転生愉悦部の徒然日記 作:零課
荊軻「戻ったぞ。華奈、ネロ陛下はいるか?」
ネロ「おお、荊軻よ戻ったか! して、しっかりと手にできたか?」
華奈「あら。お疲れ様です。一度目を通しても?」
荊軻「ああ、いやはや、渡されたカメラ? というものは便利だな。魔術師から見ても疑われなければ、こうも鮮明に絵図を作る資料にもなる。ああ、それとだ華奈。指輪。ありがとう。おかげでばれずに済んだ」
(指輪と巻物をいくつか出す)
ネロ「ほうほう・・・なるほど。よくわかったぞ。よし、伝令! 諸将を呼べ! 軍議を始めるぞ!」
華奈「ジャンヌオルタ様はそのまま前線に待機させておきましょう。作業が気になるでしょうし。ストームは・・・これならエアレイダーでいいでしょうか」
藤丸「俺は・・・うーん・・・陛下の護衛かな?」
マシュ「そうなるでしょうか。でも、少しこれは目が回りそうですね」
ネロ「なあに、これくらいはまだ序の口、戦場に出てからもっと目を回すぞ? 華奈よ。ジャンヌオルタの頼んだ兵士の数は用意できてはいる。後は物資に・・・生木も多いようだが、大丈夫か?」
華奈「ええ、これくらいがちょうどいいでしょう。それに、これも必要だから選んだはずです。彼女を信じましょう」(近衛兵と藤丸様、ブーディカ様でネロ陛下の剣と盾にできるように話してきましたが・・・嫌な感じがします・・・ふぅむ・・・あの子たちも動いてもらえないか打診しましょう)
~前線~
ストーム1「ふむふむ・・・じゃ、今回はこれで。後は軍曹たちにはこれを渡しておくとして・・・エミヤにもだな。今回はどこもかしこも忙しくなりそうだ」
軍曹「助かる・・・これなら十分に動き回れるだろう」
ブルージャケット「今度こそ俺たちの実力を見せつける時だな!」
アルトリア「この作戦だと、姉上も暴れますか。銀嶺の魔術部隊が倒れなければいいですが・・・」
~とある野営地~
アレキサンダー「・・・来るね。何かそう感じるよ」
孔明「この空気はまさしく。何度か感じた決戦の空気。武人でなくてもそれくらいなら」
アレキサンダー「でもさ、この布陣は並みじゃない。どこから動こうが予備隊や救援に絡めとられるようになっている、先生のアレンジを加えたもの。僕でも打ち崩す攻撃をちょっと思い浮かばないほど固いのに、どうするんだろうね?」
孔明「・・・空だろう。数日前、何か変なものを感じてみれば大型の・・・空を駆ける乗り物でこちらの陣容を見ていた。それと数日間あの大王を食い止めていた少数の精鋭たちが地上からの目でもこちらを確認すれば・・・強引な突破もできるでしょう」
孔明(それに・・・かすかにだが感じた気配・・・もし予想通りであれば)
アレキサンダー「じゃ、僕たちの防御網は丸裸ってわけだけど、どうするの?」
孔明「安心ください。長き人類史の戦いの歴史にはそういう事態や視点の数にも対応できるものはあります。王のやりたいことこなすことも微力ながら手を貸します」
アレキサンダー「先生がそう言うなら問題ないね。まずは兵の移動から始めるんだっけ」
孔明「そうですね。とりあえず、ここにいては何もできなくなるでしょうから」
~中央軍 野営地~
華奈「・・・こんなところでしょうか」
配置
左翼 アルトリア ストーム1 ブルージャケット隊 スパルタクス
中央 華奈 沖田 ジークフリート 藤丸 マシュ ネロ オルガマリー ジャンヌ エミヤ クー・フーリン アンナ ヤマジ ダンカン クラーク 荊軻 呂布 ブーディカ
右翼 ジャンヌオルタ ストーム2 紫式部 信長 清姫
後詰 キャット エリザベート
「さ・・・てと・・・配置はこれで良し。なのですがねえ」
鎧を外して軽くストレッチをしつつ華奈はこれから突撃する敵の砦、簡易要塞、両翼の大樹の城の防衛陣地を眺めて思案を巡らせる。はっきり言ってこれを踏み込むのであれば各軍に今の軍の五倍の数は欲しかったが、正直な話これ以上の時間を相手に与えるのはむしろこちらへのマイナスも大きくなる。敵軍の粉砕と失地回復の衝撃と兵力の回復のバランスが釣り合うのはこのくらい。これ以上攻め込むのを先延ばしにしてはむしろ連合ローマの兵力の回復と砕いた士気の回復をしていきかねない。
「幸いなのは、沖田さんたち英霊の数が、前線よりの武将、兵士が多いこと。でしょうか?」
「あら、沖田様。すいません。もう時間ですか・・・ええ、軍曹様や呂布様をはじめとして前線を崩せる、いざという時に踏ん張れる人材が豊かだったのが幸いでした。本当に」
沖田の声に気づき、軽装鎧をつけなおして刀に手を当ててほほ笑む華奈。沖田も華奈の言葉にはその通りと頷く。かの超大国ローマ、その国を統治してきた皇帝が普通に軍団長、指揮官、幕僚に何名もいる連合ローマ相手に正当ローマがここまで踏ん張れているのは正当ローマの前線武官の実力とネロの采配が見事だったことが大きいだろう。
沖田もそこらへんは理解しているようで、華奈の隣に立って同じく防衛陣地を眺める。
「アルトリアさんとストーム1さんは心配していません。ジャンヌオルタは・・・まあ、ノブやヤマジが大丈夫だろうと言っているから気にしません。問題は、私たち中央軍がどこまでいけるか。でしょうか」
「そのためには今回はどこかに力を偏らせることは難しかったですからね。沖田様にも少し大変な思いをさせることでしょう・・・申し訳ありません」
「いえいえ! まさかのローマでの戦闘、しかも必要な役割を与えてくれて沖田さん大歓喜ですとも! 病気もすっかり消えたうえに銀嶺隊の呼吸はここ数日一緒に過ごして覚えました。今日の活躍も期待してくださいね?」
えへへーと笑ってピースサインを見せる沖田。オークニーの将軍、円卓時代でも騎士たちが追い付く、動きになれるのに苦労していた銀嶺の速度、呼吸を覚えたと言ってのけるその才覚。改めてこの才能があと十年、いや五年長く生前生きていればどれほどの腕に到達したか。思わず剣士のはしくれとして華奈も思ってしまうも、すぐに戦場に意識を戻す。
「もちろん。そのための場所は私たちが用意しましょう。っふふ・・・頼もしい方が私についてきてくれてよかったですよ」
「マスター! ぼちぼち俺はいくぞー。のろしはわかりやすいものにしてあるから遅れないでくれよ~!」
沖田の頭を優しく撫でているとバイクに乗って持ち場に移動しているストーム1から声を掛けられ、こちらも手を振って応えていく。
ストーム1とアルトリアの二人は今度は左翼に配置。少数の兵に将の配属だが、ある意味では一番えげつない部隊。遠近ともに秀でたメンバーもそうだが、今回は本当に容赦を抜いた策を左翼は用意してある。うまくいけば左翼からも押し上げを狙えることだろう。
となれば問題はやはり中央、一番多くの将を配属している分、成果をあげられなければその分の失敗も大きい。相手の防衛陣地を攻略後にこちらの軍が利用できるように後詰も用意した、先の戦い以上の総力戦。失敗は許されない。
「えへへ・・・ありがとうございます。華奈さん」
「はーい。あれを使うので見逃すこともないでしょうけど・・・さ、私たちも行きましょうか。藤丸様達にもスポーツトリンクとか持たせておかないと・・・」
その後は改めて再確認のための軍議ついでにローマの魚で用意したうしお汁、キメラの角煮、ぶどうジャムのトーストをおやつに腹ごしらえを開始。
「スタートダッシュは俺たちから・・・と・・・よーしよし・・・ポインターもばっちり・・・」
「私・・・ここ最近は姉上と一緒に暴れられていないですねえ・・・ご飯は一緒に食べられたので良しとしますが」
エアレイダーにクラスチェンジしていたストーム1、ポインターで大樹の城に届くかを確認し、それ以外の武装の発煙筒の場所も再チェック。それを隣で眺めながらアホ毛をいじり、ふぅと息を吐くアルトリア。どうしてなかなか戦の準備の中でもなかなか一緒に遊べず、今回の戦いもまた軍の配置は別。これが適役なのはわかっているがとぼんやりと戦場を眺める。
この左翼の城を相手するのであれば確かに適役。華奈は逆に中央がいいのだろうが、愚痴らずにはいられない。
「仕方ないだろうよ。マスターとアルトリアは個人の武力もそうだが、武官、将軍としての経験、力量も並みのものじゃない。それに互いの意図をある程度理解できるってのもあるから広域での連携を考えればこれが正解だ」
「頭を束ねるのも必要ですが、今は横に広げて全域で押し込まないといけないですから仕方なし・・・はぁ・・・あ、来ましたか。私も・・・」
その後ポインターで城をマークしてしばらくして、轟音と共に一つの大きな柱が空から現れる。それは超のつくほどの巨大なミサイル。ポインターのマークする場所に向けてじわじわと移動をし始め、その威圧感とそれが何かわからなくても本能的に恐怖を感じているのか城の兵士たちが動揺しているのがアルトリアたちからも見て取れる。
超大型ミサイル。テンペスト。攻撃さえ通れば巨大戦艦だろうとマザーシップだろうと大概の兵器に大打撃を与える超高速ミサイル。戦場で指揮を取り、サポートする役割のエアレイダーの中でも一握りしか使えない秘密兵器の一つ。それが出てきたのを確認したアルトリアも二振りの聖剣を抜刀。魔力をほとばしらせつつ体をほぐし、野営地を出て正面に立つ。
「3、2、1、着弾。続けて第二の発射用意。アルトリア、行けそうか?」
「生で見ると改めてぶっ壊れた兵器ですね・・・もちろん。これだけ大きな崩落があればたとえ大樹の城だろうと問題ありません」
敵兵も弓、やり投げ、投石で対応しようとするもその意味はなくテンペストが大樹の城に着弾。耳をつんざく轟音と衝撃がアルトリアたちの陣地まで届き、その爆炎と煙は空に巨大なのろしとして上がる。敵の要塞、防衛陣地をいくつも攻略したストーム1の使うこともあって威力はふざけたもので着弾した場所は何もかもが吹き飛び、大樹の城は一部が大きくえぐられたような状態に。
そして、それをそれで終わらせることもなくストーム1はもう一つのポインターでテンペストを再度要請。アルトリアはその崩れた城の部分にしっかりと狙いを定め、更に魔力を剣に流し込み、大きく振りかぶる。
「エクス・・・カリバー!!! 連っ・・・発式です!!!」
聖剣から放たれる膨大な魔力の奔流。それを一度振るうだけでも今の連合ローマ左翼、大樹の城には痛い打撃。それを2発、3発と絶えず二つの聖剣から何度も短いスパンでぶっ放し続ける波状攻撃。大樹の城を囲むように配置されていた陣営は吹き飛び、テンペストでえぐられた場所は聖剣の魔力の斧でさらに削られていく。
「後は倒れる方向を調整・・・っと・・よーしよし・・・奴さんらもあの一撃からのこれだ。混乱しているは白の巨大な木片で思うようにこっちにも来れないんだろうな」
さらに要請準備が完了したテンペストで今度は城の上部分に着弾させることで後ろに倒れるように衝撃を与え、こちら側には倒れてこないように配慮。ついでに逃げ遅れた連合ローマ兵の一部の刈り取れるので悪くはない。
「後ろにあるであろう舗装された道も塞げますから敵も増援を送れない・・・というよりも、この城の役割を考えるとむしろ逆・・・さて、こちらの兵士たちの被害がより少なくなるようにもうもう少し、喰らってもらいましょう!」
結局、左翼側の戦線はそれ以上は大きな動きは見せず、どうにか動けるようになった連合ローマの兵士たちをスパルタクスとその配下の部隊で迎撃。ゴーレムや怪物などはブルージャケット隊の狙撃で排除。大樹の城を壊し切ったところでアルトリア、ストーム1も参加することでこの戦線は正統ローマの圧勝。
兵士の被害も全くないうえに敵軍は拠点含めて完全に叩き潰す完勝となった。
「ふぅん・・・改めて、士気の高さもそうだけど、城の大きさもやっぱり段違いね。これだけの大きさならそりゃ、この周辺一帯の要にもなるのが嫌でも理解できるってものか」
「わ、私にはもっと大きく見えますよ・・・戦場の熱気・・・というものはやはりすごいのですね・・・サーヴァントとなっても恐怖というか・・・何と言いますか・・・」
「仕方がなかろう。兵士でも少し硬い城を見てはビビり、多少怪我しただけで落せない、怪我するだけと意気消沈して逃げるやつもいるんじゃ。城攻めするというのにへたりこまずに踏ん張れるだけでも及第点だと言っておくかの」
「やれやれ・・・ビッグアンカーがいくつも刺さった街中を思い出すな・・・尽きぬ敵に高所からの攻撃・・・しかも城のおかげで防備もできていれば備蓄もあると・・・」
時折耳に届く風切り音と何か固いものが地面や壁に刺さる音。時折飛んでくる矢を旗で振り払いながらジャンヌオルタは大樹の城を見上げる。ジルに仕込まれた記憶にある城のどれよりも大きく、また攻めるにも守るにも適している構築。高所から打つ、山なりに矢玉を打ち精神的ダメージも見込めるかと言えばそうでもない。水に関してもこの大樹。適当な場所を一部傷つけておけばそこから水分補給も楽なものだろう。
坑道戦術も大樹の根のせいで困難かつ意味をなさず、火矢も樹が水分を含んでいるせいで燃えることもない。城を打ち崩そうにも石造りの城よりも頑強。そして、その巨大さから攻城兵器も従来のものはまるで使えない上にそもその兵力はこちらの数倍。包囲戦もこちらが不利になるばかり。
更にはこの防衛地帯の兵力の補給地点。横から攻めあがるという戦術は使えず、かと言えば真ん中を突っ切ればこの城からの増援で挟撃を受ける羽目になる。まったく、よくできた布陣だと何度見返してもあきれ返るほど。
「でもまあ、不運なのは私たちがいたこと。特にあの馬鹿火力コンビがもう片方をつぶしてくれたことね」
しかし、それがどうした。城には城の弱点がある。何よりも左翼から聞こえた爆音と衝撃。そしてあの忌々しい思い出を思い出させる煙と光の柱の乱発。ストーム1たちがあれほどの成果を見せてマスターたちに任された自分が怖気づいてしまうことは許されない。何よりも自分自身があの城一つに負けることがあってはならない。
待ち望んでいた槍働き。しかも一つの戦線を任されるのだ。気合が出るというもの。
「じゃな。よし、ジャンヌオルタよ」
「ええ、始めるわよ! 敵兵が躍り出てきたわ。此方も弓兵構え! 信長、清姫、二人にもう一つは任せる。紫式部、術をほどくんじゃないわよ。あんたが要の一つなんだから。軍曹は怪物どもを任せるわ。秘密兵器、あるんでしょ?」
「ああ、もちろんだ。怪物たちは任せてもらう。行くぞ!」
「了解っと・・・今回は楽そうでいいぜ」
「ようやく回ってきた攻めの機会。無駄にはしません」
左翼から見えた爆炎と衝撃、そして大樹の城が倒壊したのを見て敵側はこちらを打ち砕いて増援に出ようと判断したか、城の出口からまるで波のように押し寄せてくるのを見てジャンヌオルタも戦闘開始の指示を取る。後方で待機させていた清姫と信長に指示を飛ばし、自身は土と煉瓦で盛り立てた土台と柵の前方に移動。最前線で指揮を取る用意をする。
「よーし、皆の衆! 敵の城からこうして出てきた阿呆どもじゃが、下手に戦ったり、わしらの後ろに逃がしては華奈先輩らの邪魔になりかねん。ここでとめるぞ! 特大火の玉用意できておるか!」
「ハッ! 用意した特大の木の玉およそ1万個、いつでも火をつけて火の玉にできます!」
「なら柵の上に設置して矢避けとして使用。わしの合図で転がすようにするんじゃ。清姫、行けるな?」
「ええ、ますたあ太刀を守るための大切な壁。ここで働けば後でたくさん褒めてもらえて・・・っふふ・・・」
何やら夢見心地の清姫を横目に信長たちは地道にローマの市民たちとも協力して用意していた1メートルほどの大きさの木、わら、枯葉、そのほか諸々を混ぜ込んで球体状のものを用意、ローマの主兵装の投げ槍、弓を防ぐための盾として使いつつ機を待つ。敵の数は今出てきている数だけでもこちらの3倍。普通にぶつかるのであればそれこそ敵の大将一点狙いか銀嶺、ネロの親衛隊レベルの精兵でぶつかるほかない。それが今できないのであれば砦で耐え、城の弱点を突く。
ジャンヌオルタの指示を待ちつつ信長自身も火縄銃をいくつか顕現。両手に構えて戦場を見据える。
「もう少し・・・もう少し・・・っ、弓隊、放て! 槍もどんどん投げ込んでいいわ、目的は足止め、倒すことは次でいい!」
一方でジャンヌオルタは射程に入った敵軍に矢と投げ槍の雨を降らせる。流石は正規兵を多く抱えるローマ。今回の緊急事態のために引退した兵士から再度登用したものも多数いるというが、それを感じさせないほどの矢の勢いと槍の飛び具合。
連合ローマ兵も幾分削られるがそこは戦慣れしているためか盾を構えて防ぎ、槍に対しても盾を重ねた少人数の連携で対処をするとどうしてなかなか侮れない。結果、勢いは完全に止まらず、そのままジャンヌオルタ達の陣地を目前にまで連合ローマは踏み込むが、その兵士たちは直後足場を失い、落ちていった。
「これほどのものを隠す隠蔽の術式・・・さすがに時間がかかりましたが、メディア様、フラム様たちの協力もあって完成しました。そうやすやすは崩れはしないはずです!」
紫式部の術が崩れ、現れるのはジャンヌオルタ達の陣を守り、大樹の城を囲むようにできている巨大な空堀。深さ5メートル、幅20メートル以上の大きさであり、更にジャンヌオルタ達の陣営はそこから高さ2メートルの盛り土、石を交えた土台に3メートルもの柵で固めたもはや砦、城壁のような物。落ちた連合ローマ兵は自身の重装備と走ってきた勢いもあってか誰もが傷を負い、骨を折り、あるいは落ちてきた後続によって圧死、行動不能状態に陥る。
「ふ・・・さすがは島津の軍を止めた空堀を参考にしたかいがあるわね・・・信長!」
「おう。火をつけて転がせい!」
「ふふ・・・ますたあたちの邪魔をさせませんからね。そおれっ」
その落ちた兵士たちにとどめを刺すべく信長たちが用意した木の玉に清姫、ローマ兵たちで火をつけ、燃え盛る火の玉を空堀に転がし、敵兵を焼いていく。燃え尽きた後はしょせんは燃える素材でできたもの。この空堀を登る足掛かりにもなれやしない。
「続けて鉄砲、矢で足が止まった敵兵をまた歓迎してあげなさい! ある程度たまったら魚油の入った壺も投げ込んで相手の軍も燃やすわよ! ケチな包囲陣地と思ったツケをたっぷりと払わせてやるわ」
「うっははは!! 孫氏にもあるからのお。火を使う際は人、あるいは隊を焼けともな。資、庫は焼けぬが、今の状況ならこれだけでも十分に良いってものよ」
敵兵の目に映るはもはやちょっとした谷底が足を止め、その底では落ちた味方の兵士が矢玉、火の玉で傷を受け、焼かれ、阿鼻叫喚の悲鳴を上げるという地獄絵図。しかも足を止めれば矢の雨。時折降ってくる油の壺には何か轟音のする筒から放たれる鉄の玉と黒い鎧に身を包んだ女指揮官の放つ炎で火をつけられて壺を投げられた周辺の周辺を焼いていく。進めば空堀に落下して焼かれ、足を止めても結局は焼かれる。たとえ空堀で生き延びても敵陣地に上るには最低でも7メートル以上の土壁を登らないと行けず、当然妨害も入ると八方ふさがり。
この状況ではたとえ増援が来ても行軍速度は空堀で止まり、兵が詰まる分むしろ火計の効果を増す。
「城ってのは防衛陣地としては優秀でしょうね・・・けど、その強さは増援が来ること前提、そしてため込んだ物資を運用、運搬できてこそ。今回の場合は城からの増援がほかの防衛陣地を助ける兵の貯蓄庫。だったら・・・その役割を果たせず置物にされておけばいいわ。攻められても落ちないとたかをくくっていた負けよ」
正当ローマの今までの戦の推移を見て、カルデア、現場のメンバーたちと情報を探り、シミュレーションを繰り返した結果、左右の大樹の城の役割はその巨大さから多くの兵士、物資をため込み、中央に攻め込んできた敵兵を横から攻撃、あるいは増援を派遣するいわゆる一大補給拠点。
兵法の基本なら左右から攻めるのが常道だが左右の城はそれを防ぎ、小規模の砦、野営地がひしめく中央をかすめ取ろうにも左右から横殴りを受ける。それも大量の兵士たちで。左右は鉄壁の城で落すこと自体時間をいくらかければいいかわからない。かといって中央を行けば待ってましたと多数の防衛陣地で時間をかけられ、その間に左右からも襲われて軍を壊滅させられる。恐ろしい布陣。
「だったら片方でも抑え込んでしまい、その間にこちらも攻めあがるか。連合ローマが三軍すべて盾で行くのならこちらは左翼と中央を剣。右翼が盾でぶつかるという感じじゃな・・・いや、左翼は鉄槌か? お、軍曹。来たぞ!」
敵兵もさすがにこのまま終わるわけはなく、兵士たちで渡れないのであればと用意したのは大量のゴーレム。矢にも炎にもある程度の耐性がある上にひるまない。そして土、石などでできている分空堀に落として壊せば空堀を埋める土嚢代わりにもなる。なるほどいい考えだ。
当然、そこはジャンヌオルタも想定済み。ここ数日前線で敵軍の情報を集め続けた結果巨大な物資の箱を運ぶ際に使っていたのを見ていた。そして、普通の武装が効かないのであればこちらも次の用意をするだけ。
「軍曹たち、清姫はゴーレムを砕きなさい! 信長、援護射撃は任せたわよ! こちらはゴーレムが出てきた分敵兵が詰まった、列をつめた場所を狙うわよ!! 特に空堀を越えようとするやつと土壁を壊そうとするやつらを
徹底的にたたくように! 紫式部、少し離れた防衛陣地の様子は!?」
「は、はひ! 式神からの情報ではどこの戦線も安定。ですが、ゴーレムの登場で少し揺らぎを感じています。軍曹たちの攻撃のタイミングはばっちりです」
「・・・エンジンよし、調整もばっちりだ・・・ストーム2、清姫ちゃん。出るぞ!」
「ふふ、怪物退治なら英霊の私たちが適役ですものね」
「はっ、巨大生物や怪物の軍隊と比べりゃあ、あんな石人形へでもねえ!」
今まで待機させていた軍曹らストーム2もいよいよ動き始め、人型の二足歩行ロボット、ニクス。その中でもトップクラスの機動力を誇るニクスアサルトを駆り出し、空堀を越えて敵陣へと切り込む。
「そおれ」
「これはいい・・・動きやすいが頑強。体当たりだけでも十分すぎる!」
清姫が炎を放ってストーム2たちを狙うローマ兵士を足止めし、ニクスに掴まりながら常に高い場所から戦場を見据え、要所要所で炎を扇のように広げて矢も防ぐ盾となる。
そして軍曹はレンジャーではあるがコンバットフレームの運転免許も持っているがゆえにそのニクスアサルトのスペックに驚き、早速そのスペックを余すことなく活かす。マシンガンにボムで遠くのゴーレムや怪物を排除し、近くの敵にはその固い装甲と速度、質量を活かした体当たりで近くのゴーレムを次から次へと打ち砕く。
軍曹の部下たちももとより巨大生物、中には70メートル以上の怪物、町一つが入りそうな大きさの円盤も動く要塞とも戦ったたたき上げの猛者。いまさら人より少し大きいだけのゴーレムなんて敵でもなんでもなく次から次へと砕いていき、軍曹と清姫の後ろを守りながらともに前進していく。
「砕いた破片は敵の邪魔になるようにしておけ! あの大軍の動きを隊列一つ鈍らせるだけで転ぶ奴やけが人が出るし、それだけで行軍速度が鈍る!」
「はっ! 場所を選ばなかったバケモンどもに比べれば簡単なもんだ!」
「砕いた破片でも再利用されては大変ですからね。出来る限り邪魔になるように努めておかないと」
右翼はその後も大きな兵士の削り合い、ぶつかり合いこそなかったが、大樹の城から兵士たちは救援に動くことが全くできず、用意していたゴーレム、怪物などの類は散々にストーム2、清姫たちに砕かれた。中には敵兵たちが焦るあまりに隊列を乱した進軍に軍曹らの砕いたゴーレムの破片やジャンヌオルタ達の邪魔で圧殺、横転してけが人が続出し、一部は行軍するだけで被害が出るというありさま。
互いに大きな動きはなかったが救援目的を達成できなかった連合ローマ。敵の大軍、城の長所を殺し切って敵兵を箱詰めにしたうえで動きを封殺したジャンヌオルタと見ればどちらが勝者なのかは一目瞭然。この戦線はその小競り合いを終始続け、一日戦い続けても空堀より先に動いたものはなかった。
ようやくストーム1の火力お化けのエアレイダーの本領発揮。本当に5で使いやすくなって面白いです。ビークルでの味方のサポートもできるのでまさしく戦場での指揮官。他の3兵科にはいわゆるエリート部隊がいますが、エアレイダーはその兵科自身がエリート枠、精鋭だから出ないというのもあるのでしょうね。
島津が豊臣軍と戦い、逆に釣り野伏のような状況で負けた根城坂の戦いでもこのような空堀は使われ、深さ3.7メートル 幅5.5メートル高さ1.8メートルの柵を用意して豊臣サイドは島津の攻撃を凌いだ一場面もあったとか
本来はここから中央軍の動きになるのでしたが、今回は仕方なく前二つのみですが出させてもらいます。理由としては仕事が忙しくなかなか進まず、こうも長く皆様をお待たせしてしまっていることへの申し訳なさから来るものです。改めて、大変長らく待たせてしまい申し訳ありません。次回は中央軍の動きになります。
まさか応援してくれる人が増えるとは思ってもいないもので、こうして待ってくれることが本当にうれしいです。
台風などで大変な方もいるでしょうが、どうぞお気をつけてお過ごしください。そして、また穏やかに過ごせることが出来ることを応援しています。それしかできずに申し訳ありません。
それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。