綺麗になった魔王様   作:寅好き

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愛と正義の説得開始

「どうすんだダーブラ?もう目的は済んだんじゃねえのか?」

人造人間に改造されそうになっていた姉弟を助け出すことに成功したため、悟空は次の指示をダーブラに仰いでいた。

「そうねぇ、もう済んだんだけど気になることがあるからすこーし待っててくれるかしら」

ダーブラは部屋の奥に進んでいく。

 ダーブラが見つめる先には大きなカプセルのような見慣れない機器が。

「それに近づくな!!」

ヤムチャに抑え込まれ、それまで静かにしていたゲロが突然顔色を変えて声を上げた。

 その豹変のしようにその場にいる皆も目を見張った。

 何か触れて欲しくないものがあるというのは明白ではあるが、その変わり様は常軌を逸していた。

 しかし、我らがダーブラ様は素知らぬ素振りでそのカプセルに到達した。

「や、やめろ!」

「こ、こら暴れるな」

ゲロの制止も効果を為さずダーブラはカプセルを覗きこんだ。

「こ、これは!」

「ダーブラ様どうかいたしましたか」

「いったいどうしたんじゃ?」

それまでことの成り行きを静かに見守っていたラディッツと亀仙人も声を上げたダーブラに問いかける。

 ダーブラの表情にも変化が訪れていたためである。

「まさかこの子もあなたが改造したのかしら」

ダーブラは強めの口調でゲロに問いかける。

 部屋の中の雰囲気が緊張感に包まれた。

 ダーブラから強い不信感を伴ったオーラがそう足らしめたのだ。

「ち、違う…それはわしが無から造り上げた機械人形じゃ…」

ダーブラの気迫に飲まれそうになりながらもゲロは答えた。

「そうなのね、よかったわ」

口調が穏やかになり部屋の雰囲気もガラリと変わる。

 ゲロだけでなく、悟空、ヤムチャ、ラディッツ、亀仙人も胸を撫で下ろしていた。

「す、素晴らしいわぁ」

ダーブラは嘆息を漏らした。

 何かウットリしたように。

「この子からはほんとうに純粋に清流のように清らかな心根を感じるわ」

「いや機械だろ?」

「黙っていろゴミクズが」

「はいはい」

ヤムチャとラディッツの喧騒はほっておきダーブラは続ける。

「ここまで心の綺麗な子を見たのは初めてだわ。誰も彼も、あっ悟空ちゃんは除外ね。ヤムちゃんや亀ちゃんのように欲望を持っているものよ。でもねこの子にはそれが存在しないの!ヤムちゃんのようにこころが薄汚れていないのよ!」

「俺も最初は純粋だったんだ。生まれ育った環境がそれを許さ―――」

クドクドとゲロを話語りだすヤムチャを無視して、ダーブラが解放されたゲロに歩みよる。

「く、来るな!」

ダーブラが一歩一歩歩みよるごとに、ゲロは本能的に、生命以外のものに危機感を鋭敏に感じとり、おのずと後退りする。

 しかし、そのいたちごっこも直ぐに終結を迎えた。

「!!」

下がり続けるゲロが壁にまで追い詰められたのだ。

ダーブラはウットリとした表情でゲロを壁に押し付けた。

「ご、悟空よ、わしらは外に出ていたほうがいいのではないのか」

「いきなりどうしたんだじっちゃん?」

「いやな、なんか見てはいけない禁忌の世界を見せられそうでな…」

「老師様の言う通りだ悟空。取り返しのつかないものを見ることになるかもしれん!あと戻りができなくなるぞ!!」

「頼むわしを一人にしないでくれーー!!」

亀仙人、悟空、ヤムチャの話声を聞き付けて、ゲロが懇願した。

 必死の形相で懇願するゲロにダーブラは顔を近づける。

「な、なんだと言うんじゃ」

「あなたの知識と技術と本心に感動したわ」

「へ?」

語りかけるダーブラにきの抜けたような声でゲロは呆然とする。

「だ~か~ら~、あなたの技術と知識と本心に魅了されたから仲間になりなさいってことよ」

「お、お待ちくださいダーブラ様!そいつは犯罪者です!高潔な我らの見方にはそぐいません!」

焦りのこもった声でラディッツはダーブラに讒言した。

なぜかゲロもラディッツに続く。

「そうじゃ、わしはわしを認めなかった者に復讐し、断罪するためにあれを作ったんじゃ。けしてお前が魅了されるような心意気などもってはおらん!!」

ゲロはダーブラが正義の心を持ち、なぜだか自分にもそれを感じて勧誘してきたのだと、感じとっていた。

 しかし、自分は自分の欲望にしたがい悪の道、マッドサイエンティストになったことに一種の誇りを抱いていた。

その為に、ダーブラの発言によってそれが汚されたような感じを受け、怒りを覚えたのだった。

「何をいってるのよ。確かにあなたは復讐のためにあの子を作ったのかもしれない。でもね、それは心の表層的な部分よ!本心はそこじゃないの!」

「わしの本心じゃと」

「そうよあなたの本心よ。あなたの本心は確かに人間は嫌っていたかもしれないわ、でもね、地球や自然、動物への愛は持っていたはずよ」

「なぜそんなことが言える!」

ゲロが声を荒らげた。

「あの子がそうだからよ。子は親の鏡、あの子からは、地球や自然、動物に対する深い愛情を感じ取ったわ。そんな子を造り上げたあなたに、それがないはずはないわ」

「いや…それは…あれが失敗作じゃからで……」

ゲロの顔色がみるみる変わっていく。

 ダーブラに押され出していた。

「それは違うわ!!機械に心を持たせるほどの技術をもったあなたが失敗することはないし、そもそもあの子は失敗作なんかじゃないわ!!」

「!!」

項垂れたゲロの耳元でダーブラはこんこんと約三時間に渡りマインドコントロールをするかのごとく説得を続けた。

「そ、そうだったのか…わしは、わしは地球や自然を愛していたのか……」

膝をつき、地面に手をつき呟くように反芻するゲロを温かい笑みでダーブラは見つめている。

 それを疲れた表情ではありながらも驚きの表情で見つめる、悟空、亀仙人、ヤムチャ。

 尊敬の眼差しで見つめるラディッツ。

 飛空挺から帰ってきたが、状況が全く分からないクリリン、と三者三様の表情がそこには存在した。

「あなたはこれからどうするの?」

ダーブラがゲロの肩に手をおき、優しく問いかけた。

「わしの本心に気づかせてくれたダーブラ様に恩返しをさせてほしい。そして怖い目にあわせてしまったあの姉弟に謝罪がしたい…」

涙を流しながら、ゲロはポツリポツリと紡ぐように言葉を絞り出した。

「分かったわ、皆と共に歩みましょ。今までの過ちは私たちと共に贖罪していきましょ」

「はい…ダーブラ様…」

ここに改心したゲロが、ダーブラ戦隊の頭脳として仲間に加わった。




無理くり感満載の今回。
批判は真摯に受け止めます。
どうぞお手柔らかに。
ヤムチャの腹をぶち抜いただけが見せ場だったゲロですが、この物語では重要な役を果たさせることにします。

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