「なあ、ダーブラ早くしてくれよ」
「カカロット、貴様ダーブラ様に向かってなんて口の聞き方を」
「いいのよ、ラディちゃん。私が遅いのがいけないの。いくわよ悟空ちゃん」
ダーブラの気が膨れ上がる。
「スキップ!」
「お、オラの番が……」
「フン、カカロットめ自業自得だ」
Z戦士+ダーブラはピラフの飛空挺の中で和やかにウノを楽しんでいた。
全く殺伐としたドラゴンボールの世界とはかけ離れた光景で。
しかし、その和やかさを、一瞬で混沌に落とす言葉を言った者が…
「ピチピチギャルがいないと楽しくないのぉ…」
天下の亀仙人こと武天老師である。
そして、その言葉に返す者が
「何いっているのよ亀ちゃん。私がいるじゃない」
『……………』
場が静まり返る、あのラディッツでさえも金縛り状態に。
ゴツイおっさんがガチムチの体をクネクネさせながら、頬を紅潮させている。
「オエッ、俺トイレ行ってくる。悟空後は任せた」
「待つんじゃクリリン!!」
真っ青な顔をしたクリリンが亀仙人の制止を振り切り離脱した。
「どうしたのかしらクリちゃん…」
雰囲気が悪くなる、その時、救いの福音が
「ダーブラ様、カプセルコーポレーションが見えてきました。そろそろ準備を」
艦内に放送が流れる。
助かった!と誰もが思い、安堵の溜め息が誰ともなく吐かれる。
「みんな降りるわよぉ。甲板にいきましょお」
ダーブラに続き、ラディッツ、悟空、亀仙人、少し遅れて帰ってきたクリリンが続く。
甲板についた皆はそのまま宙に飛び出し、カプセルコーポレーションに降り立った。
「おお、久しぶりだな」
悟空はブルマの家兼会社である巨大な半円状の建物を見上げる。
「ねぇねぇ悟空ちゃん。あれ何?」
ダーブラが悟空の肩をチョンチョンとつつき、何かを指差す。
指の先にあったものは。
建物の玄関の隣に何か黒いオーラを放つオブジェが。
「ん~~。ああ、あれはヤムチャじゃねえか。おーいヤムチャー」
黒いオーラを放つオブジェは、暗く沈んで体育座りをするヤムチャであった。
「おお…悟空か。久しぶりだな…」
「何やってんだヤムチャ?」
「ああ…ちょっとブルマに追い出されてな…」
「また浮気でもしたんじゃないですか」
会話にクリリンも加わる。
「羨ましいのお」
と亀仙人。
「汚らわしいわぁ」
とダーブラ。
「フン、屑が」
とラディッツ。
三者三様の意見だが、一致しているのは批判的な意見ということだ。
「無実だ。俺は浮気なんかしていない。雑誌の『金曜日』に『ホームラン王ヤムチャ。夜もホームランや!!』なんて記事を女の子と腕を組んだ写真と一緒に載せられたんだよ。まだ何もしていなかったのに」
「………………」
誰もが汚い物を見るかのように半目でヤムチャを見下ろしている。
「行くわよ悟空ちゃん。汚れちゃうわ」
「ああ、近寄りたくもない」
「変わりませんねヤムチャさん」
「羨ましいのお」
ダーブラ、ラディッツ、クリリン、亀仙人はカプセルコーポレーションに入っていった。
「あ~あ。ヤムチャをダーブラに進めるつもりだったんけど。どうすっかな」
悟空は苦笑いを浮かべて頭を掻いていた。
前途多難である。
ところ変わってカプセルコーポレーション内部。
「あら孫君。久しぶりね。どうしたのよ」
「よっブルマ。このテープを見たいんだがよ」
「そう。ついてきて」
ブルマが歩いて行くのに皆がついていく。
「ねえ孫君。あの柄が悪くて見たことない服着ている男と、なんかピンクなオーラを発している不気味なオジサン誰?」
ブルマが並んで歩く悟空に、ラディッツとダーブラに聞こえないように、小声で尋ねる。
いきなり加わった怪しい二人に疑問を持つのも当然の成り行きだろう。
「ああ、あの変な服着てんのは、オラの兄ちゃんらしい」
「えっっっ!孫君お兄さんいたの?」
「いたみてえだ。オラもさっき知った」
「孫君らしいわ」
朗らかな笑顔で笑う悟空を見て呆れるブルマ。
だが、悟空との付き合いが一番長いブルマはすぐに立て直す。
「じゃああの人は?」
「ウッフン」
ブルマの視線に気づいたダーブラがウィンクをする。
別の意味でデスウィンクである。
「頭を痛いわ」
頭を抱えるブルマ。
当然といえば当然。
「あいつはダーブラってんだ。詳しくはわからねえ」
「はあもういいわ」
ブルマはさっさと歩いて行ってしまった。
そんな中でも悟空の頭の中では、ウィンクしたダーブラを見て、レッドリボン軍のブルー将軍に似てっなと考えていた。
「孫君。テープ貸して」
「おう」
悟空からテープを貰いセットするブルマに魔の手が迫る。
「ええのお」
「キャーーー!!」亀仙人がブルマの尻をなで回す。
「ぐぉらー亀ちゃん!女の敵よ!」
怒りのダーブラのビンタが亀仙人に決まる。
亀仙人は窓を突き破り、お星さまになった。
「結構いい人ね」
亀仙人のおかげで、ブルマの中でのダーブラへの好感度が上がっていた。
天下の亀仙人はこれを見越してやったのかもしれない。
さすがである。
で、亀仙人が帰還することもないまま皆でテープを見始めた。
流れる街角の映像。
そこに写し出されるのは、肩にかかるくらいの黒髪の長髪の少年と、金髪の少年と同じくらいの髪を持つ少女であった。
「結構カワイイ」
クリリンはポツリと呟く。
「見るところはそこじゃないわよクリちゃん。もうちょっと先よ」
ダーブラの指示を受け、ブルマは早送りする。
「そこよ」
ダーブラの指示で止められた映像には、高齢の老人らしき人物が、少年と少女に話し掛け、一緒に立ち去る映像であった。
「この後、この二人の姉弟は行方不明になったのよ。みんなで探すわよぉ」
「でもこれだけじゃ……」
「確かに手がかりが少な過ぎるのぉ」
クリリンといつの間にか復活して帰ってきていた亀仙人が呟く。
誰も亀仙人に気づいてはいない。
さすが天下の亀仙人である。
「あっこの人!」
映像を見ていて、何かを考えていたブルマが声をあげる。
「どうしんだ。急に大きな声出してよ」
「この人多分ドクターゲロよ。前に何かの資料で見たことあるわ」
「ドクターゲロってあのレッドリボン軍の」
悟空とクリリン、亀仙人の頭の中で、あの激闘が思い起こされる。
「みんなは知っているのねぇ」
「ああ。だがどこにいるかまでは」
「少し待っていてくれる。ゲロの住んでいる場所が載っていた資料があったと思うから」
ブルマが出ていく。
「敵は見つかったわね。少し私も準備してくるわ」
ダーブラも部屋を出ていく。
「どうしんだダーブラのやつ?」
「分からんのかカカロット。ダーブラ様は瞑想をして気を高めに行かれたんだ」
「そうなんか」
ラディッツの話を聞き、悟空はただただ感心するのであった。