綺麗になった魔王様   作:寅好き

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長らくお待たせしました。
待っていてくれた人には申し訳ありません。


愛と正義で万事解決

 亀仙人の表情があからさまに強張る。

「まさかお主が我が師武泰斗様の敵の魔王ダーブラだったとは…わしも老いたものじゃ」

表情は強張ってはいるが、亀仙人は戦うつもりは微塵も無かった。

 それは亀仙人にとっても驚くべき事実であった。

「恨んでないの?」

亀仙人以上に表情はひきつり、いつもと違いダーブラの声には全くと言っていいほど力がなかった。

「最初は殺したいほど恨んどったわ」

ダーブラは唇を噛んだ。

流れ落ちる血液を見ながら、亀仙人は表情を緩め続ける。

「じゃがな今のお主を見て、その恨みも消し飛んだわい。武泰斗様の思いが実を結んだと思えたからの、極悪非道の魔王ダーブラを改心させてしまったとな」

それは亀仙人の本心であった。

自分の偉大な師匠が誰もが成し遂げられないであろう、偉業を成し遂げたことへの誇り。

 そしてもうひとつは、今までダーブラと共に過ごしてきた日々が亀仙人の心を動かしていたのだ。

「ごめんなさい」

「謝るのが早いぞ。これからはお前の贖罪の日々を間近で見せてもらうからの」

「ええ、見ててちょうだい」

亀仙人とダーブラの表情は晴れやかだった。

 数百年の時を隔てて、敵同士の間柄が仲間へと変わったのである。

「ダーブラ様…」

「じっちゃん…」

「老師様…」

 その様子を少し離れた所で、ラディッツは涙を流し、悟空、クリリン、ヤムチャは温かい目で見守っていた。

◇◆◇◆◇◆

温かな雰囲気に包まれていた時だった、

『艦内放送、艦内放送、ダーブラ様、目的地上空に到着しました』

ピラフが目的地に到着したことを告げた。

 ついに行動を起こす時が来たのだ。

「さあ、ダーブラ戦隊の初仕事よぉ。気合い入れて行くわよ!」

「おう!!」

皆はその声を合図に、飛空挺を飛び出した。

 ダーブラとラディッツ以外は舞空術での高速移動はできない。

 しかしながらも、空に浮くだけならばなんとかできていた。

「なあダーブラ、家なんてどこにもねえぞ」

「そうねえ」

辺りを見回しても、あるのは岩山ばかりで、人が住んでいる形跡すら微塵も存在していない。

 しかし、正義に燃えるダーブラはそんな些細なことで諦める男?ではなかった。

「みんなしらみつぶしに探すのよぉ!!」

皆は岩山に降り立ち、バラバラに散らばり探し始めた。

 約5分後

「ダーブラ様、見つけました!!」

辺りにラディッツのやったぞダーブラ様のお役に立てたというような嬉々とした声が響き渡る。

「でかしたわラディちゃん」

「兄ちゃんやったぞ」

皆が集まり、ラディッツは誇らしげに指を指す。

 ラディッツの指し示した所には、岩山が人工的にくり貫かれたような小さな洞穴があり、穴の少し先に分厚い鋼鉄でできた門が何者も入れないという風に立ちふさがっていた。

「少し骨ですが、あの門を吹き飛ばしましょうか?」

「いや待ってラディちゃん。相手は犯罪者かもしれない。でもね、礼を失してはいけないと思うの」

「流石ですダーブラ様!!」

ラディッツは尊敬の眼差しでダーブラを見つめ、それ以外は、ラディッツを暑苦しそうに見ていた。

「行くわよ」

ダーブラは穴に降り立ち、鋼鉄でできた扉の前に歩みよった。

『来んかいワレェ、ワイはどんなことがあってもここは通さんぞ』

とでも言わんばかりに鋼鉄でできた扉が立ちふさがる。

 ダーブラは扉の前に立つが、呼び鈴が見当たらない。

「しょうがないわね」

ダーブラは小さく呟くと、腕を上げた。

 皆は静かにその動静を見守る。

 ダーブラのノックの第一打、ドゴン!

「!!!」

普通ノックはコンコンだろ!という突っ込みすら忘れる程の違和感の塊の音。

『グホッッ』

まるで扉が断末魔をあげたかのようだ。

 ダーブラの拳が厚さ数十センチの鋼鉄の扉を抉り、扉はくの字に折れ曲がる。

ノック第二打、ドスン!

『グホアッ、見事だ!!』

と言わんばかりに鋼鉄の扉は扉としての役目を終え、崩れ落ちた。

 皆は、崩れ落ちた扉に

「よく二発も耐えた。見事だ!」

と心の中で賛辞を送っていた。

 現段階でも、この中でダーブラの二発の打撃に耐えられるものはいないという事実からの、心からの賛辞である。

「やわっちいわねぇ、これじゃあ防犯として心配ねぇ」

ダーブラ相手じゃ何もかも紙だよ!!

皆は心の中で突っ込むのが精一杯だった。

「何事だ!?」

扉が無くなり、現れた機器の並ぶ室内から見るからに高齢な老人が血相を変えて飛び出してきた。

 その老人の服には赤いリボンのようなマークと、そのマークの中にR、Rと入れられた見覚えのある印があった。

 その印が、悟空、クリリン、亀仙人にあのレッドリボン軍との忘れられない抗争の思い出と、その老人がDrゲロだという確信を与えた。

「何者だお前らは!わしのラボに何のようだ!」

「あなたがDrゲロね、拐った姉妹を返してもらうわよぉ!」

ビシッと決めポーズをとるダーブラ。

呆気に取られるゲロ。

嫌な空気が流れる。

「居たぞダーブラ」

二人を無視して、中を捜索していた悟空が若い男女を抱え起こす。

「わしの大事な素材に触れるな!!」

「動くなよじいさん!」

ヤムチャが飛びかかろうとするゲロを取り押さえる。

 史実(原作)とは全くの逆の立場に当たるものである。

「悟空ちゃん二人は大丈夫?」

「ああ、眠ってるみてえだ」

「よかった」

ダーブラはホッと胸を撫で下ろす。

 まさに正義の見方である。

「えっと、亀ちゃん…はダメで、ヤムちゃん…もダメか。じゃあクリちゃん二人を飛空挺に連れていってくれる」

「分かった」

クリリンはまかせろといった感じで、二人を抱えて飛空挺に向かった。

「なぜわしらじゃいけないんじゃ?」

亀仙人がヤムチャも思った疑問も合わせて問う。

「当然じゃない。危ないからよ!」

「何が危ないんじゃ」

「あの娘の貞操よ。私の次くらいに綺麗だったから。二人に任せたら危険だったからよ」

「わしをヤムチャと一緒にするでない!わしはオッパイでパフパフさせてもらうぐらいしかせんわ!!」

胸を張る亀仙人、軽蔑の眼差しを向けるラディッツとダーブラ。

「十分犯罪よ!!」

振るわれた正義の拳が、亀仙人を煩悩と共に空の星へと変えた。


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