転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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華奈(しかしまあ・・・何でへし切長谷部をこの方が持っているのでしょうか? たしか、黒田官兵衛様にお譲りしたはずですが・・・それより前が全盛期ということでしょうかね。そしてまあ、この方も来てくれると・・・)

魔人アーチャー「ん? どうした。華奈先輩よ。わしに何か興味でもあるのか?」

華奈「先輩? まあ、いいですが・・・いえ、なぜこの刀が貴女様のもとにあるのかと。黒田様、ないし秀吉公にお譲りなされたのでは」

魔人アーチャー「ああ、これね。わしが持っていた刀でもいいもんだし持ってこようかとな。不動国行もよかったが、あの切れ味を実感するとなー」

桜セイバー「アーチャーのところは本当にいろんな名刀、名物ぞろいですよね。どうせアーチャーなんですから私に分けてくださいよ」

魔人アーチャー「たわけ。あの名刀をどんな刀でも割りばし感覚でべきべき折る人斬りサークルの連中になんぞ渡せるか! 渡すにしてもしっかり手入れと管理ができるやつ、そしてわしのもとで手柄を立てたやつじゃ!」

ストーム1「おっと。みんなストップだ」

アルトリア「ええ、軍の気配ですね。これ以上はアーチャークラスがいれば見つかるやもしれません」

華奈「ですね。しかもまあ、数が多い感じです。今は夜・・・・・ストーム。周辺に湖、池、川はありますか? もしくは小高い丘でも」

ストーム1「あるな。小さな池と、林。あとは谷とかがいくつか」

華奈「では池のほうに移動して観察しましょう。これを。銃の金属に反射されても困りますしね」
(双眼鏡を渡す)

ストーム1「了解だ。それと動物たちも一度下げたほうがいいかもな。魔獣の気配で感づかれるかもしれん」

良馬『ええ、今観測しましたが、英霊が少なくとも3騎それと・・・2万以上のあの変わった生物の反応があります。うち1騎は冬木で出会ったランサーに反応が近いかと思われます』

ロマニ『今のところ、どうも野営の準備をしているみたいだ。反応を見ても近い場所を行ったり来たりで天幕や、炊事を行っているような動きも見受けられる』

華奈「では、ますます必要時以外は出さないほうがいいですね。皆さんお疲れ様でした。帰ったらご飯を用意しますね?」
(栗毛、ハチ、花子、黒介、マチコを一度出現状態を解除)

藤丸「うへぇ・・・凄い光景・・・」

ジャンヌオルタ「あれが妖精ならいいけど・・・いや、妖精も危険だったりいたずら好きもいるし同じかも・・・はぁ、あれ全部は骨が折れそうね」


煽ってナンボ

 特異点に入り、早速軍と思わしき部隊の気配を観測できたカルデア。近くの小さな池を前にした林の中に身を潜め、双眼鏡で周囲を観察する。

 

 レンズが月明かりに反射してばれるのを防ぐためにもとより光を反射しほうだいの池、身を隠すための林となかなかの好条件だがやぶ蚊がひどく。仕方なしにカルデアから虫よけクリームと術式を用意しつつ見ればなるほど大軍勢。そして指揮系統も問題なくとれていると来たものだ。

 

 「あの奇妙な生物を手なずけて軍隊化しているようですね。確かに火縄銃も所持していますし、肉弾戦もそれなりにできていたみたいですし、戦力としてはちょうどいいと」

 

 「何と言いますか、あれほどの数がそろって、食事や陣地を用意しているのを見ると本当に知性があるんだとわかります」

 

 ノブ、ノブーと会話らしきものをしつつ動き回るナマモノの軍隊に少しなごみそうになるもカルデアでの襲撃や、警備にあたっているナマモノ、もといちびノブたちは刀や銃を持っているゆえにどうしたって危険なものなんだと気を引き締める。

 

 「で、ロマンじゃったか。良馬じゃったか? 英霊、まあこやつらを束ねる将を知りたい。こやつら装備にさほど差がないし、組頭も見分けが面倒じゃ。早いところ大将首を狙って指揮系統の麻痺からの壊滅を狙いたい。さっき言っておったろう?」

 

 『ええ、とりあえずですが、そちらに近い軍隊・・・やや後ろでしょうか。に英霊が2騎。そして、もう少し先の、この軍の先頭にあたるところに1騎います。おそらくは先鋒。後ろは少し強めのちびノブの反応がありますが、それだけでまあ後詰めのようなものでしょう』

 

 『問題なのは、それの3騎どちらもなかなか大きな反応。強い英霊みたいでね。しかも1騎は確定している。華奈が10年前に冬木で戦ったランサー、武蔵坊弁慶だ。何やらみんな別の要素、ないし因果が混ざっているけど、どのみち日ノ本の有名な英雄がいると考えてほしい』

 

 冬木で戦った。藤丸らも遭遇したシャドウサーヴァント、武蔵坊弁慶。子供でも知るあの有名な僧兵レベルが少なくとも3騎。しかも対処法を知るほうは最も陣が分厚い中軍におり、しかももう1騎いる。

 

 少しまずいかと華奈、ストーム1は冷や汗を垂らす。華奈は10年前はソロモン、銀嶺隊合わせての剛柔織り交ぜた戦術、戦略ともに圧勝しての勝利だが、今は銀嶺隊は守りにおき、無力化すれば即王手のマスターもいない。多勢に無勢、どう戦おうかと頭をこねくり回し始める。

 

 ストーム1は弁慶のその強さと武器にまつわる逸話。そして最後のあの戦いぶり。シャドウサーヴァントとは格が違うし、フルスペックの再現なら自分の最高火力をぶつけても耐えられるかもしれない。その間に敵の波にのまれる。火力重視にしてしまうとそれこそ巻き込みや誤射が怖い。

 

 自分とマスター、アルトリアは脱出手段はあるが、残りはそれがあるかわからない。となれば弁慶がいる上で不用意に大将首だけ狙うのも悪手。武装こそ大軍仕様にしているが、さすがに万を超える規模となれば華奈の宝具とアルトリア、そして魔人アーチャーと名乗る。あの帽子の紋でおそらくは織田信長。彼女の力も借りてようやくかと結論付ける。その中でとにかく生き残るための最善手を思考。

 

 二人が戦略を練っていると軍の将であろう弁慶とその主であろうか。鎧を着こんでいる年若い女武者・・・非常に露出度の高い姿で胸も上から鎧で隠すだけ、パンツも見えていれば下から着こむ服一枚もない。左右に分けた前髪に長い黒髪。すらりと伸びたスレンダーな肢体。もう必要最低限をさらに切り詰めた防具で鎧のない部分は自分の腕で避け切るという考えだろう。ただ、笑顔の裏には気負いも飲まれている様子もなく場慣れがあり。経験を積んだ戦士だとわかる。その二人が何やら話し始め、一同耳を澄ませて聞き始める。

 

 「野営の準備もできましたね。では、ベン・・・雪斎、宴の準備をしましょう」

 

 「はは、宴はいいですが殿。軍の斥候からの情報もまだ完全ではありません。兵を伏せる場所もありますゆえ、油断なさらぬよう」

 

 「それくらいわかる。しかしこの場所は大軍も通りづらければ間道も全て押さえている。下手に主の私が緊張し続けてはそれが軍に伝わるというもの。それが続いて目的の前に軍全体が疲弊しては元も子もないだろう?」

 

 良く通る声で雪斎となっている弁慶に話しかける女武者。会話の端々からもこの場所の地形と軍の現状を頭に入れているらしく、軍略にも明るいのだろう。そして弁慶が主と慕う相手。多少の変化こそあれ、おおよその見当はついてくる。源義経。決定はできないが、今のところはそう仮定するべきだろうと考えておく。

 

 「ノブノブー!!」

 

 「ほら、この生物もそういっています。べ・・・雪斎は心配性ですね。それでは皆がつかれます」

 

 「はぁ・・・・・・・大事にならなければいいのですが」

 

 会話をひとしきり聞き、おそらくは宴で当分は動かない。むしろ人が集まるので明かりも増えて自分らが見つかるかもしれないので双眼鏡を下げて林の奥深くにこっそり移動。英霊の気配をおおよそ把握しておき、観測はカルデアに任せて作戦会議を開催。

 

 「しかし、あれがカルデアのデータにある英霊の弁慶だというのに雪斎と呼ばれていましたし、何やら変な因子が混ざっているのでしょうか? 様子も変ですし」

 

 「大軍用にフェンサーで一つ用意してきてはいる。が、弁慶がいる上に宴で下手すれば幹部クラスも来るとなると少し厳しいな。粘られるほどにもう1騎の英霊が来る可能性が高くなるし、間道や伏兵まで考慮されちゃあ不意打ちもどこまでうまくいくか」

 

 「正面突破でもさすがにこの数では多勢に無勢ですし・・・どうしたものか・・・」

 

 「私も少し勉強したけど、あの粘りと戦術こなされたら厳しいわよ? 日本でも最高レベルの知名度で強いんでしょう?」

 

 どうしたものかと頭をひねらせるマシュ、沖田、藤丸、ストーム1、ジャンヌオルタ。それとは別に一応の作戦を練った華奈、アルトリア、魔人アーチャーは声をそろえて言う。

 

 「「「夜襲と混乱しかないじゃろ!(でしょう)(ですね)」」」

 

 『一応聞くけど、何をする気なんだい? 三人とも・・・』

 

 少し心配そうなロマニの声とは別に驚く面々。その心配を払しょくするために木の枝で地面に絵を描いていく華奈と石ころを用意するアルトリア。

 

 「まず、私たちは宴が始まるまで待ち、ここから離れます。間道や伏兵のある場所を警戒、抑えられているというのなら宴で人が離れたすきに移動して警戒された場所からの攻撃をしないでおきます」

 

 「そして、正面からマシュ様、ストーム、私、桜セイバー様で真正面から攻め込みます。ストームはフェンサーで、あれを用意してください。機を見て使います。相手の相性次第では一気に軍を削れることでしょう」

 

 「で、わしと残りのメンバーは後ろから回って後軍を叩く。前に後ろにと引っ掻き回して酒気とまさかの真正面からの殴り合いに挑んだ連中を圧殺。下手に軍を立て直すとするのならその兵力をそいで最後に皆でたたく。英霊として暴れるのならわしと華奈先輩、アルトリア先輩、ストーム1先輩でどうにかなるじゃろ? あのメカとか武器で」

 

 まさかの少数で万を超える軍を挟み撃ちで倒し切るというとんでもない作戦に出始めたことに一同目を見開く始末。

 

 『待ってください。それはさすがに賭けが過ぎるのではないでしょうか? いくら船坂さんとアルトリアさん、魔人アーチャーさんとはいえこの少数では・・・』

 

 「そ、それに相手もそれを考えているんじゃ・・・」

 

 「私もストーム1さんに華奈さん、桜セイバーさんは頼もしいですがさすがに簡単な陽動くらいしかできないかと」

 

 不安そうな声を出し始める声を一通り聞き、そのうえでまた話を続ける。

 

 「まあ、それもそうなんですが、相手は大軍はすぐに来ない。来てもわかる場所にいて、それ以上に心配しているのは細い間道やこの場所のような林。それを雪斎・・・弁慶? は心配しているわけです。だから、どうせここから奇襲しても高い可能性の一つとして考えられちゃっているわけです」

 

 「そうであればあえて真正面から少数精鋭でぶつかり、背後を突く。そうすれば敵も戦力を差し向けるでしょうが、同時に少数での攻めに不信さを覚え、別の地点からの奇襲に気を配ったりするはず」

 

 「意識が第三の奇襲に向いているその間にもわしらで敵の頭数減らして指揮系統を麻痺させ、最終的には逃げづらいこの細い場所で一気に宝具でプレスしておしまい。上級、中級指揮官が酔っ払って、しかも左右に兵力をあたふたさせている。いい作戦じゃないかの? 逃げる際も華奈先輩の魔獣にこっちは足止めの技も多い。分散して逃げれば生き残る確率も高いじゃろ」

 

「・・・本部の無茶ぶりよりもマシか。マスター。渡す武器と作戦のための俺の装備の打ち合わせだ」

 

 反対の声が出ないことを賛成ととらえて改めて作戦のための閣員の動きの再チェック。それと同時に宴が始まるかどうかを確認しつつより林の奥に移動。カムフラージュも念入りにしてその後は散開。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「一番槍は私がもらいます! はあぁっ!」

 

 桜アーチャーの袈裟懸けでちびノブがやけにかわいい悲鳴をあげながら消滅。それを合図に敵の視線がその桜色の剣士の目に集まり、ざわざわと声が広がる。

 

 「マシュ・キリエライト続けて突貫! 敵の無力化を行います!」

 

 その驚愕の間断を縫って巨大な盾がちびノブを数体吹き飛ばし、横殴りで後ろの列まで崩す一撃を振るう。右に左にと地面に足がつくのを確認できないほどに軽やかに舞いながら刀を振るう桜セイバーとマシュ。その二人の攻撃にちびノブ軍団の先鋒は前列を多少崩されるが即座に立て直し、押し込もうと動く。

 

 敵の動きが変わった瞬間マシュの盾の裏になにやら黄色い光を放つ小型ビーコンらしいものがマシュの後ろから飛んできて張り付き、至近距離にいる桜セイバーにも効果を及ぼして流れ弾、刃ですら袴を傷つけきれず、マシュも数をものともせずに除雪車のごとく敵軍を押しのける。

 

 「この今川軍に夜襲とは何奴だ! たった二人とはいい度胸だな!」

 

 混乱の治まらないちびノブたちの中からマシュの盾めがけて一矢が飛び、マシュが後ろに押されてしまうほどの衝撃を与えてちびノブから引き離してしまう。その射手はちびノブたちに落ち着いて対処するように指示を飛ばし、同時に何名かを伝令として後ろに走らせる。おそらくは本陣に伝えに行ったのだろう。

 

 「ぐ・・・アシストあってまだ手がしびれる・・・?」

 

 「マシュさんの守りが押される!? でも、私たちだけじゃないですよ」

 

 桜セイバーの声と同時に闇夜をつんざく銃声と無数の弾丸がちびノブたちを撃ちすくめて数を減らしていく。銃声は大きく分けて二つ。だが、それでも同時に4,5発は同時に飛んで敵を攻撃していく。

 

 「へえ・・・この今川よしつね様の軍、そして先鋒の東洋1の弓取り、松平アーラシュに挑み、さらには射撃戦で挑むたあますますいい度胸だ俺が直接成敗してやろう。

 

 皆、敵は少数だが強敵だ! 油断するなよ。それと、下手に俺たちが配置をずらせばその間に殿たちに刺客、軍が押し寄せるかもしれん。少数の敵は俺たち前軍だけで対処するぞ!!」

 

 かがり火と月明かりのもとに現れるは短めの黒髪に黒い瞳。やや深めの黄緑色の鎧に身を包み、見事な赤い弓を手にした好青年。表情も好感を持てるもので、彼の指示にてきぱきと従い混乱を収めていくちびノブからも信頼の深さがうかがえる。

 

 「へぇ・・・かの大英雄アーラシュ、そして、今川の松平と言えばあの松平か・・・ますます油断できないな」

 

 松平アーラシュの出現に応えるようにストーム1もフェンサーの状態でゆっくりと出てくる。右手に大盾、左手に巨大な砲を手にして油断なくマシュと桜セイバーの前に立って構えて仮面の下で気合をみなぎらせてゆく。

 

 「お前が射撃手の一人か。いい腕していたが、射撃を続けずに素直に出てきたのはいい判断だ。いずれ俺が射抜いていただろうからな」

 

 「そうだなあ。でも、こうなりゃあお前さんでも俺は倒せないだろうなあ。東洋1の弓取りは危険だからここで倒させてもらうぞ」

 

 「その気合やよし! 俺も全力で倒してやる!」

 

 互いに武装を握る手に力が入った瞬間にゴングは鳴り、鉄塊が空を舞い、それを撃ち落とさんと弓の雨が風を切る。

 

 「私も・・・こふっ!?」

 

 「えええええ!!? さ、桜セイバーさん!? 吐血!???」

 

 ストーム1に加勢しようとした桜セイバーが突如吐血。さっきまでの動きが嘘のように鈍ってばったりとぶっ倒れてしまう始末。急すぎる桜セイバーの不調にマシュも目を白黒させて加勢せずに桜セイバーの前にかばうように盾を構えて桜セイバーに肩を貸す。

 

 「す、すいません・・・私・・・こう突然血を吐いて倒れちゃうことがありまして・・・敵前で無防備になったりしてしまい・・・」

 

 「え? あ、ちょ! この中でそれは致命的過ぎま・・・・」

 

 「後ろに投げなさいマシュ様! 思いきり遠くまで!」

 

 ストーム1のおかげでどうにか回り込まれてはいないがさすがに弱った仲間を抱えながらの戦闘はできない、けど、急な後退もできないしどうしようと混乱がマシュの頭を支配する前に華奈の声が響き、声のする方向、マシュの後ろにぶん投げろと指示が飛ぶ。

 

 「え、いや、相手はアーチャー・・・! 了解です。桜セイバーさん! 失礼します。やあっ!」

 

 「え、あちょっ・・・うぁわああぁあああ!!!!?」

 

 敵の火縄銃と松平アーラシュの射撃範囲外には無理だという前に意味を理解したマシュは盾を背負うようにして両手を開けるとすぐさま桜セイバーを両手でしっかりとつかんで思いきり、英霊の力もフル活用して放り投げる。

 

 桜セイバーは低空飛行の軌道を描きながら闇夜に吸い込まれてやがて皆の視線から消え去り、声も消え行く。松平アーラシュ達もすぐに撃ち落とそうとするもストーム1が松平アーラシュに急接近して射線をふさぎ、マシュもすぐにその飛んで行った方角に矢玉は通さないと盾を構えて二重のシャットアウトを行う。

 

 「ふう。前もってここの龍脈を理解できていてよかったです。大丈夫ですか? 桜セイバー様」

 

 その先に縮地で移動していた華奈が回転しながら飛んできた桜セイバーを優しくキャッチ。勢いを徐々に殺しながら受けとめるとすぐに桜セイバーを抱えて再度縮地で移動。飛んで来た軌道にめくら撃ちでもやられてもらうのはごめんだと茂みに隠れて次の狙撃ポイントに移動。

 

 「す、すいません・・・血の味は慣れているのでいいのですが・・・ぐるぐる回って飛ばされて気分が・・・うぅっ・・・!」

 

 「え、あ・・・・! 待ってください! ふぅ・・・・・えっと・・・作戦変更。タイミングをもう少し遅らせてください。楽になるかもしれません」

 

 ただまあ、手荒い緊急避難にふわついた感覚と目を回して気分を悪くした桜セイバーに慌てる華奈。その後、深山を使い場所を用意して事なきを得たとか。それとついでに、後軍を叩こうとしていた藤丸らに指示を飛ばす。

 

 

 

 

 

 「くそっ・・・・! ここまで硬い兵ってのは未体験だ! 俺の矢が通じないだと!?」

 

 「いやぁ・・・ゾンビ映画をよりシュールにしたらこんな感じなのかねえ」

 

 「っ・・・! アシストガンのサポートがなかったらさすがにきつい・・・・!!」

 

 それ以降、戦場は拮抗状態が維持されつつあった。そのストーム1は鈍重極まる見た目に反して空中すらも飛び回って縦横無尽に戦場を駆けては一回の射撃で無数の弾丸を発射して射撃した周辺のちびノブをごっそりと消滅。たとえ射撃でとらえても大盾はびくともせず、近接戦闘自体ができない。

 

 マシュもガードアシストの防御力を向上させた状態と先ほどとは違う場所から華奈の援護射撃が包囲しようとするちびノブをけん制し、その間にマシュ自身が包囲の動きを見せるちびノブを打ち砕き、個別に処理していく。守りに特化したマシュにストーム1は一撃一撃が重い松平アーラシュの攻撃をさばき、さらにはアシストや機動力を活かした戦術で部隊ごと翻弄していく。

 

 相手が武将とはいえ先鋒だけでも数千はいる。それがたった5人。前もって仕掛けや罠があるわけでもないのに攻めあぐねるという状況に松平たちは焦りの色が見え始める。

 

 「東洋1の弓取りも今川の先鋒も大したことなさそうだな! 俺たち4人、一人戦線離脱したのにその数でずっと射的ゲームを外していると来た!」

 

 「え、えーと・・・この様子ではどうせ他の勢力にすぐにつぶされて終わる弱小勢力でしょうね! 本陣まで私たちに手を煩わせればまさしく天下の笑いもの! 自慢はその数だけですか!?」

 

 マシュ、ストーム1の挑発に図星を突かれてさらに焦りが増す。これから幕府再興を目指す軍が途中で強いとはいえ数人の相手に手間取り、本陣まで動かして対処したらたとえ勝ったとしてもその噂で配下の兵卒たちは大したことがない、弱いと考えるし、周辺勢力にも舐められ、襲撃されるきっかけになりかねない。

 

 (やばいのは武田・・・へたすりゃあ、俺たちを真っ先につぶしにかかる)

 

 油断できない勢力はすでにいるし、その勢力には機動力もある騎馬隊がいる。今は伝令が内容を伝えたおかげで本陣も警戒態勢を上げて備えてくれているし、後詰も臨選対背に入ったと聞く。ただ、少数ゆえに背後やほかの場所からの奇襲を警戒して斥候、索敵を使いながら動かない。すぐに追い返せるとたかをくくって動かないのだ。

 

 そうなれば今は早急に先鋒の自分達が敵を排除してその軍で警戒、もしくは場所を移動するための先駆けとなるべきだと松平アーラシュは思考を巡らせ、自身が持つ手段で最適解をたたき出す。

 

 「よしつね様には悪いが・・・・ここで見せてやろう! 俺の全身全霊の一射で降りかかる火の粉を吹き飛ばす!!」

 

 ちびノブたちでは相手にならず、数で押そうにもうまくいかずにむしろその動きを片っ端から狙撃手に対処される。大将たちは動く様子がないし、時間をかけすぎるのもいけない。そして、狙撃手を狙うにも目の前の英霊2騎が壁になるし、このままではこちらの戦力が削られるだけ。

 

 なら、一撃ですべてを吹き飛ばし切る。弓を限界まで引き絞り、あらん限りの力を込める。その魔力の奔流は聖剣開放にも勝るような勢いを見せ、まるで地上で花火が起きたような輝きを放つ。

 

 「・・・・やべえな!」

 

 「でも、これは・・・・・!!」

 

 「今更逃げられると思うなよ。おれの弓の射程は2500㎞! 後ろの狙撃手も退場したやつごと一網打尽!」

 

 その輝きは強さを増し、思わず目をつぶりそうなるほど。しかし、その中で華奈はむしろ笑みを深め、藤丸に合図を通信で伝えて令呪を切る。

 

 「令呪をもって命じる! ストーム1、その渾身の一撃を受け止めなさい! 続けて命じる。必ずその一撃をもって敵軍を壊滅させなさい!!」

 

 「令呪をもって命じる。マシュ! ストーム1さんと連携してその一撃を凌ぐんだ!」

 

 二人による令呪のバックアップによる後押しによる力の底上げを受ける二人。ストーム1も武装をもう一つのものに切り替え、大盾とは別の盾を構え、マシュはその前に立って盾を構える二重の防壁を展開。

 

 「流星一条(ステラ)アアァァアァアァアアアアアァアァアッッ!!!!!!」

 

 目の前の障害すべてを吹き飛ばす規格外のエネルギーが弓から放たれ、その光にマシュ、ストーム1は逃げることなく立ちはだかり

 

 「行きます! 仮想宝具・疑似展開/人理の礎――――!!!!(ロード・カルデアス)

 

 宝具を展開。より強化された光の防陣を構えていくが

 

 「あ・・・・ぐ・・・もた・・・きゃああっ!!?」

 

 その途方もない一撃には耐えきれずに光の防陣はすぐさま砕けしまい、マシュはこの爆風に射線上の横に吹き飛んでいく。しかし、その途方もない一撃でもマシュの宝具は確かにこの流星の勢いをそいでいる。さらにはそこにストーム1が二つの盾を構えて前に進む。

 

 「お前さんらの矢だからな。返すぞ!!! ぬぅうお・・・!」

 

 大盾よりも小さな盾はその巨大すぎる一撃をそのままそっくり跳ね返してしまい、すでにその威力の代償で退去した松平アーラシュの軍、そして本陣、後軍全てを流星は飲み込み、吹き飛ばし、過ぎ去った後は衝撃波で吹き飛んで伸びているちびノブ、そして、後方にいたことで威力が軽減してどうにか生き残れたちびノブ。それとなぜか大量に散らばっている茶碗や茶器が転がる。

 

 「くっそ・・・シールド保護装甲とか使ってこれか・・・リフレクト・・・いやフェンサーはしばらくは使えないな・・・」

 

 これをはじき返したストーム1の装備、相手の攻撃を跳ね返す盾も二つ用意し、補助装備も用意したがそれらすべてが壊れ、フェンサーのパワードスーツシステムも少しばかり悲鳴を上げている。あのアーラシュの一撃を受け止めたのだから当然ではあるが、予想外の被害と考えてしまう。

 

 「隕石とか、電信柱よりでかい針とかも大丈夫なのによ・・・おーい、マシュちゃんよー。大丈夫かー」

 

 「だ、大丈夫です・・・いつつ。まさかの相手でしたが、どうにかなりましたね」

 

 吹き飛んだ衝撃のせいか少しふらつきながらではあるがマシュも傷一つなくストーム1のほうに歩いて近づき、笑顔で答える。

 

 「マスターももう少しでくるし、治療してもらうか。それと、晩飯のリクエストをすればいい。MVPはマシュちゃんだしよ」

 

 「そうでしょうか? でも、そうですね・・・ありがたくもらいます。グラタンとか、頼んでもいいでしょうか?」

 

 「おー頼め頼め。ここだと川魚、池の魚も狙えそうだし、そういう料理もいいかもな?」

 

 フェンサーからレンジャーにチェンジしてマシュの頭をわしわしと撫でるストーム1。マシュもそれに驚きつつも少しうれしそうに受け入れ、同時に別方面に意識を向けておく

 

 「先輩、大丈夫でしょうか?」




~今川軍・本陣~

よしつね「この大軍が一瞬・・・・ば、幕府再興の夢が・・・・・・申し訳ありませぬ。兄上・・・・」

雪斎「油断、した結果がこれか・・・今回は立ったまま失礼・・・」
(二人とも退去)



~奇襲待機組~
魔人アーチャー「おー・・・リフレクトで敵の銃弾跳ね返して押しつぶす戦法とは言っていたが、これ、予想外すぎない? わしら出番ほぼないんじゃが、じゃが?」

ジャンヌオルタ「アーラシュ・・・えーと・・・たしか弓の名手の中でいの一番に名前が上がるレベルの大英雄・・・確かにこれ一塊りになっていたほうが怖かったわね」
(英霊ピックアップ図鑑(クラーク監修))

藤丸「とりあえず、これがいまこっちに飛んで行ったってことは作戦成功。何か緊急事態の報告もないし・・・・よかった・・・」

アルトリア「姉上にマシュ、ストーム1も無事でよかった・・・・・・・さて、私たちは・・・」

魔人アーチャー「うむ! 切り取り勝手! 勝者の特権じゃな! ほれ、ジャンヌオルタ、火をつけい! わしはこれじゃ!!」
(無数の火縄銃をセット)

ジャンヌオルタ「はぁ・・・どうせなら火牛計が良かったけど・・・いいか」
(無数のたいまつに火をつけていく)

藤丸「えーと、たしかこれ・・・!」
(銅鑼を鳴らす)

ジャーンジャーン! ジャーン、ジャーン!

ちびノブ1「ノブッ!?」

ちびノブ2「ノブブブッ!?」

アルトリア「かかったなアホがっ! というやつですよ! エクスカリバー!! 連発のサービスです!!」
(エクスカリバー乱射)

魔人アーチャー「そおれ! 鉛玉をごちそうじゃ!! 高いんじゃからしっかりと受け取れい!!」
(出せる限りの火縄銃をすべて打ちまくる)

ちびノブ3「ノブァッ!!?」

ジャンヌオルタ「さあ! さっきの爆発? で主も指揮官もいない上に貴方たちはこの無数の軍とまだ戦う!? それとも、降伏、何もせずにおとなしく去るか選びなさい!! あいにくと選択時間は短いわよ!」

ちびノブたち「ノブゥ・・・・・!」
(残ったメンバーたちが頭を下げる)

魔人アーチャー「よし、ではしばらく沙汰を待て・・・といいたいが、そこらへんに落ちている道具やらを集めてもらうぞ。使えるものを集めるのじゃ! 戦の物資を無駄にするでないぞ!」


~ストーム1、マシュたち~

華奈「はぁー・・・・・お疲れ様でした。ストーム。マシュ様。派手に壊れましたねえ。しばらくフェンサーは修理で使えませんね」

ストーム1「いい意味では一撃で残りも全部吹き飛ばしたこと。悪い意味では今後の選択肢がしばらく減ったことか・・・ま、それも問題ないだろ・・・・何か・・・いや、何でもない」

マシュ「お疲れ様です華奈さん! 桜セイバーさんも無事でよかったです! あ、あちらでも奇襲が始まったみたいですね」

桜セイバー「ぁあ・・・・最初はかっこよかったのに・・・かっこよかったのぃい・・・」
(華奈におんぶされている)

華奈「次頑張りましょう。ええ、いいかがり火の置き方です。あれなら数百、千くらいには見えるでしょうね。敗残兵をまとめて、空の陣地でも作って空城の計にでも見せて虚を突こうか。それとも・・・ふぅむ」

ストーム1「ちょっとした行商隊でも作って相手の情報探ったりとか、物資を探すのもいいかもしれねえな。とりあえず合流しつつ、マシュちゃんの治療よろしく」

華奈「了解です。では、マシュ様歩きながら失礼」




信長公の配下ですごい巻き返して出世したなあと思うのは秀吉公以外にも前田利家だと個人的には思っています。「笄斬り」(信長に仕えていた茶坊主を切り捨てた事件。利家の笄をちょろまかしたという説もあるとかなんとか)事件で信長公に激怒されて追い出されて浪人となるもその後手柄を立てて帰参。馬廻り、いわゆる親衛隊の将を務めるのですからすごいです。

今回の作戦は華奈たちで先鋒を刺激→意識を向けさせる→後ろからアルトリア、ジャンヌオルタ、魔人アーチャーと大ぜいを狙える宝具で一気に叩く→挟撃で互いに押しつぶし、軍が崩れるなら英霊だけ狙う、軍で来るならストーム1はリフレクトで相手の遠距離攻撃をすべて利用する。という感じです。

まさかの超ド級の一撃を利用できたので作戦完了しちゃいましたが。

マシュとストーム1は仲はいいと思います。盾サーヴァント同士ですし、ストーム1も気さくですので。

今回ストーム1が使用したのはキャノンショットという大型散弾砲ともいうべき大砲といわゆる反射盾。EDF5からは使いづらいそうですが4、4.1などではクモなどの攻撃をはじき返して相手を倒すという戦法もありました。宝具の威力に今回はしばらく使えないという結果になりましたが。


~サバフェス作品紹介~

『魔獣観察日誌』 ジャンル エッセイ 巻数 8巻 完結

 銀嶺隊を支える魔獣たち。ただ、それ以外にも魔獣の部隊はオークニー領内にもあった。コーウェン将軍がその第二の魔獣部隊の結成にブリーダーと一緒に食事の好みや寝床の用意と四苦八苦。でも、なつくと怖くて強いはずの魔狼や魔猪がかわいく見えてきた?
部隊の子供たちやオークニー内で世話した話、日記をもとにコミカライズ。

お風呂を好んだり、思わぬ高級食材に泡拭いたり、チェスを勝負して魔狼に負けたりと新しい発見と触れあいにいつも新発見。世話する側もたいがい変人ばかりで。ほのぼの動物育成日記。




『ともあれラクを一杯』 ジャンル グルメ  巻数 10巻(別サークルからのもらい物)

 ある国でこじんまりと営まれる酒屋。その店主ケマルはラクが大好きでついついお店のおすすめに良く出したり、サービスしちゃうほど。必然この店に集うお客はラクを楽しみ、だれもが味わうようになる。つらい話も、楽しい話も、悩みも何もかもまずはラクを飲んで語らいましょう。心をほぐすための飲み物に場所、顔なじみであろうがなかろうが話しやすいお客さん。

小さな世界に集まって今日も語ろう。心に水を注ぎこみ、ハリと潤いを補充して明日も頑張ろうと思える評判の小さな居酒屋のとりとめもない話。



『キャプテン今川』 ジャンル スポーツ 巻数 38巻 (別サークルからのもらい物)

 多趣味で甘やかされていた今川 真。親の死によって中学に上がったばかりで親族をたらいまわしにされ続ける日々を過ごし、最終的に幼馴染の徳川のもとに預けられ、何をしていいかわからないために呆然と日々を過ごす。そんなある日それを見かねた親同士の付き合いで仲良くなった北川、親友の朝比奈、大沢に大好きだったサッカーをやろうと持ちかけられる。

 目標は全国規模の大会織田杯! しかも同世代ですでに飛鳥井をはじめとした全国でも有名な選手が10人もそろう黄金時代、最高レベルの大会になるという。目標が見つかり、火が付いたメンバーでサッカー部に入り、目指すは黄金世代との試合、そして勝利! 泥臭く、けど確かな絆と青春を描いた本格的サッカー漫画! おまけコーナーでは作者の落書きやミニ漫画もあるよ。



次回は華奈が少し暴走します。いろんな意味で。

それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。

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