龍剣物語 ~少年の歩む英雄譚~   作:クロス・アラベル

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たいっへんっ、遅くなりました‼︎クロス・アラベルです!そして、明けましておめでとう御座いますm(_ _)m
今回のお話に筋を通すにはどうすればいいかに滅茶苦茶悩みました。30回目の実験で初めて成立しました。よかったぁ…
えっ?年が明けてるって?
………御勘弁を m( _ _ )mゴメンナサイ
それではどうぞ!


酔いどれ狼の躾

 

 

 

「煩いぞ、酔い駄犬が」

これが彼女の最初の言葉だった。

「……んあ?お前……あ、お前、トマト女じゃねえか‼︎凄え偶然だなぁ‼︎」

ベートは彼女の言葉に対してベートはわざとらしく声を張り上げる。

「調子に乗ってんなら巣に叩きつけるぞ?」

「悪いが犬みたいに巣は持っていない。お前はもうすこし冒険者としての意識を持ってから犬小屋を出てこい」

「る、ルキアさん…⁉︎」

彼女にとってベートは格上の相手。レベルの差はたった一つ違うだけでも圧倒される。もちろん、ベートもやっているとはいえレベル5。いやでも気迫というのは十分ついてくる。普通ならここまで不機嫌な声を脅されたら、動くことなど出来ないはずだ。だが、彼女はそれをもろともしない。

後ろにいたエルフの少女が喧嘩腰な彼女を宥めようと声をかけるが、聞いていない。

「ああ?俺に手も足も出せねぇヤツが何言ってんだ?」

「手も足も出せないとは、心外だな。今のお前なら気絶くらいはさせられるぞ」

「……はっ、負け犬の遠吠えだな。出来る訳ねぇことをほざいてよ…んじゃあお前はなんだ?俺があの牛野郎どころかお前にさえも負けるっつうのか?」

「ああ。今からでもするか?」

交わされていく物騒な会話にアイズとベート以外で唯一彼女と面識があるリヴェリア、ついには団長であるフィンが止めに入る。

「る、ルキアだったのか……落ち着いてくれ。ベートは…」

「ベート、やめるんだ。酔った勢いに任せていうのは……」

「うるせぇよ。黙ってろ、フィン」

「すまない、こればかりは譲ることは出来ない」

が、二人はフィン達の言葉を聞かない。

「言ったよな、お前よ。気絶くらい簡単だってよぉ」

「それには語弊がある。俺は簡単とは言っていない。逆にかなり苦労する。時間もかかるだろう」

「るっせえよ、んなことはどうだっていい。今すぐ戦ろうじゃねぇかよ……それともなんだぁ?ビビって出来ねえのか?」

まさに売り言葉に買い言葉。ヒートアップしていく二人は誰も止められなかった。カウンターからはこの店の店長からの殺気がダダ漏れだったが、ベートは酒で酔っていて気付かなかったが、ルキアはとっくに気付いていた。

「……いいだろう。お前の望む通りやってやる。ただし外でやる」

「洒落臭ぇ‼︎今から戦んだよ………今からなぁ‼︎」

店の外へ出ることを提案するとベートは我慢できなかったのか、ルキアに突撃をかまそうと超スピードで飛んできた。それをルキアは間一髪で避けようとしたが、ベートの勢いに巻き込まれてベート諸共店の外へ吹き飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、食らってんじゃねえかよ」

一番最初のタックルが当たり、店の外に吹き飛ばされたルキアにベートが笑いながらそう小馬鹿にした。

「………」

ルキアの目は険しかった。けれど不敵に笑うこともしなかったが、苦しそうに顔を歪めることもなかった。ルキアは勝つために考えた戦法を上手くかけられるかを吟味していた。

「おい、ダンマリかぁ?勝てそうもねえから黙るしか無いのか⁉︎」

「……(勝てる可能性は3%と言ったところか。確率的に低いかもしれないが、勝てないわけじゃ無い。今の俺と、今のアイツなら。)」

「じゃあよ、こっちから行くぞゴラァ‼︎」

ルキアの思考を遮ってベートは突っ込んでくるが、ルキアはそれに構わず、後ろに方向転換して走った。

「はあ⁉︎」

呆気なさ過ぎる逃走にベートは無性に腹が立った。

「……逃げてんじゃねえよッ‼︎」

ベートもルキアを追って走り出した。ベートはレベル5。レベル1のルキアが逃げ切れる訳がない。だが、ルキアにとって逃げることは勝つ為の一つの行程でしかなかった。

「……ッ!」

ルキアはベートとの差が20メドルを切った直後ルキアは角を曲がり、裏路地へ入っていった。

「逃すと思ってんのかぁ⁉︎っととと」

ベートは酒で酔っているせいか、少しよろけながらもその裏路地へ入った。だが、そこは行き止まりだったのだが、ルキアの姿がない。

「あ?」

するとルキアはすでに建物の屋根に登っていた。壁を蹴って上がったのだろう。

「……」

ルキアは氷のように冷たい目でベートを屋根から見下ろしていた。

「雑魚が粋がってんじゃねえぞ……三下ァ‼︎」

ベートにとってこれくらいの高さならひとっ飛びで上がれる。逃げたつもりだと思っていると思い、何を無駄な事を、とベートはルキアのいる屋根まで一蹴りで跳躍する。

ルキアはすぐに屋根の上を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(奴の勝つ方法は一つ。ぶっつけ本番、これが成功しなければ勝ち目はない。)

屋根の上を走りながらルキアは黙考する。

(レベルは向こうの方が格段に上、力も速さも硬さも……そして、五感の鋭さも)

屋根から屋根へなんとか飛び移り、タイミングを計る。

(…だが、()()違う。ロキ・ファミリアの会話を聞いていたが、奴は龍殺しの火酒を飲んだと誰かが言っていた。確か、龍殺しの火酒はレベルの高い者か、或いはドアーフなど耐久力に優れたものしか飲めず、他のものが飲むとたちまち気絶、泥酔、ヒューマンなんかが飲むと死んだという例も聞く。ならば、奴も例外ではないかもしれん。酒気(アルコール)が馬鹿ほど高い酒、それが龍殺しの火酒だ。あいつも高レベルだが、酒場では顔を赤くして感情(テンション)が妙に高かったし、先程からの走行中奴の動きが妙に鈍いということにと気がついた。)

走りながらもルキアはズボンのポケットの中に手を突っ込んだ。

(そして、奴は何も持っていない。俺には()()がある。()()がカギだ。)

「……やるか」

ルキアは作戦を実行に移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ。あいつ何がしてぇんだ?ずっと逃げやがって……」

ベート・ローガは苛ついていた。酒に酔っていながらも己のプライドや心の芯は失っていなかった。

「ずっと逃げたってなんも変わんねぇんだよ‼︎雑魚がぁ‼︎」

そう叫んだ時、ルキアは右側に方向を変えてより高い建物の影に走っていった。

そして、ベートもそっちへ走って角を曲がる。だが、そこにはルキアの姿はなかった。

「……あ?」

その時、()()が右足に巻きついた。直後ルキアが真下から飛んでくる。

「…なんだァ?今のは」

「……答える義理はない」

「……まぁいい。覚悟は出来てんだろうな……なぁオイ‼︎」

そして、ベートはしびれを切らしてルキアに向かって飛んだ。その時、ルキアは動いた。

「……かかったな」

ルキアは何かを両手で掴み、体全体でそれを回した。ベートも同様に見えない何かに引っ張られ足をすくわれた。

「ああッ⁉︎」

そして、そのままルキアによって宙に浮き、ルキアを中心にぐるぐると回転する。

「うおおおおおおおおおおおッ‼︎」

見えない何か。それはこの日手に入れたゴゴモアの糸だった。ゴゴモアの糸で石を巻きつけ、それを投げてベートの足に巻きつかせたのだ。それは頑丈で、なおかつこの宵闇では一本くらい容易に視認できない。レベル5であるベートは視認できるかもしれないが、今は火酒を飲んだ後。酔っている状態では普段見えるものも見えなくなる。

ルキアのアビリティでは人一人ぶん回すのは不可能な筈なのだが、この時、ルキアのスキルである【強者切望(スカーター・ゼーンズフト)】が発動し、全アビリティを高補正していたのだ。そして、元々ある【竜の血(ドラゴンズ・ブラッド)】による全アビリティ超高補正がかかっていることで、この荒技を可能にしている。

そして、レベル5であるベートに対してこんなことをしても全くの無意味なのだが、一部の人間には効果覿面だ。

「てめぇ、何して………うぷっ……⁉︎」

そう、酒で酔っている人間だ。例えレベルが高くてもあの火酒を飲んで酔っているのだ。いわゆる乗り物酔いになる程ぶん回されていれば、当然気持ち悪くなる。飲んだものが胃から上がってくる。

「て、てめぇ……やめっ_____」

流石のベートもそれを遅まきながら理解したのか、顔を真っ青にしてやめろと言おうとしたが、ルキアはそんなこと御構い無しに回し続ける。

80回程回した時、ルキアは屋根を足で蹴り、空を飛ぶ。そして、そのまま_______

「おおおおおおおおらァアッッ‼︎」

下へ叩きつけた。

そこには噴水があったが、それも御構い無しだ。ベートは勢いそのままに噴水へ叩きつけられた。

「ぐおおおおおおおおおおおッッ⁉︎」

「ッ」

ルキアも勢いあまって地面に転げ落ちたが、なんとか着地した。

「や、やべぇ……もう…う、うおおええええええええええええええぇぇぇぇ_____」

そして、ベートは叩きつけられた直後に限界を迎えたようで、胃の中のものをぶちまけた。要するにゲロを吐いた。そのままベートは吐きながら気絶してしまった。

「…ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

流石のルキアも息を切らしていた。そして、ルキアは夜空を見上げた。

 

「まだ、弱い。まだ足りない___________強くならなければ____ッ」

そして、護身用にと持っていた片手剣を手に、宵闇にそびえるバベルを見据え、それに向かった歩き出した。

 

 




この龍剣物語も次からツイッターで次回予告をさせて頂きます。
それでは、次回も楽しみに‼︎

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