龍剣物語 ~少年の歩む英雄譚~   作:クロス・アラベル

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こんにちは、クロス・アラベルです!
早くも第二話投稿です。
今回はソードオラトリアでお馴染み(?)のあの人が登場です!
金色のガッシュ要素は当分先になりそうです……すいません。
それではどうぞ!


戦いの降臨~本能はしたたかに~

 

 

 

木が鬱蒼と生い茂る森の中を駆ける影があった。

一人は呪われた少年。他の12人は少年より背の低い、人外。

そして、距離をあけてもう一つ影が少年を追いかける。

走り続け、森の開けた場所に少年と12の人外が飛び出す。

少年は若かった。空色のボサボサになった長髪に蒼紫(タンザナイト)に輝く瞳。身長は168セルチ程、細身の腕や足。服装は麻布でできたショートズボンのみ。手首足首には鎖のない枷が付いている。首には青いひし形の宝石のようなものがついたネックレス。

少年は少し焦っていた。何故なら、

『ゴギャシャァア‼︎』

『ギャルシャァ…!』

野生のゴブリンに見つかってしまったからだ。

少年を囲む12体のゴブリン。

「……ちッ(……よりによって、モンスターに見つかるか……多分、ゴブリンだな。野生のモンスターは弱いって聞いたことがあるが、今の俺じゃあ勝てるかどうかは分からない。だが、戦わないという選択肢はもうすでに潰えた……)」

少年はゴブリンを睨みつける。

「……(一気に12体を相手取るのか……きついが、やるか………一体ずつ確実に…)」

深呼吸をした少年は、

「殺すッ……うおおおおおおおおおおおおおッ‼︎」

雄叫びをあげながら一体のゴブリンの元へ走る。死闘の火蓋は切られた。

『⁉︎』

まさか攻めてくるとは思わなかったのか、あっけにとられるゴブリン。そして、

「ラアアアッ‼︎」

跳躍し、ゴブリンの口に手を突っ込んで普通は開かないような角度まで無理やりかっ開く。ゴブリンの真後ろに着地を決める。

しばしの沈黙。

口が裂けて血しぶきが止まらない。

そして、そのゴブリンを両手で持ち上げて思い切り力を入れて、

「ッ‼︎」

潰す。

それと同時に、大量の血が流れ出す。

「………次」

潰れて力尽きたゴブリンを地面に放り投げる。

少年はゴブリンを誘うように走り出した。

 

 

 

 

少年とゴブリンたちとの死闘が始まった時、木の陰から見ている少女がいた。

白銀の長髪、紫眼を持った少女。

杖を持ち、彼女にとって少し大きいカバンを一つ持っている。

「……あれは…冒険者?」

彼女は少年を見て呟く。

彼女の名はアミッド・テアサナーレ。《ディアンケヒト・ファミリア》の構成員の一人で、二つ名は《戦場の聖女(デア・セイント)》。とある迷宮都市一の治療師(ヒーラー)だ。

アミッドは都市外からの治療依頼を受けて、長距離出張を終え、都市に帰る最中で少年が野生のゴブリンに追われているのを見た。

そして、今に至る。

「……冒険者…にしては、装備が貧弱過ぎますね……ズボンだけ……武器は所持していない…」

そう少女が考えているうちに少年か2体目のゴブリンに目をつけ、誘い込んでカウンターを決めた。

倒れこむゴブリンに向かって渾身の一撃を見舞う。

それを受けたゴブリンは()()()()()()()

「……あの力だと、レベル1の上位か、レベル2ですね。まさかゴブリンの頭を吹き飛ばすとは……」

そして、3体目のゴブリンの足に突進(タックル)をかまし、倒れたと同時に足を両手で持って、そのまま振り回す。

意外な攻撃に面食らったゴブリンたち4体がそのゴブリンの嵐に巻き込まれて絶命した。

少年が武器代わりに振り回していたゴブリンもいつのまにか絶命していた。

少年はゴブリンが持っていたであろうナイフを拾い、ゴブリンを誘うように走る。ゴブリンは仲間が殺されたことに腹を立てているのか、激昂しながら少年を追いかける。

「……追ってみましょう。気になります。」

アミッドは気付かれないように少年の後を追う。

少年は川まで走り、木に隠れた。ゴブリンがそれに気付かず通り過ぎる瞬間、ゴブリンを川に突き飛ばし、ゴブリンの首を絞めるように突っ込んだ。

そして、手に持っていたナイフをゴブリンの胸……魔石めがけて勢いよく振り下ろした。

ナイフはゴブリンを貫いた。アミッドからは見えにくいかも知れないが、多分魔石を捉えたのだろう。ゴブリンが力なく川に流されて行った。

少年は起き上がり、9体目となるゴブリンに向かって疾走した。

「オオオオオオオオオオッ‼︎」

少年は雄叫びをあげながらゴブリンの右肩をナイフで勢いよく斬りつける。

『ギシャァッ⁉︎』

血しぶきをあげながら後ろに飛んで行くゴブリンの右腕。

そして、ゴブリンに馬乗りになって、顔にナイフを突き立てる。

絶命したゴブリンは魔石と爪だけを遺して炭化した。

少年はそのゴブリンの爪を拾って、10体目のゴブリンに投げつける。

一瞬、隙を見せたゴブリンに向かって少年は渾身の拳を食らわせた。

顔が吹き飛び、そのまま後ろに倒れるゴブリン。

後2体のゴブリンは恐れをなしたのか、逃げて行く。

絶対に逃がさないと言外に告げるように少年は最後の2体を追いかけた。

一体を崖の下に追い詰めた少年。

素早く突っ込みゴブリンの頭を鷲掴みにして壁にそのまま叩きつける。何度も、何度も。

そのせいで上から石が落ちて来る。その一つ、少年の頭より一回りふた回りも大きい岩が少年の頭に直撃した。

「がッ………ッ‼︎」

それでも少年は倒れなかった。

そして、頭から大量に血を流すゴブリンを後ろから奇襲しようとしていた最後の一体に向けて投げつける。

『ギガァッ⁉︎』

それと同時にゴブリンめがけて走り、そして、

「ウオオオオオオオオオオオッッ‼︎」

拳をゴブリンの腹に叩き込む。

ドンッ!という大きな音が森に響く。

少年の最後の一撃はゴブリンの腹を貫通し、奇襲をかけようとしていたゴブリンの胸に突き刺さっている。

「オオオオオオオオオオオオオッ‼︎」

そして、雄叫びをあげて右腕を引き抜いた。

少年の右腕は血で真っ赤に染まっていた。

右腕から血とともに爪より小さな魔石がこぼれ落ちる。

「………一人で、12体を……」

驚きで呆然とするアミッド。

だが、少年は無理が祟ったのか前のめりに倒れこんだ。

「っ!」

アミッドは少年の元へ走り、容態を見る。

「……前頭部から出血…ほかに目立った傷は、なし…」

アミッドはすぐさま少年の安否を確認し、容態を見抜いた。そして、魔法を用いて治療を施す。

「……この方、ステイタスが刻まれていない…………⁉︎」

神の恩恵(ファルナ)》なしで戦っていたことに驚くアミッド。

「……とりあえず、休む場所もないですし……ホームに運びましょう。」

そう言って、少年を背中に背負って歩き始めた。

 




次回『少年はオラリオで目覚める』
主人公の身長を変更しました。

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