転生愉悦部の徒然日記 作:零課
(剣を渡す)
華奈「ストーム、これジークフリート様のでは・・・?」
ストーム1「お前さんが気に入ったとよ。戦力として使っちゃいな。俺がフェンサーにならないでも済むし、それに・・・・」
(ちらりと周りを見る)
クラーク「はーい、バックおーらーい、バックおーらーい。あ、少し先がカーブになっているので気を付けてくださいね~」
アンナ「えーと、第六隠し倉庫・・・もとい備蓄庫もいっぱい・・・あ、ここは?」
フラム「だめですね。発電機の置いている場所の隣で、そこは今も専用の電池やら修理用の機材を一部移したのでもうパンパンです」
アンナ「あらぁ・・・」
良馬「あとは・・・うーん・・・サブスタッフのレクリエーションルームでしょうか。ここも使うとして・・・」
オルガマリー「書庫の一部は出しておいて。華奈が何やらするみたいだし、とりあえず娯楽作品、必要性が薄いものやいざという時に保存しないでもいいものをピックアップして。えっと、台車どこにしまったかしら・・・?」
メディア「・・・・・え、最近の神話ってわりと緩く表現されていたりするのねえ。絵もかわいい・・・」
ヤマジ「うほっ、いい男。この絵いいなあ。文字も読みやすい」
花子「ワフッ!(訳 読んでる場合か!)」
フォウ「・・・フゥォォーウ・・・(訳 相変わらずだなあ・・・このガチホモは)」
クー・フーリン「ワイン樽部屋もう一杯だぞ。チーズやミルクは大丈夫そうだけど、そっちに移すか?」
アルトリア「うーん・・・ですねえ。それで行きましょう。水で薄めたやつとか、搾りかすから作った低品質用はそこに。あとで姉さまの部隊で味を上質化させるようです」
エミヤ「なに? それはぜひとも教授願いたいな。時間はいつ頃行うのかね?」
ダ・ヴィンチちゃん「あ”~~~!!!なんだこの蜘蛛の火力! おかしくない!!? 最高難易度とはいえアーマー数値7000あって2,3体に瞬殺されるっておかしいでしょ!!!」
マシュ「あ、華奈さんが書いていますね。この時の蜘蛛の火力は歴代最高におかしいので一番油断できないですよ。らしいです。直撃すればそれくらいは覚悟しないといけないとか」
ロマニ「最高難易度しばりのすごさがよくわかるねえ・・・僕は簡単な難易度から慣らしていくしかないかな・・・?」
藤丸「うぉ・・・! 鱗だけの箱なのになかなか・・・!」
ストーム1「力仕事できる男手は欲しい」
華奈「ですよね。それに、あの強さを見ているカルデアの皆様に、藤丸様、私から見てもいれば心強い、安心感も増すでしょう。では、呼びましょうか。あ、それと・・・レクリエーションルームを・・・ロマニ様。召喚後に使っていいですか?」
ロマニ「へ? あ、ああ・・いいけど、とりあえず今の状況をどうにかしてからね。このままじゃ廊下に物資を投げっぱなしにしかねない」
華奈「了解です。では、そうですねえ・・・」
(一度自室に戻っていく)
~???~
???「あれは・・・! また会えるかもです!」
???「・・・何かしているように・・・今度こそ・・・いえ、超えるのよ・・・!!」
???「届いたか・・・俺も叶うのならあの場所の盾として・・」
???「あら・・・この気配・・・? もしかして? うふっ・・・あの方に呼ばれるのかもですね」
???「安珍さま・・・今参りますよ!」
数日で被害なし、食料やら物資をたらふく持ち帰ることに成功した特異点攻略チーム。この快挙にカルデアは喜ぶ暇もなく、その持ち込みすぎた物資の配置や整理に早速観測スタッフや非番のスタッフまで呼び出して模様替えまでして物資の運搬にてんてこ舞いとなっていた。
さながら朝市での光景を見るようなにぎやかさと食料の豊富さ、多彩さにはぱっと見ではここが南極の雪山にそびえる科学と魔術の合体した天文台とは思えないだろう。
しかしながらこの物資は特異点を攻略したとはいえまだ残り6つも攻略せねばならず、そこに行くまでいつになるかわからないまま籠城しなければいけないカルデアにとっては一つ一つが貴重な食糧であり、心の支えでもある。
それゆえに皆が必死に汗水流して働いているのだが、それでも元は数百名の人数で運営していた施設にどんと来た数千、万の人間の食べる食料が来ては整理も一苦労。中にはこの重労働に腰を痛めたりだの早速弊害が出る始末。
とりあえずのスペース確保。人手確保のために華奈、藤丸は召喚ルームに移動し、新たな英霊の召喚に挑むことに決まった。
「みんな大変な中だけど、なんだかラッキーだよ。これだけの備蓄がたまるというのはね。さ、召喚を行うけど、準備はいいかい?」
大量の食料によって今後の食生活が潤う、職員の食事による栄養、および精神観念からの健康にうれしい予測を出せたことが良かったのか、それとも純粋に外で行われている模様替えに合法的にバックレることっができたのがうれしいのかわからないが、いつもよりも2割増しの笑顔で準備を始めるロマニ。後ろでは電力を多く使うためにフラムとアンナがおり、隣では良馬が改めて現在のカルデアの電力からの召喚できる余裕を再チェックしてはまた再度確認と念入りな再度チェックをしている。
「私は問題ないです。とりあえずは藤丸様はどうです? 先に行きますか?」
「え? うーん・・・はい。俺も早めに作業を手伝ったほうがいいでしょうし!」
「えーと・・・オッケーですね。今回は船坂さんが回収した聖杯のちょっとの魔力と、フランスからの魔力リソース、これと少しのカルデアの備蓄を回せば合計八騎の召喚をしてもおつりが来ます。そのカルデアの備蓄もアルトリアさんの魔力をアンナ様が自身の雷魔術に変換してさらに増幅しているのでその備蓄も出してないも同然。イレギュラーな大英雄の召喚が来てもとりあえずは大丈夫かと」
良馬のお墨付きももらい、早速召喚するために電力を回していくロマニ。準備が整ったところでまずは作業に戻ろうと考えていた藤丸が一歩前に出て立つ。
「お願いします」
「了解。じゃ、スイッチを入れるよ」
スイッチが入り、召喚台のサークルが回り始める。正直なところ、嫌な予感・・・とまではいわなくても変な確信が藤丸にはあった。
フランスで出会い、自分を運命の相手だと言ってずっとくっついていた女性。清姫。「安珍、清姫伝説」と日本の物語でもそれなりに有名で、そしてなかなかにホラーな物語。安珍の最後や行いを考えると自分も同じ目に合うのかもと想像してしまう。
念のために「なぜか」あった扇は別のところにしまっておいたが、どうにも不安がぬぐえない。あの物語での執念を思うと、そして自身もフランスで感じた入れ込み具合。異性との関係に少し疎いかもしれないと考えている藤丸でも予感はあったし、今もこうして変な汗を流す。
「うふふ。サーヴァント、バーサーカー清姫。ただいま参りました。ますたあ。今後もずっとお願いしますね?」
その予感に応えたか、はたまた考えたせいで繋いでいた縁が強くなってきたのか。それとも、清姫がこの縁を手繰って無理やりに来たのか。光の環が収まり、聞こえてきた声、エメラルド色と白、金を基調とした美しい衣装。その衣装よりもやや色素を薄めた髪に美しい顔立ち、金の瞳。目立つ竜のものと思われる角を持つ美少女。
清姫は召喚されるや否や目の前に立つ藤丸に頭を下げ、満面の笑みを浮かべる。
「う、うん。よろしくね。早速なんだけど、いまカルデア模様替え中で、人手が欲しいんだけど、あとで俺の代わりに地図を見てナビとか、整理に手を貸してくれないかな・・・?」
その笑顔に少し引き気味ではある藤丸だが、ともに作業しようととりあえずは投げかける。女性の英霊である以上戦闘、矢面に立たせることがあるのは確かなのだが、それでも女性としての接し方はしなければだめだと考えているし、清姫伝説は安珍からの拒絶から始まったことを一応は知っている。
ならいっそ距離を近くして何がだめなのか、何がいいのかを知るために動くことに意識を向ける。いざとなれば周りの銀嶺隊やクー・フーリンに助けてもらう。多少の算段はあるが、好意を持ってくれる女性には優しく接したいという藤丸なりの意地だった。
「うわぁ・・・念のために扇は仕舞っていたのに、しかもフランスの記憶もバッチリか。さすが・・・」
同じくこの光景を見てロマニも清姫伝説は知っているので思わず笑顔が引きつり、聞こえない程度の小声で思わずつぶやく。そんな男性陣を気にせずに清姫は何かスイッチが入ったか目をキラキラと輝かせている。
「・・・・つまり共同作業! これからの私たちの住まいのための模様替えですわね!! 喜んで。この清姫ますたあ様のために粉骨砕身働きます!!! あ、華奈さん。私にもカルデアの地図を一つ!」
「へ、あ。はい。えーと、これが紙のもので、これが端末。清姫様には巻物にしておきましょうか。えっと、これがまず・・・」
いうが早いか、また自分が触媒にならないために外で待機していた華奈に駆け寄って早速地図の使い方を頭に叩き込んでいく清姫。きっと今の彼女の脳内予想図には藤丸と和気あいあいと作業をして一緒に社内恋愛、もしくは新婚の夫婦が新築のために汗水流すこと自分の姿でも想像しているのだろう。
「うん・・・いい子だよね。あの時代のいいとこのお嬢様なのに、こうしてすぐ働こうと考えてくれるし、わからないことはすぐに聞きに行くし・・・」
「・・・マシュも藤丸君に好意的だけど、これまたさらにすごい子が来たなあ・・・藤丸君、ハーレムでも作る気?」
「いえ、俺はそんな気は・・・といいますか、モテたためしなんてないです。とりあえずは次いきましょうか」
あっけにとられつつも、とりあえずは空気を変えようとしたか藤丸も再度召喚を行おうと意識を切り替える。時間は欲しいし、一人目は意欲的で、とりあえずの協調性もあるだろう。となれば次の英霊、戦力だ。一緒に戦ってくれる頼もしい戦友。仲間。フランスで出会った誰が来てくれるのか。
藤丸の意識の切り替えに合わせて召喚サークルは回りだし、強い光を放ち、勢いを増す。やがてそれが収まるとまた一人の人物が立っていた。
「サーヴァントアヴェンジャー、召喚に従い参上しました」
変わった額あて、ファーのある黒いマント。すべてをほぼ黒で統一した鎧、姿はかつてフランスで出会った聖女であっても肌の白さ、髪の色、瞳は違い、何よりもまとう空気や威圧感はまるで別物。そして、その人物は何よりも敵だった人物のひとりでありリーダー格。
「どうしました? その顔は? さ、私を呼んだのですから喜ぶべきじゃないかしら?」
ジャンヌオルタが藤丸の契約に応じる形で現れ、やや卑屈な笑みを浮かべていた。
「これは驚きだ・・・・まさか一番僕らを殺したいはずのジャンヌオルタが来るとは・・・霊基は弱いけど、それでも並みのキャスターやアサシンならひねりつぶせるくらいの自力もある・・・どういう風の吹き回しだい?」
「・・・下っ端が知った風に言いますが、まあそうですね。フランスでのあれは本当に腸が煮えくり返りました。負けて、その後も煉獄で機会を伺おうかとも思いましたがいざそうなれば知ることになったのは私が私であることへの脆弱すぎる基盤。いえ、『英霊の座』でしたか? それが私はあまりにもろすぎる。もしあんたらが負ければそれこそ復讐の機会も失われる。勝ってもここにいなければ召喚の機会も減るかも。最悪私自身も消えかねない。それよりはあの詐欺師狼女の口車に乗って、それを手繰ってくるのもいいかもと思いまして・・・癪だけど、殴る相手が殴れない、見返す相手がいないまま終わるのはごめんよ」
苦虫かみつぶした顔になりながらもあっさりとすぐに事情を話すジャンヌオルタ。一度復讐の大舞台から殴り飛ばされ、その間に改めて自身の今後、フランスへの復讐、もしくは見返すためにあえて恥を忍んできたということなのだろう。
「うん、わかったけど下っ端はひどくないかな!? それなりに頑張っているけど・・うん、まあ実際中間管理職な部分も否めないかも・・・?」
「・・・ふふっ・・・」
罵倒交じりの返答に軽くショックを受けるロマニとは別に藤丸はジャンヌオルタのその返事にほほを緩ませる。やや早口で、饒舌にいうあたり初めから言い訳を考えていたか、恥ずかしいからサッサと言い切って追及させないつもりか。その反応が面白く笑みがこぼれる。それをすぐさまジャンヌオルタは逃さず鋭い視線を向けて接近していく。
「・・・何がおかしいのです。私の言葉に間違いが? 見返すために戦おうと言ったのはそっちの現場の大将でしょう?」
「あ、いや・・・令呪のリスクや華奈さんがいてもこうして一緒に戦えるのはうれしいよ。だって、あのパワーに炎、かっこよかったし奇麗だから」
一瞬驚いて後ずさるもタハハと笑い、威圧を受け流してフランスでの戦闘でどこか感じていたことを話す藤丸。紅蓮の炎を操り、体ごと吹き飛ばしかねない一撃を細腕から繰り出す。炎の中でたたずむ姿も、最後の殴り合いで見せた根性も味方なら心強いと
(それと、強情な敵がこうして味方になるってなんだかかっこいいし)
「・・・・・ふぅんあの女の部下、ないし後輩みたいだけど一応の見る目はあるわけね。いいわ、ぎりぎり合格。今だけはそちらの刃になりましょう。で、初仕事は何なの? マスター」
少しの間を開け、ニヤリと美しい顔をニヒルにゆがませて一歩距離をとるジャンヌオルタ。英霊との鍛錬でそれなりに慣れた、もしくは鍛えられ始めた藤丸もさすがに威圧には少し応えたか少し息を吐いて呼吸を整える。
「その・・・カルデアの模様替え。あとは食料の整理とかの・・・倉庫整理・・・・かな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・?」
先ほどの剣呑した空気から少し和やかな空気に変わったかと思えば一気に何かが抜け、言っている言葉がわからないという表情をジャンヌオルタが浮かべて静止してしまう。
「もう一度お願いするわ」
「いや倉庫整理・・・?」
「なんで英霊を呼んでいきなりそんな雑用ないしバイトみたいなことをさせるのよ!!? こういうのは槍働きや、ピンチに対処するための戦力増強じゃないの!?」
もう一度聞いても同じ答えが返ってきたことで訳が分からんと怒声を上げるジャンヌオルタ。あれほどのふざけた作戦や一日で廃城を見事な防衛陣地を敷いて見せる部隊と肩を並べるのだから激しい訓練や戦い、そのための調整があると考えていたがいきなり頼まれるのは雑用。視線を変えれば憎らしい華奈も清姫も何やら打ち合わせをしているし聞いてみればあちらはノリノリで作業のための説明を行っている始末。
つまりはこちらの意識だけ違ったか、意識を上げすぎていたか。英霊というものに武官のイメージを抱きすぎたかと考えるも一度大きく息を吐き。
「はぁ~~・・・・・・わかりました。食料とかの用意とか、作戦も綿密な打ち合わせが必要ですものね・・・・・・では、私も参加してきます。では、失礼するわ」
ドカドカと荒々しく靴を鳴らしながら召喚ルームを出ていくジャンヌオルタ。その後華奈と清姫にあって遠目ながらに2,3つ言葉を交わしてすぐに出ていった。険悪な関係は続くかもだが、とりあえずはからかったり、下手に刺激しなければこの中になじむかもしれないと藤丸も考える。
すぐに起こる部分はあるが、我慢もできれば必要な判断であれば意外と飲み込んでいけそう。とりあえずは無事に行けそうでよかったと胸をなでおろす。
「まさかジャンヌオルタが来るなんてね・・・わからないものだわ。藤丸君もお疲れ様。もう大丈夫よ」
「所長? あれ? 所長も呼ぶのですか?」
後ろからジャンヌオルタと入れ替わりに聞こえてくる声に振り向けばオルガマリーがそこに立っており、先ほどジャンヌオルタが立っていた方向を見ながらつぶやくように話す。
「? ええ、華奈にぜひ一騎契約してほしいと。カルデアの防衛やいざという時に私も出るかもだから戦力増強はぜひって言われてね。・・・・元のほうが経験からしても適役だけど、いざという時に長くレイシフトしてとどまれるし、カルデアのトップの警護という点から譲られたわ。元も同じこと言ってきたし」
ふぅ。と息を吐き、英霊を召喚できることの嬉しさと、同時にいざということが何なのかを想像したか表情が少し曇るオルガマリー。少し後ろ向きであることを差し引いても苛烈極まりない特異点を一回経験し、さらには二度目のワイバーンや英霊同士の合戦も映像越しとは見ていたのだ。またそれを経験するのかと気負いしてもいるのだろう。
しかし、一度死の運命を乗り越えて吹っ切れたか、そのマイナス思考に飲まれる前に一度頭を振って意識を切り替え、カルデア所長としての顔になる。
「とりあえずは私も補欠として備えるし、そっちも今後は後ろのことは気にしなくてもよくなるってことよ。さ、藤丸君。作業に戻って大丈夫。貴方ようの台車も一つ借りてきて外に置いてあるから使いなさい」
「了解しました。所長。ありがとうございます」
頭を下げ、召喚室の外に出ていく藤丸。それを見届けたオルガマリーはくるりとロマニのほうに視線を向けて大丈夫か? とアイコンタクトをとる。それに対して問題ないとにこやかな笑顔で手を振り、すぐさまコンソールを打ち、スイッチを入れた。
「随分と丸くなりましたね。所長。余裕も出てきましたか?」
「余裕は・・・・・そうね、少しだけ。でも、それは私個人だけで、みんながその余裕を広げたり作ったり・・・励ましてくれるからこそよ。まだまだ怖いし、泣きそうなこともあるもの。けど・・・今はこれしかないもの。走るしかないわ」
フランスでのレイシフト、そしてジャンヌオルタに冬木とは違う影ではない多くの英霊に怪物、守らないといけない民衆。冬木はいっそ何もないからこそ気にせず、町の中という狭さからこそすぐに解決できた。しかし広大なフランスで、ワイバーンに英霊、相手のほうが取れる選択が多いために長く戦いは続き、物資の面でも電力の面でも不安はずっとあった。
しかしふたを開ければ三日で攻略し、食料問題は解決。魔力リソースにストーム1がもらってきたジークフリートの剣という一級品の戦士、英霊の触媒すらももぎ取る始末。聖杯の回収や特異点攻略とすべてがカルデアにとってプラスに転んだのだ。
まだ、振り切れてはいないが、下手に考えるよりは今ある最適解に飛び込むほうがいい。自分よりも優れた知能や見識、専門家はいる。そして、これからの荒事にも対応できる人材をこうして呼ぶことが、助けを求めることができる。そんな人材に助けてもらいながら、怖かったら頼って、すがってでも動き続ける。責任はその後で取ればいい。それが今のオルガマリーの考えだった。
「そうですか・・・所長。疲れたら僕のところに来てくださいよ。体調不良は怖いですしね」
「あなたがしっかりとさぼっていなければね? 甘い匂いのする医務室で診られるのは少し不安よ?」
「ははは・・・患者との触れ合いも大切ということで・・・クラスは・・・エクストラクラス・・・このパターンは・・・」
サークルの環が収まり、強い光を放つ。眩い光が落ち着いた後に来たのは一人の女性。
「サーヴァント、ジャンヌ・ダルク。クラスはルーラー。マスター、どうぞよろしくお願いします」
先ほど召喚されたジャンヌオルタとは別で柔らかな表情。女性的な雰囲気を漂わせる美しい女性。白を基調とした鎧衣装に身を包み、携える旗は神々しさすらも感じる。救国の聖女、あの邪竜の息吹すらも受け止め切り、人として、英霊として二度もフランスを救った英雄。
ジャンヌ・ダルクその人が目の前に現れ、頭を下げる。
「・・・・・・・あ、ん・・・私はカルデアの所長オルガマリー。貴女のマスターになります。華奈、アルトリアじゃないのは残念でしょうけど、よければ今後もカルデアの守り、そして戦いに力を貸してほしいわ」
「もちろんです。皆様の守りとなり、ここの支えとなりましょう。これからもこの田舎女でよければどうぞよろしくお願いします」
思わぬ、まさか自分にこの聖女が契約してくれるとは思わず驚くもこちらも頭を下げ、その後に顔を上げて右手を差し出す。ジャンヌもこれに応えるように右手を出して握手をし、微笑む。
「で、早速なんだけど・・・いまカルデア内部は模様替えの真っ最中で、人手が欲しいの。私たちじゃ少し手間のかかる、もしくは重たいものを持ってくれないかしら? このドアをくぐれば華奈がいるから場所とかを聞いてもらえば大丈夫」
「了解です。では行ってきます!」
「・・・なんだか、話していると前の私のヒステリックさとか、すぐ怒っていたのがあほらしく感じるわね。あの子を見ていると。私も行きましょうか。区画の再整備と、どれくらい部屋の余裕を作るか考えないといけないし・・・」
意気揚々と部屋を出ていくジャンヌのもつ空気、というか性格にすこし前を思い出しながら召喚室を出ていくオルガマリー。そしてオルガマリーが出てからしばらくして剣と筆を持って華奈も召喚室に入り、準備を始めていく。
「今回は華奈は二騎だっけ。ジークフリートと、これが触媒?」
「ええ、戦力確保。そして、今の問題解決と精神的ケアの目的を達成できるかもしれない方です。まずはジークフリート様を」
抱えるだけでも一苦労なサイズの剣を召喚サークルにセットし、少し離れる華奈。それをみたロマニはすぐさまスイッチを入れておく。今までの光とはまた違う、どこか荒々しくも安心できる光。
「サーヴァント、セイバー・・・ジークフリートだ・・・俺を呼んでくれて感謝する。マスター」
胸と背中をさらした独特な黒を基調とした衣装の上から鎧をまとい、触媒となっていた剣を背中にさす。伸びた白と一部やや黒、そして色味が混じった髪。青の鋭くもやさしさを秘めた瞳。胸には独特の文様がはしる美丈夫。フランスにて邪竜を打ち倒す大功を上げ、ストーム1に剣を託した戦士。
ジークフリートがカルデアに参戦し、華奈との契約が結ばれた。
「こちらこそ感謝します。貴方の守り、心、そして武勇はカルデアの皆様の支えとなりましょう。そのうえでいいます。私の呼び方はどうぞ好きなように。私もここに呼ばれた英霊ですゆえ。そして、貴方が成したいことを成し、困ったことがあれば言ってください。ストームもいますし、気楽に」
「そうか・・・では、いや・・・慣れないな。マスターよ。これからもどうかお願いする。で、なんだが・・・・・外がにわかに騒がしい気もするが、どうしているのだ・・・?」
「ああ・・・実はですが、今回の早急な召喚には英霊の方々の力、人でも欲しくて。大量の物資の整理のために今大忙しなんですよ」
防音設備はそれなりにいいはずなのだが、それでも外の気配を感じ取ったか。苦笑しつつ今のカルデアの内情と召喚の理由を話す華奈にフランスでの記録を持っているジークフリートも理解し、納得したと視線を華奈に戻す。
「そうか・・ではすまないがマスター。早速皆の手伝いに行きたいのだが・・・なにせ俺はここの施設の道がわからない。よければ道案内・・・もしくは地図はないだろうか・・・?」
「それでしたら、ハチ~」
一度召喚室からでて華奈が声をかければ白色の巨大な狼が召喚室に入り込み、華奈にすり寄る。
「この子が案内します。とりあえずはそれで管制室にあいさつを。それとどこで作業をするか聞いてください。その時にここの皆様とあいさつもできましょう。ストームも、クー・フーリン様もいますよ?」
「・・・確か、マスターの魔獣で最古参の魔狼だったか・・・すまな、あ、ありがとう。早速行ってくる。あとで会おう。マスター」
ハチの頭を撫で、お願いすると頭を下げてハチと一緒に部屋を出るジークフリート。さりげなく物資の整理と聞いていたからか剣を収めて物資や職員を傷つけないようにしており、その細やかさに微笑む。
すぐ後に外から歓声が上がったことから無事に受け入れられたことを華奈は感じ、今度は筆を召喚サークルにセットする。
「さすがかの英雄。フランスでも立ち回りもあってすぐになじんだようで。ふふ、良き哉良き哉♪」
「僕としては華奈の負担も少し心配だけど・・・まあ、まだ宝具もセーブ状態だし、ストーム1もクラススキルで基本負担はかからないからいいけど、保険は用意したいね」
「そこは私も節約を心がけていくことと、立ち回りでしょうか。私よりもより大局、戦略を見れる方を今後は招くべきなのかもですね・・・・・さ、お願いします」
華奈の言葉にロマニも頷き再びスイッチを入れる。先ほどよりも光の激しさはなく、どこか穏やかな光。収まってサークルの上に立っていたのは一人の女性。
「サーヴァント、紫式部でございます。文に親しみ、詞に焦がれ、人の想いに寄り添う女にて・・・お久しぶりです。華奈様」
しなやかでありながら出るところ出た見事な体を漆黒のドレスに身を包み、美しく長い黒髪は一部を垂らして残りは後ろに流し、一見耳にも、何かの飾りにも見えるように一部の髪をまとめ、紫の渦巻きが入った青の髪飾りでとめている。それ以外は腰よりも下に流して一部は変わったウェーブがかかる変わった髪型。
紫がかった瞳はやさしくこちらを見つめ、手に持つ黒い傘はその独特で、穏やかな雰囲気を引き立てる。平安時代にていくつもの著名な作品を書き上げた歌人、作家。紫式部が召喚され、丁寧なしぐさでお辞儀をして笑う。
「お久しぶりです。紫式部様。此度は貴女様の力・・・陰陽術と、私たちカルデアの書物の一部をその術で管理、保管できる場所を用意してもらいたく。このような場所、状況ですが、どうでしょうか・・・?」
「紫式部!? また日本屈指の歌人じゃないか! それと、陰陽術? 術者でもあったのか!?」
華奈が個人で保持していた触媒で召喚された美女の正体に驚くロマニ。
「ひっ・・・!?」
「驚きすぎですロマニ様・・・大丈夫です。害意は一切ないですから紫式部様。いわゆる、思わぬ有名人の登場に驚いているだけですから」
「そ、そうでしょうか・・・では、先ほどのお話。喜んでお受けいたします。私を人理最後の砦の一員として迎え入れること・・・あまりにも重い話ですが・・・貴女様の頼みならお受けします。ですが、私も頼みたいことがありまして・・・」
それに驚き、少し飛びのいた紫式部を受け止めてほほ笑む華奈。その笑顔に少し落ち着けたかその話を受けることで契約を結ぶ。が、ただし、と話を続け
「華奈様の作品・・・サバフェスで出される作品。今までのものをこちらの用意します図書館に寄贈すること、それと・・・私は文をつづるつもりはありませんが、お手伝い、編集、相談、また開かれる催しにはサークルに売り子、手伝いとして入れてはもらえませんか・・・? で、出過ぎたものだとは思いますが! そ、そのどうでしょうか・・・!?」
少し焦りながらも自身の頼みごとを言い、さすがに我儘だったかと顔を真っ赤にする紫式部。
「願ってもないです。こちらから頼みます。どうか私のサークルのつたない作品であれば見ていってくださいませ。そして、その経験と文才からお助けくだされば」
「ひゃ・・・! ひゃい!! ありがとうございます! で、ですが顔をお上げになってくださいませ! 貴女のサーヴァントですので私が言いすぎましたし! も、申し訳ありません!」
申し出にむしろありがたいと頭を下げる華奈。これに紫式部も頭を下げ、それにまた華奈もお辞儀をするというお辞儀合戦が少しの間始まり、ようやく紫式部の気持ちも落ち着いたか真っ赤な顔はなくなっていた。
「では、私もこの区画の地下に図書館を作り、そちらの一部の書物を預かります。それ以外にも椅子や机などもこちらに収納できるようにしますし、ちょっとしたレクリエーション、話し合いができる場も用意しましょう。書物の選別は終わっているとのことですし、後は図書館を作った後でそれを運び込めばいいのですね?」
「はい。そのように。あとは・・・必要でしたら私の部屋にでも入れるように裏口でも作って繋げちゃえばいいですよ。そうすれば気になれば私の部屋のネームや原案、万が一の避難場所にもなります。食事が欲しければ作りますし」
お辞儀合戦が収まり、今度は互いに仕事人の顔で打ち合わせをしていく華奈と紫式部。会話自体はヤマジ達一部には聞こえるように通信機をつけっぱなしにしており、すぐに紫式部が作業に入れるようにと準備を始めておく。
「・・・ふふ、ではそうさせてもらいます。私もすぐに図書館を作ります。・・・・・・・ああ、そうです華奈様」
「なんでしょう?」
「これからもどうぞよろしくお願いします。私のことは香子と呼んでくださって大丈夫ですよ?」
クスリとほほ笑み、召喚ルームから出ていく紫式部。その立ち振る舞い、歩き方は麗人、貴人のそれで思わずロマニも華奈も見とれてしまうほど。
「もう・・・私なんてただのサークル仲間で、今任せた仕事もなかなかの大変な仕事ですのに、信頼されちゃいましたね・・・応えられるようにしなければ」
「まさかのサークル仲間かぁ・・・サバフェス。一回くらい参加するべきだったかな・・・?」
「そのためにも戦わなければいけませんねえ。さて、次の仕事です・・・」
新たな英霊の召喚、参加にカルデアの皆が沸き上がり、紫式部の用意した地下図書館に書物、備蓄庫となることで使わない、置き場所に困った椅子や机、ホワイトボードなどを図書館の蔵書、備品とすることでとりあえずのカルデア内部の大整理を終えたころ。カルデアの英霊をダ・ヴィンチちゃん除く全員を集め、面接を華奈、オルガマリー、藤丸は行い、アンケートを取らせた。
「えーと・・・どれどれ・・・」
内容はズバリカルデアで英霊が過ごすにあたって欲しいものの要望。今後も精神的な意味で安定してもらうためにも必要だと思うものを書いてもらい、その後英霊たちには休憩をしてもらい、あるいは銀嶺隊にカルデア内部を案内してもらって結果を待つ状況。
面接もそのリクエストを直に言ってもらうこと、マスターが可能なことを現在で理解していくことなどなど。それもひと段落して改めてアンケートをチェックするために冬利、咲、そして華奈たちのマスタメンバーで目を通し、可能かどうか調べていた。
「えーと・・・姐さん。今のところリクエストはこんな感じだよ・・・?」
リクエスト結果
ストーム1:自身の武器庫とは別のルームを1つ。その部屋には風呂付きであり、袋入りのインスタントコーヒーとカフェオレの備蓄も部屋にあることを望む。
メディア:フィギュ制作道具一式、プラモデルやガレージキット、ボトルシップをショップ、酒保? に追加。布、服飾や今後手に入る魔術道具作成に必要な道具は一部こちらに回してもらう。
クー・フーリン:シミュレーションルームの使用許可権。酒、たばこを少量でいいので都合してほしい。菜園の手伝いもしたい。定期的にカルデアの英霊との組み手を希望。
エミヤ:カルデアの食堂で今後も手を貸したい。食堂用のエプロンの準備、食品備蓄庫の専用マップデータを用意してほしい。可能であればストーム1の武器のデータも見せてほしい。
ジャンヌ・ダルク:祈り、ミサができる教会のような部屋、懺悔室も可能であればほしい。
ジャンヌオルタ:特になし。欲しいものはその場その場で言う。
清姫:花嫁修業のために食堂での手伝いをしてみたい。また、銀嶺隊の女性騎士、親の経験を持つ方への師事。マスターの部屋とはぜひとも隣室で。
ジークフリート:鎧姿では職員の皆様に驚かれる、怖がられるかもしれないので何らかの衣服を欲しく。あとは菜園で手伝えることがあれば参加を所望する。
紫式部:新しい書物の図書館への寄贈。華奈の部屋への裏口を用意してほしい。
「まあ・・・どれも問題ないですかね。物資の備えで改築も可能。嗜好品もまだまだありますし、酒や食料なら山ほどある。清姫様のは・・・・一応はクー・フーリン様の部屋を藤丸様の向かいにして備えとするとして・・・私の部隊から一人教えてあげればいいでしょう」
「ぜひともお願いします・・・」
「ミサも・・・まあ、私としては助かるわ。キリスト教のスタッフがいるし、こんな状況。何らかの安らぎ、支えは必要よ」
「神父も確か華奈の部隊にいたはずだし、一人回してもらえればいいか・・・? 食事に関してはボードで本日のおすすめとかを書いておくことでいいかな」
「衣服に関しても菜園用の服と私服を用意しておくべきですかねえ? やっぱり気分の切り替えとかの問題はあるでしょうし、あちらさんはこっちのブラックな状況に応えてくれてんだ。こっちも礼をわきまえなけりゃいけない、できる限りの要望には応えたい」
「ボトルシップなども部屋が手狭になれば図書館で飾れるかを聞きましょう。プラモやガレージキットも関連した本のところで飾ればいいですしね。教会も後ろのほうでワインでも作ってふるまえるようにも」
「姉上の本というのが私としては初耳ですが・・・まあ、聞くところによれば紫式部? も戦闘向きではないですしこれがいいでしょう。銀嶺隊も知識欲旺盛な方や本に触れる人が多い。図書館に足を運ぶ銀嶺隊の方でで警護もできるし今のところ難しい要求もないと」
今後もカルデアを支える英霊たちへの配慮と感謝。そしてその英霊を現世にとどめる楔であり主であるマスターたちは今後の働きに応えるためにカルデアの備蓄と相談しながら部屋の割り振りや運用のための案を練っていく。
というわけで召喚編はこれで終了。華奈と紫式部はサバフェスでのサークルで仲良しという感じです。同好の士。趣味友達という感じでしょうか。
後は華奈がわりと行動派、最初のころの周りの白い目にも負けずにモルガン、国のためにとしながら割と自分のしたいこともしている部分が気に入られるかも・・・? という感じです。申し訳ありません。イベントを見たときにぜひともこの組み合わせはと思いました。
カルデアに招かれる英霊もただ呼ばれて手伝うだけではなく現世を堪能してほしいとのことで今回の後半のアンケートです。銀嶺は割とリクエストが通っているので今回は割愛。アルトリアも特にリクエストもないのでこれまた割愛。ダ・ヴィンチちゃんは言わなくても自分でやりたいことをいつの間にかしていそうなので。
衣服とリクエストもあってメディアさんはおそらくカニファン的なノリで自室では過ごすと思います。そしてできた作品の一部は図書館で飾られる。
ストーム1のリクエストは行軍時に現地の水を飲まないといけないときにインスタントコーヒーにすれば飲みやすくなるからということです。フランスでいきなり離れて行動した上に万が一カルデアからの物資が来ない場合の備えの一つです。自分が呼ばれたときに持ち運ぶために。
教会の後ろでビールという意味はヨーロッパの修道院のほとんどは6世紀ごろにはビールやワインを作る場所が多く、そういった意味でも作ったほうがいいかなということです。
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。