綺麗になった魔王様   作:寅好き

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地球の危機?サイヤ人来襲!

 エイジ762年11月3日、まるで隕石のように、大気圏突入と同時に、火を纏い、二つの宇宙ポッドが地球に舞い降りた。

 街のど真ん中に突き刺さった宇宙ポッドを取り巻くように、人々が集まっている。

 そんな中、丸い大きな方の宇宙ポッドの扉が開く。

取り巻く人々に緊張が走る。

 隕石の落下と考えていたのだが、それは違い、宇宙人がやって来たのだと、気づいたからだ。

 人々が騒ぎ立てる中、ガタイがよく、頭が禿げ上がった、奇妙な服を着た年の頃50歳前後の男が宇宙ポッドから這い出てくる。

「やっと地球に着いたか。体がなまっちまったぜ」

男は不適な笑みを浮かべ、首や、肩の関節を音をならしてほぐしている。

「ナッパ何をやっている!さっさと行くぞ!」

ナッパと呼ばれた男が振り向くと、髪が逆立った小柄な男があからさまに不機嫌そうな表情で、イラついたように声を上げた。

「待ってくれよベジータ。少しウォーミングアップさせてくれよ」

「好きにしろ」

「へへ、ありがとよ」

ナッパは上機嫌で、ポッドで出来上がったクレーターから飛び上がり、人々が逃げ惑う中に舞い降りた。

「ウォーミングアップに、このごちゃごちゃした街を綺麗にしてやるぜ!」

ナッパは腰を据え、左手を右腕に添え、人差し指と中指を地面と平行にした。

「消し飛べ!」

おぞましい笑みを浮かべ、二本の指が天を指し示そうとした、その刹那。

「ダメよそんなことしちゃあ」

「ウガアッッ!!」

ナッパの断末魔と、木の枝が折れるような音が鳴った後に、二本の指が、あり得ない、天とは真逆のほうに折れ曲がっていた。

「お、俺の指がああぁぁああぁ!!」

「あらあら」

うずくまり、痛みに耐え兼ね叫び声をあげるナッパを、どうしたことかしらといった表情で眺める、我らがダーブラ様。

 街の崩壊と多数の失うはずだった人命を救出した瞬間だった。

「貴様何者だ!!」

ナッパのことを気にする素振りすら見せず、ベジータは声を上げた。

「私は正義と愛の使者ダーブラよ」

ビシッとポーズを決め、ダーブラは宣言した。

「テメエ、よくも俺の指を!ぶっ殺してやる!!」

怒りで我を忘れたナッパが、荒れ狂う牛の如く、ポーズを決めてご満悦のダーブラに襲い掛かった。

 ナッパの丸太のような豪腕が唸りを上げて、ダーブラに襲い掛かる。

 しかし、

「イヤあねぇ、こんなところで暴れちゃあダメよ。場所を変えましょ」

ナッパの攻撃をヒラリとかわし、ナッパにウィンクを送ると同時に、ダーブラは埃を払うかのように、ナッパの胸を軽く押した。

「グハアッ!」

ナッパの戦闘服は砕け、ナッパは遥か彼方に吹き飛んだ。

「ナッパ!貴様今何をした!」

ベジータにはダーブラがとった一連の行動が全く見えていなかったのだ。

 これこそが、戦闘力の大きすぎる程の差であった。

「偉そうに吠えてないで、貴方も飛んでけぇ」

「いつの間に貴様!ガハッ!!」

ベジータが懐に入り込んでいた、ダーブラに気づいたその時には、今まで味わったことのないぐらいの恐ろしい打撃(ダーブラにとっては突っついたぐらい)を受け、意識と共に、体もナッパが吹き飛んだ方向と同じ方向に吹き飛んでいた。

「ふぅ、行ったわね。じゃあ連絡しなくちゃ」

ダーブラは懐から、ブリーフ博士に作って貰ったピンク色のスカウターを取り出すと、装着し、連絡をとりはじめた。

「みんなあ、あと一秒ぐらいでそちらに着くと思うわぁ。二人はかなり気を押さえているみたいだから、ゴミみたいな戦闘力だって油断しちゃあダメよぉ。それとぉ、私がいくまで、二人をこらしめてあげなさあい。くれぐれも殺しちゃあダメよぉ」

「分かりましたダーブラ様」

「分かったぞ」

スカウターから、少し強張った感じのラディッツといつもと変わらない悟空の声が聞こえると、ダーブラは朗らかな笑みを浮かべ、通信を終了した。

「やっぱりラディちゃんは少し緊張しているみたいね。でもみんななら大丈夫。私も準備しなくっちゃ」

ダーブラは懐からカプセルを取り出すと、ボタンを押し、そこに放り投げた。

◇◆◇◆◇◆

「皆の者油断するなよ」

作戦参謀のゲロが発言すると同時に、二つの物体が、地面に突き刺さっていた。

「ナイスコントロールじゃのぉ」

「死んでるんじゃないですかねえ?」

亀仙人はダーブラの正確無比なコントロールに驚き、クリリンはダーブラにやられた、二人のサイヤ人の安否を、敵ながら心配していた。

「それにしても、小さい気だな。一体いくつあるんだ?」

「バカ者、油断をするな!ダーブラ様が言っておられただろ。奴等はお前たちと同じように気を押さえているんだ。まあいい。押さえている現時点の力は測ってやろう」

軽口を叩く、ヤムチャを軽く叱責した後に、ゲロは改良したスカウターで計測を始めた。

「なになに、大きい男が0、08キリ(4000)小さい男が0、36キリ(18000)か。お前たちよりは気を押さえる技術は劣ってはいるが、完全に気を押さえてはいるな」

「本当だな。0、08とか0、36じゃあダーブラの話に聞く、暗黒魔界の赤ちゃんにすら勝てやしないからな」

ヤムチャはダーブラに話してもらった暗黒魔界の話を思い出しながら、ウンウンと頷いていた。

「なあゲロ。おらたちはいつまで待ちゃあいいんだ?早く戦いてえぞ」

悟空は依然として、地面に突き刺さったままピクリともしないサイヤ人の二人を見て、準備運動をしながら実質的にそこの司令塔であるゲロに尋ねた。

「落ち着け孫悟空。こちらを焦らしているのやもしれん。奴等のペースに乗せられたら負けだ。奴等が起き上がるまで待つんじゃ」

ゲロの指示を受け、しぶしぶ悟空は納得し、そこに腰をおろした。

 二人のサイヤ人が意識を取り戻すまで、それから約一時間かかったのだった。


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