「みんな~たいへんなことが起こったのよ~」
内股、腕はV字で正に女の子走りで、厳ついオッサン、いや元暗黒魔界の王ダーブラが走ってくる。
しかし、
「いくぞ、クリリン!わしのフルパワーかめはめ波じゃ!」
「全力で受け止めさせてもらいます。武天老師さま!」
亀仙人とクリリンは組み手をし、
「来いカカロット!ダーブラ様の為に俺たちは強くならなくてはならないのだ!」
「ああわかってらあ。だりゃー!」
ラディッツ、悟空も修行をしている。
それぞれが集中しているために、ダーブラには気づいていなかった。
「み~ん~な~!」
「波ーーー!!」
「やりますね武天老師さま!」
「み~ん~な~!」
「カカロットお前の力はこんなものか!」
「まだまだだ」
何かがキレた音がした…
「俺の話を聞けーー!!オマエラー!」
それまでのおネエ言葉は吹き飛び、本性を表した、魔王が地面を殴った。
ダーブラの腕が突き刺さった地面を起点として、半径10キロメートルが粉々に消し飛び、大きなクレーターができあがった。
そしてその場にいた、亀仙人、クリリン、悟空、ラディッツは地面から足だけを天に向けて掲げ、植物のように意識を失っていた。
「あら~私としたことがぁはしたないまねしちょったわぁ。反省反省」
ブリッコポーズを決めながら舌を出して、頭をコツンと叩くダーブラ。
正に悪夢である。
誰もが意識を失っていたことが幸いであった。
ついでに言うと、この時ダーブラが作り出したクレーターに比べると、後々サイヤ人が攻めてきて、地球に与えた被害など、笑い話にもならないほどの軽微なものであったという。
◇◆◇◆◇◆
「申し訳ありませんでしたダーブラ様。ダーブラ様に気づかなかったとは、俺の不徳のいたす所です。腹を切ってお詫びを」
ラディッツは涙を流しながら土下座をし、顔をあげると、戦闘服を脱ぎ、気を纏わせた腕で腹を貫こうとした。
「ダメよラディちゃん!」
「ぶはーーっ!」
ダーブラの強烈な平手打ちがラディッツの頬を襲う。
ラディッツはそのまま吹き飛び、数秒後、地球を一周し、地面に見事落ち、めり込んだ。
「命は粗末にしちゃダメよ。って聞いてるのラディちゃん」
「ダーブラダメだこりゃあ。兄ちゃん首の骨が折れてっぞ」
「あわれじゃのお」
「前の俺と一緒だ…」
悟空はブラリと力なく揺れるラディッツの首をツンツンし、亀仙人は手を合わせ冥福を祈り、クリリンは以前のことを思い出し青ざめていた。
「もうサイヤ人は柔ねぇ。悟空ちゃん仙豆あげちゃって」
「おう」
悟空は懐から仙豆を出すと、ラディッツの口に押し込んだ。
折れた筈の喉が、仙豆を飲み込んだ瞬間だった。
白眼を剥いていたラディッツはいきなり飛び起き、復活した。
戦闘力は数倍になり。
「よかったわぁラディちゃん。もうあんなことしちゃあダメよ」
指を交差してばつを作り、ウィンクするダーブラ。
亀仙人、クリリンにあまりのおぞましさに、鳥肌総立ち、戦慄が走り、悟空は苦笑いを浮かべるなか、感動したラディッツは咽び泣きながら、頭を地面に擦り付けて、侘びた。
そんなこんなで時間が経ち、約一時間後ぐらいだった。
「なあ、ダーブラ。おらたちに何を言うつもりだったんだ?」
「そうよ大事なことを忘れてたわ。事件が起きたのよ」
血相を変えてダーブラが叫ぶ。
「なんかあったんか?」
「重大な事件よ。なんでもジンジャータウンで、若い姉弟が拐われたらしいのよぉ。許せないわよねぇ。ここに手がかりが映ってるテープがあるわぁ。みんなで解決するわよぉ」
「はいダーブラ様。しかし、テープを見るにも見るための道具が」
ラディッツの指摘にダーブラはハッとし、首を傾げる。
ダーブラ、ラディッツ、悟空、亀仙人が考えている、そんな時だった。
「ここから近いのはブルマさんの家ですね。そこで見せてもらえばいいんじゃないですか」
クリリンが明確な答えを告げる。
「さすがクリリンよく気づいたな」
「いや誰でも気づくだろ…」
「たぶんブルマんとこならヤムチャもいるだろうし、アイツもおらたちの仲間にいれっか」
悟空が何気なく言った一言により、ヤムチャの運命も決まってしまった。
「新たな私たちの仲間がふえるのねぇうれしいわぁ。行くぞ野郎ども!!」
ダーブラの掛け声と共に、皆は走り出す。
目指すは西の都。
しかし、ここで重大な問題が、ダーブラ、ラディッツ以外は舞空術が使えないのだ。
「はあしょうがないわねぇ」
ダーブラはため息をつくと、天高く気弾を打ち上げる。
気弾は空高く舞い上がると、花火のように弾ける。
五分後、辺りにけたたましいプロペラ音が響き、巨大な飛空挺が現れる。
「でっけえな。ありゃあなんだダーブラ」
「私のマブダチのピラフちゃんの飛空挺よぉ。西の都まで連れてってくれるわぁ。みんな乗るわよ」
地上に着き、ハッチが開くと、ピラフ、シュウ、マイ、が降りてきて、ダーブラに頭を下げる。
「お呼びですかダーブラ様」
「もうそんなに畏まらなくてもいいのよぉ。私とあなたのなかじゃない。西の都まで乗っけてってくれるかしら」
「それは喜んで……」
ピラフが顔を上げた瞬間硬直した。
「よっ久しぶりだなピラフ」
「ご、悟空貴様なんでこんなところにー」
「ん。おらもダーブラ戦隊だからよ」
「二人は知り合いだったのぉ?」
軽快に会話のラリーを続ける二人の様子を見て、ダーブラが話かける。
「ああ昔からの知り合いだ。まだわりぃことしてんのか?」
「悪い!?」
ダーブラの纏う気が爆発的に高まる。
「どういうこと悟空ちゃん…」
「いやな。ピラフは昔から――モガモガ」
「何をいってるんだい。僕たちほどの善人はいないよ」
ピラフ、シュウ、マイが三人係りで悟空の口を塞ぎ、必死に取り繕う。
「そうよねぇ。ピラフちゃんたちが悪いことなんてするはずないもんねぇ。よかったわぁ。悪いことしてたら……」
ダーブラの語気が強まる。
「そ、そ、そ、そんなことありませんよ。さあ乗ってください。到着が遅れてしまいますよ」
「そうねぇ。おじゃまするわあ」
胸を撫で下ろしたピラフたちは愛と平和のダーブラ戦隊を乗せて、西の都に向かった。