味は正直覚えてません。
多分美味かった
土曜日の昼ピーク。
それは店にとって最高の時間帯であり、ただの下っ端アルバイトには最悪の時間帯である。いや、この時間に儲けないと店が厳しいのは分かるけど、それでもやっぱりその時間に働きたくないと思うのは俺だけではないはず。
まぁ今日俺はシフト入っていないんだけどね。たまには休ませておくり。
しかし悲しきかな、友人との遊びの予定はなし。別に友達がいないとかハブられてるとかじゃなくて、純粋に今日は遊ぶつもりがなかった。
友達とゲーセンやらカラオケやら行くのもいいが、自分の時間を大切にするのもデキる男の条件だ。
……なんだが、
「ごめんねカズマちゃん。ちょっと急な用事が入っちゃったからウチのワンチャンよろしくね」
「アッハイ」
隣のおばちゃんに犬の世話を頼まれてしもうた。いや、犬は好きだからいいけどさ。
「タロウ、ジョイをあんましビビらせんなよ」
「ニャー」
ニャーと鳴いて返事してくれるのはいいが、ホントに分かってんのかねコイツは。ちなみにジョイは隣のワンチャンの名前。
よく家の中におばちゃんが連れてくるからタロウとジョイは初対面ではないのだが、何故か体が大きい方であるジョイが猫のタロウにビビりまくっているのだ。猫が苦手なのかしら。
別にジョイが来てもやることは変わらず。普通に一日を過ごす。本を読んだり、ゲームしたりダラダラしたり。合間に勉強をして過ごすのが学生の特権だ。
両親が家にいれば勉強しろだの小言を言われただろうが、いない今は自由の身。休みを存分に謳歌する。
「ジョイ、散歩行くぞー」
そうやって話しかけてもジョイは返事をしてくれない。動物が言葉を話せればな、なんてなんとなくもの悲しさを覚えながらも、俺の声を聴いて走って駆け寄ってくる二匹がとても愛らしく思う。てかなんでタロウも来たし。ネコは散歩しません。
ジョイにリードを見せてやると散歩に行くということが分かったからだろうか、その尻尾ははちきれんばかりにブンブンと振り回されている。
おばちゃんから借りた、空き地でジョイ遊ぶためのボール、糞を処理するためのスコップとごみ袋、帽子は……夏じゃないし、いらないか。
散歩に行く準備を完了してからリード掴んで家を出る。
「行ってきます」
俺の言葉に返事はなく、玄関でただ寂しそうにタロウがこちらを見つめていた。
*
犬の散歩というのは普段やらないからそう実感しないが、意外と大変なものである。
犬という生き物は有り余った体力を発散しないと健康に良くない。柴犬のような中型犬の場合は一日に二回、一回の散歩の時間は最低30分が目安と言われている。大型犬であれば、逆にこちらが引きずられてしまうほどの速さで走るからそれはもう大変の一言。
俺なんかは老人と比べれば体力に余裕がある若者であるから犬の散歩を1~2時間することなんて苦ではないが、年をとってくるとそうもいかないだろう。
それも毎日となると、やはり辛いこととなってくる。しかし、散歩は犬を飼った人が必ずやらなければならない必須事項だ。
よく自分の子供たちが親離れして寂しくなったからと言って犬を飼い始める老人たちがいる。それは結構なことだが、そのあたりのことも含めて『犬を飼う』ということをしっかり考えてほしいと思う。動物を飼うということは命を預かることであり、命はおもちゃではないということ。
聞いた話ではあるが、産まれたての子犬を捨て、その子犬はカラスに喰われて死んでしまったと。バカなんじゃなかろうか? 命を粗末にするなと。親もいない子犬が生きていけるわけねぇだろ。
世の中にはこんな人たちであふれていると考えるとなんだか悲しくなってくる。果たしてこの国の未来は大丈夫なのだろうか。
と、関係のないことを考えると目標地点である空き地にようやく到着した。
なんとこの空き地は所有者がドッグランとして開放している土地であり、犬を連れた人たちが時折ここへ来て犬と遊んでいる。
そして、飼い犬がいるということは当然その飼い主が居るというわけで、飼い主の交流の場でもあったりする。
どうやら、今日は先客が一人いるようだ。
「おっす、みほ」
「あ、こんにちはカズマさん!」
そこに先客としていたのは幼馴染である西住みほ。どうやら飼い犬と遊んでいた最中らしく、その手にはボールが握られていた。
ぐるりと周りを見渡しても他にこの空き地には人影がない。いつも散歩をする時は姉であるまほと二人でやっていると聞いたが、そのまほは何処にいるのだろうか?
「あれ、みほだけ? お姉ちゃんはどしたの?」
「お姉ちゃんは多分まだ寝てると思う。気持ち良さそうに寝てたから、起こしちゃ悪いかなって……」
「へー、珍し」
まさかまほがお昼近くまで寝てるとは。やはり高校に上がったばかりだし、西住流の跡継ぎ娘ということで苦労しているんだろうなぁ。
今は一年生ということであれだが、来年になればみほも高校に上がるし、多少は違ってくるのかもしれない。
「ま、たまにはゆっくり寝てもバチは当たらんだろ」
「そうですね、お姉ちゃんいつも頑張ってるし……勝たなきゃいけないのに、私なんて……」
お、自虐モードか。
「ベシベシっ」
「あ痛っ!? なんで頭叩くんですか!?」
「もっと自信持てって。戦車道のことはよく分からんが、みほだって今はまほの跡を継いだ隊長だろ? 隊長が不安になると、周りも不安になるぞー」
「うっ、それエリカさんにも言われました……」
エリカ、さん……?
「あ、戦車道の仲間で今は副隊長をしている人なんです。気が強くて、リーダーシップがあって」
「へー、みほの友達かー。どんな人かめっちゃ気になるわ」
「あとお姉ちゃんのことが大好きです」
……それはどういう意味での好きなんだろうか。Likeでの意味なのかLoveでの意味なのか。あんまり深く聞かない方がいいかもしれん。
そんな俺をよそに、ジョイはあちらの犬と無邪気にじゃれあっている。
あ、そういえば西住ワンチャンの名前って知らない。良く犬に食べ物の名前を付けている人が多いが、西住ワンチャンもそのパターンなのだろうか。
となると、まほの好きな食べ物といえば……カレーライス? いやいや、犬の名前にカレーライスはないわ。
「みほの好きな食べ物ってなんだっけ?」
「え、急にどうしたんですか?」
「いいからいいから」
「……マカロン、かなぁ」
なるほど。こっちの方が全然ありえる。
となると、西住ワンチャンはマカロンか。
「もしかして、マカロン作ってくれるんですか!?」
「ウェ!?」
いきなり目を輝かせて来たから、つい変な言語になってしまった。しかし、マカロン。マカロンかぁ……
無理ですね。うん、無理。
「無理だわ」
「え、作ってくれるから好きな食べ物聞いたんじゃないんですか……?」
残念ながらみほよ。その場合は好きな食べ物じゃなくて、好きな《料理》を聞くんだわ。
そもそも、マカロンなんて作ったことないし。
「すまんがマカロンは無理。せめて他の料理プリーズ」
「うう。そしたら……あっ、ハンバーグ! そういえば、エリカさんがハンバーグ好きなの思い出したら食べたくなっちゃった」
となれば、昼のメニューは決まった。
*
「む、何故カズマが家にいる」
「今度は妹に拉致されたからだよ」
昨日は姉、今日は妹。
拉致しすぎではなかろうか、この姉妹は。別に俺は西住家専属コックじゃないぞ。
「……ハンバーグか」
「みほからのご注文でな。材料はないかもと思って家から持ってきた」
「なんか我儘言ったみたいですみません……」
「まぁ、せっかくだ。これぐらい気にすんな」
相も変わらず食卓を囲むのは俺とまほとみほの三人。
テーブルの上に置かれたのは今日の昼食であるハンバーグだ。
「「「いただきます」」」
こんな休日も悪くない。
いや、むしろ良い。
「今度こそマカロン作ってくださいね!」
「……今度な」
……マカロン、要練習だな。
そういえば自分、今年初めて海楽フェスタに行ってきました。めっちゃんこ楽しかったです。また大洗行きたいなー……大洗行きたい病が発症したかもしれん。
あ、土曜日は再び最終章を劇場版で見てきマッスル。なので次の投稿は土曜日か、もしくは日曜日ですね。