転生愉悦部の徒然日記   作:零課

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今更ですが銀嶺の組織図は

華奈(大将)



副官(ダンカン、ヤマジ、アンナ、クラーク、モードレッド、ギャラハッド)



300人将(副官の増加と部隊の再配備で250人将になることもちらほら。華奈、副官らに2名づつ配置)



100人将(タルヴェラ、アシェラッドらがここらへん)



30人隊長



10人隊長



5人隊長



一般兵

となっております


モグラと薔薇の戦場

 「進みなさい! 速度が肝要! 隣はアルトリア様とストームたちが抑え・・・・いや、吹っ飛ばしているのです。憂いはありません」

 

 中央軍。その左サイドから攻めあがる華奈、オルガマリーを主軸とした中央軍第二軍。銀嶺隊をほぼすべて集め、一部をローマ兵で用意した部隊。

 

 魔獣での足を活かした野戦などを得意とする銀嶺だが決して砦、小城にダメなわけではない。準備を整えさえできればむしろ強い部類であり、それを今回も活かせると踏んだからこその第二軍。

 

 「は、はやっ・・・! したか・・・舌が」

 

 その速度は今の馬でも出せるものではないほどの速度でありロード、一貴族としてのたしなみとして騎乗を学んでいるオルガマリーでもその速度、乗っている軍馬の速度には驚きっぱなしであり、風の強さや揺れ、景色の変化に動揺が収まらない。

 

 「あはは。あまりしゃべらないほうがいいですよ。慣れないと舌をかんじゃうか、歯が痛んじゃいますから。さて・・・そろそろ3つの砦と小城がでますね。魔術兵装用意! 対攻城戦を開始します! 制圧後は後詰に任せるゆえにすぐに動くこと!」

 

 「「「応!!!」」」

 

 華奈の号令をきっかけに部隊を3つに分けて見えてきた小城、砦に襲い掛かる銀嶺とローマの混合部隊。砦にはアンナを中心とした魔術部隊たちと何やら頭に鉢巻をした暑苦しい雰囲気の好青年。彼の率いる弓隊と魔術体がローマの大盾兵を前に出してからの用意が始まり、相手の弓を少しばかりしのいだ後に反撃が始まった。

 

 「弓隊、放てぇ!!」

 

 なにやら矢じりに黄色い球体を取り付けた矢をかなり山なりの軌道で上空に射かけるとそれに合わせてアンナも雷の術式を用意。矢が敵陣に落ちていく機動のさらに上から雷撃をいくつも落としてく。

 

 「その塀に柵、まとめて焼かせてもらうわよ」

 

 「もっと! 熱くなれよ!」

 

 その雷撃の熱で矢じりについていた黄色い球体が燃え、中身の油や炎を発生させる術式が起動。雷と矢玉、炎が雨あられと降り注ぎ、敵兵を陣地丸ごと焼き払い、塀も柵も何もかもを焼き払う。

 

 更には近くで降り注ぐ雷と炎の轟音は銀嶺以外の軍馬も怯えすくみ、動きを鈍らせてしまう。そこをついて炎は愚か対軍隊の訓練を受けた魔獣たちが炎をかいくぐって最前線の兵士たちを騎馬や爪、蹄で吹き飛ばしては突破口を開き、そこに銀嶺とローマの兵が入り込む。

 

 「おおー相変わらずアンナ様の魔術と弓隊の組み合わせはえげつないですね。陣地で待ち構えるほうがよっぽど被害が大きい。さてと・・・深山!」

 

 遠目からもその敵陣を完膚なきまでに叩き物して突破していくアンナたちの様子を横目で見ながら華奈も自信を戦闘に城に騎馬のまま突っ込む部隊の道を作るために自身の持つ魔剣の力を使用。ちょっとした軍が通るには申し分ない幅の地面がせり上がり、城壁へそのまま登れる坂道が開通。

 

 「なっ・・・! あの方と同じような能力を!!? 盾兵! かま・・・」

 

 「遅い。あ、それとこれ借りますね」

 

 目の前で狼やイノシシ、馬に乗った兵士たちがそのまま城壁に突撃するだけの馬鹿かと思っていたらまさかの城壁への道を作り、駆けあがる銀嶺の様子にうろたえる敵兵だがすぐさま持ち直して大盾の部隊を前に出して密集陣形を展開。道を封じる壁となるがそんなものは関係なしと栗毛の前足での蹴りと華奈の太刀の一撃は密集陣形に穴をあけ、ついでに切り伏せた盾兵の盾を奪いそのまま城壁の上で栗毛、ハチ、花子、黒介の銀嶺最古参の魔獣組で遠慮なく場を荒して爆走。

 

 「栗毛、飛ばしなさい!」

 

 ひとしきり周辺を蹂躙し、部隊の拠点を確保した後に栗毛の後ろ足の蹴りを踏み台にして跳び、自分を敵兵のど真ん中に突撃。先に奪っていた盾で槍を凌ぎ、着地後に周辺の兵を斬り捨てた後に魔獣組のタックルとは反対方向から自身も盾前に構えたままの突撃と深山で城壁の一部を動かしての豪快なプレス。

 

 こうも城壁のメリットをつぶされた上に騎馬の状態で白兵戦に持ち込まれては連合ローマの精鋭も動くに動けず、対処が遅れたすきをさらに食い破られて散々に打ち破られ、すぐさま内側から城門をあけられていく。

 

 「くそっ! 敵兵を押し返すぞ! 防御態勢・・・」

 

 「市街地戦、狭い場所での斬り合いなら私の得意分野です。新選組一番隊隊長。沖田総司、参ります!」

 

 当然敵兵も狭い城門の前で盾を構えた密集陣形で迎え撃とうとするがそこに切り込む刃はその盾を陣形丸ごと切り捨てて突破口をこじ開ける。沖田と乱戦に優れた銀嶺の部隊を一部任せた少数精鋭の特効部隊がローマ兵のために道を作り、城壁の上を銀嶺の騎兵隊が荒らしまわることで即落上。電光石火の攻めを見せ、即落城。

 

 「大将。後詰が来ました」

 

 「了解です。食料と水、交代の馬を多めに配備できるようにしてあります。今後は占領した拠点や城の物資を使いつつ適宜後退や休憩をしながら進軍。私たちはそのまま進みます。必要な物資はあとから来るようにしますのでそのつもりで」

 

 その直後に伝令のみを残してすぐさま前進。華奈の言葉通りに早くも落とした城や拠点にはタマモキャットを大将にした後詰。占領や施設を利用した緊急の拠点へと利用するための工兵を多めに配置した部隊が入れ替わりに入り、すぐさま食事や水を用意していく。

 

 「さてさて、井戸水を消毒するために入れるワインは気持ち薄めに。汗をかいた分飲みすぎて酔っぱらってもらっても困るのでな。ご飯は消化の良いものでありながら元気のつくものを。今朝から仕込んでいた塩と砂糖と水でもみ込んだ鶏肉を焼いてもらうのだニャン。物資の備蓄計算は気持ち一つ。きっちり計って連絡をするのだ」

 

 いろいろと発言がずれてはいるが要点は抑えていることや食事、戦闘に関してはノリノリかつ有能ゆえに任せた人事だが思いのほかばっちりと仕事をこなすことに華奈も移動しながら聞いていきほっと一息をつく。メイドというだけのことはあり手際も良く、もう少し拠点を占領できればローマ兵の部隊の入れ替えを行い兵を休ませながら勢いをキレさせることはないだろうと予想。

 

 次の拠点を制圧するために魔術用の道具をいくらか補給してから華奈たち銀嶺は再度足を速める。

 

 「報告します! ネロ陛下らの軍も同じく進行中。エリザベート将軍様の部隊もこことほぼ同じ深さまで進み拠点をいくつか構築。そのことでブーディカ将軍とネロ陛下から後詰同士をつなげて連携を密にするべきか。との話が出ています!」

 

 そこに伝令が来て通達。どうにもネロ達も同じような行軍速度で進んでおり、後詰も無事に動けている模様。援護を多めに用意しているのもそうだが、やはりネロ直々の出陣。兵士の士気もとんでもない勢いで敵を圧倒しているのであろう。

 

 「いえ、このまま進むことを優先しましょう。もとより私たちのほうが兵力が少ないうえにより先に進む状況。兵力を必要以上に分散するよりも速度を優先して谷の直前まで制圧してから残りの拠点を制圧したほうがいいかと。通達お願いします」

 

 「華奈さん。城を上から見てきたのですが、何らへんな感じがしました」

 

 伝令にこちらからの返事を伝えるように言っておいている間に狼にまたがって合流してきた沖田。先ほど制圧してきた城の事だろうが、少し首をかしげる。ローマの作ったもので感じる違和感というものは何のやら。

 

 「えっと、それはどういう?」

 

 「うーん・・・その、何と言いますか、私たちがぶつかった方向の城壁周辺と、反対の城壁周辺だと道が微妙に違うんですよ。で、奥に進めば進むほど少し敵の動きがよかったみたいで・・・」

 

 「ああ・・・そういえば確かに道の幅や・・・・・ハチ・・・? ん・・・・・・・・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「投槍! 行け行け!!! 強化の魔術を使える部隊はすぐに縄をつかめ! 城門をすぐにこじ開けるぞ」

 

 「弓部隊は援護を! 敵兵を近づけるなよ」

 

 「ははははは! これが魔術兵装部隊か! なるほどシンプルな道具や魔術の組み合わせが攻城兵器足りえるとはな。わからぬものだ」

 

 『スピアスロワーで槍を城壁のはるか後方に飛ばしていき、そこに仕込んで圧縮、軽量している縄を解除。城壁を攻める部隊が縄をつかんで既に城壁に上っている部隊が城門のすぐ下に降りれるようにする・・・めっちゃくちゃだけど、一度城に上れてしまえば即開城可能。今回の戦いにはもってこいだね』

 

 ネロ率いる中央軍。そこもまた破竹の勢いで攻め上がり、銀嶺の足に負けないほどの速度で次々に拠点を落としていく。速度を出せる理由としては一つは現場指揮官、武官を多めに用意していること。もう一つは魔術兵装を用意したことによる大規模な攻城兵器などを用いずに行けること。ネロ直々の出陣ということの士気。

 

 それ以外では一つは荊軻の偵察、カメラなどを活かした的確な格拠点の情報を手にしたことによる制圧するにあったっての要、弱点を攻められること。もう一つは空からの援護射撃による。

 

 『ふむ・・・階段を一部破壊して兵士たちを詰まらせるぞ。藤丸、マシュに伝令すぐ近くに増援が現れる。マシュとクー・フーリンで蓋をして押し返せと。呂布のところに道断の計の動きの予兆あり。ブーディカとジークフリードに盾を打診。荊軻殿にはその指揮官の虚を突けないか連絡だな』 

 

 ストーム1の用意したヘリ、バゼラートの上からアーチャーゆえの視力、スキルを活かして戦場を上から俯瞰して眺め、ネロとは別のもう一つの目、指揮官としてふるまうエミヤ。戦場、人の動ける範囲で見れる視点というものはどうしたって死角、奥行きが見にくいというものがある。だからこそ昔の戦いで旗を多く立てて軍を多く見せることで騙したり、逆に寡兵と見せかけて油断を狙うこともある。

 

 しかし、ネロ達は鳥の視点と英霊の知略、経験を余すことなく活かしての戦術を常に組み込むことが可能となっている。それが一日でいくつもの拠点や城を落とす快進撃をもたらした。

 

 「マシュ、そこで少し踏ん張って! クー・フーリンに横腹を突かせる!」

 

 「はい! スキル使用、押しとどめます!」

 

 「ふ、こうも計画を立てやすい戦場というのはいいな! もう六つも皇帝の首を取れた。さあて、もう一仕事行こう」

 

それぞれがそれぞれに得意な役割を果たす。英霊たちの得意な役割をできるように藤丸とネロが司令塔となり、兵士たちは兵士たちでぶつかるように率先して動く。何せこうもうまく勝ち進める。敵を打ち砕けるとなれば今までの負け戦にたまった鬱憤を吐き出し、偉大な国ローマを取り戻せると躍起になるというもの。

 

 カルデアのメンバーも、英霊たちもこの戦いが成功しなければ次はないことを理解している分豪快に、かつ細やかに兵士たちを入れかえて休ませながら戦うようにしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 そうしていくつもの拠点を落とし、奮戦し部隊を進めていく中で一つの動きが生じる。

 

 「ネロ、呂布が城門をこじ開けたわ。私と荊軻で攻めあがるからネロはその先の敵を防ぎながら再度突撃の準備をして」

 

 「うむ。もう少し進めば拠点を遮る谷に到着する。一度傷ついた部隊を入れかえつつ進んでおこうではないか。ブーディカ。そなたも気を付けるのだぞ」

 

 「うん・・・うん。了解。周りの敵のほうも前から来る一部隊だけみたい」

 

 『カルデアから見ても特に大きな動きはないね。華奈たちのほうも進撃はしているし、兵力を出して各個撃破されることを恐れたのかな?』

 

 ネロは軍の部隊を入れかえ、藤丸はエミヤからの通信の情報をネロに伝達。ブーディカたち攻城部隊を見送りつつ壁に、ひいては次の攻撃のための矛となろうとした矢先

 

 「今だな」

 

 巨大な爆発と炎が城から上がる。しかも前もって用意されていたものか四方から次々と火の手は上がり、あっという間に城が火の海に。

 

 「なっ・・・!? 部隊は無事なのか!?」

 

 その突然のことにネロは目を見開き、声をあげて攻城部隊のの安否を見ようと前線に馬を走らせ城門を見る。他の兵士たち、客将たちも同様に城を見ると炎の中からかすかに聞こえる声、そして怒号。城の中にまでは火が回らなかったのか一応は無事なものもいると判断。

 

 「■■■■■■!!!」

 

 呂布がその剛力を活かした方天戟をふるい城壁の一部を破壊して火の壁の中から突破口を開いて脱出。更にはエミヤの操るバゼラートの機関銃でその穴を広げて中に入った軍、客将たちを脱出できるようにしていく。一部は火傷、傷を負っているが無事であることにローマ兵たちは安堵の息を吐くが、次の瞬間にはその顔が恐怖に切り替わる。

 

 『・・・まった! 敵反応あり・・・こ、これは・・・囲まれているぞ!』

 

 「あんなところに敵兵、いたっけ・・・!?」

 

 誰もが城の炎上、脱出に目を引かれていた。派手で、インパクトのある出来事故に一瞬、ほんのわずかであれども意識を引かれてしまっていた。そこから改めて目を周囲に向けていくと突如周辺には自分たちを取り囲むようにいくつもの部隊が現れ、しかも数は増していく。

 

 「・・・いつの間に!? さすがにこの数が出てくるのがあの一瞬でというのはおかしい! っ・・・ええい! 防御態勢! 一度迎え撃つぞ」

 

 「先輩! とりあえずは私たちも前に出ましょう! あの数は・・・!」

 

 混乱している兵士たちを抑え、戦うための指揮を取り、剣を掲げて鼓舞するネロと前線に出て被害を抑えようと動くマシュ。藤丸もその動きを支えるために動こうとする。だ、まだ敵の動きはこれで終わらず、ネロの本陣目掛けて疾走する騎兵隊。それは混乱が収まらないブーディカたちの部隊やネロの直下兵をすり抜けてネロに襲い掛かる。

 

 「ふん!」

 

 「ッ・・・!? 何奴!」

 

 馬でとびかかり剣を一閃。剣を防いだはずのネロを馬上から吹き飛ばして地面にたたきつけるほどの一撃を放つ赤髪の少年はネロが地面にどうにか受け身を取りながら着地したことを確認すると自分に襲い掛かる正当ローマの兵士を数名斬り捨てて下馬。

 

 「やあ。君がネロだね? 僕はアレキサンダー。君と話がしたくて来たんだよ」

 

 「いきなり苛烈な話と来たものだな! よく見れば美少年、夜を過ごしてもいいほどだが、今は敵、そこをどくがいい!」

 

 「そうはいかないかな。僕は話をしたい。君の言葉を聞きたくてここまで馬を走らせて、あの面倒くさいマスターの目的を助けるようなまねごともしたんだ。とりあえずは、僕をどうにかしないといけないんじゃないかな? でないとあのブーディカ? だっけ。の部隊や周りの兵士。みなつぶされちゃうと思うけど」

 

アレキサンダー。かの大王の名を名乗る美少年が手を振って後ろを見るようにネロを促して見せる光景は先ほどまでの勢いが嘘のようにローマ兵士たちが倒され、包囲され、混乱の中踏ん張ろうとしつつも押し流されている光景だった。

 

 この虚を突かれた衝撃から立ち直らせることが出来ているのはブーディカ、そして藤丸たちの周辺だけ。残りはおそらくはネロ自身の何らかのアクション、指示がなければ立ち直らせるのはおそらく敵の攻撃の火力、時間的なことも含めて不可能。

 

 「くっ・・・よく聞けローマの勇士たちよ! 今をもって我が部隊の指揮権は藤丸たちに一時預ける! 余はこの勇ましい剣士を倒さねばならぬ!! ここを越えれば目的の場所は近い、踏ん張りどころだぞ皆の衆!!」

 

 「「「おおおぉお!!!」」」

 

 ネロの声一つで驚き、混乱から立ち直り陣形を組みなおす兵士たち。そこからはネロ、アレキサンダーと互いの兵士たちで作られる円陣のなかで行われる一騎打ち。藤丸に指揮権を預けられ、釣鐘型の陣形を引いて敵の包囲に対応できる陣形で対応。ブーディカ、呂布、荊軻の部隊は燃える城を後ろに敵兵の波に対処し、一種の背水の陣のような状況ながら踏ん張る。3つの戦場が形成された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お、俺が指揮!? そんなの無茶苦茶だ! ジャンヌオルタみたいに兵法もまだ・・・」

 

 『藤丸君! 弱音を言っている場合じゃない! 前方にさらに敵が増えた! これ以上はマシュや英霊のみんなじゃないと対処が厳しいよ!』

 

 急に指揮権を与えられ、混乱するのもお構いなしに押し寄せてくる敵の波。包囲されているのみならず、数が途切れることもない。ジークフリート、クー・フーリンの両名を前に出して対処をしても尚敵はひるまず突っ込んでくるばかり。

 

 エミヤも空から操縦を銀嶺の一人に任せて弓を敵陣に射かけていくも常に現れる岩の柱などの陣形、あるいは巨大な連弩での迎撃もあって思うように敵を削ることが出来ず、かといって空からの攻撃の利点を失う、妨害をしないわけにもいかないと攻撃を続けるが焼け石に水。

 

 『くそっ・・・さらに奥からも敵の増援が来る。おそらくは・・・すり抜けてきた城や拠点からの増援だろう。私は一度あちらの妨害をしてこよう。ここよりもあちらをつぶしたほうがいくらか効果がいいと思うのでね』

 

 『まずいまずいまずい・・・このままじゃすりつぶされて・・・・・連絡だ! 華奈がここに来てくれるみたい! もう少しだけ踏ん張ってくれみんな! それとエミヤ君には何やら頼みごとがあるみたい。通信をつなぐよ』

 

 「む? ふむ・・・なるほど了解した。一度こちらは離脱。すぐに戻る」

 

 この戦況に響いたロマニの嬉しい知らせ。華奈が来てくれるということ。どうやってこの状況をこの速度で知ったのかと気になることはあるがそれよりもこの状況を打開できる何かを用意していると考えていいのかもしれない。エミヤにも早速指示が飛び、そのためにバゼラートは一度戦線離脱。正統ローマの兵士たちも先の戦いでの活躍を知っていることもあってか士気が上がり、一層の奮戦を見せる。

 

 「・・・中央とはいえ、戦線の端から端への移動か・・・備えを。奴らが手を出せなかった拠点、城からの兵士たちを出してぶつけ、途中の罠にはめればいい」

 

 眼鏡をかけ、長い髪が特徴的なスーツ姿の男性。敵の様子から増援が来ると判断、そこからこの状況にすぐさま気づいて機転を回せる部隊はもう片方の中央を攻める軍だろうと判断。自身の用意したものと連合ローマの兵数を利用した壁を後方に用意、敵に感づかれないための用意もしている。大丈夫だろう。そう判断した直後、男の、連合ローマの後方から怒声が響いた。

 

 「報告します! 敵騎兵隊・・・騎兵隊・・? と、とにかく獣に乗った部隊がこちらの部隊に突撃! 相当に練度の高い部隊のようで既に前衛を食い破りつつあります!」

 

 「兵数は?」

 

 「300騎ほど。ふざけた速度で攻め込み・・・ぐあっ!?」

 

 男に報告をしていた伝令に味方の兵士が吹き飛ばされて地面を転がる。伝令に意識を向けていたほんのわずかな時間。その時間の間に戦況は変わり、目の前には150騎になった敵の部隊。銀色の金属と木を組み合わせた鎧に身を包んだ兵士たち。誰もが返り血に濡れ、特に先頭の女性、狼やイノシシは返り血で汚れていない場所がないほど。しかし、その女性に男は見覚えがあり、一瞬渋面を見せた後に一つ溜息を吐く。

 

 (あの備えも、この防御陣地も突破する速度に武力。あの大物の力を借りてこれとは我ながら情けない。そして・・・ここで会うとは思わなんだ)

 

 「まさか貴女が英霊・・・しかもあの円卓とは思わぬものだ。しかし同時に納得だ。あの商いの腕、交渉。なるほど国を回す財源を用意できたのも頷ける」

 

 「私もそちらが英霊だとは思いもしませんでしたよ。まあ、道中の罠に、この守り、そして・・・地面に兵士たちを隠して一瞬で包囲陣地を完成させたりなどの機転の利かせ方、智謀は納得ですけど」

 

 「いつもこちらの一族のみならず私の弟子と義妹が世話になっている。華奈殿」

 

 「こちらこそ優秀なスタッフと礼装、霊薬。もろもろの橋渡し感謝していますよ。メルメロイⅡ世様・・・いえ、ウェイバー様」

 

 普段から華奈が時計塔で商談、交渉、もろもろのやり取りをする際の相手、そしてオルガマリーと同様にロードの称号を持つ一級の人物。自身の力量よりも他者を育てる才能、才能を見出すことにかけて比類なき才能を持つ、ある意味では組織の長、教師として少し前の時代であれば歴史にも刻まれたかもしれない傑物。

 

 ロード・エルメロイⅡ世。彼がなぜ軍師のような立場にあるかなどは華奈は及びもつかないが、この策略と反撃の手段、目標にはさすがに怖気を覚え、同時に聞きたくもあった。ウェイバーもそれを理解しているのか殺気立つ銀嶺と連合ローマの両方を置いて華奈との空気は殺気立ったものは一つもなく、穏やかなものだ。

 

 「まさか坑道戦術が見抜かれ、更にはここを攻撃するポイントだと見抜かれるとは思わなかった。大樹の城の救援に行くとは想像しなかったのか?」

 

 「大樹の根が固いでしょうし、あれを何らかの形で利用しているかもでしたからね。それに、布陣を見て守りをできている場所にむやみやたらと攻めるよりも虚を突いて被害を与えるほうが効果的だろうと。ああ、坑道戦術はハチたちのおかげですね。嫌な予感のしていた私に地面の感触や音、臭いで何かあると教えてくれたのでこちらに急行できました」

 

 「あれほどの威容を誇るもの。支える根の強度まで視野に入れたと・・・なるほど。魔獣たちとの意思疎通のレベルにや違和感を伝えるほどの知能を持つ獣など想定は難しいか・・・野生の感性と人の知恵の合体とは面倒極まる」

 

 互いに手の内を晒し、あごに手をやり、あるいは腕を組んでしきりに感心する両者。知り合い、男のほうは目的の一つを果たしたこともあってか華奈から見れば饒舌。珍しいものを見ている気分になってしまうほどだ。

 

 その間も増えていく敵兵の数。坑道から出てきては次から次へと戦場に散らばっていく。その動き、意図に同時に華奈も改めて空恐ろしさ、この用意されていた狩場の深さに眉を顰めてしまう。

 

 「・・・今回の目的は、いえ、連合ローマのこの場所は、まるで釣鐘の中。その中で狙うのはネロ陛下でもなく、客将でもなく。その兵士達でしょうかね?」

 

 「正解だ。将が将たりえる理由。それの根幹を削ればあの状況。崩壊もたやすいだろうとな」

 

 将軍や国の主がその振る舞いをできるのは国民が支持をして、その行動、意志に追従をしてくれるからこそ。そういう意味ではネロの見せるカリスマはまさしく異常ともいえるものであり国土を半分近く削られ、兵士を大きく奪われ、敵は過去の歴代皇帝に英霊の超常的な力。将校も客将を多くそろえてようやくという状況でも兵士たちがネロを信じ、勝利を信じ、ローマを愛しているからこそここまでの粘りや反撃を出すことが出来た。

 

 しかし、その勢いも兵士の損失というわかりやすすぎる損害、民衆への身近な打撃や悲しみは今までの劣勢の状況、厭戦気分が漂えばそれだけで反乱、クーデター、あるいは連合ローマに寝返る可能性を模索する心理効果を民衆に与えられる。なにせ将帥の手落ちがこれほどにない形でさらされるのだから。

 

 「そのために深く誘い込んでからの坑道戦術での包囲、城丸ごと燃やしての壁。左右は大樹の城でやすやすとは踏み込めず、そのまま敵地に踏み込もうにもまるで山脈のようにそびえたつ谷と細い通り道で軍はやすやすと通れない。削られた領地の復興もそもそもが歴代ローマ皇帝のいる軍。前以上の復興などたやすいゆえに取れる戦術と。まるで仕掛けの中に魚を誘い込むような作戦です」

 

 「それとそもそもが奪った領地故にさほど執着もないことに加えあの城を用意できる相手がまだこちら側にいるからこそ取れる手段。だな。ほぼ100点満点の回答。流石ミス・華奈殿といったところか」

 

種明かしを終わらせ、その内容があっていたことに微笑む華奈、見事な回答に眉間のしわが少し取れてほほ笑む。が同時に二人の身体をめぐる魔力の質は高まり、刃のように研ぎ澄まさせる。

 

 「私の部隊も無事にブーディカ様たちに届いたようですし、ネロ陛下も・・・まあ、大丈夫でしょう。とりあえず、私は私の仕事をしましょう」

 

 「私も貴女のような厄介な武将をあの方に届かせるわけにはいかんのでな。此方もこちらで面倒な後仕事を片付けよう」

 

 剣を抜き、蒼の瞳が鋭く光る華奈。戦場を見渡し、いくつもの策を用意し始めるウェイバー。始まるは軍師と武将のぶつかり合い、罠が、石柱が、地形が変わり、飛び交い狼を絡めとろうとし、狼はオオカミでその身軽さと勘を持っての激闘が展開。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「手こずっているようだな・・・尻を貸そう」

 

 「尻じゃなくて手を貸しなさいよ! っていうか女に貸したって意味ないでしょーが!!」

 

 「あはは・・・この敵陣を突破して尚も余裕があるのは頼もしいけど、私、そういう趣味はないわよ?」

 

 ネロの部隊を襲う敵軍、そこに強襲をかけた銀嶺隊。その300騎からこちらに向けて放たれた150騎。あっさりと敵の波をかいくぐり、その部隊を任されているであろう二人の男女。青い髪を長く伸ばした美女とバケツのような鎧を付けた男が目の前でコントのようなやり取りをかわしていることにブーディカは大丈夫だろうかと冷や汗をかく。

 

 どうにか押しとどまっているがそれでも燃え盛る城を背に自分達よりも数の多い敵兵。包囲されている状況のなかで押し返そうとして入るが放射熱とこのどんでん返しには兵士の心身共に削られ、呂布の突撃を持ってもその突出した分を突かれてほかの部隊は進めないという状況。

 

 そんな中でなぜこの数を寄越したのか、少し見当がつかずに頭を傾けてしまう。

 

 「ふ・・・なら敵とハメさせてくれ♂」

 

 「あの・・・申し訳ありません。この馬鹿が。頭もいいし腕もたつのですが。責任は私が負いますので思いきり中罰をくださっても結構です! ですのでこの人は、さあ、けじめを!」

 

 「いいのいいの、で、どうするの? 正直、兵士たちも今結構じり貧なんだけど」

 

 「ああ、兵士たちを削らせないように私も動いているが正直な話突破力が欲しい。それも維持できる時間を用意した上でな」

 

 さすがにこのノリをいつまでも続けられてはたまらないと少し声を荒げる女騎士を抑えつつ、救援にも現状をどうしたものかと相談しに戻ってきた荊軻。呂布はあえて右に左にと前進させずに兵士たちを助けながらの行動をさせておき、改めてどうするのかと意見を聞く。銀嶺の部隊、それも部隊長レベルを2名も寄越している。いったい何を始めるのか、ここから盛り返すのか。

 

 「まあ、簡単ですよ。まずは私たちの部隊を3つに分けます。50名の三部隊にして一つは呂布将軍のサポート、私とこいつはその両翼で横から動きを鈍らせようとする部隊や崩れそうな味方の救援に動きます。ブーディカ様は全体の指揮、荊軻様は遊撃で好きにしてくださいませ。そのほうが威力が出そうなので。では、これで!」

 

 「死線、乱戦は得手。任せるといい」

 

 いうが早いか女騎士とバケツ兜の騎士は即座に部隊を3つに分けて移動。最前線に足を運ぶ。

 

 「さあ、まずはこの挨拶をしないとね・・・ちびノブライダー隊!!!」

 

 「ノブノブ~~!!」

 

 「銃撃用意、放てぇ!!」

 

 呂布の中央に行った部隊の先頭を走る魔猪、その上にまたがるちびノブが敵兵に火縄銃を散々に撃ちすくめる。その爆音で身をすくめて敵兵は動きを鈍らせ、あるいは威力で盾や体が吹き飛び、戦友の突然の負傷に連合ローマ兵は混乱を極める。

 

 「フゴフゴッ!」

 

 「■■■■■!!!!!!!」

 

 その油断、生まれた時間を無駄にするほど呂布も魔猪たちも甘いわけもなく、乱れた部隊の穴に突撃、その穴を拡張せんと周りの兵士たちも奮戦。ようやくブーディカの軍がネロの舞台に向かって動き始めた。

 

 「ほらほら! 狙うのなら私を狙いなさい! 女に馬鹿にされて怒るプライドがあるのならね!」

 

 「甘いな。この程度じゃあ兵士とは言えんよ」

 

 「ほら、そこ。隙だらけだ・・・? 皇帝か。この部隊長。なるほどやたら呂布の動きの隙を突くのがうまいのも納得」

 

 当然。そのいきおいを削ごうと敵兵も動くが銀嶺の二部隊とその部隊に食らいついた敵の部隊長を暗殺することを選択した荊軻。やたらと守り、乱戦に秀でた部隊の銀嶺の部隊が周辺の正統ローマ兵をまとめて敵兵を受け止めて反撃し、その間に背後から荊軻がさっくりと刃を突き立てる。

 

 「よし・・・なら、全軍前進! 呂布を筆頭に急いでこの場を立て直してネロ陛下の部隊と合流! 藤丸君たちやほかの部隊と連動して大きな盾となって敵兵を押し返すわよ!」

 

 むろん、この動きの中に遅れるほどブーディカも馬鹿ではなく即座に指示を通達。前線を駆け抜ける呂布の部隊、その補助をする荊軻たちの動きを追うように軍を動かし、細かな指示を飛ばす。

 

 生前にブーディカが戦ったワトリング街道での戦い。あれは今の状況とはまるで逆だった。20万を優に超えるほどのケルト戦士、その家族を率いた軍と1万のローマ軍との衝突。結果はブーディカが軍の統率を取れず、部隊ごとに統率を取る中級指揮官の不在も相まっての惨敗。

 

 しかし、今はそれはない。数の不利はあるが練度も強さも文句なしの正統ローマ兵。砕けかけていた士気も回復、負傷者もいるがまだやれる。それに優秀な部隊長たちが小隊ごとに現場現場の指示を飛ばして軍の動きにほころびが出ないように動く。

 

 後はそれを本陣の目線から指示を飛ばして動きを助けてやる。仮にもいくつもの戦場をめぐり、英霊となってもローマ兵を率いての連戦。何の皮肉か敵として、指揮官としての経験のせいで気質も強さも性質も理解している分指示もローマ兵を動かすのに最適なものばかりを飛ばし、動きも見違えるように変わる。

 

 それは燃え盛る城から離れることで精神的な負担も熱による苦しさも軽くなったことで兵士たちの奮起もあってかすぐさま敵兵を砕き、藤丸の軍と合流が成功した。

 

 

 

 

 

 

 『藤丸君。今から頼もしい援軍をプレゼントする。出来れば兵士たちを少し下げてはもらえないだろうか?』

 

 「え? あ、了解です! みんな、一度下がって!」

 

 バゼラートに乗っていたエミヤが藤丸の真上に移動し、通信を開いて一度正統ローマ兵士を下げるように通達。正統ローマ兵も下がると同時に当然、連合ローマ兵も藤丸たちに襲い掛かってくるが、その前にバゼラートから降り立ったものが着地。

 

 「シャアアアアアアァアッッッ!!!」

 

 その人影は降りるなり扇子を展開、大規模の焔を巻き上げて連合ローマ兵士を視界の入る限り焼き尽くし、とんでもない殺意を乗せて生き残った次の連合ローマの兵士たちに襲い掛かる。

 

 「よくもっ! よくも安珍様を危険に合わせましたねこの阿呆どもぉおおお!!」

 

 救援に来たのは清姫。今回の戦いも配置の割り振りに不満気味だったがそれがベスト。マスターのためだと我慢していたがいずれ耳に入るこのピンチを聞けばに居ても立っても居られないだろうと華奈も判断。その怒りを思う存分発散させてしまえばいい救援になるのでは? という考えからのエミヤに連れてくるように連絡したからこその参戦。

 

 「まだいる! まだまだ・・・! 残らず灰になりなさい! アアァア”アァアア”!!!」

 

 ついでに言えばその報告を聞いてからの焦燥や暴走から仲間と暴れないようにとの考えもあったが、目の前で力の限り暴れまわり、藤丸をかばいつつも目の前でまるで炎の蛇が何匹も暴れ狂うと見まごうほどの魔力の使い方や暴走加減はまさしくバーサーカーに相応しい。一人人間火炎旋風状態の清姫の登場に一同唖然としていたもののしばらくして再起動。

 

 「み、みんな清姫に続いて! このチャンスを無駄にしたらだめだ! マシュは清姫をのサポートをして! ジークフリートは横腹を突く相手を砕いて! クー・フーリンは思いっきり暴れてほしい! エミヤは敵の後方を突いて混乱させていこう!」

 

 「「「了解だ!(です!)」」」

 

 藤丸の指揮をきっかけに動きを変える英霊たち。若干目の前で自分への愛の言葉と敵へのとんでもない怒りをぶつけながら暴れまわる清姫に引きつつも清姫の近くにマシュと一緒に移動。冗談抜きでペース配分や敵味方お構いなしの暴れっぷりにはさすがにこれ以上は駄目だろうと判断。

 

 「清姫、ありがとう。すごく助かったよ」

 

 「ますたあ♡ ふふ。この清姫、危機と聞いてはせ参じました。エミヤさん、華奈さんには感謝ですよ。お怪我はありませんか?」

 

 主の声を聞くなりぴたりと怒りのオーラが消え、まるで大好きなご主人を見つけた忠犬のようにすり寄り、怪我がないかと体をくまなく見まわし、手を動かす清姫。戦場の中であるのだが、少しの慣れと、清姫の救援、エミヤの復帰もあったせいか余裕ができた藤丸は清姫の手の感触や視線、甘い香りに思わずドキドキしてしまい、戦場の興奮や緊張とは別で顔が赤くなってしまう。

 

 「えっと・・・清姫さん! 戦闘中ですよ! 先輩も指示を!」

 

 そのことにむっとした表情で二人に声を飛ばしつつ盾でかばい、敵兵を吹き飛ばすマシュ。若干力のこもり気味な盾を縦横無尽に振り回し、見方が攻め込めるスペースを確保。若干八つ当たりに見えなくもない動きではあるがこの反撃の動きには見方たちも奮い立ち、各所で敵の包囲を押し返し、包囲の環が狭まるどころか広がっていく程。

 

 「みんな! 一緒に戦いましょう!」

 

 「ノブッー!」

 

 更にはブーディカの軍、その先陣を切るちびノブライダー隊たちも合流して敵兵の包囲を突破、乱戦気味ではあるが包囲から脱出できたということからも勢いを増した正統ローマは今までの連戦も忘れ、一人一人が獅子奮迅の働きをさらに見せつける。

 

 『これがローマの兵士か・・・なるほど皆が憧れるわけだ・・・』

 

 ロマニの言葉通り、何度窮地に立とうとも折れずに見せるその強さにはカルデアの皆も驚くばかりであり、同時に頼もしく、負けるものかと藤丸、英霊たちも一層奮起。数の差が嘘のような大立ち回りを始めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「余の行いが無駄、だと・・・!」

 

 「うん、だって民を愛して、守るのであれば君の戦いは矛盾しているのだから」

 

 短剣を炎を思わせる大剣のぶつかりあい、剣戟を見せるネロとアレキサンダー。子供故の身軽さを活かしての軽業師のごとき立ち回りとネロの踊りを思わせる剣術はまるで一つの踊りの演目を見ているのかと思う程に美しく、同時にその剣戟の激しさに息をのむ。

 

 「だって、僕らのほうもローマ、そして歴代の皇帝がこうして部隊長の立場にも甘んじるほどの大物がいるってことだし、君が降伏してもローマという国は存続・・・いや、前以上の繁栄や安心、飽食、豊かさを約束できると思う。特に君ほどの抵抗を見せた皇帝ならきっと連合ローマでもいい場所に入るだろう」

 

 「それは・・・・」

 

 「それに叡智も集まる。きっと民草、奴隷も皆が前以上の豊かさを手にできるかもしれない道を、君は目の前に見ながら捨てているかもしれない、理解しているだろう?」

 

 アレキサンダーの言葉に思わずネロも言葉を詰まらせてしまう。考えなかったわけではない。事実、カリギュラをはじめとして前線で見た隊長、将軍格の中には老兵が驚き、ネロもその証言から石像や肖像画でどの皇帝かを確認できた。かつてのローマを支えた偉大な先達たち。このような状況でもローマを名乗り、奪還した町も必要以上の略奪や私刑、暴力は働いていないことがわかる。彼らもローマを愛している。

 

 同じローマのもとに下り、より美しく、より輝かしい強国を作る。皇帝以前に、為政者としてさらに上を目指すための判断として考えないわけがなかった。

 

 「無駄な争いを避け、国を保つための動きをなぜしない! ローマ帝国第五代皇帝ネロ・クラウディス。「皇帝」のままであり続け、民草も守れるための恭順をなぜ取らない!! 何故戦うのだ!」

 

 ひときわ声を荒げ、右袈裟で斬りりかかり、剣で受け止めたネロを体ごと吹き飛ばすアレキサンダー。ネロも剣を地面に突き刺しつつも後方に下がり、一瞬たたらを踏む。

 

 しかし、その道は、恭順はないと決めていた。その想いをこうも踏みにじられる。そのことにネロはいら立ち、剣を強く握る。

 

 「・・・決まっておるであろうが! その道が気に食わぬからだ!」

 

 アレキサンダーの言葉に返すように剣を下段に構え、地面をけってからの切り上げ。一気に距離をつめ、大剣での一撃に今度はアレキサンダーが吹き飛ばされ、一瞬だが空中に浮いてしまう。

 

 「・・・っ! 気に食わない?」

 

 「ああ、気に食わぬ! 「皇帝」のままであろうと、そんなものがいくつもある国への恭順などまっぴらごめんである! そも皇帝とはその時代に一人! その責を負い、国を背負い、歴史を背負うものが名乗れる称号であろうが!! すべてを愛し、すべてから愛されることが許されるものだ!!」

 

 その後も振るわれる剣の攻撃の数々はとても細身で小柄な女が振るうとは思えぬほどの一撃。アレキサンダーもうまく攻撃をいなし、かわし、反撃をしようとするもそれ以上にネロの剣の一撃が重く、しびれる手を回復しているうちに次の攻撃が放たれてしまう。

 

 赤き薔薇の皇帝の持つ怒りを乗せた剣舞。その重さ、速さ、先ほどまでなかった気合のノリにアレキサンダーもクスリとほくそ笑む。

 

 「例えすべてのローマの先達が君を呼び掛けてもか!!」

 

 「ああ、そのつもりだ!! ただ一つの巨星、ただ一つの在り方! そして君臨し、栄え、越えて見せる!! この時代のローマの主は余一人!! 伝説の王だろうと名君であろうと知ったことではない! その口を閉じよアレキサンダー! 余の国に、道に立ちはだかる敵が余計な言葉をこれ以上吐くな!」

 

 先達だろうが、ローマであろうが自身のローマでなければ、敵であればねじ伏せて見せる。過去の名君の手腕すらも越えて栄えるとも言って見せる。その豪胆さ。アレキサンダーの事も察しても尚引かず。見てきたはずだろう。皇帝たちを。見てきただろう。数々の軍の運用術、その当地の妙も。それを見ても尚超えて見せる。過去のローマがすべている国だろうとも超えていくと。

 

 あきれるほどの覚悟、あきれるほどの啖呵。そして、同時にアレキサンダーは嬉しくなる。

 

 「っはは。合格だ!! 君は覇王になる! 皇帝になれる資質がある!! 栄華繁栄を誘い、歌い上げる薔薇の皇帝よ! 魔王にも、何にだってなれるよ君は! これからも進むといい! その熱こそが今のローマを動かす原動力となり、強さとなり、この先の希望となる!!」

 

 「黙れ! これ以上の言葉はいらぬ! 去れ! アレキサンダーよ! この時代のローマの道から退くが良い!!」

 

 互いに切り結んだ中での刹那。アレキサンダーの剣をネロの渾身の一撃が弾き飛ばし、切り返しての一刀がアレキサンダーの胸を大きく切り裂く。それは霊核に届くほどの傷。致命傷となったこと、アレキサンダーも満足したのかこれ以上は抵抗をやめ、腰を下ろす。

 

 「・・・ふふ。最後に、その輝きや誇り、咲き誇る花のような美しさと尊さはいい。けど・・・それは危険なものでもある。・・・覚えておいてね」

 

 最後に優しい笑顔、満足したという表情でアレキサンダーは退去。ネロの勝利が決定し、同時にこの戦線での勝利も決める楔となった。

 




華奈「ふぅ・・・あちらも終わりましたか」

エルメロイ二世「そのようだな・・・全く、あの方は・・・いや貴方らしいおせっかいか・・・華奈殿。これを・・・」
(扇と眼鏡を渡す)

華奈「・・・よろしいので?」

エルメロイ二世「どうせ誘う気だっただろうに・・・下手な演技はいらぬよ。この小賢しい知恵でもよければこの戦いに今後もはせ参じよう。それにまあ・・・我が弟子の職場を見るのも悪くはない」

華奈「やれやれ・・・お見通しですか。この陣地構築や戦術、戦略を持つ軍師の英霊の力と貴方様が来れば百人力ですよ。助かります。待遇については召喚してからおいおい」

エルメロイ二世「やれやれ・・・召喚されてからの契約など、ブラックな契約を結ばれそうで怖いものだが・・・まあ、しかたない」
(退去)

華奈「はぁ・・・私の直下兵とはいえ敵本陣で暴れまわったせいで部隊は八割負傷・・・ちびノブ様たちには特別手当を用意ですね。初任給の手当てとはいえこの苛烈な戦場ですし急な呼び出し。・・・・・ブリテン時代の割り当てでいいか皆に相談せねば・・・それと、この呼び水となるものも」

藤丸「華奈さーん! 大丈夫ですか~!!」

華奈「あ、はーい。藤丸様も元気そうで何よりです! けがはないですかー」





今回の孔明と華奈の話した策略。あのとんでもない大軍師の考える作戦に相応しいものか今でも心配になるものでしたが、とりあえずはこんな感じに。ネロ陛下もさすがに大量の戦死者をここで出してダメでしたとなれば求心力も落ちるはそもそも戦うための戦力自体がだめだよねということで兵を狙う作戦に。

英霊がいても、敵の波を受け止めるには限度がある底をついた戦術ですね。それと坑道戦術は三国志でもよく見られる戦術ですし、ロード・エルメロイ二世のいるイギリスに「穴掘り屋」の異名を持つ軍団がいたりしたのでそこからこの作戦を想いついたりもしました。ちなみに「穴掘り屋」軍団。ある国の入り江の名前になっていたり戦艦の名前になっていたりします。

タイトルも実はそこから想像して連合ローマ側をモグラにしちゃったり。


三国志演義、特に横山大先生の作品では最近の自爆大好き軍師張りに火計、爆発使いたい放題なお方。城を爆破して敵を追い出したりとか地雷で魏延とか敵兵を焼こうとしたりとか敵を炎の壁に押し込んでやったりとか本当に炎と爆発使いまくりの怪物級の戦術眼です。

ちなみに、正史における諸葛亮が北伐を成功できなかったのは実は正攻法な方法にこだわりすぎたからというのもあるそうです。ここらへんも実は司馬懿が孔明の軍の動きと配置を考察していたり、魏延が「かつての国士無双韓信のように奇策を用いて戦いたい」といった言葉をだめだと言って正攻法の進軍ルートにしたというエピソードからもうかがえます。



ワトリング街道での戦いは一説にはブーディカ側が後方の家族云々を含めて23万。ローマ側は1万だったそうです。個の力はあれども戦術を利用せずに勢いだけの突撃をした結果ローマにそこを突かれて敗北。という感じだったそうで、いかに数をうまく運用しくことが大切かということがよくわかります。

ブーディカサイドは家族などを差し引いても男衆の軍だけでも5~6万くらいはいたでしょうし、戦慣れした民衆のやばさは赤眉の乱などを調べるとよくわかります。それを跳ね返したローマ軍の強さは本当にすさまじいとしか言えません。



清姫怒りの火炎旋風。きっと敵兵からは背中に巨大な蛇、もとい竜が映ってたのでしょうかね。マスターの前では暴走気味な忠犬そのものですが


今回銀嶺が用いた魔術兵装。言っちゃえば魔術使いの武装などに近く、鎧などにも使用したシンプルな魔術をパーツごとにつけて攻城、砦、ほかの用途に使えるようにしたものなど。魔術部隊を多く持っている。基礎学習などもやっていた銀嶺ならではの武装です




本当に時間が取れない、仕事終わりの体力がないのがつらいところ・・・なんとなくですが華奈が対魔忍の世界で教師をしていたらという小ネタもやってみたいですし。多分疲労、心労、頭を下げるの連発でしょうけど。

見てくださっている皆様にここまで遅くでしか出せないのが申し訳ないです。

改めて、執筆速度が速い方々には本当に頭が下がる思いです。読者の皆様も、執筆者の皆様もこの寒い季節、身体を壊さぬようお過ごしくだされば幸いです

次回はあの炎の男登場。多分みんな大好きな王様です。

それでは皆様また次回まで、さようなら。さようなら。
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