転生愉悦部の徒然日記 作:零課
「魔術協会。ですか。悪くないですね私もこの霧をどうにかするか、出所を探るために高い場所や情報を絞るためにもいいと思いますし」
『うーん。そうなるかあ・・・・・いくら派手に家探ししても今なら問題ないのかなあ・・・?』
「流石に泥棒までするつもりはない。この状況。特異点への理解を深めるため。もっと言えば、だ。この霧が魔力を含んだものというのならその魔力を調べたりだのなんだのをする道具があるであろう魔術協会、時計塔に行けばいいだろう?」
『確かに・・・・あー気が乗らないけど、可能な限り派手にやらないでよ。たとえその影響が修復後に及ぶことはないとはいえ、百年前以上の時代とはいえその子孫が今もいる場所。荒らされるのはやっぱりいい顔をしないでしょうしね』
オルガマリー様は頭が痛そうな様子と声を出しますがそこは私も同意。というか資金確保とか備品整理の際に魔術師たちと交渉や渡り合ったからこそそういうのにも嫌がるのは納得ですし。
「かといってこの人数でごちゃごちゃと動き回るのは結局目が着くのと、可能ならそれで相手が動いた際には即応できるように人を分けたいですね。
私と藤丸様は分かれていきましょう。で、私は時計塔、魔術協会に。あそこには何度も足を運んでいますし罠の具合とか対応もできます」
「俺はマスターについていこう。この兵科ならまず不利は取らないはずだ」
「俺は藤丸君につく。恐らくだが近代都市での戦闘経験なら一番だと思う。それにガンナーの射撃能力はあって損はないだろう」
ストーム1はペイルウィングの姿に変化してイクシオン兵装とレーザーランスの装備。大尉さんは藤丸様へ護衛。貫通するアサルトライフルを持っていますし、実際にカエルやグレイたちとの戦闘の際の経験と立ち回りは安心できますしね。
「なら俺は藤丸達といる。先生と先生が認める戦士がいるっていうのならこっちも近接戦で荒事をできる剣士は必要だろ? それに大差はないがここで戦闘した分土地勘は少しはある。即応する際にも俺がいたほうがいい」
「オレっちは留守番だな。小難しい文章とか魔術はさっぱりだし、拠点防衛の戦力として使ってくれ」
「僕は魔術協会に行くよ。顕学者の端くれとしても興味があるし、僕もこの状況やいろいろ知りたいし」
「俺も出向くとしよう。やりたくもない缶詰に興味のある本や情報に触れられる取材のチャンス。それに肉盾・・・もとい護衛もたくさん特ればいい機会だ」
「わたしたちは華奈さんについていくよ? アサシンクラスだから、色々役立つ。かも? それと、霧の中でも目がきく」
「わたしはストーム2のおじさまと藤丸のお兄さんについていくのだわ。何もできないかもだけど、最低限戦えるから」
「私は一応華奈さんについていきましょう。このまま缶詰も嫌ですし聖杯戦争のあれこれは多少は縁がある身。暇つぶしの情報を得るのにも、ここ以外でも使えそうな陣地を手にするにも私の能力は使えましてよ華奈さん♬」
「ふらんはのこる。護衛? お留守番する」
「私は先輩といます。では、魔術協会へは華奈さん、ストーム1さん、ジキルさん、アンデルセンさん、ジャックさん、玉藻の前さんが。留守番組は先輩、私、ストーム2さん、モードレッドさん、ナーサリーライムさん、金時さん、フランさんということで」
『メンバーは決まったようだね。じゃあ、出発だ』
『ああ、それとフラン君。君の持つそのハンマー? と器具。少し気になっていてね。解析させてもらえないかな? お礼にお菓子と美味しいジュースを上げよう』
メンバーも無事決まったので善は急げ。ということで出発です。
「ふっ!」
「ほっ・・・!」
さてさてついてきてくれたメンバーがほぼ英霊、そしてジキル博士もまあそこそこ動けるので早足に魔術協会跡地に向かいましたがヘルタースケルターにマネキン? の襲撃はどこかで貰うもので。
少数なら私の飛ぶ斬撃とストームのレーザーランスですぐなんですがこうも数が多いと移動速度も鈍るというもの。銀嶺隊の一部を呼び出して戦うよりも少数である程度範囲を出せる技で戦う方がいいですし、しょうがないですかあ。
「ストーム、そのまま右に5発」
「マスターはそのまま前進と、んー3発放てばいいと思う」
「了解」
「いやはや。空中からの視界を手にしているとはいえこの濃霧の中着弾時の音と光以外ではエネミーを見れない私達ですがそれは同じはずの華奈さんも軽々と視界に入るかどうかの中でズンバらり。歴戦の猛者とはこうも怖いものなのでしょうかねえ」
「お母さんたちすごーい」
「おかげでこっちは多少がれきの上をたまに歩く程度で住んで実に楽でいい。そら、ここだろう。大英博物館・・・の跡地だがな。全く。派手にやったものだ」
まあ、歩きなれた道、あれこれ言いつつも火力支援や肉体強化の術式で支援してくれる玉藻様や目についた敵はサクッと刈り取ってくれるジャック様のおかげもあって軽いジョギングの速度で着いた場所はある意味この特異点の中にあってある意味異色と言えるもの。
基本建造物が壊されていない場所ばかりだったというのにここはもはや廃墟、あるいは解体跡地といったほうがいいほどに壊されていた博物館跡地があった。
『ああ・・・何と嘆かわしい。世界中の歩みと歴史、多くの美術品や作品がそこにはあったというのに、ここまで壊すとは・・・許せない! 私がそこにいればすぐさま犯人を殴りに行っているところだよ!』
『落ち着いてレオナルド。しかし、こうなると魔術協会跡地は空振りになるのかな?』
「いえ。魔術協会跡地はありますよ。正確にはここの下に」
『下?』
「魔術協会は時計塔を心臓部に地下から根を伸ばすように街のあちこちにつながっていたり、通路や研究室、倉庫などがある。だからたとえ地上部が派手に壊されていたとしても地下通路が無事ならそこからいける。資料を探せるというわけです」
「そういうわけです。どれどれ・・・」
とりあえずがれきのない場所に鞘でコンコンと地面をたたいて歩いていき、数歩、また数歩と歩いては耳を澄ましているとあたりの音が。
地下室への扉へのあたりを見つけたのでがれきをどけていると何やら地下室の方から変な音が。
「む?」
「蝙蝠でもいるのでしょうかね?」
「あー・・・ストーム。兵装をサンダーボウにチェンジ。それと、皆様。多分挟み撃ちの状況になると思うので申し訳ありません」
もう嫌な予感しかしないけど開けないと始まらない。ということでがれきをどけて隠し扉を蹴飛ばせば、ちょっとしたモンスターハウスが幕を開けてしまいましたとさ。
『ほほう。なるほど。このシステムは大変興味深い。これをもし軽量化して使えれば今後カルデアのマスターは愚か、カルデアの魔力の貯蓄もほんのちょびっとだけだが改善されるかもしれない。お手柄だぞフラン君』
「ふふん。もっとほめていいよー」
「おじさま。もっとプリキュアの続きが見たいのだわ! まだまだあるかしら!?」
「あるぞーほれ、金時君には仮面ライダーの作品。漫画でいいかな?」
「サンキューストーム2! いやー小難しい本やらフォックスの見せる旅本よりもこっちの方がおもしれえ」
先生らが出ていってこっちは留守番組。とは言っても叩くべき英霊や敵の親玉? も出てこなければこっちの聞こえる範囲内ではヘルタースケルターは動いていないので現在は思い思いの時間で体を休めつつ娯楽にふけっている。
そこの中には当然仲睦まじく話している藤丸とマシュもいるが、とりあえず今の時間を利用しておかない手はない。先生が沸かしてくれていたお茶を淹れ、二人の前におく。
「おい、藤丸。マシュ。俺がここに残ったのは戦力の過剰分散を避けるためでもあるが、もうひとつ。お前らに話したいこと。伝えたいことがあるからだ」
「何を伝えたいの。モードレッドさん」
「はい。私達にというのは、私と先輩にですか?」
「ああそうだ。マシュ。お前さんの力と、その装備はまさしく英霊のもの。だけどマシュは今の時代の人だし、偉人でもない。武将でもない。だけど言ったよな。デミ・サーヴァントだと」
「はい。私は先輩のデミ・サーヴァントであり、私の体の中にある触媒。その触媒を持っていた英霊の力を借りて戦っている状況です。宝具も使えていますが・・・まだ、真名は分からずですけど」
やっぱりだ。俺や先生を見てもマシュが何も感じていない。いや、もっと反応がないのがおかしかったがそれなら納得がいく。ったく・・・下手に深入りしたり、力を引き出させないことで体を気遣うやさしさのつもりかもしれないが、この状況で中途半端な力だけで今後への備えが出来るかってんだ。
俺やあんたを鍛えた先生は、母上は中途半端な手を打たないだろう。まず戦なら、練兵なら、その装備を用意するのなら最高のものを、最高の練度を持つ兵士に渡したってのに・・・あーもー・・・ったく。騎士道や紳士をどうこう言える状況じゃねえのがわかってんのかねこいつは。
「なら、話は早い。先生が何も言わないってことは俺に任せたってことだろうし。俺はマシュ。お前の中に宿る英霊の真名を知っている」
「ほ、ほんとですか!?」
「ああ、ただし。だ。カルデアがアイツの遺物、所縁のあるものを埋め込んでいるという部分やあえて正体を教えていないこと、先生が何も言わないことにいろいろあるのだろうけど、その上で言っておこう。それを聞く覚悟はあるか?」
『ちょ、ちょっとモードレッド卿!! マシュにその話は!』
ロマニだっけか? が口を挟むが無視。俺じゃなくてもパーシヴァルやほかの円卓にゆかりのあるやつらならあの気配ですぐ気づく。特異点や英霊の事を知っているのならいずれぶち当たる問題。隠したいのなら最初から戦場に出すなって話だ。
「覚悟。ですか・・・・?」
「ああーそうだ。いいか。お前はまだあくまでもデミ・サーヴァント。その力はあるし、ここまで来ている実績も認める。ただ、それでもあくまでお前さんはまだ英霊の力を使うだけの女の子だ。生まれつき戦士として教育されたわけでもない。ここで何も聞かずに場合によってはカルデアの一職員として藤丸や先生を補助する選択肢も選べる。今振るっているその力もまだまだマシュの中の英霊の本領じゃないしな。
ただ。その名前を知れば。真名を知るということはマシュ・キリエライトとして、そしてその英霊の名を、力を振るうものとしての責務と英霊として今後より苛烈な戦いに身を投じ続けることになる。全力の力を振るえて、カルデアの内部にも明るい戦士であり、藤丸とも仲のいい戦士だ。今後どうなることであれその力は必要とされるだろう。
かつて叔母上は少女の身でありながら国を思い騎士になるために聖剣を引き抜いた。先生は国や人々、俺らを守るために刃を振るい二つの国の将軍となった。マシュ。お前はその選択をしないといけない。どうする? 今ならまだ引き返せる」
「マシュ・・・」
藤丸もつらいだろうな。ただ、どっちにしろ保護者がいないこのタイミングだからこそ。モニターの向こうで騒ぐだけのやつらだけのこの状況だから覚悟を聞くべきだ。自分で本当にその道を選ぶのか。捨てるのか。本当に戦い抜く覚悟があるのか。その人理という重すぎるものを救うための旅路の最前線を行くのか。今の人間の覚悟と勇気を見せてほしい。
「マシュがどの道を選んでも大丈夫だよ。俺はマシュを信じているし、ちゃんと助けたり、支えられるよう頑張るから」
「先輩・・・! ・・・・・・・・・モードレッドさん。私に宿る英霊の名前を。真名を教えてください」
「いいんだな? 後戻りできる最後の最後だぞ?」
「大丈夫です。私は、皆と一緒に未来を見たい。進みたい。そのために力が必要なら。英霊の責務も背負います!」
マシュも、藤丸もよどみのない瞳で俺を見てくる。ああ、強く優しい目だ。不安もある。でもそれを奥底に沈めて前に進むと決めた目。俺の部下や先生たち、兄上たちの持つ瞳だ。ったく。あいつめ。いい女に力を振るってもらえるとは。生前も今も女の縁には恵まれているな。性癖は置いておくとして。
『私からも是非教えてあげてほしい。君の方から伝える方がマシュの中の英霊もきっと助けてくれるだろう』
「分かったよ。いいか、マシュ。お前の持つ英霊の力の正体、真名は円卓の騎士ギャラハッド。そして、もうわかると思うがギャラハッドの育ての母親は同じ円卓の騎士である華奈先生だ」
「あー・・・ひっどいめにあいました・・・けむい・・・」
『いやはや、まさか魔本、魔導書や魔術書の類がこの霧の影響のせいでモンスターとなって襲い掛かるとは。どこぞのホグワ〇ツ魔法学校か、B級ホラーパニック映画のような絵面でしたねえ』
あれから空飛ぶ本とヘルタースケルターとマネキンの群れと戦うというトンチキな内容を越えて、なんでか変なスイッチはいったアンデルセン様を落ち着かせてから玉藻様に内側から再度地下室の扉を施錠して結界を貼ってもらう。
「じゃあ、とりあえず調べるべき部屋から本。それと・・・・あー。あったあった。学生の実験用の教材。これが欲しかったんですよ~♪」
「そっちも何か目当てを見つけたようだな。じゃあ、こっちはこっちでホンを読み漁らせてもらおう。ああ、当然茶菓子とお茶はあるんだろう?」
「全くもう・・・ありますよ。少し渋めの紅茶と甘いスコーンが」
「しかし、これで何をどうするの?」
とりあえず結界と備えをさせてから私はその教材をもってから地下室を移動して抜け道の一つ。ぱっと見はただの高めのアパートメントの一室に移動。そこからよいしょっと屋上へ。
「ここなら霧の影響も薄いですね。この道具。水質や大気の中の魔力濃度を調べることが出来る道具でして。例えば魔術師が魔方陣や陣地を練り上げる際にどの場所がいいか、あるいはその水を使う際に使えるのか、そして魔術師がすでに何らかの動きをしているかを調べるための簡易キットなんです」
ぱっと見は試験官に一切れの紙が入っているだけのものだが、いわゆる小学校で使うリトマス紙の魔術師バージョンと言えばいいだろうか。その説明にストームもペイルウィングのまま女の声とスタイルで可愛く微笑む。
「つまり、これで霧の濃度の濃いところ、つまり魔力がこの中でも特段濃い所がこの霧の発生源。というわけね」
「ご名答♬ もはやここの霧の濃さは異常ですし、ドローンや何かを利用してもいい結果は出ないでしょうしね。あとは、おそらく下水道? とかを通じてこの霧を出しているのでそういう場所が集まる。集合住宅や広場は同じような場所がいくつも。
この中で本命のいる可能性が高い場所を探るのはちょうどいいでしょう? しかも、ペイルウィングと飛行特化のコアエンジンなら。その調査もすぐ。ですしね。はい。最低ランクですが気配遮断に近いことが出来る指輪。ではお願いしますね~」
「本部のいつもの無茶ぶりに比べればお茶の子さいさいってね♪ それじゃあーそれっ!」
そういってしばらく空を飛び回り、検査結果のデータをまとめていくことしばらく。
「・・・・・濃度の一番高い場所、一つはウェストミンスターエリア。国会議事堂のある場所ですか。で・・・もう一つは・・・ええ・・・・・シティエリアの中心地。私達の仮拠点のすぐ近く。そしてそこから近くの地下鉄エリアから特に霧が濃いと・・・灯台下暗し。って話じゃないですねえ。全く。良馬様。今の魔力の高い場所をポイント。此方の方でもマップに登録してから戻ります。
一度地下室に戻りますのでそれでは。ストーム。行きましょう」
「あいあい。後ろは任せて」
こっちの方は相手の拠点と思える場所を調べ終えましたが、あっちはどんな感じですかねえ~
「ただいま戻りました。そちらはどうでしたか?」
「ああ、ある程度の目星がついたと言えるな。とりあえず。だ。メモと写しの方も用意した。戻るとしよう」
「いやはや、私の術式や式神をコピー機のように使い倒して、自動筆記システムを用意したりとでやりたい放題でしたとも・・・・」
「いつの時代も作家とのやり取りって大変なのねえ。お、ジャックちゃんいい子にしていた? はい。おやつ」
「わーい♬ えへへ。ジャックいい子にしていたよ~絵本が無くてつまらなかったけど」
「ふふふ。まあまあ、もう家に帰りますからね。あったかい毛布もストーム2のおじさんも、ナーサリーちゃんもいますよ。じゃ、とりあえず皆さん私に掴まってくださいね。あ、それかみんなで手を繋いでいきましょう」
全員で手を握り、龍脈と仮拠点とここの流れが問題なくつながっているので縮地を使って一気に移動。この霧の中での移動も問題ないと判断しましたが無事にできてよかったです。
ドアをノックして部屋の中に入れてもらい、改めて全員集合。マシュ様と藤丸様が何やら一皮むけた様子と、力も違う。ふむ。モードレッド様がマシュ様の英霊の力を教えましたか。いい感じに席を外せたようでよかった。
「さて、調査の方を終えたわけだが、一応華奈の調査結果の方は既にカルデアにも出しているようだし、まずは俺の無駄話に付き合ってもらうとしよう。ああ、話を遮っても無理やりに続けるからそのつもりでな?」
「いいですよ。積もる話は多いですがまずはそちらから」
「では。まず、俺とジキルは聖杯戦争のシステムと英霊を気にしたこと。その上で実際にその聖杯戦争が多く行われているという極東。日本だったか。のシステムを着目した」
「一つの聖杯をめぐり、その聖杯の力を用いて7騎の英霊とそのパートナーとなる魔術師。マスターといえばいいかな。で争い合う。それが聖杯戦争のベースとなる。でいいよね?」
「はい。おおよそはそれであっています」
冬利様や咲さまの調べたものだと2騎、4騎と聖杯の代りとなる規模や触媒などを使っている場合は数が違いますが完成度、その『大本』となる者には一番これが近いでしょうね。
みんながほほうとなる中で挙手をするのはナーサリーちゃんを膝の上に乗せた大尉様が。
「なんだ?」
「その、聖杯戦争? とやらは英霊を呼び出す。で、勝者の賞品はその英霊を呼び出したりとか、特異点を作れるほどの力があるほどの聖杯を手にするわけだろう? つまり、勝者の魔術師、マスター。そしてパートナーの英霊が願いをかなえる。ということでいいのか?」
「む。そういや、過去の時代の英傑が何かを願う。と言ってもそれは歴史に変化を加えることになりかねないよな。それって、出来るのか?」
大尉様の質問に小首をかしげる膝の上にジャックちゃんを乗せた金時さまも疑問に思う。その願いが英霊の座の中だけで済むようなものならまだしも、大きな転換点、分岐点となるようなものを変えてしまう。それがかなってしまえば聖杯と言えども不具合や、何か異常が起きるのでは? と思ったのでしょうね。
実際その通り。誰かに死後でもいいので感謝を伝えたい。とかなら神様から天国にいるあの方からのメッセージとかその程度で済みますが滅ぶ運命だった国を救いたいとか、この怪物を消滅させてほしいとかの場合神話とか伝承、歴史が大きく。カイジのグニャア・・・ってレベルではないほどに捻じ曲がる。
「その疑問は正しいがその答えはNOと言っておこう。そもそもその疑問はその聖杯戦争は誰のものかという視点で大きく変わる。魔術師と英霊一組がその願いをかなえられるのならいい。聖杯にそこまで大きな願いがないのなら影響もない。
ただし、利己的であり必要なら身内も裏切り殺し合うのが今も常の魔術師が英霊にも願いをかなえる相手と勘定するか? 魔術師の悲願は世界に孔をあけて根源へ至ること。世界というぶ厚いものに孔をあけるほどのエネルギー、全能ともいえることをこなすためにはそれ相応の格を持つ贄が必要だ。
・・・・そら。考えてみろ。7人のマスターと7人の英霊。つまりは」
「たとえ勝利しようとも自分の英霊にすらも願いをかなえさせない。最初から呼び出された7騎の英霊全員が聖杯へとささげるための生贄。ですね」
聖杯戦争のそのシステムに全員が絶句。そりゃあそうでしょう。英霊たち。過去に世界に名を刻んだ人物たちですらその願い事尊厳を踏みにじり、願いを餌に呼び寄せてしまうとことん魔術師のための催しですし。
「で、でもあの英霊たちをそう簡単に生贄にできるの!? どうしうちでもしない限り最後に残った英霊だって素直に生贄になるとは・・・」
「藤丸。その手にある令呪があるだろう? 極東の聖杯戦争のシステムはかなりそれに強制力。英霊を従わせる効果が強い。さらに言えば、そこの狼騎士がいるだろう。アイツみたいに座から本体、本人が出てこない限りは英霊はどこまで行っても使い魔であり魔術師であるマスターに依存しなければ現界もできない存在。英霊という強力な魔術兵器となりえる存在をどこまでも隷属させる手段とその戦いの果てに手に入る聖杯の機能。
相当の天才でないと作れないシステムと言ってもいいだろう」
そう考えると大真面目にマリスビリー様は魔術師の中でも異端中の異端だったんですよねえ。根源に至るよりも先にカルデアの運営費用で人理の観測を主軸に、そして私達にも真剣に付き合ってくれた。情を向けてくれた相手ですし。
「ただ、そこで同時に疑問が生まれたんだ。なんでこの方法を選んだのかって」
ほほう。ジキル様もアンデルセン様も鋭い。
「と、いいますと? 今のところ大変非道と言えますが、魔術師としては選びそうな方法ですが・・・」
「はっきり言ってリスクが高すぎるんだ。君たちの組織カルデアのように電力を魔力に変換できる装置や技術がある。それと聖杯、その代わりになる何かに電力を魔力に変えたものを注いで器を満たすだけで同じようにできることが出来るか、シンプルにエネルギーを集めて世界に魔術で孔をあけて根源に至る。そう言った方法もあるはずだ。
だというのにこの危険な聖杯戦争システムを運用する。魔術師は愚か英霊を呼ぶリスクは何か。こと破壊力だけなら今の時代でも強い魔術師はいるはずなのにそれを選んだ。近現代の技術と魔術を合わせずにそれを選ぶのか。とね」
「あー確かに・・・オレっちも非道なことをしてとか、そういうのはいくらマスターの頼みでもしたくはねえなあ・・・」
「それにまあ、いくら戦争とはいえ、そのために一般市民を巻き込みまくるのは。ってことか。適当に自我を持つ大量破壊兵器を呼ぶよりも発電所でも買ってコツコツ魔力をためて用意すればいいのにそれをしない。同時にその術式が根源に至る何かによほど近道なのか、あるいは・・・?」
「ああ、あくまでも過程だが俺はこの聖杯戦争の術式は劣化版。格落ちしたスモールスケールのものだと思っている」
「おおよそ正解です。私達英霊はそもそも一人の魔術師なんかに使役されるような存在ではないです。英霊となって呼ばれている時点で低コストの省エネ仕様。でないとあっという間に干からびますからね。あ、私の場合は座から直接来ているのでフルスペックですよ?」
「えーと・・・つまりは聖杯戦争システムはいわゆるおままごとや砂遊びみたいなもの。で、華奈さんやアンデルセンさん、ジキルさんはさらにその先。つまりはこの術式の大本となるもの。本来のスケールで行う召喚術式があるということですか?」
流石玉藻様は鋭い。というか、英雄王たちとの経験もあるのでしょうかね。英霊の底知れなさ。型落ちとは思えない存在でもそれが一部分でしかないというのを知識と照らし合わせた経験で知っているゆえに分かったのかも。
「はい。玉藻さん。人類史に刻まれた英雄。世界に刻まれた。座にいる英雄たちを呼ぶというのは本来とんでもない召喚術。それを行うほどの何かがあり、それを見つけた魔術師たちが世界につながる英霊たちの型落ちした使い魔を使うことで根源へと至る。生贄としても最適なものと目をつけたんでしょう。でも、本来はきっと違う」
「俺たちの仮定はその本来のスケールの召喚術は『世界』が行う決戦術式。この人の世を。あるいは世界そのものを破滅させる存在へと対抗するためにかつて世界に名をとどろかせた戦士たち『英雄』を召喚する。その儀式『英雄召喚』こそが本来のものであり、決してお前たちも足を運んだ冬木の聖杯戦争のような魔術師の我欲に満たされたものではない。途方のない奇跡の術式が大本だと思っている」
「大正解といいましょう。その考えであっています。世界を救うために現れる英雄たち。世界が望む最高峰の戦士たち。それらによって破滅をもらたす存在からこの世界の未来を守る。それが聖杯戦争の大本です」
『うぇっぇえええ!!? ちょっちょちゅちょぉおお!! それ、まじ! ってか言っていいのかい、いい切っていいのかい華奈!?』
うぉおう。ロマニ様の大絶叫が耳に響く。ここだと鼻も眼もあんまり使えないので耳を鋭くしていた分声が響く響く。
「ええ・・・あだだだ・・・アンデルセンさまの観察眼と洞察力相手に嘘はつけませんし、私も英霊の座にいる時に英雄王様から直々に聞いた話でして。『銀狼はその召喚術式に見合う格はないであろうが何かと役立つ。その時が来れば呼んでやろう。我の雄姿を刻み付ける栄誉を光栄に思うがいいフハハハハハハハ!!!』と私自家製の梅酒とおつまみ味わいつつ楽しそうに話してくれました」
「ふん。お前だけの証言でも凡そあたりと思っていたがあの英雄王が銀狼と認める相手にそこまで話すのなら間違いなはいだろう。これで俺の話は終わりだ」
(ただまあ、その中でもこの異常事態なのといろいろとその術式も変化するもの。思わぬグランドクラスが出てきてもおかしくはないんですよねえ~)
「フォウ」
(そうそう。というか君とストーム1が絶賛イレギュラーだからねえ。ほんと楽しませてくれるけど目が離せない滅茶苦茶がワクワクと怖さだよ?)
(・・・・・・直接脳内に!?)
改めて、聖杯戦争ってすごいぶっ飛んだことしていますよねえ。そしてORT君のおかげでグランドクラスにエクストラクラスがあってもいいのさという公式のGOサイン。これは最高。