龍剣物語 ~少年の歩む英雄譚~   作:クロス・アラベル

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連続投稿です。はい。


強者切望(スカーター・ゼーンズフト)

「帰ったぞ、エオス」

「ただいま帰りました、エオス様!」

エオスファミリアのホームである壊れかけの教会、その地下室に帰ってきた二人。

「おかえりなさい、ルキア、マナ。今日は早かったのね?」

「はい、ルキアさんがダンジョン探索を早めに終わらせてくれたので…」

「……間違ってはいないな」

出迎えるエオスは丁度アルバイトから帰って来たところだったようで、鞄がソファに置かれている。

「どうしたの?貴方、いつも夕方までは頑張ってるのに」

「一言で言えば、ミノタウロスに殺されかけた」

「ええっ⁉︎だ、大丈夫なの⁉︎貴方はさらっと衝撃的な事実を言うわね……どうやって逃げて来たの?」

「ロキファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインに間一髪のところで助けられた」

「え?ロキって言った?」

「はい、そうですけど…」

「やっぱり有名になってるのね……ああごめんなさい、ロキとは天界で友達だったのよ。しばらく会ってなかったけれど…」

「……スゴイ方と御友達なんですね…」

「……今度会いにでも行こうかしら」

たまにはそういうのもいいだろうと、エオスが言っているとルキアがステイタス更新を催促する。

「分かったわ。マナ…」

「わっ、分かってますっ‼︎」

エオスに言われて慌ててマナが部屋を出て行った。実は先日、ルキアのステイタス更新(半裸)を見てしまうという事件が起こったため、ステイタス更新時はマナに逐一知らせるというのがルールになってしまった。

「……さて、今日はどんな冒険をして来たのかしら?」

エオスがベットに仰向けになるルキアに乗り、小さな針を取り出して言う。そして、エオスは自分の指に針を刺す。指ににじむ真紅の血。その血を一滴、ルキアの……あたかも古代書の一枚のようなステイタスが刻まれた背中に落とす。

するとルキアの背中に白い光の波紋が広がる。そして、ステイタスの文字が白く光り、浮き上がる。まるで鍵を開けるような音と共にステイタスの基本アビリティの数字が動く。その動きを見てエオスはルキアに呆れながら言う。

「……今日も本当に、無茶したわね」

「…無理しなければミノタウロスから逃げられない」

「違う!貴方真正面からじゃなくとも戦闘しようとしたわよね⁉︎」

「……」

「こら!黙らないの!」

エオスの言葉に無言を決めるルキア。こうなると口を割らないのがルキアだと知っているエオスはため息をつきながらステイタス更新を進める。すると、エオスはルキアのステイタスを見て首を傾げた。経験(エクセリア)の中に有望なものがあったのだ。

「…なに、これ?」

「……どうかしたか?」

「いえ、何もないわ」

エオスは気にせずにステイタス更新をする。有望な物があるのなら積極的に使っていかなければ、とエオスはその経験(エクセリア)を取り出し、ステイタスに反映させる。すると、とあるスキルが出来た。

「……(……強者切望(スカーター・ゼーンズフト)?聞いたことのないスキルね)」

「終わったか?」

「ええ、少し待って。今写すから」

エオスは更新を終了し、恩恵(ファルナ)を再びルキアに戻す。

その時だった。そのスキルの詳細を見たのは。

「……⁉︎(な、何よ…これ⁉︎)」

エオスは驚愕した。そのスキルの性能に。

「……(不味いわね……こんなスキル周りに知られたら……)」

エオスはある懸念に気付き、すぐさまそのスキルだけ紙に写らないように手を施した。

そして、紙を取り出してルキアの背中、ステイタスの上に貼り、少し押し付ける。

「……はい、出来たわ」

「……ん」

ルキアは服を着ながらエオスからステイタスが書かれた紙を受け取る。

 

 

Lv.1

力:H 142→179  耐久:H 111→163  器用:I 75→92  敏捷:H 140→178  魔力:I0

 

《魔法》

【】

【】

【】

 

《スキル》

竜の血(ドラゴンズ・ブラッド)

・アビリティの超高補正。

・五感の超高補正。

・スキルや魔法が発現しやすくなる。

・稀に暴走する。

・自然治癒能力の超高補正。

 

 

 

「……今日は、増え方が凄いな」

「まあ、ミノタウロスから逃げたり、戦ったりしたんだから、当然じゃないの?」

「……そうだな」

唇を尖らせてエオスは皮肉たっぷりに言う。

「…マナ。もういいぞ」

「…あ、はい!」

ルキアは丁度着替え終わり、部屋に入ってくるようドアの向こう側にいるマナへ言う。

「……じゃあ、俺は出てるぞ」

「はい、毎回すみません…」

「…気にするな」

ルキアは剣とその手入れに必要な道具を持って出て行った。

「……それじゃあ、お願いします」

「ええ」

マナは服を脱いで仰向けになり、エオスはステイタス更新を行う。

「…貴女は、ダンジョンには行ってないから…ほとんど上がらないわよ?」

「それでもいいんです」

エオスは苦笑しながら言うと、マナは同じく苦笑いで返す。

「……えーっと…まあ、こんな感じかしらね」

「…やっぱりこんな感じなんですね」

マナはエオスから受け取ったステイタスを写した紙を見る。

 

 

Lv.1

力:I 4→5  耐久:I 2  器用:I 11→15  敏捷:I 8→11  魔力:I 0

 

《魔法》

【】

【】

【】

 

《スキル》

【】

 

 

「……器用のアビリティが他と比べて結構上がってますね」

「貴女は料理をしてくれてるから、包丁使いが上手くなってるとかじゃないかしら?些細なことでも一応経験(エクセリア)に数えられるから…」

「そうなんですね…」

恩恵(ファルナ)を受けてまだ日の経っていないマナは戦闘はしたことがなく、ダンジョンにも一度しか行ったことがないマナには、ステイタスの大幅向上は見込めない。マナはそれを自分でもわかっているのだ。

「…じゃあ、ご飯にしますか?」

「そうね……今日もルキアと一緒に買い物頼めるかしら?」

「はい。喜んで!」

マナは服を着て上着を羽織ってお金を持って外に出て行った。

 

 

 

 

「………はあ。まさか、またレアスキルが発現するなんて」

エオス以外誰もいなくなったホームで彼女はため息をつきながら言う。

エオスの持っているルキアのステイタスを写した紙。エオスはそれのスキル表示部分を撫でるように触る。するとそこには新たな文字が現れる。

 

 

Lv.1

力:I 142  耐久:I 111  器用:I 75  敏捷:I 140  魔力:I0

 

《魔法》

【】

【】

【】

 

《スキル》

竜の血(ドラゴンズ・ブラッド)

・アビリティの超高補正。

・五感の超高補正。

・スキルや魔法が発現しやすくなる。

・稀に暴走する。

・自然治癒能力の超高補正。

 

強者切望(スカーター・ゼーンズフト)

・早熟する。

・切望想いが続く限り効果持続。

・切望想いの丈により効果向上。

・自分より強い相手と戦う時、アビリティを高補正。

 

 

ルキアに発現したスキルは間違いなく、レアスキルだ。正真正銘の、世界で一つの。

「今日のアイズ・ヴァレンシュタインとの出会いがきっかけかしら……ちょっと、悔しいわね」

エオスは一人、悔しそうに本音を零した。

 

 




次回《酒場の少女》

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