苛立つ_
耳に入る雑音が実に腹立たしい。
僕は高校生だ。「僕」なんて大人びてはいるが、一人称は俺だ。冒頭から恥ずかしいところを見せてすまない。
この世は…不条理だ…
俺は都立の朝野高校に通う高校1年だ。このクラスはこの学校でも勉学に特化したいわゆる特進クラス。
なのになぜだ。我が男子共はクラスで猿のようにお遊戯する者ばかりだ。なによりオタクに対して当たりが強い。怖い。
あれは始業式だった。
「え…お前アニオタなのかよ…おれ、そういうの嫌いなんだよね…」
そう言い放ったのは、クラスメイトでサッカー部に入部した寺井だ。そして肌が黒い。(ホントに受験してたのかよ…)
そいつは俺の前の席なのだが、馴れ馴れしく図々しいやつだとは思っていた。俺だって正直びっくりしたのだ。それと自分はオタクを金輪際打ち明けるべきではないと理解した。オタク文化を卑下に見る風潮は、かなり前より絶滅したと思っていたがそうではないようだ。
6月にもなると、みな打ち解け「友達」になってきた。だが、男子と女子の溝が深い。中学ではそこそこ仲がいい女子がいたはずなのに、さっぱり女友達ができない。これはおかしい。絶対にだ。(ふふ…この観察眼からは誰も逃れられまい…)
「せきっち、なに笑ってんの?」
(うおおおお…前の陽キャが話しかけて来たぞ…なんて返せばいいんだ?ここで返事を失敗したら一生いじめらるに違いない…うん)うまく声が出ない。突然、謎のあだ名で呼ばれたら誰だってそうなるだろう。たぶん。
「いやぁ、思い出し笑いだよ」
やってしまった。「やぁ」のところで声が裏返ってしまった。この陽キャも引いている。必死に目を反らす。辛い、逃げ出したい。寺井め…呪ってやる…
授業中…隣の席の石田さんのことを気にしていた。彼女はいつも怒った顔をしてるようで怖いが、目があったとき笑いかけてくれたことを胸の中で宝物にしている。断言しよう。彼女はかわいいと。
正直、青春とはこういうものだと思うのだ。クラスに可愛い子がいようがいまいが、「かわいい」と哲学的に自分を騙す。そして愛が生まれるのだ。
彼女…そう。石田さんは真正面から見ると可愛くない。いや、可愛くない気がしているだけ。かわいい(哲学)。少なくとも黒板を見るときに盗み見る横顔。あれは天使だ。
部活にも所属していない俺には、彼女の顔を拝みに朝起きる。この努力は青春と呼べるだろう。
だが虚しい。高校で青春しようとしているのは、なぜだろう。つらい。自分の薄っぺらい信念に「矛盾」が生まれていることに、後に気づく。
青春は終わりだ。もうやめよう。その時だ。彼女のLINEのトプ画。
「彼氏いるじゃねぇかよ」
偶像崇拝のその「哲学」は死んだ