西住さんちの今日のごはん   作:瞬瞬必生

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ガルパンはいいぞ


一話 寄せ鍋

「うわ、降ってきたよ」

 

 天気予報で雪が降ると知ってはいたが、やはり実際に帰り途中に降られると精神的にクルものがある。

 せめて家に着いてから降ってくれよ、なんて思うのは決して俺だけではないはず。小さい頃は雪は降るだけで嬉しかったし、それこそ外に出て遊んだものだ。

 

 小学校の授業中であれば、みんなで校庭で遊びたいと担任にせがんだほどだ。今思うとやはり小学生だったんだなと実感できる。

 だって、今は雪が降ってもそんなに嬉しくないし。むしろ、寒いし電車が遅延するしで災難ばかり。

 

「こう寒いと、やっぱ夕飯は温かいのが食いたいよな……」

 

 家には現在親がいない。いないと言っても、別に天涯孤独とかではないし、病気や事故で他界してしまったわけでもない。ただ、仕事で両親共に短期で出張しているだけだ。

 まぁ隣は祖父母の家だから厳密には一人暮らしとは言えないんだが。

 

 しかし、今日は友人たちとの食事会らしく本当の一人ぼっち。

 一人だひゃっほーいなんて最初は喜んでいたが、放課後になればそんな気持ちはいつの間にか消えていた。

 

「カップ麺なんて寂しいし、なんか作っか」

 

 ああそういえば。

 学園艦に行っていた友人たちが帰ってくるとか言ってたっけ。寄港するとかなんとか、メールが来ていたのを思い出した。

 学園艦に行ってみたい気がしないでもないが、別に陸の学校も慣れればそう悪くない。

 

「となると、みんなでワイワイ食えるのがいいな。え〜と……白菜と長ネギ、春菊……魚も入れてたいな。きのこはなし」

 

 きのこ好きには申し訳ないが、俺はきのこは食えない。誰だって好き嫌いの一つや二つあるもんだろう。

 それが俺はきのこだったという話。

 

「よし。こんなもんでいいだろ」

 

 商店街で必要な材料は買った。後は帰って調理するだけだ。

 夕飯は鍋。寒いときはこれに限る。

 

 

 

 

「たっだいまー」

 

 なんて声を掛けても返事はゼロ。それも当然、この家の住人である両親がいないのだから……ないならないで案外寂しい。

 そんな我が家だが、返事はなくてもお出迎えはある。

 

「おっす、タロウ」

 

 トコトコと歩いてくる我が家の飼い猫のタロウ。出迎えは嬉しいもんだが、少しぐらい鳴いて出迎えてくれてもいい気がするのは俺だけだろうか?

 母親の時なんかめっちゃ鳴いて出迎えてんのに、俺とか親父には鳴かないのはいかに。

 

「さっむ……部屋を暖めておくか」

「そうしてくれると助かる」

 

 そんな声が背後から聞こえてきた。

 この家には、訳あって俺以外の住民は現在存在しない。猫のタロウならいるが、アイツはにゃーにゃー鳴くだけで喋りはしない。喋れたらよかったのに。

 よって、声を掛けてきたのは外からきた誰かということになる。俺の生活費を狙った泥棒……なら話し掛けてくるのはおかしい。泥棒なら泥棒らしく、静かに盗むのがセオリーのはずだ。

 ならば、

 

「おっす。お久し」

「ああ、久しぶり」

「お久しぶりです、カズマさん」

 

 我が幼馴染、西住姉妹だ。

 戦車道の西住流師範の娘であり、戦車道の強豪校の黒森峰に通っている俗に言うお嬢様ってやつだ。家なんかめっちゃデカいし、戦車置いてあるし、使用人がいるし、なんちゃって金持ちとはわけが違う。

 

「なんだみほ? 昔はカズマーって呼び捨てにしてたのに、急にさん付けしちゃって」

「あ、あはは……」

「別に気することはないんじゃないか? みほも年頃ということだ」

 

 そういうものなのか。まぁずっとヤンチャなままでいられないのは同意しておく。

 みほは幼稚園や小学校の時はヤバかったからな。ヤンチャというか、わんぱくというか……。

 

「んじゃまほもさん付けしろ」

「断る」

 

 解せぬ。

 

「ここじゃなんだし、中に入ってくれ。部屋が寒いのは我慢の方向で。ストーブつけとくから暖かくなんだろ」

「すまないな。お邪魔する」

「お邪魔します……あ、タロウ! タロウも久しぶり!」

 

 やはり解せぬ。何故タロウは西住姉妹にゴロゴロと甘えるのか。やはり野郎はダメだというのか、スケベ猫め。

 

「カズマ、夕飯はどうする? 外食というのも手だと私は思うが」

「この買い物の袋を見てそれを言うとかわざとだろ。事前に俺が作るってメールしといただろ」

「でも、本当にいいんですか? 私たちは何もしないで」

「へーきへーき。タロウと遊んどいてくれ」

 

 せっかくのおもてなしなのだ。たまには一人での料理も悪くない。

 これでも料理には少しばかり自信がある。母親に太鼓判を押されるぐらいには上手になったつもりだ。

 見ていろ西住姉妹。昔の黒焦げ量産機だった俺とは違うというところを見せつけてやる。

 

「それで、夕飯は何を作るんだ?」

「今日は寒いじゃん? 温かいのがいいと思ってな」

 

 雪が降る寒い冬。

 作るといったらやはり、

 

「寄せ鍋だ」

 

 

 

 案の定一人で作るのはやはり少しめんどくさかった。

 変に意地を張らずに手伝ってもらえばよかったかな、なんて考えが脳裏をよぎったがもう過ぎた話。

 

「出来たぞー。お待ちどーさん」

「ほう、本当に昔とは出来が違うな」

「うっせ」

「すごく美味しそう! 昔のものとは比べ物になりませんね!」

 

 何故にこう、この姉妹は昔の俺を馬鹿にしてくるのか。俺のガラスハートが砕けそうだぜ。

 そりゃ、昔は焦がすのは当たり前、分量間違えにお皿のひっくり返しなんてザラであったが……うん、自分で思い返しても酷いな。

 

「んじゃ……」

 

「「「いただきます」」」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 案の定というか、なんというか。みんなで鍋をつっついていたらあっという間に空になってしまった。

 その空になった鍋を西住姉妹は物足りなそうに見ている。やはり、戦車道なんてものをやっているコイツらからしたら、少食なんて有り得ないんだろうか? 正直俺より食ってる気がする。

 

「お二人さん、物足りないか?」

「え、いやそんなことは……」

「むっ、そんな風に見えたか」

 

 まぁそんなことだろうと思って……これが本日の〆だ。

 

「んじゃまあ、雑炊で〆ますか。鍋といったらこれよ」

 

 麺もいいが、飯はやはり欠かせない。

 

「どうよ? なかなか上手くなってるだろ」

 

 渾身のドヤ顔。赤の他人にやったらブチ切れ案件だろうが、まぁコイツらなら平気だろ。

 それぐらいの仲は築いてきたつもりだ。

 

「そう……だな。正直脱帽するレベルだ。まさかここまでとは思ってもいなかった」

 

 ふむ。

 

「美味しかったです! 是非またお願いしますね、カズマさん」

 

 ふむふむ。

 

 お粗末さまでした。

 

 

 

 




最終章、いいよね
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