持ちの良い戦いの終わりは、なかなかに味わえないものだ。いつもこんな感じなのか・・・?」

ストーム1「ビールね。なら枝豆も・・・お、ジークフリート。そっちも邪竜退治おつかれさん。そうだなあ。まだ2つ目の特異点を攻略しただけだが、多分こんなノリでずっと進むと思うぜ?」

ジークフリート「そうか・・・それは、良いものだな。良ければだが、これをあの女性・・・華奈に渡してはもらえないだろうか?」
(剣を渡す)





マシュ「何だか、いろんな事がありすぎて、まだ頭が整理できていないです・・・・・」

藤丸「俺も・・・ワイバーンを引き寄せる弾丸に、巨大メカ・・・からのドラゴンスレイヤーと不意打ちでジャンヌオルタ以外全部倒して、そこからボクシングと言うか殴り合いになって・・・」

ロマニ『そんで勝利。のあとにスカウト開始。うん、確かに目まぐるしく意味がわからないね。言葉にすると』

ダ・ヴィンチちゃん『取りあえずは今は勝った、フランスの特異点も攻略できたということを覚えておけばいいさ。ほら、もうすぐ退去の時間だ。みんなに挨拶をしてこなきゃっもったいないぜ?』


さよならフランス~ワイバーンの赤ワイン煮込み~

 「華奈殿。この度の勝利、共に戦えた光栄をもらえてこのジル・ド・レエ。感服しました。ブリテンの円卓の騎士。その実力、まさに伝説の通り」

 

 負傷兵の治療を終えた華奈達の前で頭を下げて感謝の気持ちを示すフランス元帥のジル・ド・レエ。

 

 それに続く形で周りの将兵も皆頭を下げ、物語の世界の存在であるはずのワイバーンや怪物、それを率いる竜の魔女、英霊達との戦い。壮大でメチャクチャな英雄譚、戦いに共にいたことに、勝利できたことに皆感服し、中には涙を流す者すらいる始末。

 

 「いえ、私ではなく皆様の奮戦、そしてアルトリア様やカルデア、他にも馳せ参じた英傑たちの存在があってこそです。皆様も見たことのない相手にここまで戦い抜いたのはお見事です」

 

 「実際問題、民草の避難が出来ていなければもっと後手に回っていたり、あの兵器を出せなかったでしょうしね。本当に見事な動きでした」

 

 華奈、アルトリアも頭を下げ、微笑んで返す。最初に出した檄文、乗せられているのがわかっていただろうにそれでもすぐさま動いて余計な被害者を出さず、アレ程の怪物の群れに立ち向かっていった精神。動きの良さ。どれも素晴らしいものだった。

 

 「・・・二度もオルレアンを開放できるという、国を守りきるというこの大功。報いるための恩賞を用意したいのですが・・・竜の魔女の軍はピエール牧師や他にも多くの都市、そこにいる住人、貴族も殺しまして、混乱状態である上に、貴殿らの出生が少し問題になりまして・・・」

 

 心から嬉しそうな表情に変わり、その直後には暗い表情に変わる。竜の魔女、復讐に駆られたジャンヌ・ダルクが怪物を率いて暴れまわり、それをジャンヌ・ダルクと嘗ての英雄たちが立ち向かうという事をどう説明したものか。

 

 そしてそのフランスを救った英雄の存在は戦争していたイギリスの英雄。あまりにも分けのわからず意味不明な説明に加えて同時にこの直後に起こるは亡くなった貴族の領土、利権の奪い合いに責任のなすりつけ、そして今回の英雄をどうやって引き入れて自身の権力基盤を確かなものにしようかと考える貴族の政争になる。

 

 「まあ、そこは仕方ないですよね。政治というもの、権力に関わればそこは逃げられませんもの」

 

 「清廉潔白な政治はほぼ不可能ですものね。大丈夫ですよ。私達もすぐに帰りますし」

 

 「いえ・・・それでは私達の気持ちも収まらないです。そこで皆と相談したのですが・・・・今回私達フランス軍が用意していた軍需物資。このいくつかはこの対戦で消耗、もしくは怪物たちに『焼かれてしまった』ということにして、私達は何も手出しをしないものとします。なにせこの後も復興や諸外国との備えもあります。『焼かれて』使えないものにこだわっても意味がないでしょう?」

 

 フッ。と笑い、心底面白そうに微笑を浮かべるジル・ド・レエ。それを見て華奈もアルトリアもつられて笑いだしてしまう。天下のフランス元帥が異国の得体も知れぬ恩人のために不正を働こうというのだ。しかも部下も合意の上で。その意味と行動に必死に笑いを噛み殺す。

 

 「ふっ・・・くく、ふぅ・・・意外とこういうやんちゃ、好きなのですか? 元帥殿」

 

 「恩人に報いるように親に教えられましたし、隣人を愛すのが神の教えでしょう? この二つの教えに背くわけには参りますまい」

 

 「・・・・違いないですね。っははは! では、そうですねえ。『焼かれてしまった』ゴミは私達が預かりましょう。『掃除』は済ませておきますので、これを」

 

 屁理屈を清々しい笑顔でこねる元帥の行動にアルトリアは膝を叩いて笑った後、小さな丸い容器を渡す。

 

 「これは?」

 

 開けてみると半透明な軟膏であり、薬草の香りと優しい甘い香りが鼻に入り込んでくる。

 

 「腫れや痛み、火傷に効く軟膏です。ジャンヌももう帰るみたいですし、彼女の怪我を直したらどうです? それと、二度も国を救った大恩人。元帥自ら礼の一つも言いませんと締まらないでしょう?」

 

 「!!! ですな、ありがとうございますアルトリア殿、華奈殿! では、他の方にも挨拶に行きますので私はこれにて!」

 

 意味を理解するや風のようにジャンヌの方に飛んでいくジル・ド・レエ。彼のジャンヌ・ダルクという女性に対する敬愛、尊敬の深さ、そしてどれだけ大切にしているかがこれだけでもわかるというもの。それゆえに、この特異点を修正することでこの気持ちのいい青年が狂っていく悲劇のシナリオは止まらないことを思うと少しばかり胸に刺さるものがある。

 

 「・・・・・・・・・・・・カルデアに送る物資の準備、しましょうか」

 

 「ええ、姉上。もうヤマジ達の準備は大丈夫だそうです。少しづつ送って、保存庫にしまいましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 「ありがとう! 藤丸くん! マシュちゃん! お陰でフランスが救えたしジャンヌにも会えた! 短いけど最高の旅だったわ!! ありがとう! ただ、もっとかっこよく活躍がしたかったかなー?」

 

 「ま、マリー様・・・・・・流石にあのように戦ってはお体に傷を負いますし、やめたほうが」

 

 「そうそう、荒事は戦士たちに任せて、音楽家は励ましたり、称えるための歌を作る。医者は体を癒やしてやる。王女は功績をたたえて褒美をやる。役割を忘れ過ぎたら大変だし疲れちゃうしね」

 

 身分も生まれも違いながら同じ時代を生きて名を馳せ、大きな波に振り回された凸凹三人組。そんなことは全く感じさせず互いにツッコミを入れながらも感謝のために頭を下げ、それに対してコメントや茶々を入れるという愉快なコントが繰り広げられていく。

 

 「い、いえ・・・俺はなにも・・・マシュや華奈さん。カルデアのみなさんがいないとなんにも。でも、ありがとうございます」

 

 「ありがとうございます。マリーさん、アマデウスさん、サンソンさん。私もあまり出来たことはないですが、皆さんと戦えたのは光栄です」

 

 王女直々の礼にすこしどもりながらも礼を返して微笑む。藤丸とマシュ。清姫は藤丸にべったりだったのだがゲオルギウスとエリザベートの方に移動し、またエリザベートと口喧嘩を始めており、二人で物資の回収や協力してくれた英霊達に挨拶をしようとしたらあちらから来てこの愉快な空間。

 

 いい意味で緊張も徐々にほぐれ、笑顔も自然なものとなる。

 

 「そんなことはないわ。マシュさんたちもあの黒いジャンヌに堂々と戦ったし、あの子達を連れてきた。すっごいことよ? この広いフランスに散らばる英霊をあれだけ呼べたのは二人のおかげ。人を集めるのってとっても大変だもの」

 

 にこやかに笑い、仕草一つ一つに華を持たせながら笑いかけるマリー・アントワネット。後ろにいるサンソン、アマデウスも余計なことを言わずにその言葉にそうだなとうなずく。

 

 「あの人もネッケルとか、色んな人に協力を頼んだりして国を良くしようとしたわ。けど、それでもどうにもならない流れはあるの。でもそれを変えるきっかけを作った。派手さでは華奈さん、ストーム1さんに負けるけど、こういう事ができる人は本当に貴重よ?」

 

 実感を込めた、過去を思い返しながら一瞬表情を曇らせるマリー。フランス革命という荒波に揉まれ、その後の政府の印象操作もあっただろうがわがまま王姫としての烙印を長らく押され続けた悲運の王女。嘗て降り掛かったいくつもの事を受け止め、その上でなお楽しく笑う。

 

 「だから、二人はきっとこの先もどこまでだって行けるわ! 女の子の直感! だから、いつだって自信を持って笑って頂戴? たくさんの有能な将軍、武人、文官を見てきた私からのエール!」

 

 もっと自信を持って頂戴と指差して送る激励にアマデウスがこらえきれなくなったか笑いだし、自身も一歩前に出て一つ咳払い。

 

 「言ってることがとっちらかってるよマリー。でもそうだね。公演だって表に出る演奏者や役者だけじゃない。それを準備する舞台裏を支える人は重要さ。しかも君たちはいざという時は自身で役者として舞台に立てる。それに、優秀な先輩がヘルプで行けるんだ。もっと気楽にしていればいい」

 

 「そうだね。クー・フーリンといい、君たちの戦いぶりや勇気は素晴らしいものだ。あんな状況でも進める君たちにはきっと素晴らしい未来があるはずだし、僕もそう祈っている。本当にありがとう。僕を救ってくれたメディアさんにもまた伝え・・・・時間か・・・」

 

 サンソンの言葉に合わせたかのようにマリー達の身体が光の粒となっていく。特異点の修正が始まり、同時にここに呼ばれた英霊たちの役割も終了ということでの退去が始まったのだ。

 

 遠くで聞こえていた口喧嘩も一度止まり、大声で「待って」や「歌い足りない」だののワードが飛んできたりですぐに誰が喋っているかすぐに特定できてしまう。

 

 「じゃ、私達はこれで帰っちゃうけど、英霊の座からもあなた達の活躍を見守るし、祈っているわ! ヴィヴ・ラ・フラーンス!!」

 

 「今回は愉快で満足の行く結果だったよ。あの狼の騎士に伝えて欲しい。今度は新作やサンプルも一緒に持ってくるよ。って。じゃ、またこんどね」

 

 「マリー様、ジャンヌ様、そしてフランスという国を助けてくれてありがとう・・・君たちの旅路に幸多からんことを・・・」

 

 そんなことはお構いなし、最後まで気持ちよく、爽やかな笑顔で三人は去っていった。

 

 

 

────────────────────────

 

 「待って待って! ここで終わりなの!? 打ち上げライブとかあるんじゃないの!!? あのワイバーンの料理とかのためにたくさん退治したのに~~!!」

 

 「もう、うるさいですわよ? この特異点が解決したのですもの。消えるのは当然でしょう? 眼の前のことに熱くなりすぎですわよ」

 

 「うるさい! そっちこそべったりだった子ジカに合わなくていいの? もうすぐ私達座に帰っちゃうのよ??」

 

 「それの何が問題で? 私とますたぁは一心同体。フランスから帰ってもすぐに一緒ですよ。そうでなければ貴女のような姦しいトカゲに一応の挨拶なんてしに来ませんもの」

 

 「なぁあんですって!? この英霊業界の未来のトップアイドルに何を言ってんのよ!!!」

 

 「(それに、そのために備えはしていますもの。うふふふ♪ もうずっとこのまま・・・)」

 

 「聞いてんの!? この蛇女!」

 

 「・・・何でしょうか? キノボリトカゲ」

 

────────────────────────

 

 

 

 

 「そっちはワイバーンだけで500以上。流石だなあ。俺は作戦とは言え奥の手使わなきゃいけなかったし」

 

 「お前さんもその前に竜種を倒したんだろ? しかもかなりの大物を。しかもさっきは派手な陽動もしていたし、大手柄じゃねえか」

 

 「確か、聖マルタ殿とタラスク。どちらも並大抵な人や竜ではないですからね。浅学非才故にわかりませんでしたが、ストーム1殿ほどの方がいるとは現代も明るいものですなあ」

 

 ワイバーンの肉塊、鱗や牙、皮の切れ端。魔術の材料から今夜の晩御飯の材料もしっかりとカルデアに届けるためにゴミ拾いの清掃活動、ボランティアじみた収集活動をしながら近所のおばちゃんのように井戸端会議をしながら今回の戦いの結果を駄弁る男衆。

 

 「いや、むしろ駄目じゃないか? 俺が活躍するってむしろ争いごとが起きているんだし。まあ、人同士の戦争じゃないけどよ」

 

 「む・・・? そうなのか・・・・いや、怪物退治の専門家と言っていたが・・・現代でも怪物が存在するのか? 俺が知るような怪物はいないと思ったが・・・」

 

 「ふぅむ。確かに。平和な時は軍人や衛兵は暇になりますものね。でも、確かにあれほどの・・・ファヴニールにも動じない辺り、ああいうレベルのものとも戦闘経験が?」

 

 チリばさみとスコップを手にヒョイヒョイと背中の籠にしまいこんでいく英霊四人。話題はもっぱら先程のびっくりメカを操った現代あたりの英霊というストーム1。英霊と言っても男。なにか心をくすぐる鉄の怪物を操る英霊の後輩ともなれば興味は惹かれるのか、自分たちの知る怪物とは別ベクトルの怪物を持つ存在に手も口も休めずに作業を続けて耳を傾ける。

 

 「あーおう、ある。あれほど硬くはないが、巨大ドラゴン3体と小せえやつがたくさんとか、巨大な虫みたいなやつを山程とか。ひどい時はその群れに一人とか・・・かなりたくさんあったぜ」

 

 「・・・・・・・羨ましいねえ。それを一人で屠るとか滾るじゃねえか」

 

 「凄まじい・・・む、時間のようだな。ストーム1、済まないがそれを頼んだ。それとこれを。牙と鱗で分けておいたぞ」

 

 「おや・・・今回の戦いは有意義で楽しいものでした。竜が相手でもさほど気負わず、そして団らんも楽しめるとは。ありがとうございました。皆様の道がどこまでも光照らされて続いていますように」

 

 ジークフリートとゲオルギウスの身体も退去が始まったのか、光の粒が出始め、徐々にその存在が希薄になる。周辺を見回して取りこぼしがないことを確認しつつチリばさみと籠を渡して一方後ろに下がっておく。

 

 「了解だ。その防御力と心、竜を殺す力。しっかりと届けるよ。取り敢えず、ゴミ拾いおつかれさん。帰ってから飲んだらいい」

 

 先程ストーム1に渡したジークフリートの持つ巨大な剣。ストーム1は持っているぞと見せるために背負っているのをくるり背中を向けて見せ、戻った後に籠とは別に小さな袋から紙パックのジュースを今退去しようとしている二人に投げて渡す。

 

 「・・・すまな・・・いや、ありがとう。最高の土産だ」

 

 「おや、これはありがとうございます。後でゆっくり飲ませてもらいますよ。では、皆様に主の導きがあらんことを」

 

 思わぬ餞別に苦笑し、そして満面の笑みで座へと帰っていく二人。竜と渡り合い、戦った戦士と聖人も去り、ついさっきまで一緒に集めていたワイバーンの素材を入れる籠とチリばさみがぽつんと残る。

 

 「じゃ、帰るかあ。これでスタンプもらえたらいいけど」

 

 「近所のボランティア、清掃活動じゃねえぞ? しっかし、この量、カルデアに入り切るのかね」

 

 二人の分の籠とチリばさみも抱え、すでにカルデアに送るために準備されている列に並ぼうと歩いていくストーム1とクー・フーリン。自分たちも飲むつもりだった紙パックのオレンジジュースでのどを潤していきながら次々とカルデアに送られていく物資と戻っていく銀嶺隊の姿を眺めて再び談笑に花を咲かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ジャンヌ・・・こんな痛ましい姿に。大丈夫ですか? 今怪我に効く薬を・・・」

 

 「ありがとう。ジル。でも大丈夫ですよ。戦場での名誉の負傷です」

 

 退去がゆっくりとはじまっているジャンヌに駆け寄り、先ほどもらった塗り薬を砕けた鎧から破れ、焼けて露出した肌、特に目立つ負傷箇所にゆっくり、割れ物に触るように塗り込んでいく。

 

 「はっはは。相変わらず貴女はお強い方だ。しばしの間しみますがお待ちを・・・・・・・目の前で貴女を、フランスを殺そうとしていた竜の魔女・・・・いえ、ジャンヌ・・・華奈様の檄文では偽物と言っていました。・・・・・・・しかし、私にはどうにも本物にも思えました。髪の色や細部は違えど、同じ姿、私たちの記憶をもつ。ジャンヌ、貴女のどこかで持っていた思いなのかとも・・・」

 

 「ジル・・・・・・」

 

 傷一つに薬を塗り、折れた個所に添え木と包帯を巻くたびに、言葉を紡ぐたびに勝利を得た男の、大切な人が無事であったことへの安堵の表情が沈んでいく。

 

 「こうしてフランスを守れたことの将軍としての私は歓喜に打ち震え、私個人としてももう一度貴女と一緒にフランスを守れたことは望外の幸せ、まさしく神のなせる奇跡に涙を流して走り回るほどの喜びを感じています。・・・しかし、しかしです・・・・・・それと同時にもう天の国へ召されたジャンヌを再びこの世に呼び戻し、魔女の烙印を押されたもう一人のジャンヌを生んでしまうほどの行いをした国の男として・・・防げたかもしれないことを思うと・・・この国を守れたのは、はたしてよかったのだろうかと・・・・・・!」

 

 「・・・・・・・・」

 

 目の前で吐き出されていくかつての最も信頼した男の絞り出すような苦しみ。フランス軍を率い、あの怪物たちにも、英霊にもひるまずに立ち向かった勇猛果敢な男の、後悔と迷い。

 

 まるで終末と思うほどの惨劇、蹂躙。これを引き起こしたのは少し前の自分たちが守り抜いたフランスが起こした愚行。因果応報ともいえるこの戦いを、人ならば復讐して、されて当然の結果。裏切ってしまったゆえ生まれた竜の魔女。それを止めるために二度も聖女に立ち向かってもらった。

 

 何をもって報いればいいのか。どんな言葉を贈ればいいのか。どんな褒章がいいのだろうか。今からでも聖人に認定し、魔女という烙印を消すために名誉復活の裁判をすればいいのか。

 

 それも虚しいものだろう、何せ、彼女は死んだ。復活して目の前にいるし、ともに食事もした。けれどその奇跡ももうじき終わる。黄金を贈っても、名誉回復した際の書状も、勲章も渡してもすぐに消える。持っていけるかすらもわからない。

 

 頭の中をそんな感情がぐるぐると回っているジルの肩に手を添えてほほ笑む。

 

 「ジル・・・それでも、貴方の家も・・・帰る場所も守れた。そして、かつての私のようにどこかで普通に暮らすみんなの、フランスのみんなを守れました。それでいいではないですか。私は死にました。それはあれだけの戦をしたのですから仕方ないです」

 

 「ジャンヌ・・・・赦してほしい・・・すべてを裏切り・・・それでものうのうとこうしている私を・・・! 貴女がいてくれてさえいれば私はすべてよかった・・・!! それなのに・・・それなのに・・・!!!!」

 

 とうとう手当もできず、感情のままに大粒の涙を流すジル。肩に添えられた手に両手で触れて、その鎧の造形、まだ残っている炎の熱。ジャンヌが今いる実感を涙でかすんで見えない目の代わりに手で感じる。

 

 嬉しいのだ。もう会うことはないと思っていた人に、やさしく声をかけてもらえることが、手当てを受けてくれることが。一緒に食事をとれたことが。一緒に同じ場所にいるということが。

 

 「私は死にました。けれどジルは残って、私たちが守り抜いたフランスを守ってくれる。あのフランスの状況からここまでできているのですから神様の声を聴けるだけの田舎娘ができた成果としてはできすぎなくらいです」

 

 「ですが、貴女がいたならもっとできた! より良いフランスを! 政治闘争に明け暮れて貴女を見放すような奴らをのこら・・・・・ジャンヌ!!?」

 

 「ふえ・・・・・? どうしました・・・・? ジル」

 

 急に眼を見開き、思わず飛びのいてしまうジル。先ほどまでの空気はあっという間に霧散してしまい、ジャンヌ自身も素っ頓狂な声を上げる。その疑問自体はすぐさま解決するところとなる。

 

 違和感を感じたのはジャンヌの両ほほ。何せついさっきまでジャンヌオルタと散々殴り合いを演じ、顔も何度となく拳をねじ込まれた。少しの間はよかったが、ジルに手当てを受けている間に腫れはじめ、現在はまるでア〇パン男のようにほほが大きくはれ上がっていた。

 

 ジルも訓練で顔のけがはあったし、ジャンヌの顔にもあざ自体はあったが泣いている間にまさかここまでの劇的な変化をしてしまうとは予想外であり、あの整った美しい顔がおかめのようになっているのだからこの反応もやむなしといったところだろう。

 

 「あ・・・顔が腫れて・・・じーんと熱くなってきましたね・・・っふふふ。私の顔。面白いことになっているんでしょうね」

 

 「いえ! その顔も美しいですジャンヌ! 天使だってあなたの美しさは認めるところでしょう!! さあ、より美しくなるためにこの薬をお塗りくださいませ! 腫れにも効果ありと華奈殿が言っていましたからな!! ・・・・・・・・・・・こうして、ただただ話をして過ごしたかったものです・・・」

 

 「あ、では・・・ふふ、そうですね・・・いひゃっ・・・! ひつつ・・・英霊でも、痛いものは痛いのですね・・・ひゅふ・・・」

 

 この顔がいい意味で空気を変えたか、少し砕けた様子のジルから塗り薬を受け取り、笑いながら顔にゆっくりと薬を塗りこんでいくジャンヌ。決して行ったことが消えるわけではないし、負い目もある。それでも少し前の、一緒に洗戦場を駆け回り、そのあとにのんびりとしたわずかな余暇。それを思い出しながら互いに微笑みを浮かべる。

 

 その間も退去は徐々に行われてジャンヌは足元から徐々に消えていき、光の粒となっていく。

 

 「もう時間ですね・・・ジル・・・私が今フランスにできることはここまでのようです・・・フランスの明日を頼みました。私も天の国から見守っています・・・・・・また会いましょうジル」

 

 「っ・・・・・・・! はい・・・! ジャンヌ。貴女が安心していられるようにこのジル・ド・レェが全力でフランスを守り抜きますとも!」

 

 薬を受け取ったまま、やや腫れが引いて慈しむ、やさしく投げかけるような笑みを浮かべて消えていくジャンヌ・ダルク。涙の後をぬぐい、一番思い慕う相手の前で攻めて最後くらいはとぴしりと敬礼して見送ろうとするジル・ド・レェ。

 

 「ありがとうございます・・・さようなら、ジル。これからも主の導きがあなたにあらんことを」

 

 「おおぉ・・・・! ジャンヌ! 貴女にこそ主の導きを! ご高配を賜ることを! ありがとう・・・・・救国の聖女! ジャンヌ・ダルクよ!!!」

 

 狂ったフランスでの歴史。この特異点が修正されればこの気持ちを新たにした救国の英雄たるジル・ド・レェも修正され、元の歴史の通りに淫蕩で残虐な日々にふけるだろう。

 

 それでも、のちのフランスへとのバトンをつなぐことができた。歴史を紡げた。国を託したものと残されたもの。かつての戦友の二度の別れを見届けつつ、カルデアのメンバーはフランスから帰還。約三日に及ぶ特異点での激戦は幕を閉じることとなる。




~カルデア~

ロマニ「やあみんなお疲れ様! 無事に特異点を修復できて何よりだ。聖杯も華奈が持っているし、まさか物資が増えるとは思わなかったよ。これで銀嶺隊が増えても普通に過ごせるレベル。うん、まさかの一部は黒字収入だ」

ダ・ヴィンチちゃん「ミルクにチーズにお肉に小麦♪ ワインにビールに少し古めの大樽。野菜も種もみや苗。球根とウハウハだ。これらを一部水耕栽培、空いているスペースを菜園にすれば華奈の貯蓄と合わせて食料関連も大いに回せるだろう。ウィスキーも作ろっかなー。チーズも、ヤギのミルクだってあるし癖の強いのを・・・・・っと! その前にだ! いい匂いに忘れそうになったがストーム! 華奈! あの兵器たちを私に教えたまえ!!! それと、一緒にゲームも全シリーズ! 調べつくしたいんだよねえ!!」

オルガマリー「何と言いますか・・・過酷なはずの特異点で食事の思い出、いえ記録ができるとは思いましませんでしたが・・・んんっ・・・ともあれ、特異点の攻略。感謝します。所長として貴方達を誇りに思います。本当にありがとう・・・」

良馬「ほかにも兵士への報酬や村への慰問金、もしくは復興、徴兵への手付金だったのでしょうか。いくつかの宝物もあれば宝石や魔力のリソースとなるものまで多数です。これなら必要な英霊の契約数もいくらかは多めにしても問題はないです」

元「それでなんだけど・・・食料や物資が増えた分、管理というか備蓄場所が足りない。補修作業や安全のためにまだ封鎖中の場所には置けないけど食糧庫もそれなりにきつくて、現在は華奈の用意していた英霊の聖遺物の置いていた場所、あと、書庫の一部も使わざるを得なくい状況なんだよね・・・」

エミヤ「いやはや・・・軍が本来数日食べる分、せいぜいが二日ほどだとしても軍馬や数千、万単位の兵士の食料であればカルデアには多すぎるものだな。科学と魔術の天文台が一気に大食糧庫に大変わりさ。卸業でもするつもりかね?」

アルトリア「姉上の宝具で全員出しても問題なさ・・・いえ、無理でしょうけど、それでももともとの備蓄と合わせてもキャパオーバーになりかねないと」

冬利「ぶっちゃけた話、食料の腐敗やそれによる疫病考えるレベルですぜ。今回の魔力のリソースのいくつかを冷凍保存にも回したりしておくのがいいでしょうかねえ。銀嶺に食べさせれば余剰分は華奈・・・姐さんの魔力になるらしいし」

咲「そ、それでもいくらかは菜園は必要だし、今用意しているものを利用するためにも菜園スペースは削れない。けど、食料部屋を開くにはまだ危険な部屋もあれば、整理も今から必要だなあ・・・と」

藤丸「結局、また別の意味でお仕事が増えちゃうってわけだね。うれしい悲鳴かな・・・・? ・・・?? なんだろ」
(ズボンに違和感を覚え、尻のポケットに手を伸ばす。扇が一つ)

華奈「(ふぅむ・・・・・・・書物の場所まで圧迫するのは嫌ですねえ・・・今後も防備と安心のために英霊は呼べないか打診しますし、本はいいものですから・・・あ、そうだ)」

ストーム1「(戦記物とか、伝記を取りづらくなるのはつらいなあ・・・武器の整理や休憩時間の片手間に読んでも今後はそれがヒントになるだろうし、あ、そういえばこの剣のこと、マスターに言うの忘れてた)」

マシュ「すぐにでも整理と余裕のあるスペースを確保するための整理に走らないといけませんね。良馬さん。カルデアのマップ出してもらえませんか? それとダンカンさんたちも一緒に動いてくだされば」

華奈「いえ、書物に関しては私・・・というよりも少しあてがあるのでどうにかなると思います。一度休憩室、レクリエーションルームに書物、その資材、主に机や椅子を移動。ああ、ボードも問題ないですよ」

ヤマジ「大将。何をする気なんだ? まあ、おおよそ考えはわかるが」

華奈「そりゃあ・・・カルデアの模様替えを手伝ってくれる英霊の召喚ですよ」






これにてオルレアンは終了。しばらく小ネタを挟んで次に行きたいと思っています。いきなり次回は召喚になるでしょうけど。

言い訳といいますか、今回急にPCが不調になり、しばらくパソコンにあんまり触れられない状況で全く執筆が進みませんでした。大変申し訳ありませんでした。一応は直ったのでまたゆるゆると書いていく所存です。

ジル・ド・レェが軍需物資をあっさりくれたのは想像以上に早く戦が済んで民からの徴収をしなくてもよかったことや下手に持ちすぎても食料などは腐らせる可能性もあるからです。なら恩人たちにおいしく食べてもらうほうがこちらもうれしいし動きやすいといった感じです。

自国内での前代未聞の大騒ぎを終えて尚もたくさんの食料をほぼ無傷で持っていても搾取だとなんだと騒ぐ輩もいそうだし、対立派閥からは攻撃の理由にされそうだなという考えからでもあります。現場にいた兵士はジャンヌによるまとまりと、華奈たちのおいしいご飯の恩もあるわけですし。

現在カルデアには軍の物資にフランスを苦しめた大量のワイバーンを狩りつくして部位ごとに分けられたものが山ほど。どこの市場だといいたくなるような状況です。しかもすでに加工されたワイバーンのウィンナーやら出汁用に分けられた骨などたくさん。

次回は召喚。なかなかの人数になるかもしれません。また良ければこの駄作にお付き合いくださいませ。

それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。
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